ようこそ(勘違い)大和撫子の学校生活へ   作:エカテリーナ

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続きになります。
本日の深夜にも一つ更新していますので、こちらは本日2つ目になります。
ご覧になる場合はご注意ください。
では、どうぞ。


番外③:ゆびきりとレモン飴。(+仲間外れのクイーン)

―――◇―――

 

無人島試験が終わり、船に戻った私達が最初にしたのは熱いシャワーを浴びる事でした。

…なんだかんだ私は他のクラスにお世話になっていたので身綺麗にはさせて頂いていたのですが、それはそれ。

 

自室に戻り、着替えを掴むと船にあるという大浴場に向かう方が多くいらっしゃいました。私はそれをやんわりと断ると、残念そうな目を向けられましたが気にしない様にと見送ります。

 

浴室でシャワーを浴びて、一人となった個室で髪を乾かします。ほう、と息を吐いてドレッサーの鏡を見ると火照ったのか赤い頬と落ち込んだような表情をした私が映っています。島で言われた言葉が、私の胸に重く突き刺さっている。

 

―――戸塚君の言う通りだ。

私は、今回の試験では期待された結果を出すことが出来なかった。期待して、頼ってくれた皆様に申し訳が立たない。

 

最初に1つ2つ、方針について口を出して後は他のクラスで遊んでいただけ。結果、クラスは3位と他のクラスの後塵を拝すことになってしまった。

葛城君や他の方も直接口にはしていなかったが、失望…されてしまったかも。いいえ、きっとそうなのでしょう。

これまでも好き勝手に動いていて、挙句に集団での試験ではこの結果。誰だって見限りたくなる。

 

…それなのに、次の試験は私に任せるという。それについて否は無い。いいえ、そんな権利はきっとない。これはきっと、有栖さんの気遣いでもあり最後の機会でもある。

葛城君は1人でクラスの不満や意見を纏めながら、傷だらけでも試験に挑んでいた。それなのに、私は…。こんな不甲斐ない結果しか出せない私が、皆様の為に出来る事なんて…。

 

そう自虐的な思考にとらわれていると、部屋の外からノックがする。…クラスメイトも入浴を終えたのだろうか?にしては早い。…忘れ物でもしたのでしょうか?

 

 

「…?はい、ただいま開けますね」ガチャリ

 

「あ、こんにちは、なで…こ…」

 

「…桔梗?」

 

 

そこに居たのは、Dクラスの櫛田桔梗さんだった。思わぬ来客に目を瞬かせていると、何故か彼女もパチパチ、と瞬きをして口を窄めていく。

どうしたのだろうかと首を傾げると、急に彼女が真っ青な顔でこちらを追いやり部屋に入ってきた。

 

 

「き、桔梗?どう「なぁ!撫子、ふ、服!なんで何も着ていないの!?」…あ、」

 

 

言われて気がつく。誰も居ない部屋で、風呂上りだったからか()()()姿()で寛いでしまっていた。その上、そんな姿で来客を迎えるなんて…!

 

 

「桔梗、ごめんなさい…少しぼんやりしていて」

 

「も、もうっ!私じゃなかったら大変だよ…!?男は狼なんだから、もっと自分を大切にしなきゃ!…他には誰か居ないの?」

 

「え?えぇ、今は大浴場の方に…」

 

「…まだ行ったばかり?」

 

「えぇ、そうですよ?」

 

「――――そっか、じゃあ良いか」

 

「…、桔梗?あの…?」

 

 

そういって桔梗は、心配そうな表情をフッと消して、普段二人きりの時の表情になる。そのまま彼女はにじり寄って来る。

疑問を挟む間もなく、こちらの肩を掴んでベッドサイドまで追いやると、ぽすりと押してくる。背中にはベッドの柔らかいシーツの感触を感じるも、目の前に迫ってきた桔梗の視線に全身を貫かれて身動ぎ一つ出来なくなる。

 

つん、とおへその少し上に指を当てられる。思わず声が上がっても彼女は表情も変えず、ゆっくりと指を胸に、首筋に、そして唇まで這わせる。

 

 

「―――ほら、こんなに無防備で。私が()()だったらどうするの?」

 

「…ん」

 

 

本気、というのがどういう事なのか分からなかった。でも、心配をかけてしまったのは彼女の瞳の奥の揺らぎから分かった。馬乗りになっている彼女にそれを詫びようとすると、今度は右手で口を押えられる。上からかけられた力は重くて、抗議のつもりで動かした手は左手で一纏めにされ動かせなくなる。

本気で危害を加えるつもりなら、武道の経験者ではない彼女に押し倒されても簡単に逃れることは出来た。でも、それをしなかったのは彼女のこの行動の意味を。―――真意を、知りたいと思ったからだ。

 

 

「ほら、もう押し倒したよ。裸で、手も口も押えられて抵抗できないね」

 

「……んぅ…」

 

「…もし私が1人じゃなかったら。…アンタを好きにしたいアブナイ奴だったら、っ…だったら…」ポロポロ

 

「………桔梗?」

 

「もっと自分を大切にしなさいよ…!」

 

 

激情を向ける桔梗と、それを見上げる私。

 

顔に当たる雫は、桔梗の瞳からこぼれ落ちている。…泣いている。桔梗が。今まで私に素を見せてくれた、周りに正直になれない彼女が、本心から涙を流していた。気付けば手も口も自由になっている。彼女のそれを(ぬぐ)おうと手を伸ばすと、押し倒されたまま身体を抱きしめられる。

 

 

「きゃっ…?桔梗、どうしたの?」ギュッ

 

「…っ」ギュウゥ…

 

 

表情は見えない。でも、震えているのは分かる。…泣いている幼子には勝てない。どこかで聞いた言葉でも、それは間違いないのだろう。トン、トンと背中を撫でてあげると徐々に震えも収まり、抱きしめる力も弱まる。

落ち着いた頃を見計らって声をかけると、ビクリとした後に小さく「ゴメン…」と謝られた。

 

 

「いいえ…それより、どうしたの?何かあったの?」

 

「…撫子がCクラスに連れてかれたって聞いて…」

 

「私が…?えぇ、確かに先の試験で2日ほど」

 

 

お世話になっていた、そう続けようとした言葉はキッと怒りを剥き出しにした表情に封殺された。曰く、龍園に襲われたらどうするつもりだったのかと。一人で他のクラスに行くだなんて、云々。他のクラスメイトは誰も助けなかったのか云々。

ここまできてようやく得心が行く。つまり彼女は―――

 

 

「―――桔梗は、心配してくれたのですね」

 

「っ、し、心配とか!してないから。…ただアンタが堀北には声をかけたのに私には無いしどういうつもりなのかと思って…

 

「桔梗…?」

 

「何でもない!!」

 

 

プイッと顔を赤くして逸らした彼女にクスクスと笑うと、今更ながらなんで全裸なのかと聞かれ、普段の格好であることを伝えると口をポカンと開き、マジ?と聞いてくる。コクリと頷くと、ガックリと肩を落としてブツブツと何か呟いている。

 

 

…普段は全裸とかどこのセレブだよ。あぁ、でもやっぱり住む世界が違うっていうかでも風呂上りはバスローブとかあっただろ今まで誰も言わなかったのかよてか家ではどうだったの…」ブツブツ

 

「…桔梗?どうしたの?」

 

 

俯いた彼女の前で手を振ると、ガバリと体を起こし、再び肩を掴まれて顔を合わせる。急なことだったので、「ひゃん!」とはしたない声が出てしまった。…恥ずかしい。

 

 

「撫子!」

 

「は、はいっ!」

 

「学校に戻ったら、モールに服!見に行くよ!」

 

「はい!…え?服ですか?」

 

「約束!」

 

「は、はい。…約束、です」

 

 

差し出した小指に、少し赤くなった顔で指を差し出してくる。それに指を重ねながら幼い頃にした歌を呟く。

 

ゆびきりげんまん、嘘ついたら、はり千本、のます。ゆびきった。

 

気付けば彼女が来る前に感じていた憂いは晴れていた。桔梗のお陰だ。そう思いお礼を言うと、照れた表情で速く服を着る様にと叱られてしまう。…現金なものだ。求められたら、それに応えたくなる。私はもう、桔梗とのお買い物を楽しみにしていた。

 

 

※この後めちゃめちゃ桔梗と過ごした!夕飯を一緒に食べたり、明日の予定を相談したりした!

 

 

―――〇―――

 

Side.茶柱

 

日が沈みかけた船上、その劇場で私は教員用に支給されたスマホを見ながらある生徒を待っていた。

スマホに映っているのは今回の試験の結果内容、その詳細データだった。

 

―――――――――――――――――――――

 

Aクラス:合計+65ポイント

3位

 

リタイアペナルティ1回:△30ポイント

物資使用:△5ポイント

スポットの誤利用:△50ポイント

 

リーダー当て/スポット:△150ポイント

 正 解:1回、Cクラス・・・+50ポイント

 不正解:2回、B、Dクラス。=△100ポイント

 逆指名:2回、B、Dが正解。=△100ポイント

 スポットボーナス:無効=0ポイント

 

―――――――――――――――――――――

 

Bクラス:合計+314ポイント

1位

 

リタイアペナルティ1回:△30ポイント

物資使用:△110ポイント

 

リーダー当て/スポット:+154ポイント

 正 解:2回、A、Cクラス・・・+100ポイント

 不正解:0回、=△0ポイント

 逆指名:1回、A、Cが不正解。=△0ポイント

 スポットボーナス:有効=+54ポイント

 

―――――――――――――――――――――

 

Cクラス:合計0ポイント

4位

 

リタイアペナルティ39回:△1170ポイント

物資使用:△300ポイント

 

リーダー当て/スポット:合計△200ポイント

 正 解:0回

 不正解:2回、B、Dクラス。=△100ポイント

 指 名:2回、A、Bが正解。=△100ポイント

 スポットボーナス:無効=0ポイント

 

―――――――――――――――――――――

 

Dクラス:合計+199ポイント

2位

 

リタイアペナルティ2回:△60ポイント

物資使用:△135ポイント

 

リーダー当て/スポット:合計+94ポイント

 正 解:1回、Aクラス・・・+50ポイント

 不正解:0回、=△0ポイント

 逆指名:1回、Aが不正解。=△0ポイント

 スポットボーナス:有効=44ポイント

 

―――――――――――――――――――――

 

 

まさかの2位という好成績。先ほど知恵にも揶揄われたが、今年のDクラスは例年よりスタートが悪かった分、()()()という事だろう。私も笑顔になろうというものだ。

そうして暫くしていると、背後から足音を感じて振り返り、目的の生徒が来たことを確認する。

 

 

「来たか、綾小路」

 

「茶柱先生、一体何の用なんですか?」

 

 

綾小路清隆。入学した時は理事長からの声もあって密かに注目していた生徒だ。今回の試験の成績もコイツが関係…してるな、多分。まあそれより本題の確認が先だろう。

 

 

「実は、先日。夏休みが始まった頃だったか、前だったかに学校に匿名の電話があった」

 

「………」

 

「"綾小路清隆を退学させろ"というものだ」

 

 

私たち以外に誰も居ない劇場。波の音だけが響き、それ以外に何の音もない。一教師と一生徒の間に、痛いほどの沈黙が続く。そうして10秒だろうか、1分だろうか。無言でこちらを見据える綾小路の表情からは何も窺う事が出来ない。

しかし、目を逸らさずに見据えていると根負けしたように「それで、先生はなんと?」とため息交じりに聞いてくる。

 

 

「"そう言ったご相談は引き受けておりません"―――と、言ってやった。直ぐに電話は切られたよ」

 

「―――」

 

「…なんだ、その意外そうな顔は」

 

 

奴にしては真剣な表情だったと思っていたが、今はポカンとした様子でこっちを見ている。

 

 

「………」

 

「………」

 

「………聞かないんですね」

 

「聞いて欲しいのか?」

 

「…いいえ」

 

 

どんな事情があるのかは知らないし、さして興味もない。…実際、西園寺と会うまでの私だったらコイツを利用してAクラスに…なんて思っていたんだろうな。

そう思うと、胸に燻る不快感からタバコを捜してポケットに手をやってしまう。

 

 

「ふん…教師として、()()()()()()をしただけだ」

 

「………ありがとうございます」

 

「………話は以上だ、この件は私しか知らない。特別試験はご苦労だった。これからも励め。…()()()()()()

 

「はい、そうします」

 

 

そういって会場を後にする。綾小路が何かを隠していて、何故この学校に来たのか。理事長は何故、Dクラスへの配属としたのか。分からない事だらけだが、それでも今は私の担任するクラスの一生徒だ。

なら、ほどほどに面倒はみてやるさ。それが、教師の仕事なのだから。

 

ポケットから出てきたレモン味の飴玉を口に放り込みながら、私は船内へと戻っていくのだった。

 

 

―――〇―――

 

Side.坂柳

 

 

『報告は以上だぜ、姫さん』

 

「ふふ、橋本君、ありがとうございます」

 

 

私はショッピングモールにあるカフェで、橋本君からの連絡を受けていた。試験の結果はメールで届いていましたが、どういった経緯で3位と言う結果を招いたのか。

一部、こちらの予定通りに橋本君が妨害工作をかけてくれたのもあり葛城君の影響力は低下を免れないでしょう。

 

集団を纏め上げて1位を獲得したBクラスに、意外なダークホースであるDクラス。今回4位に甘んじたCクラスですが、西園寺さんの件は龍園君の作戦勝ちと言えるでしょう。

 

元々、彼女に依存していたAクラスに与えた精神的ダメージは非常に強かったはず。その反動か、得たクラスポイントは微々たるもの。そしてそれを上回る負債を背負わされましたね。

 

Cクラスに渡すポイントを加味したら成績は3位どころか4位でしょう。実質マイナス130クラスポイント分の結果だ。これで次の試験も惨敗すれば、5月から積み重ねてきたスタートダッシュを投げ捨てることになる。

 

歴代最高のAクラス?なんて滑稽な評価なのでしょう。このままでは、優れていたのはたった一人の西園寺撫子(てんさい)という証明をしてしまう。

 

 

私は電話口の橋本君に、私の陣営の()()()への伝言を頼み、電話を切る。次の相手に電話をかける為に、だ。

数回のコールの後、「もしもし」と憮然とした声で葛城君が電話に出る。

 

 

「葛城君、無人島試験、大変お疲れ様でした」

 

『坂柳か』

 

 

途端、彼の電話向こうから雑音(さわぎごえ)が聞こえるが、努めて気付かない態度で会話を進める。

 

 

「試験の結果は聞きました…。非常に残念な結果になってしまったと」

 

『…全て俺の力不足が招いた結果だ。言い訳はない』

 

「ふふ…潔いのですね」

 

『事実だ』

 

 

何とも張り合いがない。そんな彼のともすれば無気力な声に向こうからはキャンキャンと飼い犬の声が強くなるが、少しすると静かになる。それを見計らって、本題を告げる。

 

 

「ではそんな葛城君にお願いがあるのですが、聞いていますか?」

 

『…橋本から聞いている。しかし、本人の意思は、「そこから先の事は葛城君は気にしなくてもよいでしょう?」…っ』

 

 

割り込ませる様に言葉を刺し、反論を封じる。…葛城君との電話なんて、本番前の確認に過ぎない。()()にかける為には、クラスの総意として動かないと不興を買ってしまうではないですか…。それを葛城君は知ってか知らずか、否定的なのは頂けない。彼にやって貰う事なんてただ一つだけなのに。

 

 

「葛城君のする事はただ一つ。―――次の試験、西園寺撫子さんに全て任せる。その為に、()()()に全面の協力をするようによく言って聞かせて下さい」

 

『………』

 

「貴方がつまらないことを気にしているよりも、彼女に任せた方が良い未来を引き寄せられる。これは、A()()()()()()なのですよ?」

 

『………分かった』

 

「よろしくお願いしますね?」

 

 

では、と言って電話を切る。これで、Aクラスは改めて纏まった。次の試験の結果を持ってすれば、彼女がクラスでの実質的に頂点に立つ。そして、それを導く私は、クラスを支配する。そして、そして()()()…ふふっ。

 

ブルリと身悶えをしてしまう。緊張か、興奮か分からない感情に身を震わせながら、私は電話をかける。

1コール、2コール。3コール。…。

 

 

『…もしもし、有栖さん?』

 

「お久しぶりです、撫子さん。お元気ですか?試験はお疲れ様でした」

 

『いえ…良い結果を得ることが出来ず、申し訳ございませんでした』

 

「内容は聞きましたが、龍園君の作戦勝ちといって良いでしょう。撫子さんが悔やむことはないかと」

 

『しかし、私はAクラスの一員として結果を求められる役割を得ていました。それを…』

 

「ふふ、責任感が強くて素敵だと思います。そんな撫子さんにお願いがあるのですが、橋本君から聞いていませんか?」

 

『…はい』

 

「なら話は早いですね。西園寺撫子さん。」

 

 

―――次の試験、Aクラスは貴女に従います。次の試験の指揮を、よろしくお願いしますね?

その命令(おねがい)の返事を聞いて、私は笑みを深くするのでした。

 




読了ありがとうございました。
続きは現在書いている最中なのですが、なるだけ早く書いていきます。
アンケートや感想も評価もよろしくお願いします。

次回から、やっと船上試験編。お楽しみに!

船上試験で、撫子は…?

  • 全力全開!!
  • 原作通り!
  • また囚われポジ…?
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