ようこそ(勘違い)大和撫子の学校生活へ   作:エカテリーナ

49 / 110
お疲れ様です。
船上試験、スタートです。

どうぞどうぞ。
そして感想待ってます!(直球)


特別試験編~船上試験~
①:船上、戦場、僭上。


 

 

―――生徒の皆さんにご連絡いたします。まもなく、()()()()()()()()()()()()―――。

 

「特別試験…」

 

 

館内になるアナウンスと、振動と共に着信を知らせるスマホ。ベッドから立ち上がり、衣服を身に纏う。同室の方の理解は得られたので、リラックスしている時。そして部屋に他の人が居ない時は()()()()()を許してもらえることになりました。…何故か顔を真っ赤にしていましたが、…?

 

そうして身支度を整えていると、追って知らせる着信音が。チラリと目を向けると葛城君からのメッセージでした。

内容は、〇〇時に指定の部屋に来て欲しいという事でした。恐らく、試験についての相談でしょう。

 

そうして、私達Aクラスにとって2度目の特別試験の幕は開いたのでした。

 

 

・◇・

 

 

「失礼いたします」

 

「…来たか、西園寺。…呼び立ててしまってすまない」

 

「いえ、それで『それでは、これでは試験の説明を始める―――』…これは」

 

 

葛城君にお招き頂いた部屋には、私以外の大半のAクラスの皆様が既にいらっしゃいました。視線を集めて緊張から固まってしまいましたが、葛城君の目の前のスマホから聞こえる音声に気を取り直します。

かけてくれ、と葛城君の目の前のスマホから流れ出る音声を聞く為、私は速やかに葛城君の横に失礼します。

 

 

「こちらよろしいですか?」ボソッ

 

「あ、あぁ…構わない」チラッ

 

「……チッ」「…ブツブツ…」

 

 

試験の説明については、各々が別々の時間に呼び出されてそこで聞くことになっています。私は葛城君、橋本君と一緒の時間です。しかし、恐らくこの通話中の相手のスマホから流れる音声は少しくぐもっていますが茶柱先生のもの。

すなわち、これは先んじて情報を周知する為の葛城君の作戦なのでしょう。とっても助かります。

 

 

そうして説明が終わり、数分もすると今回の試験の全貌がみえてくる。仮題、十二支試験とでも呼びましょうか。

 

4つの結果―――。

全員の正解による『協力』

 

沈黙による優待者の『勝利』

 

優待者を見破った方による『裏切り』

 

指名の結果、優待者を誤る『失敗』

 

 

どんな結果になるにしろ、厳正な抽選という優待者を決める法則を見極める必要がありますね。…ただ、易々と答えに辿り着けるとは思えません。最大で、単独450CPを1つのクラスが得る可能性がある試験。恐らく1クラスでは()に辿り着けない可能性もあります。まだまだ情報が足りません。…集中しませんと。

 

 

「…こちらからの音声はミュートになっている。が、メンバーの名前は早めに纏めたいな」

 

「あ、じゃあ俺メモするよ」「私も手伝うね」

 

「頼む。…次に説明を聞きに行くメンバーは誰だ?」

 

「あ、私です―――」

 

 

「―――」「―――」

 

「………」

 

 

皆様の声が遠く聞こえる。

 

返事をする余裕もない。

 

 

思考を、深く。深く沈めていく。もっと。もっと深く…。

 

考える。考える。考える考考考考考―――。

 

―――学籍番号、男女比、クラスの人数、視力、誕生日、血液型、星座、干支、名前の50音順、名前の画数、前回の試験の点数、クラスの平均数、担任教師の年齢、プライベートポイントの多寡、クラスポイントの増減、Sシステムの根幹となる数値は確認困難でしょうか?なら身体能力、部活への参加者数、授業態度、社会貢献度、連絡先の多さ、利用ポイント数、遅刻欠席数、クラスの関係値、他クラスとの関係値、買い物の回数、前試験のリーダー、リタイア者、教えられる情報の齟齬、この時点で解ける法則?担任の真嶋先生なら、坂上先生なら?茶柱先生、星之宮先生は?グループへの参加人数?いや、クラスごとの認識を一度やめるとは?グループで纏まって考える、その生徒が個人の深い情報を得るのは困難?なら友人とは離されるのも法則に入る?試験は解けるから試験なのだ。情報量に関係なくこの試験は答えが出るのが前提だ。では、どう動くのが最善か?

 

―――ポイントを使う?

 

そうだ、この学校ではポイントを使えば買えないものはないという。試験の過去問や罰則、仲裁や示談でも使うことが出来た。調査をする場合にはポイントを使えばいいのでは?ならそれを把握している教員の方々に聞けばヒントになるかもしれません。…この程度の事は過去にもあったはず。故に説明の時間が間隔で開いているのかもしれません。だったら人海戦術で皆様に動いて頂ければ…。私のポイントはたしか100万ppを少し超えるくらいの筈。欲しい情報は全て聞くことは出来るでしょうか…?人数分?全クラスで160人…Aクラスを除いて120人、1項目1000ポイントとして12万pp、8つが限界と見積もりましょう。今聞いたこのアナウンスが第1回なら、あと11回あるはず。説明は凡そ10分ほどで終わった後、質疑応答の5分で計15分から20分程。30分周期で説明に呼ばれているなら隙間時間の10分間が勝負…ですね。

 

 

「―――」

 

 

ガタリ、と音を立てて席を立つ。皆様の注目を集めてしまったのを申し訳なく思いますが、仮説の確認の為にはあまり時間もございません。葛城君や皆様に同意を得て、Aクラスの今試験のリーダーを拝命します。

 

意思を統一する為に、動き出す為に、今度こそ―――

 

 

「では皆様―――始めましょう」

 

 

今度こそ、皆様(Aクラス)の役に立たなくては…!

 

 

―――〇―――

Side.真嶋

 

ヴヴヴ…。

 

「………はあ」

 

 

目の前のスマホが放つ振動音に、思わずため息がつく。この数時間でもう5回は鳴っただろうか。ため息交じりにもなるが、緊急の場合は出なければ不味い。()()()()()と思い通話ボタンを押すと、予想通りの相手だ。

 

 

『ちょっと、真嶋君!またそっちの生徒が―――「生徒からの要望には、可能な限り迅速に応えるように。以上だ」―あ、ちょ―――』ブチッ

 

 

そうして、3()()()の星之宮からの連絡(なきごと)に迅速に応え、自分の手も動かす。…無人島試験の終わりに応援した手前、そして担任としても断ることはない。ないのだが………あまりにも動き出しが早すぎないか?葛城…ではないだろうな。

 

 

現在、俺達は船上試験での説明に生徒達を呼び出していた。合計12回、全く同じ説明をするのは大変だが、これも業務だ。文句は言えまい。

問題…まあ見方によっては嬉しい悲鳴と言うべきなのだろうが。発端はAクラスの生徒達からの質問だ。…それも、試験の為の確認なら応えるべきだろう。

しかし、質問してきたのは試験説明のその場ではなく、また直接試験とは関係が無いものだった。

 

『―――真嶋先生!Bクラスの生徒の血液型を教えて下さい!』『先生!Dクラスの生徒の―――』『真嶋先生、Cクラスの生徒のプライベートポイントの情報は―――』

 

試験の説明をDクラスの生徒にして、彼らが退室の為にドアを開けた途端彼らは流れ込んできた。

開け放たれたドアからDクラスの生徒が『なんだなんだ』と騒ぎ、見ているのも気にも留めず、教え子たちはポイントを支払ってあらゆる情報を得ようとしていた。

 

試験の説明があることを伝えても、次の組の案内まで時間があると言って引こうとしない。ミスリードであることを理解しつつも、情報とポイントの交換をしていく。

 

ここまでなら、何も問題なかった。だが、それも2回、3回と繰り返されると話が変わる。しかも()()()()()()()Aクラスの生徒達が質問に押しかけて来ていると、教員用のメッセージグループに何件も報告が来ている。

 

 

そして現在。

説明を終えて生徒を見送りに廊下に出ると、10人以上のAクラス生徒が今か今かと教師達を待っているのが見て取れる。

都合、7()()()の質問攻めには思わずため息を着いてしまうが、教師として断る事も出来ない。

他にもチラホラ他のクラスの生徒も警戒をしているが、行動に移しているのはAクラスの生徒のみの様だ。

 

8回目の説明が始まるまでの間、俺は部屋に来た教え子たちの質問に忙殺されるのだった。

 

 

―――〇―――

Side.龍園

 

 

「おい、お前ら……Aクラスが何だって?」

 

「だ、だから龍園さん!なんかAクラスの連中が先生たちに詰め寄せてて…なぁ?」

 

「そ、そうです!なんか、2,3人で先生たちに張り込んで質問攻めにしてるんです!」

 

 

船内のサロンの一室。始まった試験の説明を、先に聞いた連中から聞いて金田や椎名、他にもバカ以外の連中で考えてる最中にバカ共が飛び込んできた。

考える頭のねえ奴(バカ)にも出来る仕事―――他のクラスの連中の監視を任せていたが、言ってることの要領を得ない。

舌打ちをすると青い顔をする連中に、金田が間に入って情報を吐かせた。

 

 

「すいません、実際に何を聞いていたか分かりますか?」

 

「え?あ、あぁ…確か"Dクラスの生徒の血液型"とか、Bクラスの生徒の誕生日とか…だよな?」

 

「そう!…あ、"生徒の持っているプライベートポイント残高"の情報は断られてたぜ?」

 

「そうですか…龍園氏、これは…」

 

「あぁ…間違いねえ」

 

 

金田の言う事は分かる。Aクラスがしているのは情報収集だ。ただ、動き出しがとんでもなく()()のが気になるとこだが…。

考え込んでいると同じようにひよりも俯いて思案している様子だ。他の…まあバカ共は金田に説明を受けてようやく理解を始めてやがる。

 

チッ…。まあコイツ等の役割には要らねえ能力だが、それでも地頭の良し悪しが競う試験が今後ないとも限らねえ。

 

 

―――龍園、これは独り言だが…。Aクラスに上がるのと同じように、2000万PPがあれば他クラスへの移籍は出来る。西園寺さんみたいな生徒が居れば、君たちのクラスの成績も上がると思うのだがね…。

 

 

坂上からの露骨な助言(アドバイス)を鼻で嗤ってやったが、こっちの能力不足は事実だ。…ただ、それでも勝負に負けてやる気は一切ねえがな。

 

説明を聞いて戻ってきた奴らに、グループのメンバーの名前を書き出させるように指示をして席を立つ。次は俺のグループの説明時間だ。

…ククク、次の獲物共の顔でも見に行ってやるとするか。

 

 

・◇・

 

 

指定された部屋に向かうと、次の時間の組。恐らく俺達と同じグループの連中が小競り合いをしていた。…島での試験、契約を結んだAクラスの葛城(金ズル)、奴らから奪った()()をネタに、200万を寄越す契約を結んだ一之瀬帆波。…最後に、暴力事件で活躍したDクラスの中じゃ少しは楽しめそうな堀北鈴音。

 

…クク、話してるのは島でAクラスが3位になってたことか。そりゃあ言えねえよなぁ。自信満々に試験に挑んでおいて、カモにされてちゃ笑い話にもならねえ。

俺も話の渦中に入って少しばかり揶揄ってやってやる。葛城や鈴音の反応を嘲笑っていると、珍しく最後にやってきた西園寺に注目が集まる。

 

 

「撫子…!」「…っ(お姉様…!)」

 

「西園寺、来たか…。…?」

 

「クク、随分と遅れての登場とは、流石Aクラスは―――」

 

 

余裕じゃねえか、そう続けようとしたらポスン、と胸元に衝撃を感じる。…あ?

 

 

「な…」

 

「…おい、何のつもりだ?」

 

「…?ふぇ…?」キョトン

 

「な、な、な…!にゃあああ!?」「っ龍園君!今すぐ西園寺さんから離れなさい!」

 

 

コイツ、前を見ていなかったのか?俺にぶつかっても、何が起きたか分からねえような(ツラ)で見上げてきた西園寺と目が合う。

慰謝料代わりに乳でも揉んでやろうと肩に手を置くと、飛び込んできた一之瀬に西園寺を搔っ攫われる。てかコイツ人気だな。Dとも面識があんのか。鈴音も櫛田もこっち睨んでやがる。

 

 

「え?あの、あ―――「撫子(にゃでこ)!?ちゃんと前見ないと危ないでしょ!?」あ、でも「男は狼って、昨日いったばかりだよね…?ちょっと、危機感ていうか…ほら、ね?」あぅ…」

 

「………」

 

「ククク…なんだ、加わり損ねたのか?俺が構ってやろうか?鈴音」

 

「…結構よ。後、名前で呼ばないで頂戴。とても不愉快に感じるわ」

 

 

廊下でワイワイやってると、指定された部屋からAクラスの連中が2,3人出て来る。それも俺らの呼ばれた部屋以外からも。Bクラスは驚いてねえ。情報共有されてんのか。訝しんでんのはDクラスだけだな。

 

 

「…西川か。もう入って構わないのか?」

 

「葛城君。…ええ、もう時間だからって出されただけだから。行ってらっしゃい」

 

 

そういって葛城と橋本、西園寺は部屋に消える。…最後まで分からねえ態度だったな。

 

…俺達の入る部屋からもAクラスの連中が出て来て入るように声をかけられるが、声をかけてきたそいつの肩に腕を回して()()で質問をしてやる。

 

 

「よぉ、…チョロチョロ動いてるみたいだが何の話だ?」

 

「ひっ、なんだお前…!なんだって良いだろっ!?」

 

「そういうなよ…お前が素直に応えりゃ済む話だ。…なんだ?言えねえことなのか?」

 

 

口をモゴモゴとさせるが言葉になっていない。キョロキョロと視線を逸らすが、笑顔で視線を合わせてやる。…笑顔ってのはコミュニケーションに必須だからな。

…シレっとしてるが、BもDも部屋に入らずこっちを見てやがる。都合のいい事だな。他のAクラスの連中が助けもせずにその場を去ると、諦めたのかポツポツと話し始める。

 

 

「…お、俺が聞いたのは他のクラスの生徒の身長と体重だ…」

 

「あ?」

 

「……ほ、本当だ!」

 

「…どういうことだ?そんなもんが何の役に立つんだ?てめえのキモい性癖か?」

 

「…」「…」

 

「い、いや!違う違う!!そういう指示なんだって!」

 

 

女子共の視線に耐えられなくなったのか、ペラペラと唄い出した。なんでも西園寺からの指示で動いてるらしいが、あまりにも露骨だ。フェイクも織り交ぜてんだろう。…ククク、お手並み拝見と行くか。

 

 

「フン…まあいい、用済みだ。行って良いぞ」

 

「っ…」ダッ…!

 

「龍園君」

 

 

そういってCクラスの指定の部屋に入ろうとすると、後ろから一之瀬に呼び止められる。視線だけ向けてやると、珍しく不敵な顔を向けてきている。

 

 

「撫子の作戦…君は何か、気が付いたのかな?」

 

「クク、さあな。…これからそれを相談する時間はいくらでもあるだろうし、()()()()()はこれからに取っておけよ」

 

「…ふーん、それもそうだね」

 

「………あなたには負けないわ」「………」

 

 

一之瀬だけじゃない。鈴音もこっちに宣戦布告じみた事を言ってきた。…なんだなんだ、退屈させねえじゃねえか。

特別試験の第二幕。どんな試験だろうと構いはしねえさ、…最後に勝つのは―――俺だ。

 

 

 

 

・・

 

 

・・・

 

 

 

―――数時間後。

 

集められた俺たちは、随分早くに訪れた攻撃に頭をフル回転させている。それは一之瀬も、鈴音も、そして俺もそうだ。

そして、その口火を切った西園寺には部屋の人間全ての視線が集中している。

 

 

 

「………あの、撫子…本気なの?」

 

「はい、本気です」

 

「………えっと、撫子ちゃん…少し難しいと思うな」

 

「この場の皆様のお力添えがあれば、能います」

 

「………チッ、おい西園寺」

 

「はい、なんですか?龍園君」

 

 

部屋中の奴らは言葉に詰まって役に立たねえ。…いや、何を言うべきか迷っている。そうみるべきだ。()()()俺は直接口を開く。ただ、周りの連中の態度も仕方ねえと内心感じてる俺もいる。…それだけ、奴の口から出た要求が()()()てたからだ。

 

 

「―――正気か?そんな要求、俺達が認めるとでも?」

 

「…要求………はい、きっと皆様なら。…クラスを大切に想う皆様なら、お認めになると。…そう思います」

 

 

神妙な面持ちで返してくる奴に、()()で言っていると理解して思わず舌打ちが漏れる。デカい地蔵と化した葛城が不安そうに見やると、西園寺が再び口を開く。

 

 

「僭越ながら、いま一度、皆様にお願い申し上げます―――」

 

 

―――私たちの作戦。全クラス結果①作戦に協力して下さい。それが叶わない場合、全てのクラスの優待者を明日の朝8時、お話し合いの()に指名させて頂き、試験を終了させて頂きます。

 

 

他のやつがやれば慇懃無礼にも思えるが、西園寺にそんな色はねえ。だがそれは、大半の奴らには死刑宣告に等しい沙汰だった。

 

だが俺の胸中に去来するのは恐怖ではなく、諦観でもなく、ある種の歓喜だった。

 

 

「ククッ…」

 

「………」

 

 

改めて俺は理解する。―――西園寺撫子。こいつは、最高の…極上の獲物(てき)なのだと。




読了ありがとうございました。
撫子の作戦は、予想通りでしたでしょうか?

詳細はまた次回、お楽しみに!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。