ようこそ(勘違い)大和撫子の学校生活へ 作:エカテリーナ
今回はほんわか~伏線回となります。ただし、回収は早いです。
なんと次回です(爆)
こちらも恐らく明日投稿できますので、よろしくお願いします。
それでは、どうぞご覧ください。
Side.有栖
何故…このような場所に私はいるのでしょう…。
場所はショッピングモールのテナントの一室。貸切ったスタジオのような一室で、私は。
私たちは―――撮影をしていました。…いいえ、撮影されています、が正しいのでしょう。チラリと視線を走らせ、部屋を見回す。
「撫子ちゃん、こちらに目線を下さいっ」
「はい。…こう、ですか?」
「はい…オッケーですっ。…次はこれを着て、これを持ってもらって良いですか?」
「はい…え?あの…これは…「様式美です」…はぁ、そう、なのですか?」
「そうですっ」「そうなのです…!」
様々な衣装を手に拝んでいるクラスメイトの皆様。…見知らぬ方も。先輩たちでしょうか?
カメラを向けるのはDクラスの佐倉さん。1学期には無名でしたが、グラビアアイドルとしての姿を隠さなくなってから撫子さんとも一緒にいる姿をよく見られます。
…そんな彼女は、かなり本格的なカメラを片手に真剣な眼差しを向けています。一眼レフ、というやつでしょうか?とても様になっていますね。
そして、部屋中の視線を独り占めにしている撫子さん。…膨らませたビーチボールを3つ持って…いえ1つですね。水着姿で佐倉さんの指示通りにポーズを取っています。
「………」
思わず自分の胸元を庇うようにしてしまいますが、仕方ありません。こればかりは、敗北を認めましょう。ええ。
私は現実から目を背けるような事はしません。
「…す…?有栖?」
…それはそれとして、撫子さんのサイズは一体いくつなのでしょう。なにか特別なマッサージや習慣でも…。考えに没頭していると、気が付けばこちらを覗き込む撫子さんと目が合います。…集中しすぎて気が付かなかったようです。…不覚ですね。今は、撫子さんとの時間を大切にしなければ。
「っはい、どうしましたか?撫子さん」
「次の衣装なのですが、愛理から提案がありまして…」
「提案?」
そういって聞き返すと、どうやら私も撫子さんと一緒に被写体として撮影をしないかというものでした。
…え?あの、撫子さんと一緒って…。ヒクリと、頬が引き攣るのを感じます。なまじ悪意がないのが、余計に断る事への罪悪感を募らせてきます。…結果的に、見せられた衣装を見て頷く事になった私も私ですが。ええ。
渡されたのは白と青のエプロンドレス。ブラウンのローヒールパンプスに、大きな黒いリボン。
―――いわゆる、【不思議の国のアリス】の主人公、
サイズにも不足はなく、生地も肌触りが良い。スカートのフリルにも薔薇の花と茨の刺繍がされた、高級感のあるものでした。私が着替えると歓声が上がり、小道具として日常使いには大きなアンティーク時計を渡されます。
杖も、ファンタジー風ですがシックな黒いものを渡される。…私も言われるがままポーズを取ったり、ソファに腰かけて撮影をします。…決して、楽しんでいる訳ではありません。これは…そう、撫子さんや佐倉さんに頼まれた手前、無下にも出来ないから。
…いえ、噓です。自分の好みに合う服を身に纏い、羨望の眼差しを一身に受ける。…ほんの少しだけ、楽しい。私は、確かにそう感じています。
「………ぁ…」
「…?…佐倉さん?一体どう―――」
ふとシャッター音が途切れるのを不思議に思い、彼女の視線の先を目で追います。そこに居たのは、
「お待たせしました。…素敵ね、有栖。とても似合っていて、まるで本当に絵本から飛び出してきたみたい」
「―――ひゅっ」
「…?有栖?」
―――そこに居たのは、一匹の
兎の耳を模した飾りを付けた黒いカチューシャに、燕尾服を模した黒のジャケット。そして、
頼りない下半身を覆うのは、私と御揃いの刺繍が為された黒いタイツ。鋭いピンヒール履いているからでしょうか?身長差から視界には胸が強調されて見えてしまいます。
…呆然としている私を心配してか、撫子さんが前のめりにこちらを覗き込むと、
「?…有栖…ちょっとごめんなさい?」
「え?…きゃっ…」
「熱は…ないみたいね…」
額に額を当てて、検温をする撫子さん。眼前に撫子さんの顔が迫り、ますます顔が熱くなりますが返事をすると、心配そうにですが解放されます。
…すこし勿体…いいえ、何でもないです。…山村さん?ついさっき、スマホのカメラを向けていましたね?この後、写真は私に送るように。ええ。
「……うわっ…すっごい…!」「………っっっっえっ…!!」
「よ、よよよく、おに、おにお似合いです
「そう…?ふふ、ありがとう愛理。…少しだけサイズが不安だったのだけれど、どこか可笑しくないかしら?」
「だ、だ、だ、大丈夫れすっ!」
撫子さんは不安そうにしつつも、カツカツとヒールの音を立てながら身を捩って周囲に衣装とその美貌を魅せつけています。
その動く度にゆったりと揺れる胸や、お尻についている黒い尻尾が誘うように揺れる。首には燕尾服に合った蝶ネクタイではなく、アクセサリー色の強い錠前のついた首輪をしていて、倒錯的な支配欲に芽生えてしまいそうになります。…ごほん。
「この衣装、兎がモチーフなのですよね?不思議の国で兎というと、アリスを案内する役割の…?」
「はい、そのアリス役の坂柳さんとの絡みを是非、是非撮影したいと思いまして…!」
「なるほど…。有栖、構いませんか?」
「ごくっ、ん…構いませんよ。よろしくお願いしますね?」
どうやら生唾を呑んだのは私だけではない様で、周りに視線を向けると明らかに羨望
この場に男性が居なくて良かったですね。同性でもこれなら、異性が居たらなんて考えたくもありません。
その後、なんとか気を取り直して私も撫子さんの衣装を褒め、撮影に映ります。
最初に撫子さんが指示されるままにポーズを取って…取って…。…あの、佐倉さん。なぜそんな際どいポーズや、ローアングルな角度で撮影するのですか?
…え?え?地に伏せている愛理さんを跨いで?下から?え?私が可笑しいのですか?…後で写真をくれる?……そうですか。よろしくお願いしますね、山村さん。
その後、恐らくありとあらゆる角度から撮影された撫子さんとのツーショットを撮りました。
普通に並んだり、手を繋いだり。首輪を弄ると少しだけ苦しそうにしたり、後は…その、軽く抱き合ったり、顎を手でクイっとされたり。顔を赤くする私を尻目に、佐倉さんは興奮気味に「良いっ!良いですよその表情っ!はわわ…!」とシャッターをパシャパシャ切り続けていました。
「ふふ…」
「…楽しそうですね、撫子さん」
「有栖。…ええ、皆様が笑顔で居てくれて、私も嬉しいです」
「っ、わ、私も…その。…悪く、ありません」
「…ふふっ」
今の姿勢は、椅子に座る撫子さんの膝の上にこう、お姫様抱っこ…というのでしょうか?背中を任せて、横向きに腰かける姿勢です。至近距離での微笑に、思わずドキリとして顔を逸らしてしまう。
…反則です。そんな顔で「勿論、有栖も楽しそうでよかったです」なんて言われたら、貸しだなんて言えない。
その後、この衣装がラストだったようで撮影会は無事終了したみたいです。私は何故か感動された店員さんから、この衣装をプレゼントされました。…いえ、嬉しいんですが、一体どこで着れば…。
思わずため息交じりに更衣室に足を運ぼうとすると、キュッとパンプスが擦れる音と、床が視界に近づいてくる。
「…あ、っ…!」
「有栖…!」
疲れが出たのか、何か踏んでしまったのか。理由は分かりませんが、足を滑らせた私は、次の瞬間に訪れる衝撃に身を固くするしかありませんでした。
でも、その衝撃が訪れる事はありませんでした。…いえ、衝撃は感じました。非常に
「っ………?ぇ…?」
「っ、ふう。…有栖?怪我はありませんか?」
むにゅ。
「あんっ…!」
「…は!?」
掌を握ると、艶やかな声が耳を貫きました。私は、現状の把握に努めようと上半身を起こそうとしますが背中に回された撫子さんの腕がそれを許してくれません。目をパチパチしていると周囲からは「「「キャー!!」」」と黄色い悲鳴が響きます。
「有栖っその、胸を揉むのはっ…!んっ…」
「も、申し訳ございません、なで、撫子さん」
離れようとする再びむにゅん、と掌に広がる充足感。自分のものではないそれは、私の掌に
「有栖、動けますか?今、私が起き―――」
「だ、ダメですっ!撫子さんは
「んっ。…な、何故…で、す、んん、胸を、これ以上、胸を揉んでは…私っ…や、ぁ!」
「だ、誰か…!上着、上着を撫子さんに貸して下さいっ」
恐らく撫子さんは転んだ私を庇って下敷きになってくれたのでしょう。その衝撃で、ビスチェから
しかし、季節は夏。室内とはいえ、わざわざ厚着している人なんていません。…いえ、それよりも鼻を抑えたり身悶えしたり、こちらを凝視して動かない人ばかり。…こちらの声なんて、恐らく耳に届いていない様子です。
「キマシ…うっ…」「キャー、はな、鼻血が…!だ、誰か、ティッシュ、ティッシュない…!?」
「え…!?ナデ×アリじゃないの!?」「リバ有…!?アリ×ナデ…!」
「………」ピロリン♪ピロリン♪「………」パシャパシャパシャ…
「だ、誰でも構いませんから、上着を…!何か、羽織れるものを…」
「っあ…!有栖、息が当たって…こそ、ばゆい、です…んっ」
「も、申し訳ありませんっ…(一体、どうすれば…)」
こうして、私の人生初の撮影会は、慌ただしくも無事に終わるのでした。
※この後めちゃめちゃ忙しなく着替えました。…更衣室へは、撫子さんの胸を隠した私をお姫様抱っこで抱えて貰い、そのまま向かう事になりました。…なんというか、その。
………すごかった、です。
山村さんと佐倉さんのデジカメからは、件の写真は私がしっかりと責任を持って削除しました。えぇ。
…何を疑うのですか?山村さん。………そんな訳ないでしょう。クラスメイトとして、当然です。
・◇・
場所は変わって、予約したレストラン。
事前予約が必要な個室制のお店で料理に舌鼓を打っていると、撫子さんから先ほどの撮影会の話を振られます。
「有栖、今日は無理を言って御免なさいね?疲れたでしょう?」
「いえ。私にも貴重な体験でしたし、…それに、普段とは違う衣装を着るのは思ったよりも楽しかったです」
「……ありがとう、有栖。衣装は、気に入ってくれたかしら?」
「…!もしかして、あの衣装は、撫子さんが?」
驚きながらそう聞くと、コクリと頷く撫子さん。曰く、似合うと思って、無理を言って用意をお願いしたとの事。頬を赤らめる撫子さんに、私も少し顔に熱を感じます。
お互いに顔を赤くしてうつむいた、気まずい雰囲気を感じているとタイミングよくデザートが届く。
ショートケーキとチーズケーキをお互いにシェアしていると、表情に笑顔が戻ります。食後の紅茶を頂く頃には、再び朗らかな雰囲気となり夏休みの出来事や思い出を話します。
私は、クラスの
「ところで撫子さん、次の特別試験ですが―――」
「特別試験…」
おや?と思う。どこか気の抜けたような返事だ。疑問は表情に出さず、気のせいかもしれないと言葉を重ねていく。
「調べた限り、次の試験は秋頃の体育祭となるでしょう。…申し訳ないですが、私が陣頭指揮を執るには相応しくない試験です」
「ん、…えぇ…そう、ですね…」
「?…なので、今回は男子のリーダーは葛城君に。私達女子のリーダーを撫子さんにお願いしようと思うのですが、如何でしょうか?」
そう、今回の会合の本当の目的は次回の試験のリーダーについて。元々、体育祭では葛城君に任せる予定でした。例年では紅白に分かれて行う試験はAとD、そしてBとCにチーム分けがされます。
そして私が見るに1年生で最も強い団結力を発揮できるのは、一之瀬さんの率いるBクラス。次点で、地力はAクラスと統率でCクラスが横並び。…いえ、葛城君は龍園君と相性が悪い。クラスの統一もままならないAクラスよりも、龍園君の独裁するCクラスが優位でしょう。となると、順位で勝てそうなのはDクラスだけになります。
予想できる学年別の順位は、B>C≧A>Dとなる。
―――つまりハナからこれは
撫子さんの立場もやや下がるかもしれませんが、彼女が先の船上試験で得た契約―――Dクラス生徒30名分の協力の同意書―――を生かせばダメージを最低限に抑えられる筈。
いえ…これはむしろ、負けてしまって傷心した撫子さんを慰めるのも悪くありません。…そう、クラスメイトを慰めるのも、リーダーとしての大切な
「そうですね…。…いえ、別に男子に限らなくとも、今回は葛城君に一任するのはいかがでしょうか?」
「―――っ、」
ピタリ、と紅茶を口に運ぶ手が止まる。…流石、
「しかし、先の無人島試験で葛城君の信用は失墜しました。…その点、撫子さんはその才覚で莫大な利益をAクラスの皆様に
「っ…」
「むしろ、撫子さんが
「過分な評価、痛み入ります。ですが私は、そんな出来た人間ではないのです。皆様の指揮を執るだなんて…」
「そんなことはありません。撫子さんは1年生の中で、…いえ、学校でも上位の実力と才能を秘めていると私は信じています
「有栖…」
「それに…謙虚も過ぎれば、それは
「―――っ…!」
「撫子さんにはもっと…?…あの?」
ガタリと、音を立てて撫子さんが席を立つ。普段の撫子さんではありえない行動にビクリと肩を揺らすと、彼女の表情がみるみる曇っていく。
青ざめた表情、口元を掌で覆い隠し、潤んだ瞳からは目尻に一筋の涙が零れており、とても尋常な様子ではない。思わず言葉に詰まる。
ふるふると首を振る彼女をどうにか落ち着かせる為、再度、席に座って頂きました。
「…撫子、さん?…顔色が悪いですが、どうか…」
「……………ごめんなさい…、ごめん、なさい…」
「落ち着いて下さい。…私は、撫子さんの味方です」
「…………有栖…」
予想外な撫子さんの様子に、私は努めて平静を装い手を重ねる。背中をさすって、暖かい飲み物を飲ませ、安心を与えて言葉を引き出す。何が、撫子さんを追い詰めたのか。
ポツリ、ポツリと口を開く撫子さん。その震える肩を抱き寄せながら、私は静かに耳を傾けるのでした。
※この後、なんとか撫子さんを慰めました。
リーダーの件は、撫子さんの言う通り葛城君に任せる事にします。えぇ。
………ふふ、覚悟して下さいね?
――――――――――――
ピロン♪ピロン♪
「メール?」チラッ
「………」ピッピッ…
「…?姫さんからか?」
「そうみたい。…あんたには来てないの?」
「みたいだな。鬼頭と神室ちゃんに届くって事は、なんか内緒話か?教えてくれよ」
「はぁ…その態度を改めたら、坂柳も少しはアンタの事を信用するんじゃないの?」
「おいおい、そりゃないぜ。俺はこれでも姫さんの為に色々と貢献しているつもりだぜ?」
「どうだか…。その飄々としたたい「神室、メールを見ろ」っ、…なんで?」
「良いから早く読め。橋本もだ」
「…あ?俺も見て良いのか?…どれどれ?」
「……………」ギリッ
「…………はぁ…!?」
「あ…?どういう事だ?」
読了、ありがとうございました。
バニーガール、良いですよね。正直作者の欲望が露わになった回でもあります。
次回は明日にでも行けると思いますので、お楽しみに。
高評価、感想を是非お待ちしております。
更新おまたせしてしまい申し訳ございません、夏休み編で一部には重い話も開示する予定ですが、体育祭編ではどの方向で持っていこうか検討中です。執筆意欲の為にも、皆様のご希望をお願いします!
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