ようこそ(勘違い)大和撫子の学校生活へ 作:エカテリーナ
どうぞどうぞ!
事件明けのその次の日、7月最初のHRが始まった。担任の真嶋先生がその月の各クラスポイントの増減発表する日でもある。頑張りや失敗が結果として明確になる分、その期待は一入だろう。
前口上もそこそこに、早速とばかりに大きな用紙を黒板に公開していく。
A:1054
B:663
C:492
D:87
圧巻の1000ポイント越えである。おおよその部活動は夏から大会や試合を挟むため、この時期は結果に結びつくことが少ない。つまり、
「ふふ…」「…!」「あら…」
喜びの感情を露わにする中、一部の生徒たちは、目先の結果ではなく
「さて、今日から7月が始まる。クラスポイントも1000を超えたが、これは中間のテストを乗り越えたお前たちへのボーナスのようなもの。全てのクラスに100ポイントの付与がされている為、十分留意することだ」
「…真嶋先生、質問があります」
「葛城か。構わない、どうした」
ざわつくクラスを遮るように声を上げ、挙手した葛城は許可の後に質問をする。そう、プライベートポイントが振り込まれない件についてだ。それに頷いて真嶋は説明を再開する。
「その件だが、あるトラブルが発生しており1年生全体の支給が止まっている。解決次第、順次支給される為、申し訳ないが暫く待っていて欲しい」
「…分かりました、ありがとうございます」
少しだけ騒めきを漏らすAクラスだったが、担任の真嶋が退室した後にその声は再燃する。
その騒めきの中には不満や疑問、勝手な予想などが飛び交っていた。
思案気な表情の坂柳は、同じことを考えているのか、普段よりも真剣な表情でいる撫子に矛先を向ける。
「撫子さんはどう思いますか?」
「有栖さん。…申し訳ございません、もう少しだけ、お時間を頂けますか?おそらく明日の内にはお知らせ出来ると思いますので」
「…!なるほど、そういうことでしたか。そうであれば構いません。また話せる時に教えて下さいね?」
「…?ええ、よろしくお願いします」
そのやり取りを見ていたクラスメイトも一端、会話の応酬を収め落ち着きをみせる。
西園寺撫子が事態を知っている=生徒会が絡んでいる。
この時点で、Aクラスには若干弛緩した空気が流れる。Aクラスの三巨頭。その内の1人が事態を掴んでいる以上、問題が起こる事もない。
それだけの信頼と実績を積んでいるのだ、この三人は。
そしてそれは、次の日に当然のように肯定されることになる。
次の日のHR、真嶋先生から伝達がされる。
曰く、『Dクラス生徒とCクラス生徒がトラブルを起こした。このクラスでは西園寺が目撃したが、他に見た生徒はいないか?』との事。
その問い掛けに思わず、という様に注目を集める撫子。さながら、5月初めのHRの時のような注目の集め方で撫子は
その後にいない事が分かるとその結論を後日開かれる審議で決着をつけることを告げてHRを終えた。
「撫子さん、昨日の件はこういうことだったんですね?」
「はい、緘口令がいったん敷かれておりましたのでクラスの皆様にお伝えする事が出来ず…。誠に申し訳ございませんでした…」
「そうだったんだ…」「西園寺さんは悪くないって…!」ざわざわ…
「…西園寺には
「…そうですね。しかし、撫子さんにお怪我が無くて良かったです」
「皆さん…ありがとうございます…!」
その後、他のクラスメイトも心配をされつつ、事件の目撃者だったことを明かした撫子。報告が遅くなったことを詫びた後に仔細を話していく。
話が終わり、一同が難しい表情を浮かべる中でピッと指を立てながら坂柳が「つまりこういうことですね?」と話を纏めにかかる。
「撫子さんは生徒会役員としてではなく、一目撃者として審議に出席をする。その結果をもってして、Cクラスが被害者なのかDクラスが罠にかかったのかを決めると…」
「ふむ…そうなると西園寺は中立的な立場での証言が求められる訳だな」
「えぇ。お二人の言う通りです。ただ…。私には、どうしても…」
言い淀む姿に、一同が怪訝な、あるいは心配げな表情を浮かべ、橋本が「撫子ちゃん、なにか気になるのか?」と声をかける。それに俯きながら、撫子は心情を露わにしていく。
「…どちらに非があるか、見極めが必要だと生徒会長にも言われたのですが…。どうしても私には、あの怪我をしたCクラスの生徒達や、必死に助けようとしていた
「………(少なくとも実際に暴力はあったと…そういうことですか)…撫子さんは、どうしたいのですか?」
「………私は…」
坂柳の質問に言い淀む。憂いを帯びた瞳でこちらを見つめるクラスメイト達に視線を彷徨わせると一歩前に出た葛城が「西園寺、」と声をかける。薄紫色の視線が、そしてクラスメイト達の視線が葛城を貫くが物怖じせずに不敵な笑みを浮かべ、言葉を続ける。
「…お前が思う通りにすれば良い。お前の真摯な態度は、決してCクラスにも、そして俺たちにも不利になることは無い。…俺たちに迷惑がかかることを気にしているなら、そんな事は何も気にするな。お前に何度も助けられている。クラスの、全員がだ。お前から頼られる事を、迷惑に思う奴なんて一人もいないさ」
「葛城君…」
「…そうね、撫子よりも成績が良い奴なんて居ないんだし…アンタはもっと好き勝手して良いと思う」
「そうですよ!西園寺さん」「好きに言ってやってください!」「お姉様頑張って…!」ざわざわ…
「真澄さん…皆さん…」
Aクラスの方針は纏まった。―――西園寺 撫子の好きにさせる。
それは、3つの派閥に分かれたこのクラスで、初めて統一された方針だった。
―――――――――――――――――――
※その日の帰りのHRにて
「…さて、連絡事項は以上…なんだが、西園寺」
「はい、なんでしょうか、真嶋先生?」
「いや…これはお前に権利がある以上、お前が決める事ではあるんだが…」
「…?」
「一応、一応な?クラスの皆にも相談した方がいいんじゃないかと思ってな?あの…クラスポイントの件…」
「!」(ハッとした表情)
「…クラスポイント?」「何の話だ?」「お姉様?」ざわざわ…
「あー、言って良いな?…うむ。先の事件で、西園寺が非常に完璧な応急処置から初期対応、養護教諭への連絡などを行ったことに対して、AとB・Cクラスの担任連名でクラスポイントを与えようとなったんだが…」
「おぉ…!」「マジですか…!」「お姉様…流石です…」ざわざわ…
「だが、西園寺が固辞していてな…生徒会役員として当然のことだと…」
「えぇ…!」「マジですかい…!?」「お姉様…流石です…!」ざわわわわ…!
「おっしゃる通りです。私は、人として当然のことをしただけです。それに対して、ポイントを貰うだなんて…。他の部活動や勉学で結果を得てポイントを貰う方々がいるのに…。勿体ないことです」
「…ッ」グサッ
「……ッ」ズキッ
「………ッ!」ブシャァ
「さ、流石だな西園寺。ただ、ほらクラスポイントは共有財産だ。お前ひとりの意見ではなく、クラス皆の意見を聞いても、良いんじゃないかなあ?って先生は思うぞ?」
「…そ、そうですね、撫子さん。この件は審議が終わってからでも良いのではないでしょうか?まだポイントが振り込まれる前なのですし、…葛城君はどう思いますか?」
「あ、ああ…。俺もそう思うぞ、西園寺。急いで決めることはない。俺たちも一緒に考えるとも」
「…そうですか?でも、「それに西園寺!このポイントは先生方からの感謝の意を伝える側面もある。それを浅慮で断ってしまうのは、その…なんだ。先生方にも少し礼を欠くのではないか?」…!たしかに、そうですね」
「(よくやった葛城!)」「(お前がNo1だ…!)」「(お姉様…流石です…!)」
「では、この件は審議が終わる予定の火曜日、17時までに決めておいてくれ。…先生たちにも申請の手間があるので、17時までに返事をしてくれればいい」
「はい、お時間いただきありがとうございます。確りと考えて、お返事を致しますね」
「そうしてくれ。では、HRは以上だ。日直。号令を(よくやった、葛城…!)」
※この後めちゃくちゃAクラス全員で説得した。
※迷惑云々の発言から舌の根も乾かぬ内の掌返しに、葛城の良心が悲鳴を上げていたが些細な事である。
…クラスポイントは…命より重い…!
―――――――――――――――――――――――
Side.綾小路清隆
「以上だ。昨日、事情を聴取したが須藤の主張と被害を訴えたCクラスの生徒の主張の食い違いがあった為、審議を行う。この中で、件の事件の目撃者はいないか?」
そういって我らが担任の茶柱はクラスを見回す。先月は赤点阻止でポイントをかけたにも拘わらず、一息つく間もなく須藤がトラブルに巻き込まれたらしい。
昨日、こっちの部屋で聞いた話ではCクラスの生徒
「残念だが須藤、目撃者は、
「…の、ようだな」
その後も茶柱からは1週間後の火曜日には結果が出る事、それまでクラスポイントの更新と配布はストップしていること。各クラスでの目撃者を募っていること等共有が為される。残念なことに、このクラスで手を上げる生徒はいない様子だったが。
他クラスにも情報が拡散されたことに憤慨する須藤をそのまま放置して、HRを閉めようとする茶柱に堀北が挙手してそれを阻む。
「…どうした、堀北。お前が目撃者なのか?…それとも、なにかこの件で関係することか?」
「はい、茶柱先生に聞きたいことがあります。先ほど、
「…ああ、その通りだ。居る」
「…!」「マジかよ…!」ざわざわ…!
クラス中の陰鬱な雰囲気が一挙に取り払われる。目撃者がいたのなら、須藤の言い分が合っていれば弁解の余地が生まれるかもしれない。(見た目によらず)気に病んでいた須藤も「先生、誰なんだよ!その目撃者って!」と立ち上がって声を荒げる。
「…先に言っておくが、彼女からは私始め、全ての1年の先生方で聴取をした。しかし、見たのはCクラスの生徒たちが怪我をして倒れている現場のみで、須藤の存在―――まあ加害者というべきか。その存在については見ていない、という事だった」
「な…!」
「…では、須藤君が最初に手を出された被害者かどうかは」
「ああ、分からなかったそうだ」
「クソ…それじゃあ意味ねえじゃねえか…!」ガンッ!
苛立ちから机の椅子を蹴ると、周囲の女子生徒が恐れからビクリと震える。それを横目に高円寺が珍しく「フフ…」と特徴的な笑い声を上げ、周囲の視線を集める。それを不機嫌そうに目を向けるのは、当然だが最も苛立ちを抱えていた須藤だ。
「…なんだよ、高円寺。言いたいことがあるならハッキリ言えってんだ…!」
「いやなに、レッドボーイの発言が予想の斜め下を突き抜けたので思わず笑いが零れてしまっただけさ。いや!誇っていいとも。この高円寺六助を笑わせるとは。親戚一同子々孫々まで後世に語り継ぎたまえ」
「テメェ…「須藤君、落ち着きなさい」…チッ!」
「ごめんなさい、そして真剣に事件の解決を考えてくれて、
「チッ………おう」「…♪」
堀北が仲裁をすると一端の落ち着きを見せるDクラスに、それを何も言わずに見守っている茶柱。
堀北は返事をした後の須藤をじっと見ると、根負けしたのか須藤も腕を組んで席に座る。それをみるとため息を吐き、改めて「茶柱先生、続きをお願いします」と促す。
「うむ。それで、肝心の目撃者だが―――」
「…」
「―――1-A、生徒会役員。
「…っ!」
堀北の表情が苦悶に歪む。声を漏らすことは無かったが、唇を噛んでいるのは横目でも分かった。そして、再びDクラス中が騒めきに支配される。
「生徒会の人?」「ほら、あの巨〇の…」「え、西園寺さんって茶道部の…」ざわざわ…
「先生、重ねて質問です」
その騒めきを切り裂く様に再び挙手をする堀北。それに頷きで先を促すと席を立ち、クラス全員の耳に入るように良く通る声で立場を明確にさせる。
「…先生、彼女は生徒会の生徒です。今回の審議では、どういう…」
「お前の疑問は尤もだ、堀北。…だが今回の審議において彼女は
「………ありがとうございます」
「他に質問は?…ないようだな、それではHRを終える。日直」
起立、礼―――。挨拶の後に素早く教室を立ち去る茶柱。渦中の生徒である須藤も悪態をつきながらも教室を去る。
「―――須藤の件、最悪じゃね?」「ほんと、この前の中間で―――」
鬼の居ぬ間に、とでも言わんばかりに飛び交う悪口に声を上げて静止しにかかる平田と櫛田。その後の流れでDクラスは原因追及の為に団結して目撃者を捜す運びとなる。
中間試験を乗り越えた俺たちに、再び試練が舞い込むのだった。
―――――――
真嶋「俺のAクラスは最強なんだ…!」
葛城「(´・ω・`)…」
有栖「なるほど…そういう事ですか…」
撫子「(龍園君…私、頑張ります…!)」
―――
茶柱「胃が痛い…」
須藤「それでも俺はやってない」
Dクラス「マジかよ須藤って奴サイテーだな!」
綾小路「…(山菜定食…飽きたな…)」ボー
堀北「西園寺…撫子…っ!」ギュゥ…!
読了ありがとうございました!
アンケートも回答お願いします。
感想もあるととっても嬉しいです。
よう実が最近、更新が多くて嬉しいですね!よろしくお願いいたします。
撫子は一人で夏用の水着を選ぼうとしている…!偶然、エンカウントしたのは…!?:(※新しいキャラに会わせたいので、推奨は上ですがもちろんレギュラー陣でもOKです。)番外編で投稿予定。よろしくお願いしますね!
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