ようこそ(勘違い)大和撫子の学校生活へ   作:エカテリーナ

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更新しました…。また番外編ですいません。
絶賛、スランプ中です。

実は番外編を5~6話書こうとしたら割とパンクしそうで
息抜きに書いたコレが完成するという。

エタるつもりはないのですが、今暫し時間をください。

今回はDクラス編。またIFの世界をお楽しみいただければを思います。
※最後の坂柳視点、若干?曇らせというか差別的な内容があるので、不快感を覚えた方はブラウザバックをお願いいたします!!

それではどうぞ


【番外編】IF:西園寺撫子がDクラスだったら?

もし、撫子がDクラス所属だったら?

 

・5月1日のHR

 

「お前達は不良品と評価されながらも、例年とは()()違うようだな。…これが、たった一人の献身によるものではない事を、私も担任として祈るとしよう」

 

 

そういってホワイトボードに張り出したA1サイズの用紙には、各クラスとその横にあるポイントがあった。

 

Aクラス:940cl

Bクラス:650cl

Cクラス:490cl

Dクラス:666cl

 

騒めくクラスだが、それもピタリと収まる。ニヤリと擬音が聞こえるような笑みを浮かべる茶柱だが、その視線の先にはスッと伸びた挙手がある。

 

最前列、中央。教壇の目の前に座すその生徒は、たった1週間でクラス内の雰囲気を、態度を、ルールを制定した。その彼女の一挙手一投足に、もはやクラスの信者(せいと)達は有無を挟まない。否、()()()()

 

 

「先生、質問をお許し頂けますでしょうか?」

 

「ふふ…認めよう、西園寺。何が聞きたい?」

 

「このクラス毎にあるしーえるというのは、クラス毎の成績という認識で、相違ございませんか?またこの成績は、4月の授業態度から評価された、個人でなくクラス全体の累積…ということでしょうか?」

 

「―――」

 

 

今度こそ、堪えきれないとばかりに笑い声を漏らす担任に、生徒達は不安げに。あるいは驚き、恐怖、緊張。そして畏怖を込めて二人のやり取りを注視する。

そうして肯定される、クラス間での闘争。社会の縮図としてこの学校は頂点を目指して40人一丸となって相争う。

Sシステムの真実、Aクラスの特典、そしてクラスの()()。目まぐるしく増える情報量に、メモを取る生徒が()()いた。

 

 

「―――つまり、本日よりお前達はDクラスではなくBクラスとなる。所詮、Aクラスの次に、優秀な生徒として学校に評価された訳だ。―――どうだ?嬉しいか?」

 

「………っ」

 

「…!」

 

「…(普段なら歓声でも上がると思ったが…)…?」

 

 

何時もの態度で挑発気味な言葉を発する茶柱だが、生徒からのレスポンスがない。それを疑問に思っているが、HRの終わりの時間は近づいている。その他、小テストの事や赤点で退学になること等、伝えることは多々あった。

恙無く、そして包み隠さず全てを伝えても、生徒からの反応は薄い。否、驚くような反応はあっても、それを口にすることはなかった。

不思議に思いながらも、HRを終えると告げて教室を去る。

 

―――そして扉を閉めた瞬間、それが震えるような歓声が上がった。

 

「「「ワアアアアアアア!!!!」」」

 

「っな…」

 

 

ビクリと、茶柱は驚きに震えた。その声量は、2つ隣のBクラスまで響き渡り、職員室で()Cクラス・Bクラスの担任に苦情を入れられることになるのだが、茶柱はまだ知らない。

 

 

―――〇―――

Side.櫛田

 

目の前で起こっているのは、まるでお祭り騒ぎのような狂騒だ。

起こしたのは、クラスの皆に囲まれている女子生徒。西園寺撫子。

 

「あ、あの、皆様…」

 

「西園寺さんのお陰だよー!」「本当だった!!ありがとー!!」「俺達Bクラスだってよ!?凄くね!?」「この勢いでAクラスになってやろうぜ!?」「いや、それでもAクラスは940cl、油断する訳には―――」「幸村君、そうだね。じゃあまずはテストの勉強会とかから―――」「平田君がやるの?じゃあ私も!」「私も!」「お、俺は西園寺ちゃんがやるなら…!!」

 

 

男子も女子も関係なく、今日の結果にバカみたいに喜んでいた。そんな皆の中心にいるアイツは、それに一人一人丁寧に返事を返していて、男どもは鼻の下を伸ばして。女子も顔を赤くして口々にアイツを称えていた。

 

…嫉妬。嫌悪。そして羨望。

本当は、私がそこに居たかった。中学の時に失敗した私の、私だけの…。

 

そうしてクラスが少し落ち着くと、西園寺は教壇に立って手を上げる。それだけでシン…とクラス中が静かになって、西園寺からの命令(おねがい)を待っていた。

 

 

「皆様、まずは4月からのご協力、ありがとうございました。…私たちのclをこれだけ残せたのは、皆様の尽力の賜物です」

 

 

そういって頭を下げると、クラス中から拍手と歓声が上がった。私も、周りに合わせる為に拍手するけど、一部の生徒。…長谷部さんや堀北さん、高円寺君はそれを見ているだけみたい。

 

その後、西園寺は命令(おねがい)をしていった。

幸村君には勉強会の為のテストの問題を、私や平田君には参加メンバーの取り纏めと日にちの相談を。

点数がヤバい須藤君にも「須藤君が率先して参加して、勉強会を引っ張っていって下さい」と言って、顔を真っ赤にした彼は「任せろ!」と池君や山内君の背中をバシバシ叩いていた。

 

 

ホント、的確で、ムカつく。

今日、たったひとつだけ溜飲が下がった出来事があった。西園寺が堀北に声をかけたのに、そっけない態度を取られていた事だ。そんな堀北にクラス中が口々に不満を吐いている様に、少しだけ喜びを感じるのだった。

 

 

「ホント、何様なんだろうね」「せっかく西園寺さんが声をかけたのに…」

 

「皆様」

 

 

不満を口にした生徒…軽井沢さんと、佐藤さんに近づくとギュッと二人を抱き着く。顔を真っ赤にした二人(プラス周囲の女子)にささやく様に、続ける。

 

 

「堀北さんの事は私に任せて下さい♪」

 

「…さ、西園寺さんがいうなら…ねえ?」「う…うん」

 

「ありがとうございます、では、本日は―――」

 

 

そういって剣呑な雰囲気を一蹴すると、クラスに命令(しじ)を出して教室から去っていった。

…いくら西園寺でも、あの孤高()のコミュ障である堀北に勝てる訳ない。私はそんな暗い思いを抱いて、勉強会のメンバーとスケジュール調整に励むことにした。

そう、私の理想の学園ライフは、ここからなんだから!

 

 

そう思ってたんだけど………次の日、眼を疑った。

 

 

「…鈴音、教室に着きましたよ♪」

 

「えぇ、…帰りも…その、」

 

「はい、一緒です♪」

 

 

誰だお前。

 

 

昨日は「私には関係ないことよ」キリッ …とか「勉強会に興味なんてない」ファサッ… とか言ってただろ。なに懐柔されてるんだ。なに、顔を赤くして手を繋いでるんだよ。見ろよ、隣の綾小路君の顔。いつも何考えてるか分かんない顔だけど、今日だけはお前を別人か何かかと疑ってる目をしてるぞ。

 

クラス中も変にざわついて、堀北と西園寺の事を交互に見てる。結局HRの鈴の音が聞こえるまで、クラス中の話題は二人の関係について一色だった。

 

―――そう、悶々とした思いを感じていた私はまだ知らない。

この後の特別試験でも、体育祭でも、私は西園寺と友達の顔の裏で(一方的に)争う事になるだなんて。

 

…そうして気が付いたら、私達がAクラスになってたり、私も堀北も西園寺も生徒会員になったり、今度は堀北に嫉妬される事になるだなんて。

 

 

「桔梗、こちら明日の会議の資料になります♪」

 

「あ、うん…」チラッ…

 

「…………よろしく頼むわ、櫛田さん」ギリッ

 

「う、うん…」

 

「…鈴音?」

 

「何ですか?お姉様っ」ニコッ

 

「あははっ、皆仲良しだねっ」

 

「…(目の代わりにガラス玉でも詰まってんの?このおっ〇いお化け。どこをどう見たら仲良く見えるのよ…!)」

 

 

…櫛田の苦悩は続く。具体的には、卒業後まで。

 

―――――――――――――――――――――

Side.綾小路

 

 

…どういうことだ。俺は今、目の前の光景を見て頬を(つね)っている。こうすると、夢なら覚めると池から借りた漫画に書いてあったが…現実の様だ。

目の前には、様々なおかずや、おにぎりを詰めた重箱。中庭のベンチに広げられたその色鮮やかな弁当は、冷めていても十分食欲に訴えかけて来る香りを発している。

そして、それを持って来てくれたのは目の前のクラスメイト…西園寺撫子だ。

 

 

「…()()君、どうぞ召し上がって下さい♪」

 

「………あぁ、ありがとう」

 

「その…感想を教えて下さいね?」

 

「………」ジー

 

「………っ」ギリッ

 

「ブツブツ…」

 

「………頂きます」

 

 

周りの目がヤバい。クラスも学年も関係ない。()()()()だしても、この注目度は予想外だった。こんな見られながら飯を食う事はこれまでにない。…果たして味が感じるか不安だったが、それは杞憂だった。始めに手に取ったおにぎりも、かなり美味い。丁寧に巻いてある海苔や少し塩気を感じる白米、そして西園寺が手ずから握ったからかしっかりと均等な大きさになっている。

次に箸を向けたハンバーグも、小ぶりだが焼き加減もしっかりしていてソースは市販ケチャップではなく自家製らしい。随分気合の入った弁当だなと感想を言うと、西園寺は顔を赤らめて「その…張り切りすぎてしまって…」と漏らした。

 

 

「そ…そうか」

 

「は、はい…」

 

「………」

 

「………えっと、ご迷惑…だったでしょうか?」チラッ

 

 

………可愛い。こっちの頬も赤くなってないだろうか。上目遣いで不安そうな顔も、両手の指を胸の前で弄んでいるのも無意識なのだろうが庇護欲を(くすぐ)る。

そのまま見ていたかったが、周囲の視線に殺意が籠ってきた。…殺されぬ前に、慌てて西園寺の誤解を解く。

 

 

「そんなことはない。手が込んでいて、正直すごく嬉しい。…普段は食堂か購買だったから、こういう弁当というのは初めてなんだ」

 

「…!それは良かったです…私も誰かにお弁当を作ったのは初めてでしたので、お口に合うか不安で…えっと」

 

「凄く美味しい。…毎日でも食べたい位だ」

 

「本当ですかっ?」

 

 

一転、花の咲くような笑顔に目を奪われる。思わず見ているとキョトンと首を傾げて、何かに気がついたようにハッとなる。普段よりも自然というか、コロコロと変わる表情に西園寺の新しい一面を知り役得を感じる。

煮豆を摘まんでいると西園寺がスッと卵焼きを箸で摘んで―――こちらに差し出してきた。

 

 

「あ、あ~ん…ですっ」

 

「―――」

 

「…っ!」ザワッ…

 

「!」ガタッ

 

 

ヤバい、最初から飛ばし過ぎだ西園寺。周囲の騒めきも最高潮だし、何よりお前の顔ももう真っ赤だぞ。…いや、それよりも追い詰められたのは俺の方か?

 

 

「………」ドキドキ

 

「………」

 

「「「…」」」ジー

 

 

顔を赤くして見つめ合う俺達。それを見る周囲。不味い、コレ食べても断っても角が立つぞ。誰か助けてくれ。…あそこに居るのは愛理達!いい所に…おい、なんで離れて行くんだ啓誠。今はカメラを向けないでくれ愛理。明人、波瑠加。親指を立てて何を伝えているんだ。

 

 

「…その、ご迷惑、でしたよね?」シュン…

 

「!」

 

「「「!」」」ギロッ

 

 

しょんぼりとした西園寺。周囲からの「分かってるな?」という圧。助けてくれない仲間たち(クラスメイト)

…退路は断たれた。こんな所で敗北を感じるとは。俺は覚悟を決めて口を開く。

 

 

「いや、驚いただけだ。…貰えるか?」

 

「っ!はいっ、どうぞっ♪」

 

 

パクリ、一口で食べた卵焼きの味は今度こそよく分からなかった。周囲からの熱視線や遠くで聞こえるカメラのシャッター音。何故かハイタッチをする明人と波瑠加。

だが、これで何とか窮地を凌いだ。お茶を飲んで緊張を解していると、西園寺から声がかかる。

 

 

「じゃあ清隆君、次は何を召し上がりますか?」

 

「…次?」

 

「はい♪」

 

 

笑顔で「唐揚げと、プチトマトと、あ、コロッケもありますよ?」と指をさして聞いてくる西園寺に、気が遠くなるのを感じる。…どうやら俺の戦いは、まだこれからだったようだ。

 

 

「…唐揚げで」

 

「はいっ…あ~ん、です♪」

 

 

口に広がる醤油とショウガの風味を味わいながら、俺は先週に思いをはせるのだった。

 

 

・◇・

 

ある日の放課後、西園寺が一緒に帰ろうとする堀北を断っていた事が切欠だった。

 

 

「皆様、先に行っていて下さい」

 

「………撫子お姉様、またですか?」

 

「え?昨日もだったよね?」

 

「えっと、その…」

 

 

西園寺撫子はモテる。それも()()()。同級生も、上級生も(何なら性別も)関係ない。一部教師やショッピングモールの店員からも熱視線を向けられている。

 

故に、告白の呼び出し(そういうこと)で放課後に時間を奪われることも多い。生徒会に入った後も時間に遅れる・中座する等が多発しまさかの堀北会長・南雲副会長の連名で【生徒個人間の未告知の書類の投函並びに不同意の(略)案】、いわゆるラブレター禁止法が校則に追加されることとなった。

 

そうした結果、西園寺への告白は減った―――訳ではなく、今度は直接、人を使って、メッセージアプリで、等々とその人気は下がる事もなくむしろ上がり続けている。

 

なんなら断った相手も2度目、3度目の挑戦をしている奴もいたらしい。西園寺は相手の事を全員記憶しているらしく、断ることに段々ストレスを感じている様子だ。それを慮ったDクラス女子(+一部他クラスの女子)の相談の結果、ある作戦が決行されることとなる。

 

 

【ボーイフレンド(仮)作戦】

 

 

…どこかで見たような名前だが、要するに仮の彼氏役を用意することで西園寺への告白の防波堤を築くというものだ。…防波堤の強度や消耗は気にしないのだろうか。

候補には彼女持ちじゃない、好きな異性が居ない(らしい)相手をピックアップしたとの事。結果…何故か俺が選ばれた。本当になんでだ。

 

 

―――――――――

※候補会議の一幕

 

 

「うちのクラスの神崎君は!?幼馴染で、仲良しだよ!」

 

「でも他のクラスだし、なんかいい雰囲気になっちゃいそうじゃない?」

 

「………!確かに…(ハッとした表情)」

 

 

「ではうちのクラスの山田君はどうでしょう?とても紳士的ですし、ボディガードとしても…」

 

「山田君なら…確かにSPみたいで…」「いや、いつも龍園君の近くに居るからダメよ」

 

「………そうですね…(ガーン…)」

 

 

「うちのクラスの…(橋本君は…ダメですね。葛城君…いいえ、あちらの勢力の神輿にされてしまうのは…)いえ、何でもありません」

 

「ん~、なら、やっぱりウチの(D)クラスから?」

 

「そうなるわね。問題は…誰に彼氏役をして貰うかだけれど」

 

 

「「「………」」」

 

「………綾小路君はどうですか?」

 

「!…何故かしら、坂柳さん」

 

「ふふ、いえ、彼の人となりは存じていますが、決して軽薄ではなく、また西園寺さんに無体を働くような方ではないからです」

 

「そういえば…確かに優しいよね。ちょっとぼーっとしてるけど」

 

「確かに隠れイケメンだし…ランキングも…」「…(清隆………)」

 

「………あくまで、本決定は西園寺さん本人に聞いてからよ」

 

―――――――――

 

 

「………では、よろしくお願いしますね」

 

「あ、ああ。…本当に俺でいいのか?

 

…お姉様の意志よ

 

「………そうか(俺の意志は無いのか…)」

 

 

ため息をつくも、目の前の申し訳なさそうな西園寺の表情。背中でも刺すんじゃないかという表情の男子たち。期待(なんのだ)を込めたような表情の女子たち。

 

…作戦の都合上、知っているのはDクラスの女子と一部の他クラス女子。男子生徒の大半は事情を知らないのだ。

話が広がりすぎると、偽装の意味が無いとはいえどのくらい効果があるのか…不安だ。

カバーストーリーとして、俺が告白をして西園寺がOKをしたことになった。

 

…たった半日で噂が学校中に回り、一躍時の人として注目されたのは完全に予想外だったが。

 

 

「その、一緒に帰りましょう。…清隆君」

 

「お、おぉ、…撫子」

 

「「「キャー!」」」「「「うぉー!(血涙)」」」

 

 

手を繋ぐと女性特有の柔らかさや、こちらを見上げる西園寺の表情に緊張し手汗を書いていないかと不安を感じたりする。

周囲の視線を集めながら、俺と西園寺の偽装恋人関係が始まるのだった。

 

 

・◇・

 

 

意識を戻すと、何とか昼食は終えていた様だ。目の前に綺麗になった重箱を片付ける西園寺に礼を言うと、「お粗末様です」と返される。

その後、注目を集めたまま週末の予定を相談したり、スマホで動画を一緒に見たりと周囲に恋人に見えるように演技をしていく。

 

スマホには、カップルに見える行動としてグループチャットにいくつかの方針が流れている。恐らく西園寺は、その中にある『手作り弁当、あ~んをするとなお良し』―――を、真に受けたんだろう。

 

西園寺はそれにチェックを付けると、一つ下に指を指す。『週末にデートをする待ち合わせ』と書いてある項目が目に入り、よくみると『男から誘って、男は30分前行動!』と補足がされている。

 

 

「…撫子、週末の予定は空いているか?」

 

「はい、清隆君。今週でしたら大丈夫です」

 

「じゃあ一緒に遊びに行かないか?」

 

「!…喜んでっ♪」

 

 

周りの殺意を何とか受け流して、満面の笑みの西園寺の手を取る。たとえ仮初めの関係だとしても、もう少しこの役得を感じていたいと、俺はそう感じ始めていた。

 

 

―――俺はまだ何も知らない。

 

この後の週末、30分前に行くと既に西園寺が待っていたり、店員や上級生から殺意を込めた視線を貰ったりすることも。

 

更に先の未来、秋には生徒会長と成った南雲に西園寺絡みで目の敵にされることも。

 

冬に訪れた父親に『流石、俺の息子だ。為すべきことを為せ。避妊の必要はない。全て手配済みだ』と身の毛もよだつ様な提案をされることも。

 

2学年となり、奴の祖父から撫子の()()について聞くことも、その父親について知ることも。

 

 

「…明日は、もう少し小さい弁当で構わないぞ」

 

「あ、では放課後にお弁当箱を見繕ってきますね♪」

 

「分かった。…俺も付き合うぞ、撫子」

 

「ありがとうございます、清隆君」

 

 

俺はまだ、なにも知らない。

 

 

―――〇―――

Side.坂柳

 

 

場所は生徒会室。本来ならお父様との会話にそぐわない場ですが、非公式で、そしてカメラも人目もない場所は此処しかありませんでした。

特別に利用の許可を取り、親子水入らずですがこの場の空気は外の室温よりも冷え切っていて。お父様も、私の用件を把握しているのでしょう。その表情は朗らかに見えても、視線はどこか冷たく、駄々をこねる一生徒(こども)を見るようです。

 

 

「…………お答え頂く事は出来ないのですね?」

 

「うん。…私はこの学校の理事長で、君は僕の娘とはいえただの生徒に過ぎない。()()()()()()()()()()()()なんて、子供の関わる事じゃない」

 

「…確かに私は子供です。ですが、その考えで言うなら西園寺さん自身も、子供ではないのですか?」

 

「………」

 

「学校は子供を護るもの。そして、この件は虐待と言っても過言ではありません。…前時代的、時代錯誤な男尊女卑です」

 

「………有栖」

 

「子は親を選べない。…私はお父様の下に生まれて、不自由な身体でも不自由のない生活を送らせて頂いた事に感謝しています。ですが―――」

 

「彼女は違うと?」

 

「っ…そうです。西園寺さんは幼い頃から偏った教育を施されて来ました。蝶よ花よと育てられ、何が良くて何が間違っているか、満足に知ることもなく育ってしまった幼子です」

 

「…ソレの()()()()なんだい?」

 

「―――なにを」

 

「…たしか無人島試験で真嶋先生が言っていたのだが、そうか。君は不参加だったね。自分の理解の範疇を超えたものを『おかしい』『間違っている』と言うのは、君の人生の浅さと不理解を笠に着た―――ただの傲慢だよ」

 

「………っ」ギリッ

 

「西洋でも初夜権や処女でない女性の婚姻破棄など女性軽視の歴史はいくらでもある。日本でも近親相姦や夜這い、誘拐婚なんてものもある。西園寺さんの身に起きたことも、世間一般を見渡してみたら当たり前の出来事に過ぎない。そして、それを是とする家に彼女は生まれた。()()()()の話だよ」

 

「………認めません」

 

「………有栖が認めようとも、認めなくとも構わない。学校が彼女の件で動くことはないし、私もこれ以上を一生徒(きみ)に話すことはない」

 

「………失礼します」

 

 

少し乱暴に戸を閉める。バタンと音を立て、カツン、カツンと杖を突く音と共に廊下を速足に進む。階段にさしかかると、神室さんが待っていてくれた。

 

 

「…坂柳、どうだったの?」

 

()()()()()。…お父様は、生徒が関わるべき内容ではないと…」

 

「そう…」

 

 

表情は普段と変わらなくとも、ギュッと握る手からは怒りが滲んでいる。私もきっと、いえ、もっと強い感情を抱いている。

…もう待ってはいられない。どんな手段(こと)をしてでも、私は撫子さんを救ってみせる。―――たとえ、

 

 

「神室さん、止むをえません。()()()()()()()()()()()()()に連絡を取って下さい」

 

「………分かった。明日にでも集めるから、あんたも少し休みなよ。()、凄いよ」

 

()()です。…()()()()()()3()()()。……この様な事で音を上げる訳には参りません。」

 

「(その撫子が心配するって言うのに…)…はぁ、了解」

 

 

―――たとえ、私達がAクラスで無くなろうとも。撫子さん、貴女だけは救ってみせます。

 

 

 

 

 

 

 




と言う訳で、Dクラス(一月でBクラス)編です。

メインとの相違はDクラスの生徒全体への超絶バフです。暴力事件は起こさせませんし、無人島試験では最適解を導き、船上試験では無双して恐らく1年の間にAクラスへと到達します。

反面、最後の坂柳家の親子会議で意味深な話をしていますが撫子は3学年で一時的に離脱の予定。
有栖の指揮下でAとBが入れ代わり立ち代わりの接戦ですが、撫子の事情を聴いてAクラスを諦める程度には絆されています。(綾小路含む)

多分、本作のプロット的には綾小路と西園寺がAクラスで卒業すればtrueの駆け落ちENDになるのではないでしょうか?
…Aクラスに慣れなかったり、好感度が足りず、綾小路君が鉄の心END。あるいは西園寺さんが〇〇ENDになると、漏れなく全クラスの主要人物が曇りだします。

まあ妄想は此処まで。また番外編が完成しましたらUPしますので、お楽しみにお待ちください。


番外編 進捗

①高円寺・鬼龍院イベント 97/100 完成
②一之瀬・龍園イベント 33/100 完成
③綾小路・坂柳イベント 3/100 完成
④堀北兄弟・櫛田イベント 0/100 完成

本編 進捗
体育祭編 一話 28/100 完成


いつもいつも誤字脱字報告、ありがとうございます!!
感想、高評価もお待ちしております。よろしくよろしくよろしくお願いいたします!!

次に番外書いてほしいクラスは?

  • Aクラス
  • Bクラス
  • Cクラス
  • Dクラス
  • 2年生
  • 3年生
  • 教師
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