ようこそ(勘違い)大和撫子の学校生活へ   作:エカテリーナ

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おまたせしました!
今回はアンケート結果に応えられたと思います。
次か、その次で1巻を終えられるといいなと思います。

また、誤字修正やお気に入り、感想、本当にありがとうございます!
日々の励みになってます。
今回時系列がごちゃごちゃしてるので前話を少し修正しました。イベントは起きるので、場所や時間だけ変わってますがご了承下さいませ!申し訳…。

※※※注意※※※
今回、勘違いとはいえ曇らせ描写があります。
“そういう事”です。一応、閲覧注意です。勘違いですけどね!

それでは、どうぞ!!


番外⑤:その頃のDクラス。(+担任)

Side.綾小路

 

「それでは本日の伝達事項を伝える。急で悪いが、テストの範囲が大幅に変更になった」

 

「えぇ!」「そんな急に…!」ざわざわ…

 

「先生、そんな事を突然言われても僕たちは最初に指定されていた範囲の勉強に注力していました!それを…!」

 

 

クラスで最もクラスメイト救済に動いていた平田が挙手し、ギリギリ丁寧さを残した強い姿勢で茶柱に訴える。

これには普段と同じように熱っぽい視線を向ける女子生徒だけでなく、目の敵にしているような男子生徒も期待を向ける。

 

しかし、無常にも茶柱からは冷たい視線で否を突きつけられる。

 

 

「これは学校の決定だ。お前たちだけではない。他のクラスにも同じように本日のHRで伝達がされている。そもそも、普段の授業の範囲を超えている訳では無い。諦めて()()()()()()()()()()()んだな」

 

「っ…!」

 

「………」

 

 

平田の反論を説き伏せると、黒板へ変更になった範囲を黒板へ記して「お前たちが知恵を絞り、下らんプライドを捨てるのであれば()()()この試験、乗り越えられると信じている。以上だ。…残り時間は好きに使う様に」

 

 

そう言うと足早に立ち去る茶柱を皮切りに、クラス中から不安や焦りを言葉にして漏らす生徒達がポツポツ出始める。

 

 

「おい…どうするんだよ…」「範囲が違う…間に合うのか…これ?」

 

「わたし…退学したくないよ…」「平田くん…」

 

「やっぱり、みんなで抗議しに行こうぜ!」「無理だって!絶対に…」ざわざわ…

 

 

まさに阿鼻叫喚、ざわめきが支配するクラスを統率すべく声を上げたのはやはり平田だった。教壇に立ち、再び勉強会を開くことを提案する。

今度は前回テストの赤点組はほぼ半強制。50点以下のも参加を努力義務で来てほしい旨を頭を下げて懇願する。

 

その様子に普段、平田を敵視している生徒も瞠目し周囲の女子の視線に負ける形で参加を表明する。

その中には既にクラスの三バカと言われている須藤、池、山内も居る。

 

 

「…分かった、俺も今日から部活を休むから、よろしく頼む」「お、俺も参加する…!」「俺も」

 

 

思わず「誰だお前」的な視線が須藤を貫くが、その眼力にすぐ視線を戻すクラスメイト。

横目で面白いものを見た様な高円寺のニヤケ顔が印象的だった。

 

その後に須藤にも、そして全員にもお礼を言った平田は好成績の生徒へ講師役を打診する。

高円寺は早々に拒否、櫛田は快諾。後は意外にも幸村が承諾した。彼自身も須藤の態度の変化や、茶柱からの煽るような叱咤激励には思うところがあったのかも知れない。

 

…そうすると、残る問題は()()()なんだが…。

 

そう思いチラリと隣人を横目で見ると普段通りの無表情〜仏頂面の間で教壇に立つ平田に目を向けている。

 

ーーーーーーーー

 

()()()()()()知らないが、以前の図書室での事件の後で堀北から勉強会参加メンバーに謝罪があった。

「Aクラスを目指すに当たって焦りがあった」「上のクラスに上がるには、クラス全員の協力が必要」「もう一度、あなた達の勉強を見させてほしい」と本気で別人を疑うような発言を真剣な表情でしてきた。

 

これには池、山内も驚きを隠せずにいて、それでも睨みつけていた須藤には「夢を侮辱して申し訳なかった」「自分にも目標があり、その為には須藤君の協力が要る」と伝える。

 

ここまで真摯に言われて、反省した様子の異性に免疫がない須藤は「…結局はお前の目標の為なのかよ」と無愛想に返すが、その声には既に険は無かった。

 

 

「そうよ。私は、必ずAクラスに上がる。そして、認めてほしい人がいる。その為に貴方を、Dクラスを利用する」

 

「…」

 

「だから貴方も私を利用しなさい。夢の為に、貴方がどれだけ努力してるかは、少しだけどバスケ部の先輩達に聞いたわ」

 

「…お前」

 

「先輩たちは言っていたわよ。『須藤(アナタ)は才能はあるけどこの学校はバスケ(それ)だけではダメだから、クラスメイトが支えてやってくれ』って。…随分、クラスでの様子とは違って信頼されているのね」

 

「…っ、恥ずいことを…一体誰だ…問い詰めてやる…!」

 

 

顔を赤くしてガジガジと頭をかく須藤と、クスクスと笑う櫛田、ニヤニヤとからかう池や山内。その様子に安心した様子の池谷や遠巻きに心配していた平田もほっと息をついている。

 

ーーーーーーーー

時は戻り教室。堀北は平田から元々担当していた生徒たちの講師役を頼まれている。

 

 

「じゃあ堀北さんは、須藤君たちのことを頼めるかい?」

 

「ええ、任せて頂戴。…綾小路君、貴方も強制参加よ」

 

「え?俺もか…?」

 

「当然でしょう。50点以下とは、つまり50点も含まれるわ。図書室での席取りは任せたわよ。私は放課後までにテストを作って、それを印刷したら行くわ。()()()()?」

 

「了解…」

 

 

以前よりは若干、柔らかくなったというのか言葉尻に相手を責めるようなものでなく、頼むような言葉が着くようになった。

元々、かなりの美少女なのが堀北鈴音だ。その言動が台無しにしていたが、初期とのギャップというのか、チャットでは堀北が可愛くなったと早速コメントが乱舞している。

 

それはそれとして、面倒に感じながらも俺は放課後の自由を奪われるのだった。なぜか、不思議と()()()()と、そう感じながら。

 

 

ーーーーーーー

 

 

図書室での勉強会は、途中まで順調だった。

小テストの採点結果が良かったのか大きな声で騒いでしまった池にCクラスの生徒が注意を飛ばしたのだ。

軽い謝罪を返すも、それをきっかけにDクラスを馬鹿にする相手に、他クラスへはキレッキレな()()をする堀北。逆上して手が出かける相手を威圧するべく拳をボキボキと鳴らす須藤。

一触即発になった空気を止めたのは、Bクラスの一之瀬だった。

先日の喫茶店で接点のあった彼女は自分のクラスとは無関係に、「色々な生徒が使う場所で喧嘩をしないで!」と仲裁する。

 

自分たちよりも上位のクラスの登場に尻込みするCクラスの男子生徒と、「須藤君、ありがとう。大丈夫だから落ち着いて。時間の無駄よ」と堀北に宥められる須藤。

 

その後、「い、いや、Dクラスのバカが騒いでたから俺たちは注意を…」「ならなんで、相手の生徒に掴みかかってたの?」と論破され、立ち去るCクラスとその場に残る一之瀬と俺たち。

 

 

「…ふぅ、大丈夫だった?桔梗ちゃん、あと綾小路君…と、Dクラスの皆?」

 

「あぁ、俺は何もしてないしな」

 

「帆波ちゃん、…うん、助かったよ。…今のって?」

 

「あぁ…うん、Cクラスの生徒って荒っぽいらしいんだよね。こっちのクラスの子もたまに絡まれるらしくって…」

 

にゃはは、と特徴的な笑い声を漏らしながらちょっかいを出されている知り合いを助けに来た事を伝える一之瀬。

池たちに小声で(おい綾小路、俺たち友達だよなぁ…?)(どこで知り合ったんだよあんな巨〇美少女…!)と詰められるが知らぬ存ぜぬで通す。

…不審に思ったのか、「改めて、」と言葉を切り自己紹介を始める。

 

 

「Bクラスの一之瀬帆波です。一応、委員長、なんて言われています。よろしくね?」

 

「よ、よろしく」「はい…」「あぁ…」「よろしくお願いします…」

 

タジタジになりながらも挨拶を返す男性陣。そしてチラッと堀北の方を向くと、口を開く前に「待って」と手のひらを堀北に向けてそれを留める。

 

 

「貴方のことは、ちょっと又聞きだけど聞いているの。…申し訳ないとは思うけど、()()貴女とは仲良くなれないと思う。…理由は、なんとなく解るんじゃないかな?」

 

「…ええ、()()ね」

 

「うん、勉強会を開いてたと思うけど、貴女が先生役…?だよね、…うん、きっと、貴女は良い人だと思うんだけど、だからこそ()()なんだ。また機会があったら、その時にお話しよう」

 

「分かったわ。…一言だけ。ありがとう、助かったわ」

 

「………うん、またね!」

 

 

そう言って少しだけギクシャクした勉強会は、本日は不完全燃焼ながら終了となった。

…ちなみに、時間が取れなかった小テストその2〜その4は宿題となり、三バカの悲鳴が帰路で響くことになった。

 

「(それにしても、茶柱先生()()言っていたな…。もしかすると、()()()()()のか?)」

 

5/1と、そして今日。繰り返し伝えられた()()という言葉に、俺は明日の予定を決めて()()にメールで協力を仰ぐのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

Side.茶柱

 

生徒達の悲鳴を背に、職員室へと向かうと先にいた先生方に労いの言葉を貰った。

毎年のこととはいえ、今日は一学期の中で2番目に精神的に辛い日だ。…もちろん、一学年に限った話だか。

 

1番は当然、5/1のSシステムの真相を話す時だが、まるで賽の河原の様に生徒達が積み上げたものを蹴飛ばすのは非常に()()が悪いとは思うが、納期の短縮や命令の変更など、社会に出ればザラだ。そう思うことで、なんとかため息を呑み込んで席につく。

 

自分が一番早かったのだろう、順に坂上先生、星之宮、真島とクラス順に来るがその表情は正に、結果を予感させる様に三者三様だった。

私ほどではないが、顔色の悪い坂上先生。既に軽口をついてくる星之宮と、その返事に笑みすら零している真嶋。特に、今年のAクラスは最速で裏技にたどり着いた西園ーーー撫子が居る。

クラスの統率を取れる生徒も坂柳と葛城が対立気味だが、撫子が居る以上、他クラスにつけ込まれるスキは見せないだろう。

思わずタバコが恋しくなるがグッと我慢をする。

 

()()した以上、先生として生徒との約束は護らなくてはならない。

口寂しさの慰みにと買った飴を口に放り込み、次の授業の支度にかかる。

 

口の中に広がるレモンの風味に、つい先日の撫子とのやり取りを思い出す。ガリ、と思わず噛んで砕いてしまう。 

…いつもなら「イライラしてるの〜?」と軽口を叩く星之宮…、知恵も口を噤んでいる。そんなに私の表情は険しいのだろうか。否、コイツも知っているのだったと思い出して、努めて何でも無い、と首を振ってみせる。

 

…おい、やめろ。「な、何かあったら力になるからね…」ってお前のキャラじゃないだろ。真嶋と坂上先生が変な目で見てるのに気付け。

 

適当に茶を濁し、教材を持って授業のために廊下に出る。今日の最初の授業は1-Aだった。

扉の前で深呼吸をする。…折りたたみの手鏡を出して、表情も確かめる。…いつも通りの表情を確認して、クラスに入る。

 

流石は学年一の優等生のクラス、速やかに私語をやめて席について、日直が号令をかける。

 

いつも通り、私はいつも通りに授業を始める。今は一教師と一生徒。なんにも思うことはなくのだと、自分に訴え続けるが自然と()()()を目で追ってしまう。

 

目と目が合う。一瞬にも満たない時間なのに、自分の脳裏を焼き切るような感情が駆け巡る。

怒りや、哀れみや、言語化できない絶望、不条理。教師として学校側として、

常に生徒の成長のために働きかける事はあっても、ただただ()()()()()()()()()を押し付けたことはない。

まるで、学生の時のあの試験の様な絶望だった。今考えれば、合っているのか間違っていたのか、私は答を、出さないままあの時を置いてきてしまった。

その結果が愛する相手を失い、旧友との関係に深い傷を残した。

 

あの時に、決めることができればどれだけ良かったのだろうか。

きっと知恵が私を許さないのは、答えが悪かったのではなく、答えを()()()()()()私を赦せないからなのだろう。

 

 

…ダメだな、どうしてもセンチな気分になる。あの日、撫子に保健室で会ったのが理由だろう。

 

 

――――――――――――――――――――

 

あの日、私はなんだったか。生徒の部活関係の提出書類だったか、あるいは教職員での提出期限の迫った書類だったか、どちらでもいいが星之宮を探していた。

スマホで呼び出そうとしたら、職員室のやつの席で鳴る着信音に苛立ちが沸き立ったのは覚えている。

 

校内を探して、もう最後の当ての保健室に居なければ校内放送で呼び出そうと心に決めると戸を開けようとする。

ガチ、と鍵が閉まっている音がする。…保健室は通常、開放してある。養護教諭のアイツが居なくとも、急な部活での怪我や事故で生徒が運び込まれる可能性があるからだ。

つまり、ここに鍵が掛かっているのは非常に不自然な状況だった。

 

…ここで、諦めて職員室に帰っていれば、私はこんな葛藤にかられたり禁煙など始めなかったのだが、詮無きことだ。

 

その後、私が軽く乱暴に戸を叩き星之宮を呼ぶと中からは何故か西園寺の声がした。

 

「はい、どうされましたか?」

 

「ん?、西園寺か?…そこに星之宮先生がいるだろう?いや、取り敢えずドアを開けてくれないか?」

 

「あ、ええと…それは…」

 

「?」

 

彼女曰く、「星之宮先生は留守にしていて、本人が戻るまで誰も入れないように」と言付かっているそうだ。

 

思わずため息をついて、事情を聞こうとしたのをやめる。どうせサボりの嘘だろうと当たりをつけたからだ。

今も寝ているのかとため息をつき、西園寺に鍵を開けるように伝えた。

 

 

「…茶…生なら……他に誰もいませんか?」

 

 

そう、彼女は聞いてきた。が、若干苛立っていた私はそうだと言い、開けるように繰り返す。

ガチャリ、その音を聞いて戸を開けるとソコには、

 

 

「茶柱先生、()()()姿()で失礼致します…」

 

「は、………………なに、を……して、何があったんだ、お前は…!?」

 

そこには、下着姿で、それも上は何もつけていない西園寺が居た。肌は紅潮し、熱っぽい表情で上目遣いに、こちらを見上げている。、胸元や首筋には赤く()が点々と咲いており、どう見ても情事の後のような出で立ちだ。

校内でのあり得ない状況に数秒固まるが、我に返り、慌てて保健室に入るとドアの鍵を閉める。

 

 

一先ずは、上着を貸そうと脱いで渡そうとするが「汚れてしまいます」と固辞される。

 

()()の想像を浮かべ、「構わないから着なさい!」と強い言葉になってしまう。

しかし、傷ついている、…まして未成年の少女なのだ。大人が慌ててはダメだと、冷静になる。少なくとも、冷静になろうとしていると強く意識する。

 

 

「茶柱…先生、その」

 

「…いや、すまない、言い過ぎた…。着たくないのなら、そのままでいい」

 

 

一先ずは落ち着かせようと開いているベッドへ腰掛けさせる。その後、ゆっくりと「辛いなら何も言わなくていい」「私はお前の味方だ」「誰にも他言はしない。担任の真島先生にも、お前のクラスメイトにもだ」も出来るだけ優しく語りかける。

 

その様子に西園寺も落ち着いたのか、先程まで赤くなっていた顔も熱が引いている様子だった。

口癖のようになっている「申し訳ございません」という謝罪は、彼女を抱き竦める事で最後まで言わせないようした。

 

汗か、それとも()()()の雫が胸元を湿らせるのもそのままに、身じろぎをする西園寺を抱きしめる。

 

 

「せんせ…ダメです、汚れてしまいます…!」

 

「汚れてなんかない!お前は、綺麗なままだ…!」

 

「でも…」

 

「私が断言してやる!お前は、何も汚れてなんかない!」

 

「…」

 

 

強く、強く抱きしめる。辛いのは西園寺のハズなのに、ぽろぽろと涙が零れてしまう。

何故、何故こんないい子がこんな目に遭わなくてならないんだ?

 

そうしていると、頭に熱を感じて、思わず目を開く。西園寺が、自分の頭を撫でていた。

辛いはずなのに、もっと泣いても、怒ってもいいはずなのにこちらを気遣っている。

教師なのに、慰めなければならないのに泣いている自分を恥ずかしく思い、「お前がそんなこと、しなくていい」と言う。

 

 

「でも、先生が悲しむと、私も悲しいです…。こうすると、皆落ち着いて笑顔になってくれたんです」

 

「西園寺…。お前は、大丈夫なのか…?」

 

「はい。この学校には、優しい人がたくさんいます。茶柱先生も、その一人なんです。だから、先生が笑顔になれないと、私も笑顔になれないんです」

 

「…っ!!」

 

儚げに微笑む彼女に、悲鳴なのか、怒声なのかを押し殺して強く抱きしめる。

放課後の保健室。二人だけの夕暮れ時に、大人のような幼子と、大人になってしまった子供が抱きしめ合っていた。

 

その後、戻ってきたのだろう星之宮が入口をノックするまで西園寺を抱擁し続け、私は彼女に頭を撫でられ続けた。

…今考えると、かなり恥ずかしいことをしていたと思わず叫びたくなるような羞恥に駆られるが、あの時はそれしか出来なかったのだ。仕方ない。本当に、仕方ない。

 

2,3分待たせた後に保健室に入ってきた星之宮は、こちらを見て悲鳴を上げた。…まあ、ことが()()なだけに分からんでもない。

一刻も早く事態の解決をと協力を仰ぐと、西園寺に服を着る様にと持ってきた着替えを渡して距離を取るように合図をされる。

 

 

「どうした…知恵」

 

「サエちゃんこそ、どうして保健室にいたの…!?それに、撫、西園寺さんのことも…()()()()?」

 

「いや、詳しい話は未だだが。…お前は聞いたのか?そうであれば、速やかに警備に協力を…あとは、あまり口外は出来ないが―――」

 

「そ、その件だけどちょっと待って!落ち着いて欲しいの…!」

 

「…どういう事だ?」

 

 

ひそひそと話している様子を不審がっていないかと目を向けるも、西園寺はまだ身綺麗にしている様子だったので先を促す。

 

知恵の要領を得ない話を聞くと、「この件は内密にすべき」という事だった。当然、ふざけるなと声を荒げそうになるも直ぐに口を塞がれる。目で「西園寺に気付かれる」と伝えられ、追及を弱めるが納得は全くしていない。しかし、話を聞くとそうせざるを得ない理由に握る拳がギシリと音を立てる。

 

 

「まず、認識のすり合わせからしましょう。サエちゃんは、西園寺さんの様子を見てどう思ったの?」

 

「どうって…。…恐らくだが、生徒か教師か、最悪入っている外部の業者に、()()…を受けたものだと…」

 

「そう…そうなのね…。それなら…まだ…

 

「なんだ?良く聞こえなかったが…」

 

「いえ、何でもない。まず結論から言うと、ええと、()()行為の症状は()()で確認したけど、無かったわ。養護教諭として、それは間違いない」

 

「…っ、スゥ……!…そうか、不幸中の、幸いと言ったところだろうな…」ギリッ

 

 

努めて怒りを抑える。本人を置いてきぼりで私が感情任せになる訳にはいかない。普段から適当な知恵(コイツ)が冷静でいてくれるおかげで、少し冷静になれた。

それで、と話を続ける前にまた近づいて、耳打ちするような距離で()()が明かされる。

 

 

「えぇと、西園寺さんの実家なんだけど、その…かなり格式を重んじる家みたいで、箱入りの娘さんみたいな…で、撫子ちゃん自身の性知識もかなり程度が浅いみたいなの」

 

「…それは確かに(※水泳事件の際も)感じたが、それが今回の件とどう関係あるんだ?」

 

「…か、彼女には()()()()()()()()()が居るみたいの…!」

 

「なんだと…!?」

 

 

つまり、今回の件が表に出ると西園寺の実家まで巻き込んだ問題に発展すると知恵は危険視しているのだ。それを伝えると、知恵は首をぶんぶんと頷かせ、「そ、そうなのよ〜私もそれが心配で…」と肯定してくる。…何てことだ。

そして、今回の被害については彼女が不審者を敷地内で見たことにして、学校側に警備の強化を依頼すると真剣な顔で告げて来る。

 

 

「そ、それに、西園寺さんは相手のことを知らない人って言っていたし…!彼女、学校の人達の顔はほとんど覚えてるみたいだし、外部の人間の仕業に違いないわ!」

 

「しかしそれでは…彼女の意志はどうなる…!」

 

「それについてだけど、彼女には徐々に私がカウンセリングをする。今すぐに、()()話してしまったら彼女の心が…」

 

「心…」

 

「サエちゃん、西園寺さん今は落ち着いてるけどさっきまでもっと取り乱してたの。…貴女には、心配かけまいと気丈に振る舞ってるけど、きっと辛いと思うの。…だから………」

 

「っ…そうか…そうだな…頼めるか、知恵」

 

「任せて…!」

 

 

知恵と頷き合うと、丁度着替えが終わった西園寺がこちらの様子を伺ってきていたので「すまない、待たせたな。こちらの話は終わった」と言うと申し訳なさそうに謝ろうとするのを慌てて止める。

 

 

「西園寺、謝るのは私の方だ。取り乱してしまい悪かったな…」

 

「いえ、私もごか「西園寺さん、ちょっと良い!?」…わ、星之宮先生…?」

 

 

目で「少し待ってて!」だろうか?そう伝えてるとすぐさまベッドへ西園寺を寝かせて診断をする知恵に、普段とは違う頼もしさを感じる。

やはり、おそらく最初に迅速に救いの手を差し伸べた星之宮だけに言えることもあるのだろう。少しだけ、養護教諭の立場を羨ましく感じるが、頭を振って思考を止める。被害あった西園寺のことを思うと、あまりに不謹慎だと思ったからだ。

 

…待つ間が長く感じ、煙草を恋しく思い思わず貧乏ゆすりをしてしまう。これではいかんと気を引き締めて手鏡を見ると涙の跡でメイクが崩れていた。とりあえずの応急処置をして、不安がらせないようにと表情を確かめる。そうして暫く待っていると、「サエちゃん」と声をかけられる。

 

 

「ごめん、お待たせ」

 

「お待たせ致しました、茶柱先生」

 

「…いいや、何も気にすることは無いぞ」

 

 

知恵の視線から「とりあえず問題ない」と察して、話を再開する。どうやら今度は表面上だけでなく内面のケアも少しはできたのだろう。先程よりは良い顔色をしている。

それでも表情には不安というか、申し訳無さのようなものが浮かんでいるが…。それはもう私達がケアしてやらないと行けない部分だと腹をくくる。

 

 

「お前は何も心配するな。もう決して…いや、なんでもない。私か…頼りにならないかも知れないが、星之宮先生を頼れ。担任の真嶋先生には言い辛いことあるだろうからな」ギュッ

 

「わふ、…先生、少し苦しいです」

 

「あぁ。済まない西園「どうぞ、撫子と呼んでください」…しかし、それ…否、わかった。よろしくな、撫子…」

 

断ろうとすると、シュンとした表情の西…撫子と、首を横に振る知恵が視界に入る。慌てて認めると、嬉しそうな顔とホッとする顔に正解を選べたと安堵する。

 

ーーー今は、ギリギリの所で耐えているのかもしれない。あるいは、全然気にしていないのかも。何れにせよ、彼女がこれからの学校生活を健やかに過ごせるように出来るのかは私達、教師にかかっている。

 

もう、他クラスだとかどうとかは言っていられない。自分を信じて、こうして頼ってくれている生徒のことを私は裏切られない。見捨てられない。

 

西園寺撫子の事は、私が護る。()()()()、私は選んでそう決めた。

 

※その後、抱きしめられた撫子にタバコの香りを指摘され、「お身体を大切になさって下さいね…?」と言われなし崩し的に禁煙を約束することになった。

…代わりにレモンの味の飴を貰ったので、舐めることにする。…意外と美味かった。もうしばらくは、続けてみようと思う。

 

 

 

 




須藤「テスト頑張る」

Dクラス「(誰だお前…)」

掘北「赤点の生徒は私が救ってみせる…!」

綾小路「(どうした掘北…!?)」

櫛田「須藤君…堀北さん…!みんな、がんばろう!(それはそれとして堀北は嫌い。まだ謝ってないじゃん…)」ポチポチ…

ピロン♪

一之瀬「あ、桔梗ちゃんから…(ふーん、まだ撫子に謝ってないんだ)…へぇ…」ハイライトオフ

ーーー

茶柱「私が…護ってみせる!」ギュッ

撫子「茶柱先生…//」トゥンク…

ーーー

?「しゃあ!!乗り切った!!」
※ガッツポーズ。一体、なんの之宮先生なんだ…!?
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