ようこそ(勘違い)大和撫子の学校生活へ 作:エカテリーナ
番外・最終編です。
次回からはいよいよ船上試験編です。
アンケートもありがとうございます。ほぼ間違いなく結果①になりそうなので、それで進めていく事になります。
ご期待ください。
それでは、どうぞどうぞ。
―――〇―――
Side.綾小路
「うぉ~!肉だ~!!」「ジュースだ!!」
「お風呂~」「シャワー!」
船に戻るなり、男女問わずに走り出す。
あるものは船上のレストランへ。あるものは自室や浴室へ。
無人島という、文化的とは程遠い生活を送った十代半ばの若者はやっと俗世に戻り己が欲望を解放するのだった。
「…綾小路君は…行かないの?」
「あぁ、佐倉か」
思わず立ち止まっていた俺に声をかけてきたのは、無人島で一緒に行動する事が多かった佐倉愛理だ。彼女の見た目は入学当初とは違い、伊達眼鏡を外して髪を結っている姿は大天使クシダエルに勝るとも劣らない。
…実際、無人島での活動班を決める際にも諸手が上がって男子たちに誘われていたが、堀北のドスの利いた声―――ゴホン、采配で俺や三宅、高円寺などあまり彼女に山っ気のない連中と共に行動した。
…高円寺は(恐らく最速で)島を去ったが、奴の残した情報は俺達の数回分の食糧代を浮かせたのだ。責められはしまい。
閑話休題。
食事はレストランが今は混んでいるだろうし、佐倉には部屋でシャワーを浴びに行く事を伝えると「そっか…」と頷かれる。何か用があったのかと首を傾げると、なんと打ち上げ会をしないかと誘われた。
「…いいのか?」
「うん。試験中は、ほら…。伊吹さんの作戦で男女で険悪になっちゃったけど私も色々一緒にやって楽しかったし、どうかなって」
「俺は構わないが。…他の男子たちに後で刺されそうだな」
「え…?あっ!ふ、二人きりでじゃなくて三宅君も誘って欲しいな!私も波瑠…長谷部さんも誘うから!」
「お、おう…」
急にわたわたと慌てた雰囲気を見せる。…可愛い。少しだけ二人きりでない事を残念に思う気持ちがあるが、会話が途切れたらという不安はこれで解消された。長谷部は2日目から高円寺が抜けた人員の補充で一緒に行動した女子だ。一匹狼な性質だが、会話が嫌いという訳ではなく他と群れるのが少し…という風だった。
(後は本人があっけらかんとした態度で言ってきたが、胸が大きいことを気にしているらしい)
佐倉と別れる間際に、幸村も誘って良いかと聞くと、少しだけ考えた後にOKを出してくれた。長谷部に聞かなくていいのか?と返すと、「幸村君なら…大丈夫だと思うから」と笑顔で言った。
…絶対に山内や池ならOK出さなかったろうな、コレ。
その後、部屋に戻って備え付けの浴室でシャワーを浴びる。じんわり感じていた汗や不快感を熱湯で洗い流し、戻ると同室の幸村が待っていたので打ち上げ会の事を話すと及び腰だったが参加はしてくれるみたいだ。こいつも、無人島での試験を通して思う所があったのかもしれない。
幸村もシャワーを浴びに行き、部屋には俺一人となる。私服に着替えてベッドに横たわると、少しだけ眠気が襲って来る。
「打ち上げ会、か…」
口に出してみると少し楽しみに感じて、寝ているのが勿体無く感じた。シャワーを浴びた幸村と連絡先を交換して、場所が決まったら連絡する旨を伝えて自室を出る。
道中、三宅とも会えたので勧誘再び。OKを貰えたので同じように連絡先を交換して、俺は甲板に出る。
船は既に出港しており、残り1週間ほどのクルージングを再開している。
遠退いていく試験会場を見て、俺は試験であったことを少しだけ意識を向けた。
・◇・
Dクラスの試験の滑り出しは順調とは行かなかった。他のクラスがドンドンと島の中へ消えていくのを尻目に、買う買わないで揉めたり拠点の場所、リーダーの存在などでその度に衝突が絶えなかったからだ。拠点を川に決めてからも篠原を筆頭に女子たちが主張を曲げず男子は肩身の狭い思いをした。…須藤がキレなかったのは間違いなくあの事件の成長あってものだと感じたな。
その後は各自探索をしてスポットや他クラスの動向を探ったり、野生児となった高円寺を捜していたら日が暮れて奴がリタイアしたり(置き土産は有効活用した)。
次の日には顔に殴られた痕のあるCクラス女子―――伊吹が合流。曰く、山内の班が彼女が一人で居た所を保護したらしい。彼女を受け入れるか否かでまた揉めたものの、放っておくことは出来ないと平田の一声。そして櫛田の取り成しもあって彼女の残留が決定する。
申し訳なさそうな表情を浮かべていたが、
夏をエンジョイしているCクラスを見て呆けたが、それよりも案内されたパラソルとビーチチェアのある場所で今度こそ完全にフリーズした。
何とそこにはAクラスの西園寺が居た。…何故か、リードを繋がれて。
Cクラスの王を自称する龍園に囚われているような状態で、堀北が指摘するも彼女自身の意思だという。
その後リードを引かれ、姿勢を崩した彼女に手を差し伸べたが龍園に阻止されてしまう。
目で謝ってくる西園寺を見て、今の俺達に出来ることは無いとその場を去った。…が、その後の堀北の不機嫌さは櫛田も声をかけるのを躊躇する程だった。
3日目、4日目は探索に加わった長谷部とも島を探索しつつ、島での生活に順応出来ていたと思う。小屋のスポットを見つけて、それが確保されていて一喜一憂したり、魚釣りの道具を手にして川釣りに挑戦したりだ。初めてのアウトドアというのだろうか、エンジョイしていた。他のクラスともたまに遭遇したが、Bクラスは楽しそうに、Aクラスはなんというか必死さが見えていて切羽詰まった表情だったのが印象的だった。
…というかAクラスのリーダーを知ることができたのは完全に幸運だった。小屋のスポットが取られていることに意気消沈していたら、なんと更新間際。
隠れて待ち構えているとAクラスの戸塚弥彦という生徒がスポットを丁度更新する場面を見ることができたのだ。一緒にいたクラスメイトも小屋に入れば兎も角、腕組みをして急かしていた。…仲悪いんだろうか。
そして訪れた5日目の朝。篠原(またか…)の声でたたき起こされると、なんとクラスのトップカーストの軽井沢の下着が盗まれたらしい。
犯人は男子に違いないという女子たちに、積み重なっていたフラストレーションが爆発した男子も猛抗議。手荷物検査でも何も見つからず、いよいよ男女の溝は深まるばかりだった。
テントは男女で離し、シャワーも使わせて貰えない。探索は男子にしろと命令してくる篠原にかなりのヘイトが高まったが、ここまでの努力を無駄にする訳にはいかないと平田ではなくまさかの須藤が発言して、クラスの男子を纏めていた。
ブツブツと不満を言う池や山内をゲンコツ一つで黙らせ、明らかにビビっていた篠原に料理を担当する様に取り付けると大きな声で探索班を振り分けて森へと進んでいった。
俺も三宅や、佐倉・長谷部の代わりに入った幸村と一緒に探索に出て、夜も無事食事にありつくことができた。
雰囲気が悪くなった6日目。朝になんと一部の女子が探索に出る事を申し出たのだ。7,8人程だが非常に助かった。天気も悪く、午前中に探索を終え、帰路に就くと山内が全身泥だらけで地に伏していた。…なんでも探索中に転んで泥がつき、怒りのままにそれを投げたら堀北に直撃して爆笑している所を地面になぎ倒されたらしい。
…山内、無茶しやがって。……事情を聞いた須藤が顔を真っ赤にして山内を川に投げ飛ばしてた。…あれ、腹から行ってたな。痛そうだった。
その後は帰ってきた堀北から、リーダー情報を漏らしてしまったことを告白された。またカードキー本体も紛失してしまった事を聞き、伊吹の暗躍が発覚。…上手くすればCクラスの作戦を台無しに出来ると思い平田、櫛田を呼び四者会議を開く。
名付けて、堀北リタイア作戦。…残念ながら3人には最初「何を言っているんだコイツ…」という目で見られたが内容を話すと理解と納得を得られた。
知るべき人員は最小限に抑え、もしも伊吹が気付いても良い様に堀北を深夜の時間にリタイア。リーダーを誤認させる。移動するのは大変そうだったが、後は船でゆっくり休むだけだ。堀北には少しだけ我慢して貰い、作戦は実行された。
最終日の点呼で堀北のリタイアがクラスに周知され、不満の声が上がったがまたもや須藤が「静かにしとけ!」と一喝。それにも負けずに声を上げた幸村には「これも作戦って奴なんじゃねえか?あの責任感が強い堀北が、何にも言わずにリタイアする訳ねえだろ」と返し沈黙。他のメンバー(山内を除く)もそれに同調する雰囲気となり、その後はトラブルなく正午となり試験は終了した。
俺達は2位という優秀な成績を残し、来月の
問題はAとCのポイント。…どういうことだ?Cはまだわかる。あんなに豪遊していたらポイントなんて残る訳がないが、Aクラスが激減している理由はなんだ?
仮に推察通り、物資がCからAに流れていてポイントを保全出来ていたなら、もう少し残存ポイントがあっても不思議ではない。俺の予想よりも100ポイント近く、Aクラスは失っている。
あの時、結果発表のあの場でリーダーである葛城を責め立てる周囲と、それからは遠巻きで女子生徒達に謝り倒されていた西園寺。恐らく、あの二人が何かの切っ掛けを担ったのだろうか。
Aクラスは、内紛状態だと櫛田が言っていたがその対抗馬の生徒は欠席しているらしい。
そいつが関わっているんだとしたら、欠席でも自分の陣営に影響を及ぼせるのは…流石Aクラス生なんだろうな。
俺は西園寺とチラリと目があった気がしたが、会話できる雰囲気ではなかった為、皆に続き船に戻ったのだった。
・◇・
物思いにふけっていたら、メールで茶柱に呼び出され、俺の事情絡みの用件を告げられた。
ま、なにはともあれ、無事に無人島試験は終わって、これからは普通の学生
俺は気持ち軽くなった足取りで佐倉から届いたメールの店を探すのだった。
※このあとめちゃめちゃ打ち上げをした!
長谷部から各々にあだ名をつけられた!(幸村以外は)満更でもなかった!
―――〇―――
Side.神室
「里中君、竹本君。この紙に書いたことを坂上先生に聞きに行ってください。ポイントは…里中君、立替出来ますか?…お願いしますね」
「清水君、谷原さんは茶柱先生にこれを」「澤田さん、西川さん。Dクラスの―――」
「司城君、吉田君、山村さんは坂上先生にこのリストの確認をお願いします」「的場君、葛城君、鬼頭君はそれぞれ―――」
「あ、島羽君は戸塚君が戻り次第、澤田さん達と一緒に向かって下さい。一緒に彼の探索をお願います」「それから―――」
「………( ゚д゚)」
「………(゜д゚)」
目の前で起こっている光景を、橋本と一緒に棒立ちで見ている。横目で見ると普段の軽薄な笑みでなく間抜けそうな顔をしているけど、多分…いえ、間違いなく私も似たような表情を浮かべているに違いない。
それほどまでに、普段の
・◇・
時間は遡って5分前。
試験が終わり三日目、案の定メールアナウンスと共に第二の試験が幕を開けた。
時間ごとに試験の案内があったものの、最初に入った奴が機転を利かせてスマホの通話をオンにしたまま入室して、それを首脳陣のグループ通話にて共有したのだ。
…Dクラスの茶柱先生の説明を聞くに、人狼ゲームに似たような犯人を見つける為の試験みたい。
それに加えて特定の法則があるとの事。部屋のメンバーが思案気に首を傾げる中、部屋の中でひとり立ち上がった撫子に注目が集まる。
「どうした、西園寺」
「葛城君…いいえ、皆様。改めて確認したいのですが、今回の試験は私にお任せ頂いてよろしいでしょうか」
…とても真剣な表情。聞いているこちらが緊張してしまうほど、撫子は真摯な面持ちで告げた。その後、ピンとした緊張の糸を切ったのは軽薄な声で笑う橋本だった(こういう時はホント役に立つ奴だ)。
「は、ははっ!緊張しなくっても撫子ちゃん、最初から
「…っうん!」「そうだよ!」ザワザワ
「………」チラリ 「…っ……」チラッ
同調する様に、
同意した声も徐々に沈み、連中を見る私達と奴らで沈黙が戻る。…ちょうど戸塚が説明を聞きに部屋に居なくて良かったと思う。アイツが居たら余計な事を言って、余計に話が拗れる未来しかないし。
「……葛城、君…」
「……………………西園寺。頼んだぞ」
「…っ、はい!」
随分と長い沈黙の後、葛城が俯き加減にそう言った。それに、コクリと頷き返す撫子に、部屋中の空気が弛緩したのを感じる。
そうして、部屋の皆が拍手をして、撫子が丁寧にお辞儀を返したと思ったら―――、
「では皆様―――始めましょう」
―――撫子は、見た事のない程にテキパキと指示を出し始めた。
※この後めちゃめちゃ指示を飛ばされた。不満を言いそうな葛城派の奴らも、普段と違った撫子にタジタジだった。
読了ありがとうございました。
次回はほぼ間違いなく原作結果からの乖離が強くなるかと思います。
それでも目指すのは優しい世界と、多分の勘違いと、ちょっぴりの曇らせなのでご期待下さい。
それでは、次回もお楽しみに。
感想・高評価が意欲とやる気に繋がりますので是非是非お待ちしております!!
船上試験で、撫子は…?
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全力全開!!
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原作通り!
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また囚われポジ…?