ようこそ(勘違い)大和撫子の学校生活へ   作:エカテリーナ

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|д゚)…お待たせしてしまい申し訳ございませんでしたあああああ。



番外②:担任教師狂詩曲

―――〇―――

 

 

Side.星之宮

 

 

「そして一位…Bクラス、314ポイント。―――以上」

 

「「「ワアアァ!!」」」

 

 

砂浜にBクラスの…私の教え子たちの歓声が上がる。真嶋君が自分のクラスを3位っていった時も気がスッとしたけど、それ以上のこの結果にはこみ上げて来るものがある。

…まさかの2位を射止めた佐枝ちゃんのクラスについてはまた別に探ることにするけれど!

 

結果発表後の各クラスの反応は顕著だ。

 

最も優秀であるはずのAクラスはリーダーの葛城君を糾弾している。

…ん~、撫子ちゃんも(いさ)めようとしているのかな?でも他の子たちに捕まって止められないでいるみたい。

 

一之瀬さん率いる ウチの子たち(Bクラス)は皆、喜びを嚙み締めてきゃいきゃい喜んでいる。

何人か感極まって泣いてるのかな?クールな神崎君も柴田君に肩を組まれても、満更でもないみたい。()()()()()()()()()もきっと、喜んでいることでしょう!

 

龍園君(Cクラス)は…あれ?あ、もう船に乗り込んでいってる。

まあ彼のクラスの結果は()()()()()()だろうから、知りたかったのは他のクラスの結果だけだったんだね。

 

Dクラスも、何人かリタイアしているけれど残った子たちで喜び合ってる。なんか佐枝ちゃんも薄っすら笑っていて、貴重な一幕だ。…こっそり写真撮っておこう。

 

 

それにしても今回の試験は波乱万丈というか、歴代でも類を見ないほど契約が結ばれる試験となったみたい。

初試験でもあって、この試験で求められるのはクラス内での結束やクラス単位での戦略を組み立てる能力。

 

―――いうなれば、チュートリアル。かっこ、クラス対抗戦編、だ。

 

その中心となったのは、間違いなく西園寺撫子ちゃんの存在。

 

彼女に頼った葛城君たちAクラス、彼女を利用した龍園君のCクラス、彼女を守ろうとした一之瀬さんたちBクラス。Dクラスも多分、どこかのクラスと連携したんじゃないかな?…そうじゃなければ、リーダーを自力で見抜いたのか。…むむむ、要警戒だね!

 

いやー、それにしても一之瀬さんが龍園君と一緒に契約した時はもうビックリしたね!契約の内容は、簡単に言えば【撫子ちゃん】と【Cクラスのキーカード情報】と【PP】の交換するものだった。

…これは予想(ほぼ確信)だけど、龍園君はAクラスとも契約を結んでる。この試験一つでどれだけ荒稼ぎしたんだろ。

業務端末に記録されている契約書を改めて見て、思わず顔が引き()るのを感じる。

 

―――――――――――――――

 

《契約書》

1.CクラスはBクラスに本試験に全面的な協力をする。当然、Bクラスのリーダーの指名は行わない。

2.CクラスはBクラスにリーダーのキーカードを渡す。

3.BクラスはCクラスにリーダーのキーカードを渡す。

4.Bクラスは200万PPを翌月末までにCクラス代表契約者、龍園翔に振り込む。

5.4が満たされない場合、Cクラスは遅延損害金として不足分に15%を上乗せした金額をBクラスに請求できるものとする。

 

1-C代表契約者 龍園翔

1-B代表契約者 一之瀬帆波

 

―――――――――――――――

 

これの他に、Aクラスとのアレも含めて…龍園君、多分もう一人でならAクラスに行けるくらいのポイントを得られるんじゃないのかな…?史上初の快挙だね!

スマホを仕舞って、私も喜びを共有すべくみんなのもとへ向かう。さ~て、今夜は美味しいお酒が飲めそうね!

 

 

―――〇―――

 

 

Side.坂上

 

※試験中、2日目

 

 

 

「―――坂上!契約だ、立ち会え」

 

「敬語を使いなさい、龍園…!」

 

 

まさかの連日呼び出されるとは。初日の時点からそうでしたが、彼の本領が発揮されるのは喜ぶべきなのでしょうがこの歳で島を歩き回るのはかなり来るものがありますね…。

他の先生方から若干、憐れんだ視線を向けられるも仕事と割り切ってテントから彼の元に向かう。

 

 

「…それで、今度はどのクラスと契約を結ぶのですか?」

 

「クク…Bクラスだ。契約書を用意しろ」

 

「…?…まあ良いでしょう、星之宮先生も、ご同行お願いします」

 

「えー?私も?」「…仕事だ、早く行け」

 

 

その後、三人でCクラスの拠点へ向かう最中に星之宮先生が龍園にどういう契約を結ぶのかと声をかける。

 

 

「ねえねえ龍園君、ウチとどういう契約結ぶのか教えてよ!」

 

「………」

 

「えー?いいじゃない、教えてよー。坂上先生も良いですよね?ね?」

 

「…まあこちらも文章を精査する必要があるのは確かです」

 

「…フン、余計な事は言うなよ」

 

「もちろん!自分のクラスだからって、贔屓はしないわよ~ねぇ?坂上先生」

 

「当然ですね」

 

 

そういって含みを持った視線を向けて来る星之宮先生に毅然と返し、龍園から契約の走り書きを受け取る。…ふむ、つまりこれは…。

 

 

「…一時的な同盟関係の締結、ですか…しかし…」

 

「ええ~?…なんというか、意外ね。条件もそうだけど、なにより…」

 

「一之瀬が良く条件を呑んだ、…そういうことだろ?」

 

「「…」」

 

 

口調は(普段より)柔らかいが、視線で威嚇する様にねめつける龍園に思わず言葉を途切れさせた。

彼が言う通り、一之瀬帆波という生徒は教師の間ではかなり評判が良い模範的な生徒として有名だ。目の前の龍園とは正に対極といっても良いような存在で、更に彼女のクラスとは()()があった。先日の暴力事件より以前、Cクラスからの威力偵察のような活動の一番の被害を受けたクラスだ。出来ればお近づきにはなりたくもないだろう。

 

 

「クク…まあ今回は俺にも運が向いてなぁ。こればっかりはAクラス様に感謝だぜ…!」

 

「…!」

 

「Aクラス?…どういうことなの?」

 

 

上機嫌に前を行く龍園と、それに構う星之宮先生に続きながらやっと得心が行く。

初日からCクラスの拠点にいるAクラスの生徒、西園寺撫子さんがキーマンだったのだと。

 

 

・◇・

 

 

彼女と初めて会話をしたのは4月の放課後、廊下でのことでした。

まだSシステムの事が明るみになく、生徒達が思い思いに過ごしている期間。

 

私の担当するCクラスは平均よりやや下の評価を受けた生徒が所属しており、授業態度もそこそこ悪い状態です。5月を迎えれば今よりはと思うものの、日ごろのストレスと折り合いをつけるには多少の疲労感を身体に与えます。

 

その日、…そう、金曜日でした。私は少しだけ疲れから注意が散漫になっていて、曲がり角で生徒とぶつかってしまったのです。

 

 

「うわっ、とっ…!」

 

「きゃ…っ」

 

 

お互いに持っていたバインダーやら資料やら、床にばら撒いた上で体勢を崩してしまいました。

幸いメガネは落とさずに済んだため、膝を突いたまま正面の生徒に視線を向ける。

 

 

「き、気を付けな…っ!?」

 

「あ…坂上先生、申し訳ございませんでした…!」

 

 

黒。

 

こちらの不注意もありましたが、疲れからかキツイ口調で叱ろうとした私の視線は、ある一点に集中してしまい言葉が途切れます。

尻もちをつく形で床に転んだ彼女の足の付け根から覗かせる黒い下着に、私の脳内は一種のフリーズをしてしまったのです。

 

その頃には生徒や教師、学年を問わず西園寺さんの噂は学校中で耳にしていました。見た目が学生らしからぬ程に発育が良い事や、丁寧な物腰に私自身も好印象を持っていました。

…そんな彼女との接触が、こんな形になるなんて。

 

 

「こちらの不注意で、申し訳ございません…今、拾いますので…」

 

「あ、あぁぁ!、いや!、こちらも、不注意で、見ていなくてすまなかっ…!!」

 

 

巨。

 

慌てて彼女に続き、落としたものを拾おうとするも再び目の前に映る光景から目が離せなくなる。

前屈のような姿勢になって、彼女の胸が強調される形になっている。制服のボタンもはち切れそうに悲鳴を上げている様で、生唾を呑んで凝視してしまった。

 

…不味い。このままでは社会的に死ぬ。生徒の胸や下着を見て興奮したのがバレたら懲戒解雇&逮捕で人生が終了してしまいます。しかし取り繕うにも下腹部に感じる熱を冷ますまでは立ち上がることは出来ない。

 

 

「…(これで全て…ですね♪)坂上先生、どうぞ」

 

「(不味い、今近寄られては…!)あ、あぁ、あり、がとう…ございます」

 

「…先生?」

 

 

不思議そうにこちらを覗き込んで来る彼女から、何とか視線を逸らす。しかし今度は花の香りのようなものまで感じる始末。

 

 

「…私の事は気にせず先に行きなさい」

 

「え?」

 

 

…何を言っているのだ私は。まるで敵を足止めしてこれから死ぬ脇役のようなことを言って。彼女も不思議そうな目でこっちを見ているじゃないか。

何も言わずに前屈みで動かない私に、西園寺さんは何を思ったのか声をかけてきてペタペタと顔を触ってくる。止めなさい、今の私にそれは致命傷です。

 

 

「先生、どこか痛みますか?吐き気などは…?」

 

「ありません。先生は大丈夫です…。少し休めば、直ぐに良くなります」

 

 

だから行きなさい。そういっても彼女はその場を動こうとせずに、こちらの身体を気遣っている。…あ、柔らかい。

…とてもいい娘だ。良い子だが、今だけはその優しさは私を殺す。挙句には救助を呼ぼうとしたのか、スマホを取り出したがそこは流石に手を出して阻止する。

 

 

「止めなさい…!」

 

「っ、先生…?」

 

「誰にも言わないで下さい…!お願いします…!!」

 

「………分かりました」

 

 

恥も外聞もない。最後の真剣(マジ)なお願いでやっと手を止めてくれた彼女に、はぁ、と心からの安堵の息を吐く。

良かった。まさか新学期が始まって1ヶ月も経たずに職を失う事にならなくて…。そう思っていたら、グイッと腕を引かれて体勢を崩す。かと思いきや、体に負荷のかからない様に状態を起こされた。

 

 

「な、なな…!」

 

「では、誰も言いません。私が、保健室まで先生をお連れします…!」

 

 

肩を貸す形で立ち上がった彼女に、口からは言葉にならない声が漏れる。生徒に肩を借りるだとか、クビがどうとか一瞬で頭から消え去るほどの衝撃が私の脳を貫く。

 

むにゅぅっ。

 

そんな音が聞こえたような気すら、する。即ち、()()()()()()

 

 

身長差があるにも関わらず、肩を借りる形で身体を委ねているのだ。巻き込まれた腕と胸元から脇腹にかけて暖かくも柔らかい感触に再びフリーズしてしまう。

思わず咎めようとするが、それより先に()()()()目線を向ける。…ダメだ。更に悪化している。

 

 

「…っ!…っ!(不味い…!気付かれたら…気付かれたら死ぬ…!)」ヨロヨロ…

 

「よいしょ、よいしょ…(坂上先生…無理しててもこちらには気遣って…この学校の先生方はやはり凄いです…♪)」

 

 

その後、私は天国と地獄を同時に感じながらも何とか誰にも会わず保健室に辿り着くことが出来た。

保健室に常駐の星之宮先生が居なかったことも、圧倒的僥倖だ。彼女には礼を言って、口止めも言い含めることに成功した。

…この学校で私自身が退学ならぬ退職へ恐怖したのは、後にも先にもコレが最初で最後だった。

 

 

・◇・

 

 

ふと記憶を遡っていたら目的地のビーチに辿り着いたようだ。そう思って先を見やると、何やら騒ぎになっており、星之宮先生と一緒にその渦中に駆け付ける。

 

 

「どうしたのですか…!」

 

「あ、坂上先生!」

 

「椎名さんが溺れたみたいで、今お姉様が、」

 

「っ、星之宮先生!」「えぇ!」

 

 

Cクラスの椎名ひよりさんが溺れたらしく、人の輪になっている所には彼女が横になっているのだろう。養護教諭の星之宮先生が近づくと、人波を割いて中央に近づく。

するとそこには、椎名さんに救命処置をしている西園寺さんの姿があった。

 

 

「っ、撫子ちゃん!」

 

「ほし、のみや、先生!今、ひより、さん、を、」ドッドッ

 

「分かった…!坂上先生、船に連絡をお願いします!担架と―――」

 

「はい…!」

 

「椎名さん…」「大丈夫よ…大丈夫だよね?」

 

 

いざという時には冷静な彼女の指示に従い、無線で船へと必要な人員と物資を用意する様に伝える。クラスの皆さんも不安そうな表情をしている。指示が終わり、星之宮先生に直ぐに来ることを伝える。

 

 

「星之宮先生、指示は出しました!直ぐに担架が来ます!」

 

「わかり、まし、た!…8、9、10!…撫子ちゃん!」ドッドッ

 

「はい…!ふぅー…!」

 

「…っもう一回1、2、3、…」ドッドッ

 

 

合図とともに西園寺さんが人工呼吸をして、椎名さんの胸元が膨らんだ様に見える。後は出来ることは待つ事以外ない。

皆さんと一緒に見守っていると、数回後の人工呼吸の後、椎名さんは口から水を吐き出し呼吸を取り戻した。

 

 

「っごほ、ごほ…!」ビシャリッ

 

「…ひより!良かった…」ギュッ

 

「―――先生、担架きました!」

 

「こっちです、早く―――」

 

 

なんとか正しい規則で呼吸を取り戻した椎名さんですが、意識が直ぐには戻らなかったので船へと急ぎ搬送して貰う。付き添いには星之宮先生が着いて行ってくれたので、後をお願いして振り返ると、何故か救命の立役者の彼女は両腕を女子生徒達に掴まれて連行?されていく。

 

 

「…木下さん、西園寺さんはどうしたのですか?」

 

「あ~えっと、椎名さんを助けに行ったんですが、一人でこう、颯爽と海に飛び込んだので…」

 

「…不安に思った皆さんに捕まっている、と…」

 

「みたいです。…でも、」

 

 

カッコよかったです…。そう小声で漏らす彼女を見て視線だけで他の生徒も見回すと誰一人として彼女へ負の感情を向けている生徒が居ない。

彼女と直接生活を送ってまだ2日も経っていない。それでも、気難しいCクラスの面々と打ち解けるとは…。

 

 

―――龍園には早めに相談しておく事にしよう。彼女をCクラスに迎える事の有用性を。

 

 

―――〇―――

 

Side.真嶋

 

 

「どういうことだ葛城!」

 

「大丈夫じゃなかったのかよ!?」

 

「………」

 

 

結果発表の後、俺の担任するAクラスで起こったのは悲劇、あるいは喜劇の糾弾だった。

リーダーである葛城は黙ってそれを耐えて受け止めている。

 

そうだ―――賞賛も侮蔑も、責任と共に一身に受け止める。それが、リーダーの役割なのだ。今回の試験では確かに結果は伴わなかった。しかし、これは1学年の1回目の特別試験。ここで躓くことは出来ない。

何より俺は心配はしていない。今回の試験、確かにAクラスは惨敗と言っても良い結果だったろう。それでも、この結果が無意味だったとは思わない。得たものは多い。

 

各員の人間関係、能力や性格。好む相手や得意なこと。それらをつぶさに観察し、これからのクラス対抗戦に活かせればそれでいい。そうすれば、基礎能力で上回るAクラスは間違いなく最強なのだから。

 

 

「―――Aクラスもそろそろ船に戻る様に。結果の反省はまた、各自で行いなさい」

 

「…はい、皆も行くぞ。先生方の邪魔になってしまう。…責めは後で必ず負おう。逃げも隠れもしない」

 

「……チッ」「は、はい…」

 

 

そういった葛城に、不満げな者も苛立っていた者も船へと足を進める。こういう面で葛城の真摯さというか、生真面目な面は強い。今回の試験では生かせなかっただけだ。次の試験では、更にクラスの協力が求められる。その指揮が発揮されるのか、はたまた別の生徒が仕切っていくのか。

 

生徒達には悪いと思っても、少しワクワクしてしまう。何故なら次の試験は、恐らく、彼女が―――

 

 

「あ、あの皆様…私は大丈夫でしたから、もう…ぁ…っ」オロオロ

 

「お姉様~」「ごめんなざいぃ…!」

 

「大丈夫、大丈夫ですから、ね?一緒に戻りましょう?」オロオロ

 

「………」ダラダラ

 

 

―――か、彼女が何とかしてくれる筈だ。…筈だよな?頼んだぞ?西園寺。

そうして俺は、女子生徒を慰めている西園寺やそれを遠巻きに見ている教え子たちに思わずため息を吐くのだった。




読了ありがとうございました。

はい、本当にお待たせしてしまい申し訳ございません。
実は次話も出来ています。見直して投稿するのと、アンケートを出すので次々話は少し時間をください。
また早めに更新できるようにいたしますので、よろしくお願いします。

またこれからも今作をお願いいたします。

船上試験で、撫子は…?

  • 全力全開!!
  • 原作通り!
  • また囚われポジ…?
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