ようこそ(勘違い)大和撫子の学校生活へ   作:エカテリーナ

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大変、大変お待たせしました。
今回は伏線回…になっているといいですが、ちょっとゆっくりめです。
ではどうぞです。


②:亀裂

その日のDクラスは、予鈴が鳴るよりも前の時間からざわざわと落ち着きが無かった。…無理もない、今までしっかりと規則的に並んでいた40の席。その内3つが、夏休みが明けた初日に欠けていたのだから。

 

普段ならその事を真っ先に騒ぎ立てる生徒。池寛治、山内春樹。…そして外村秀雄、3名分の無くなった席。

登校をした誰もが、理由を知らないかと話題に盛り上がっていると、ガラリと教室の扉が開く。

 

クラスの中心人物と言っても良い平田洋介が登校すると女子を中心に近寄り、声をかけようとして―――息を呑んだ。

 

 

「ひ、…平田、君?」

 

「その、…だ、大丈夫?顔色…悪いよ?」

 

「……………うん、ごめん、ちょっとね」

 

 

まず、()()()()。弱弱しくも笑顔を見せたが憔悴し切った表情の彼に、佐藤や王が心配する様子をみせるも返事に力はない。

明らかに何かがあった。二の句が継げない女子たちに、遠巻きに見ていた男子生徒も不安そうな表情を浮かべている。…彼らも、決して親しくはなくとも突然クラスメイトが減った。…正直、気が気ではないのだ。

 

そして、次に事情を知っていると思われていた生徒。須藤が教室に入り、席に向かう。普段、彼が声をかける友人らの席は無い。その空席に一瞬視線を向けるも、彼も黙って自分の席につき、腕を組んで目を瞑る。

『話しかけるな』と態度で示す彼に、声をかけられる生徒は居ない。結局、Dクラスの生徒達が事情を知る事となったのは、3()7()()がクラスに揃いHRが始まってからとなった。

 

 

・◇・

 

 

担任の茶柱がHRの開始を告げ、夏休み明けの挨拶をする。…そして、早速とばかりに消えた3名についての説明が為された。

 

 

「皆も気になっていると思うが、池寛治。山内春樹。外村秀雄。…事情は違えど、この三名は学校を去る事となった」

 

「えぇ!?」「なんだよ、そんな突然…」

 

「ど、どういう事ですか…?」

 

「………」

 

 

正直、薄々は気がついていたのだろう。しかし実際に言葉にされると身近に感じたのか、クラス中から悲鳴や驚愕の声が上がる。茶柱も理解していたのか、クラスが落ち着くのを暫く待つ。

 

そして茶柱からは以下の事が説明された。

 

池、山内が夏休みに校則違反をして退学、外村が家庭の都合で転校となったこと。

今回の校則違反については、学校側の想定外の事柄である為、クラスポイント等のペナルティは発生しないこと。

そして退学となった彼らから手紙を預かっているということ。

 

説明の度に反応を示すクラスメイトとは対照的に、ずっと俯き無言でいた平田、須藤も手紙の件を聞いて初めて顔を上げた。

 

手紙の内容は、それぞれが謝罪。そしてこれからの事についてだった。

 

外村からは急な転校について、理由を打ち明けられなかった懺悔を。

 

山内からは今まで迷惑をかけたこと、退学したくなかったという悔恨を。

 

最後に池からは、これから力になれなくて残念だという後悔を。

 

 

「―――『健、ホントにゴメン。短い間だったけど、本当に楽しかった。俺の分も、Dクラスを頼んだぜ 池寛治。』…以上だ」

 

「………馬鹿、野郎が…!」

 

 

クラスには、すすり泣くような声も少なくなかった。口を噤むクラスの中で、須藤の怒りか、それ以外の何かの感情を込めた声はとても強く広がっていった。

 

その空気をガラリと変えたのは、クラスで男女共に人気の高い櫛田だった。

 

 

「みんな…、直ぐには立ち直れないと思う。…でも、ちょっとずつ、ほんのちょっとずつで良いから、前を向こう?…池君たちだって、きっとそれを望んでると思うから」

 

「櫛田ちゃん…」

 

「桔梗ちゃん」

 

「………」

 

「………」

 

 

櫛田自身も、涙を拭いながら、クラスを鼓舞する。その健気な姿に、クラスの雰囲気も徐々に前を向いていく。その様子を黙ってみていた茶柱はチラリと視線を向けるも、その相手は気にも留めない。

そのまま見つめ合うも、気を使ったような生徒から声をかけられると咳払いと共にHRを続行した。

 

 

「ん、…さて、今日はまだ余裕があるが時間は有限だ、HRを進める。この後、体育祭が―――」

 

 

※この後、体育祭の説明がされた。

いつもよりも私語の少ない、静粛な雰囲気でHRは進んでいった。

 

 

――――――◇―――――――

Side.撫子

 

 

HRが終わると、皆様で体育館へ移動します。2時間目のHRは、全学年の顔合わせを行うそうです。

 

あ、ひより。…伊吹さんも。手を振ると、伊吹さんは手を軽く振り返してくれて…。ひよりはこっちに足を向けてこちらに…あ、伊吹さんに手を引かれて連れてCクラスの皆様の所へ行きました。

龍園君と目が合うと、ニコリと笑みを浮かべてましたのでこちらも笑顔でういんく?をします。………?何故か、不思議そうな顔をされました。こういうのが異性には効果的だと、クラスの塚地さんが…。あれ?

そうこうしていると、3年生の先輩が先頭に立っていました。いけません、集中しないと。

 

 

「………あれは…?」

 

「ああ…藤巻先輩ですね。はい、堀北生徒会長のクラスメイトだったかと」

 

「そ、そうですか…お詳しいのですね(撫子さん…やはり上級生への影響は…、まさか、既に3年生を掌握して…!?)

 

「?」

 

「―――3年Aクラスの藤巻だ。今回、赤組の総指揮を執ることになった。…1年生に先に一つアドバイスをしておく」

 

 

何か言いかけた有栖でしたが藤巻先輩のアドバイスに耳を傾けます。この体育祭は遊びに見えても重要な戦いであり、勝ちに行く気持ちを強く持つように。その助言と、3学年合同の1200メートルリレーの相談の日程だけを全体へ告げると先輩は話を終えました。

 

私達もそれを皮切りに、1年生で集まるべく動き出します。私達AクラスはDクラス…桔梗や愛理、鈴音たちや綾小路君と一緒に体育祭に挑むので、仲良く出来れば嬉しいですね。

今回の試験ではリーダーの葛城君。どっしりと待ち構える様に視線を向けています。その先には、桔梗と鈴音を先頭にこちらへ集まって下さるDクラスの皆様。

 

 

「奇妙な形だが、今回は味方同士。共闘することとなった、まずは…よろしく頼む」

 

「うんっ、こちらこそよろしくお願いします、葛城君。撫子ちゃんも、よろしくね!」

 

「桔梗、ええ、よろしくお願いね。…鈴音?」

 

「ぁ…、ええ、よろしくお願いするわ」

 

 

皆様の目の前で鈴音と握手を交わす。AクラスとDクラスが協力をする。そうアピールすることでクラスの内外にこの関係を強調する目的があると、有栖は話していました。

そう思っていると、急に桔梗が…って、えっ!?

 

 

「きゃっ…桔梗?………握手なら、って…なぜ腕に抱き着くの?」

 

「別に~?仲良しをアピールするなら私もって思っただけだよっ!」

 

「………櫛田さん、おねっ…撫子さんに迷惑よ。後にしてくれない?」

 

「もう少しだけっ」

 

「ふふっ、仕方ないですね。…鈴音もありがとう」

 

「っいえ、私は…お姉様が良ければ別に…

 

「♪」

 

 

空いている左手で鈴音の頭を撫でていると、右腕に抱き着いていた桔梗から「む~」と可愛らしい声が聞こえて、その後は突き出された頭を同じように撫でる。…すると、気持ち良さそうでしたのでなによりです。

その後、空気を変える様にゴホンと咳ばらいをした葛城君に注目が集まります。私も慌てて二人の頭上から手を離すと両腕に彼女達の胸の感触が。

 

 

「…ふ、二人とも…?」

 

「「………」」

 

「…まあそのままでもいい。兎も角、これからの―――」

 

「―――話し合いをする気はないって事かな?」

 

 

葛城君の話を遮るように、体育館に通る…帆波の声ですね。皆の注目がそこに向くと、体育館を去ろうとしているCクラスーーー龍園君に声をかけていました。

 

ひと悶着ありましたが、喧嘩などもなく二人は舌戦を終えて龍園君は体育館を去ります。帰り際に一瞬、視線が合いましたが…あのじぇすちゃーは、一体…?

 

 

「向こうも大変ね。Cクラスと組むなんて」

 

「そうだな。…今回は俺達は味方だからこそ忠告しておく。龍園(ヤツ)を侮るな」

 

「ええ。…ありがとう、そうするわ」

 

「うむ………(思いのほか素直だな。…これなら、例の協力の契約とやらも穏便に済みそうだ)」

 

 

葛城君の忠告に、頷く鈴音。…この二人、相性がいいのでしょうか?そしてその後は、有栖の事を紹介しました。

 

 

「私に関しては残念ながらお役に立てません。全ての競技で不戦敗となります。…ご迷惑をおかけします事、まず最初に謝らせて下さい」

 

「…まずは、謝罪を受け取るわ。…こちらも、そちらに詫びないといけない事があるから」

 

「詫び?」

 

 

眉を顰める葛城君でしたが、内容はDクラスの生徒3名が退学処分(※おひとりは転校)等で欠員が出ている事でした。事情を知らぬ皆様からは驚きの声が上がります。

当事者であるDクラスからも少々、不安な雰囲気を滲ませています。

 

 

「一体なにが…」

 

「申し訳ないけれど、こちらにも()()()()()()()()()()()()()()

 

「ふむ…」

 

「…今日、急に聞いて私達も混乱しているの」

 

 

そういって、チラリと目配せをしてくる鈴音。それにコクリと頷きを返します。…緘口令があるとはいっても、いずれ噂は広まります。今回の試験では他クラスとの協力は必須。

鈴音たちDクラスは先に実情を話して、私達Aクラスの信頼を得ることを選んだようですね。

 

 

「だがそうなると、実際に騎馬戦や綱引きの際は人数的な不利を覚悟して…」

 

「ええ、だからこそ細かく協力が必要になると…」

 

 

そうこうしていると、お二人の話は協力体制についてに移っていました。クラス合同で行う種目だけ協力したい葛城君と、個人種目でも綿密なすり合わせをしたい鈴音。

周囲は少しだけピリリと緊張している雰囲気ですが、お二人の人柄を知る私には、有意義な意見交換をしているように見受けられます。

 

情報戦を好んだ策を練る有栖や、あまり作戦を立てるのが苦手な私。その点、クラスのリーダー同士のお二人は正攻法というのか王道を好む様に感じます。

お二人はお互いのクラスの利益を追求しつつも、最終的には赤組の勝利の為に共同歩調が取れるでしょう。

 

 

―――その様子を有栖と一緒に微笑ましく見ていると、Aクラス側(こちら)から鋭い声が突き刺さります。

 

 

「おい!いい加減にしろよ、出来損ないのDクラスが!」

 

「…!」

 

「おい止めろ、弥彦…!」

 

「…(またアイツかよ)」

 

「………ハァ…」

 

 

声を上げたのは戸塚君。葛城君と仲が良い彼は、鈴音の提案が気に入らなかったのでしょうか?葛城君に咎められても、Dクラスの皆様を指さして言葉を続けます。…それにしても、また不良品と…!

 

 

「でも、葛城さんっ!」

 

「止めろと言っているだろう!…この場には俺達だけじゃない。これ以上、Aクラスの品位を貶める事は控えろ」

 

「…日を改めた方が良いかな?」

 

 

仲を取り持つ為か、桔梗が前に出ます。私も有栖に一声かけてから彼らに近づくと、会釈で鈴音に謝意を伝えます。彼女も軽くため息をつくものの、首を左右に振ってくれました。ん…気にしないで、ということ…かしら?

視線を交わしている私達は良い。でも、その場のお互いのクラスの雰囲気は更に悪く、重くなっていきます。…やはり、いきなり今までの別クラスの生徒同士協力は難しいのでしょうか…?

 

 

「いや、そうだな…うむ」

 

「葛城さん…。っ!フン、元々、お前らが退学者を出すのが悪いんだろうが!」

 

「それは…」

 

「―――へっどうせ退学した奴らだって、ロクな奴らじゃなかったんだろ!!」

 

「…!ちょっと、あな「なんだとテメェ!!」…っ、須藤君」

 

「…!」

 

 

思わず、という風に一人の男子生徒…あれは、須藤君ですね。退学した方と仲の良いと聞いている方です。このままでは…そう思い一歩踏み出すと、後ろから肩を掴まれてそれ以上の動きを止められます。

 

 

「…………!鬼頭君?」

 

「………」

 

 

首を左右に振る鬼頭君。…有栖の指示でしょうか?やむを得ず視線を渦中に向けると、戸塚君の前に出て掴みかかろうとする須藤君。…そしてそれを止める綾小路君がいて、場の緊張で張り詰めています。

 

 

「清隆、退け…コイツ…!コイツだけは、許せねえ…!!」

 

「ヒッ…、や、やっぱり不良品だな!いいのか!?暴力を振るったらお前も退学だぞ!」

 

「止めろ!弥彦!!…須藤も済まなかった!後日、正式に本人から謝罪させる。…この場は、頼む」

 

「…落ち着け、健」

 

「…!……クソが!!

 

 

頭を下げる葛城君に、身を挺して止める綾小路君。須藤君は震える拳をそのままに、視線をいくつか迷わせ、惑わせ、俯いて…。その後、拳を振るうことなく須藤君は体育館を後にしました。

少しして事態を見にきた先生方からは事情を軽く聞かれましたが、上手く取り成して一端の解決をみせました。

 

しかし、双方の空気は打って変わって陰鬱なものになっています。

羽交い絞めにされながら、Dクラスに敵意を向けている戸塚君と、それを宥める皆様。

Dクラスに申し訳の無さそうな視線を向ける葛城君と、それを遠巻きに趨勢を見極めている有栖や橋本君たち。

Dクラスの―――不安そうにする方々や、Aクラスを睨みつける男子生徒。

視線の中に様々な色を孕んだ鈴音と、逆に水面のように凪いでいる表情の綾小路君。

 

 

 

「………」

 

「………っ」

 

「………」

 

「………はぁ」

 

「………ええと…」

 

 

―――この空気、一体どうしたらよいのでしょうか…?

 

 

 

―――――――〇――――――――

Side.龍園

 

 

体育祭の下らねえ集まりからとっとと引き上げた俺達は、Cクラスに戻ってこれからの方針を纏めようとしていた。

ま、こういう団体戦が前提だと基礎的に最強はBクラスだろう。だが()()()()の理由で勝負に負けてやるつもりはねえが。スマホの画面には、ついさっき決裂したような別れ方をした一之瀬からのメールが届いている。

 

 

【―――それじゃあ、決まったら教えて】

 

「フン…」

 

「なに、スマホ見ながら笑ってんの?不気味なんだけど」

 

 

【了解】とだけ書いたメールを返信していると、クラスでも反抗的な伊吹が声をかけてくる。それに石崎が噛みついて、アルベルトが仲裁する。

いつもなら放っておく一幕だが、今の俺は気分が悪い。手で追い払うジェスチャーをすると、連中は場所を変えて口論を続ける。アルベルトの視線にも顎で示すと、二人の所に向かう。

そうしてうるさい連中が周囲からいなくなると、改めて今回の試験の攻略に頭を回してみる。

 

今回の体育祭、攻略の糸口は大きく分けて2つ。

1つは正攻法。―――個々の能力(スペック)を向上させること。来月までの時間で、可能な限り個人・団体問わずに汗水垂らして練習をする。

…ただこんなもんは、大なり小なり全クラスがやることだ。金田あたりに仕切らせて、クラスの連中の能力を集計してから考えりゃいい。

 

そして、2つ目。…つまり、今回の試験の()()である参加表。これの入手。それが、今回の体育祭で俺達Cクラスが出し抜く為に必須となるアイテムな訳だ。

特別試験にクラス内の団結が求められる以上、裏切者が出た場合そのクラスは致命的な敗退をする。夏休みの無人島試験しかり、船上試験しかり、だ。

 

―――ただ、………船上試験か。クソが。

 

 

「…チッ」

 

「りゅ、龍園さん?」

 

「あ?…なんでもねえよ、お前らは金田の指示に従って、参加する競技を詰める手伝いでもしてろ」

 

「「は、はい!」」

 

 

バタバタと離れる連中を尻目に、俺は心中の苛立ちを宥める様に頭をガリガリと掻き毟る。

参加表の入手は今回の試験に優位に立ち回る際に必須となるアイテム。当然、入手に手を尽くす。ただそれには、裏切者の…秘密(ネタ)か、報酬(エサ)が必要になる。だがプライベートポイントは先の船上試験で、膨大な額が支給された。西()()()()()()()()()、だ。

 

撫子のやつめ、今考えてみればなるほどと思うほど、理にかなった戦略だ。

 

夏休みを通したら他のクラスの情報もチラホラ入る。どこのクラスの連中を、どこで見かけた、何を買っていた、そういう内容だ。…元より女子連中にはそういった諜報活動には報酬を出すと伝えてある。そこから得た情報は、Bクラスはやや控えめに。Aクラスはかなり。最後のDクラスはバカみてぇに買い物をしていたらしい。

 

…つまり、船上試験で得たポイントを俺達Cクラスと同じように溜め込んだBクラスと、クラスの連中にそのままくれたやったA・Dクラス。例の契約である程度減額したとはいえ、数十万ポイントも持っていたら下手な報酬には見向きもしねえだろう。

逆に統率を取らねえと、俺のCクラスの連中の方が報酬に目がくらむ可能性すらある。最悪なのは調略したいAとDの連中はポイントに困っておらず、(立場的に)可能性のあるBクラスは試験上は味方って事だ。

 

―――まさか、撫子のヤツ。生徒会の役員の恩恵で今回の試験の事を事前に知っていたのか?…船上試験でポイントを独占してクラスの順位を変える事を嫌がったのは、ここまでの絵図を、既にあの時点で描いていたって訳か…!?

※0点。

 

不味いな。どんな形でもいい。とっとと撫子の目論見を外さねえと、俺達はヤツの掌で踊らされるハメになる。まずは、とスマホでメールを送ろうとすると、画面に影が伸びている事に気が付き視線を上げる。…こちらを見下ろす様に、ひよりが無言で立っていた。

 

 

「…、なんだひより」

 

「龍園君…あの日、何をしていたんですか?」

 

「あ゛ぁ…!?」

 

 

要領を得ない質問に不機嫌そうに返す。大抵の奴はこれで引っ込むが、ひよりは表情一つ変えずにいる。ざわついていたクラスの連中も、会話を止めてこちらに注目している。

 

 

「何の話だ?」

 

「誤魔化さないで下さい…!」

 

 

そういって机に両手をついてドン、と音を立てる。クラスが静まり返り、アルベルトや石崎が止めようと駆け寄るのを手をあげて止めさせる。理由は2つ。コイツには他の連中には出来ない頭脳面での働きが出来ることと、仮にコイツが()()()()()も大した事はない。その計算から次の言葉を待っていると、伊吹の奴がしゃしゃり出て来やがる。

 

 

「…落ち着きなよ。らしくないわよ、どうしたの?」

 

「伊吹さん…。ん、その…龍園君が…」

 

「龍園が?」

 

「夏休みに………撫子お姉様のお部屋から出て来たんです…!」

 

「………あ?」

 

「「「…!?」」」

 

 

思わず肩から力が抜ける。…あの日に見たひよりの姿は、勘違いじゃなかった。…のは、良い。だが、そんな事コイツに何の関係が…。………。いや、待てよ?

 

 

「あの日、お姉様は一之瀬さんと一緒に遊びに行くご予定だったのに龍園君を部屋に招き入れて、しかも龍園君は買い物の袋まで持参して!2時間44分も一緒の部屋に居たんです!…あれが初めての事ではないのは知っていましたが、普段ならお姉様は来客があるとご自身でドアを開けてお見送りまでして下さいます!…それなのに、あの日はそれが無かった!夏休みにお姉様のお姿を拝見した方からは落ち込んだ様子のお姉様を見た方も居ます…!あぁ…!おいたわしや、撫子お姉様…!!」

 

「ちょ、…アンタそんなキャラだっけ?てか、なんで龍園の滞在時間を分刻みで把握してんのよ…」

 

「愛です!」

 

「………そう」

 

「おい、ひより」

 

 

死んだ目でひよりを見ている伊吹を無視して声をかけると、グルリと擬音が聞こえそうな勢いでこちらに顔を向けてくる。それに内心引きながらも、俺はたった今浮かんだ提案をひよりにする。

 

 

「お前、あの日に俺が撫子に会った理由が知りたいのか?」

 

「…えぇ、そうです。もしも、もしも龍園君がお姉様の笑顔を曇らせるつもりなら、絶対に私が…!」

 

「知りたいなら教えてやるよ。…近々、撫子と会う予定があるんだがそこでお前もいっ「ご一緒しますっ!!」…そうか」

 

 

一転、キラキラとした目でブンブンと頭を上下させてくるひより。日が決まったら連絡をすると伝えると、ご機嫌な様子で席に戻る。そんな一幕を皮切りに、クラスも騒めきを取り戻していく。

 

 

「おい、伊吹。どうせ暇だろ、お前も来い」

 

「…良いけど、私が行く意味は?」

 

()()()()

 

「…!」

 

 

ひよりには見えない角度、胸板の前で握り拳を見せながら伊吹に囁くと息を呑んで頷き返してくる。…普段の生意気な態度も許してやれるくらいには、こういう所は便利な駒だ。

俺は新たに思いついた策を胸に、メールではなく電話を掛ける。HR中とはいえ、今はどのクラスも自習。マナー違反ではあるが、何故か俺には相手が出るであろう確信があった。

 

1コール、2コール、3コール。…、…、…、ピッ

 

 

『…はい、西園寺でございます』

 

「よう、撫子。…近い内に会えねえか?」

 

『龍園君…?えぇ、私は構いませんが』

 

「ククッ、相変わらず話が早えな。…相談がある」

 

『相談…ですか?』

 

「ああ」

 

 

―――体育祭について、大事な大事な相談だ。ひよりも会いたがっているぜ?

 

 




読了ありがとうございました。
次回は密談、そして体育祭の開始までいければ良い…ですね。
今月は前半忙しめなので、なんとかもう一話作れればと思います。

お楽しみにお待ちください。

今作では、可能な限り登場人物や特別試験などは原作を遵守して進行していますが、オリジナルの試験やイベントなどを差し込んでも良いかのご相談です。ここで結果が分かっても展開的に追加しない事も十分あるので、お気軽にお応え頂けると幸いです。市場調査のようなものと思って下さい。

  • 大賛成!クラス変動や退学者を出して良い!
  • 賛成寄り。ただ退学者などはやりすぎ。
  • 中立。あってもなくても面白ければ良し。
  • あまりやって欲しくない。既存試験で十分。
  • 反対!原作試験でこそ、独自展開を見たい。
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