ようこそ(勘違い)大和撫子の学校生活へ 作:エカテリーナ
実は、某新型感染症にかかっており、遅れておりました。
それでは、前回の龍園君パートの続きからです。どうぞどうぞ。
ちょっと長くなったので、分割投稿しますね…。
―――◇―――
Sied.撫子
体育祭の顔合わせから数日が立ちました。あの場では結局、日を改めて相談をする運びとなりました。
クラスに戻って早々に葛城君と戸塚君が謝罪されて、有栖の取り成しもあり事態は収束…いえ、少しだけ良くない雰囲気を感じました。
なんとかしなくてはと口を開こうとする最中、龍園君からのお電話が。会いたいとの声にチラリと視線を有栖に向けると、頷かれたので待ち合わせをすることに。
(※何故か、クラスの皆様には心配されましたが…)
そして放課後、指定された特別棟の裏に向かいます。そこには龍園君とひより、伊吹さんの姿が。待たせてしまった事を詫び、お呼び頂いた理由を聞くと内容は体育祭についてでした。
「参加表…ですか?」
「あぁ。お前に参加表を手に入れて、俺に寄越して欲しい」
「………ん、」
「安易にはお返事が出来ないのですが…その、理由はなんなのですか?」
「クク、なに。俺達CクラスにはDクラスに遺恨がある。クラスの連中の中には、今回の体育祭で
その理由はどうやら、クラスメイトの数名が、『因縁のある生徒と競技で戦いたい』との意見が出たからという事。その相手…Dクラスの生徒の情報を得られる、同じ赤組の私を頼ってのご相談でした。
しかし安易に「分かりました」とお返事を返すことの出来ない内容でした。畢竟、返り忠…ではなくて、えっと、すぱい?活動のお誘い…でしょうか。
「なるほど…それで、同じ赤組の私に?」
「あぁ。分かってくれたか?」
「…」
「お姉様…」
ジッと視線を龍園君に向けているとなにやら合図を受けたのか、頷いた伊吹さんがひよりの背後に回ります。
そして―――次の瞬間、伊吹さんはひよりの首筋に腕を絡ませました。
「なっ」
「………悪いね」
「ぁぅっ!」
「ひよりっ!」
ひよりは首を絞められ苦しいのか、抵抗してに手を伸ばしますが伊吹さんが腕を緩めません。2人の、…いいえ、ひよりの表情を見ても演技には見えない。
「伊吹さ「動くな!」…っ、龍園君、一体何を」
「あ?…ククッ、見ての通りだ。…よくあるだろ?
「…、お姉、様…!」
「………っ」
助けに向かおうとする私を止めたのは龍園君でした。私の前に立ち塞がり、彼女達の元へと行かせまいとしております。
…。………いえ、何かおかしい、です。
こんなに突然、龍園君が短絡的な手段を取るだなんて。でも今は、ひよりを助けるのが先決です。
察せられない様に、一呼吸。目を瞑り、開く。
「ふぅ…」
「大人しく言う事を聞いていりゃ、って、おい―――」
「―――っ!」
かつてお世話になった先生方の言葉が脳裏を過る。
『西園寺さん、あなたには才能が有りますが、優しすぎます。だから』
『撫子ちゃん、良い?あなたは可愛いんだから気を付けないといけないよ?』
『ねえ、ここをこうやって、こう。…貴女と、貴女が守りたい誰かの為になら、これは合法よ?』
武道において、最も大切な事。
それは、―――先手必勝です!!
(※諸説あります。)
「やぁっ!」
「えっ」
「な」
構えを取って盾のように構える右腕を掴んで、関節を身体の外側に捻る。抑え技で極めるつもりでしたが、頭突きでの反撃をする龍園君。
それを軸足を払う形で身体を薙ぎ倒して、驚いたままの伊吹さんの元へ向かいます。
「っち、おま―――ぐぉ!!」
「っ、アンタ」
「ひより!屈んで!」
「っ!」
驚いた様子の伊吹さんはひよりを解放し、構えを取ります。…恐らく、以前のクラスの方々とのコミュニケーションから足技の武道を嗜んでいる筈。巻き込まない様にひよりに声をかけると、彼女は素直に屈んでくれました。
「このっ…!」
「んっ…、やぁっ!」
「えっ、あぅっ…!」
綺麗なフォームで放たれた右足。足刀部分を首を逸らして避けると、タックルする形で伊吹さんの胴に抱き着き、姿勢を崩します。片足立ちの伊吹さんはそれに耐えられずに倒れそうになって―――腰に後遺症が残ると危ないので、特別棟の壁に押し付けるように向きを
「くっ、
「動かないで下さい」
背中を打ち付けた衝撃にズルズルと姿勢を崩す伊吹さん。地面に着く少し前に、両腕の手首を抑えつけ、両の足の間に膝を差し込む。これで、伊吹さんは抵抗できません。
「良い気になるなよ。まだ私は「この姿勢、腰を浮かせていたらもう足は使えませんよ」な…っ、ぐ、」
「………っ!」
伊吹さんを片膝を立てるような姿勢で抑える。軸が無ければ、彼女の蹴り技は出せず、こうして密着していれば頭突き以外の抵抗は出来ない。
その後も顔を真っ赤にしてこちらを睨んで、抵抗を重ねようとしたしてきたのですが、相手はもう一人いる。
…時間切れ…ですね。やむを得ず、両手を解放して「あっ」と驚く彼女の両側の首を一瞬だけ圧迫する。
「ごめんなさいね…」
「ぅ…」
身体から力の抜けた伊吹さんを壁に寄りかけて、呼吸を確認する。規則的な息遣いに安心するとパチ、パチと拍手をしてくる彼に向き合う。
「ク、クク。…なんだなんだ。
「………ひより、私の背中に」
「は、はい…」
「………フン」
夕日の刺すこの場所-――初めて会ったその時のように、龍園君の眼はギラギラと輝いていて。
それゆえに、「どうして?」という思いが希求します。しかし、そんな彼から返されたのは言葉ではなく、鋭く伸ばされた右腕でした。
「オラァ!」
「…!」
先ほどよりも、
ただ、避けて背後のひよりを危険に晒す訳にはいきません。油断せずに腕に手を添えると、それを払わずに今度は時計回りに上半身を捻り左肘が。
「お姉様っ!」
「ん、と…」
「…、チィ!!」
「………っやぁ!」
肘は拳よりも固い。頭部や胴に当たっても重い衝撃を受けてしまいます。…ですが、単純にリーチは拳の半分。それにフェイントをかけた事で体重を十全に込めての一撃ではない。ならばと、振るわれる左腕の下を潜るように彼の背中側に。警戒をしていたのかもしれませんが、不意を突く形で彼の膝の裏を突き崩す。このまま腰を打ち付けると危険な為、路傍の雑草の生い茂る方向へと掌底打ちで突き飛ばします。
「ガ、…、………ッ!!」
…彼の動きは、きっと武道や格闘技ではなく我流のモノ。その証拠に有段者の方と立ち会った時のような急所を庇う動きや、こちらの手を読もうとする気配があまりない。ですが今も、受け身を取って直ぐに立ち上がる。
土に塗れながらもこちらを油断なく見据える彼は、とても実践慣れをしているのがよく分かります。
「龍園君。………一体、なにがあったのですか?」
「………クソが!」
今度は低姿勢での組みつき。たしかに、男女の筋力差からいっても掴んで組み伏せれば男の龍園君に軍配は上がるでしょう。しかし、あまりに
「………」
…何故、龍園君は掌を握りこんでいる?掴みかかるなら、掌を開ける筈です。押し倒すならそれこそ飛び掛かる為に、腕組をして肘を前。頭部を護る形を取る筈。なら何故?…何か、
「ラァ!」
「………っと、」
「っ危ないっ…!」
「これで―――」
案の定、開かれた彼の手からは砂が握り込まれていました。半歩後ろに下がって目に入るのを避けると、目前には今度こそ全力で拳を振りかぶる彼の姿が。背後からのひよりの悲鳴が耳を刺します。…心配させてしまいましたね。そろそろ終わらせましょうか。
「少しだけ、痛いですよ?」
「は―――」
「え―――」
「失礼しますっ…!」
本来、殴り掛かって来た相手に有効なのは足を払ったり手を払ったりすること。…ですが、幸いといって良いのか私と龍園君には身長差がある。彼の拳の位置は
顔の正面に迫る拳を避けて、そのまま彼の胸元に迫る。半回転して手で掴むのは彼の腕と制服の腹部のあたり。慣性の法則で、私の正面に進もうとする彼を背負い投げの形でそのまま地面へ―――投げる!
「やぁっ!」
「…づ、ぐぁっ…!!」
「…ふぅ」
「お姉様っ…!」
かけられた砂をパタパタと払う。心配させたのか、駆け寄ってこようとするひよりを手で制して、龍園君の様子を伺います。
しっかりと自発呼吸をして、気も失っていない。油断なくみていると、彼は黙ったまま立ち上がりこちらへ向き直ります。
「こんな、このような短慮。…いつものあなたらしくないのではありませんか?」
「………」
「………(いつもの…?)」
「龍園君…!」
西日。逆光によって、彼の表情は伺えません。でもその瞳の色だけは、変わらないまま龍園君はこのような…凶行、に及んだ。
…何故、彼は何も言ってくれないの?…まさか。
「…龍園君、まさか…」
「………!」
「お姉様?」
「あ、…ええと…その。
「以前…?」
「………(以前…?)」
この場にはひよりも居ることに注意して、彼にのみ分かるように理由を伝えます。
※0点
「………」
「………」
「………」
「………」
「………そ、そうだ」
「!」
長い沈黙の後、真剣な表情で彼は一言だけ漏らします。それにハッとすると彼はわざとらしく肩をすくめ、さも冗談だった、というような表情を浮かべます。
「…………と、言ったら…お前はどうする?」
「変わりません。貴方を助けたい。…そう思います」
「(…!)」
「………」
「…ハッ、相変わらずお人好し、だな」
そういうと掌で表情を隠して、クツクツと嗤う龍園君。…きっと、照れ隠しなのか。それともクラスメイトのひよりには心配を掛けまいとしているのでしょうか?思わず、といった態度で私もクスリと笑ってしまいました。
「ふふっ…」
「…なんだ」
「っいえ、失礼、…少し安心しただけです」
「そうかよ…」
龍園君は、こんな私の事を「お人好し」だという。…私に言わせれば、それは彼も同じだ。不器用で、少し乱暴で。…でもクラスの皆様の事を大切に思っている。
彼は、何時だって真剣だ。真剣にこの学校のクラス対抗戦に挑もうとして、その為に対戦相手のとこも真剣に気にしてくれている。…夏休みに彼と話した時に感じた些細な胸の痛みなんて、もう気にはならない。そんな彼の真心に触れたような気になって、思わず二人で笑い合ってしまう。
もしかしたら龍園君も、同じなのかも―――。
「………フッ」
「………♪」
「…ごほんっ」
「「!」」
ハッとなる。振り返ると、こちらをジッと見るひよりと目が合った。
「ぁ…ひより、ごめんなさいね?」
「いえ…お気になさらないで下さい。ただ、おひとつ伺いたいことがあるのですが」
「?なにかしら」
「その…夏休み、龍園君がお姉様の部屋から出るのを見た方が居たのですが…」
「夏休み…?あぁ、それなら―――」
※この後、(なぜか根掘り葉掘り)説明をしました。
何故か途中、目が覚めた伊吹さんにも質問攻めにされましたが。…??
あと、龍園君の相談についても協力を約束すると、龍園君もとても喜んでくれました。伊吹さんやひよりは心配そうでしたが、二人にも心配いらない旨を伝えてその場で別れます。
ーーーさて、それでは…葛城君や有栖。…
※善意
――――――〇――――――
Side.綾小路 清隆
ギスギスしていた体育館での顔合わせから数日、徐々に3人の欠けた生活にも慣れが広がって来た。
今日は体育祭用に特設された週に一度ある2時間HR、競技の出場順などを話し合う予定だった。
教壇に立つ平田は、まだ憔悴しているようだが辛うじて笑顔が戻っている。
今はチョークを手に、黒板に出場競技を箇条書きしてこちらに振り返った。…平田についてはまた、テコ入れする必要があるかもな。
「………それじゃあ、みんな。体育祭について相談を始めようか」
「平田君…」
「………でも、Aクラスを待った方が、ないんじゃないかな?」
「いえ、…それよ、り……、んん゛。…そうね、櫛田さんのいう事にも一理あるわ」
「………」
真っ先に反応した櫛田に続き、堀北が声を上げる。…隣の席だからか聞こえたのは、少し無理な咳払い。思わず口に出した、という様な声を誤魔化して、堀北は立ち上がり周囲を見渡す。
「今回、私。…いえ、私達は出来るだけAクラスと協力体制を示したい。…理由の説明をしてもいいかしら?」
「…うん、お願いできるかな?堀北さん」
「お願いねー!」
「ありがとう」
櫛田、軽井沢の
まず第一に、今回の赤組と白組の勝負は赤組が勝つ可能性が高いこと。理由としては上級生たちの存在が上げられた。3-A、2-A共に生徒会の会長、副会長が所属し実力、影響力共に申し分ない事。
次に、1年での競技戦では白組の方が勝っているということ。クラスのチームワークでは随一のBクラスと、武闘派揃いのCクラス。それらが協力する白組に対し、自分たちDクラスは一歩も二歩も引けを取っているということ。…ここまで話した堀北は、再び周囲に視線を向けて意見を募る。
「ここまでの説明で、なにかあるかしら?…綾小路君、どうかしら?」
「俺か?…そうだな。上級生のAクラスに生徒会のメンバーがいるのは分かったが、こっちのAクラスにも西園寺が居るだろ?」
「あ、確かに!」
「………、まあ、そうね。…軽井沢さんはどう?」
「え?え~っと…、大丈夫…かな…?ね!」
「…う、うん」
俺の意見は軽く流されたのか、直ぐに軽井沢に質問する堀北。当の軽井沢は誤魔化す様に佐藤に水を向け、彼女もコクコクと首を縦に振る。一瞬、4月のツンドラ期の視線が向いた気がするも、眉間を軽く揉んで堀北は発言を再開する。
「ありがとう綾小路君、軽井沢さん。…でもなで…、…西園寺さんは女性で、そして今回のクラスを仕切るポジションかはまだ分からない。それに先日、Bクラスの一之瀬さんも生徒会入りをしたそうよ」
「そうなの!?」「知らなかった…」
堀北の言葉に、クラスが少しだけざわつく。流れを断ち切るように手を叩き、視線を集める堀北。…今やクラスは堀北の声に、言葉に完全に耳を傾けている。入学当初には考えられなかった堀北の成長には時より目を見張るものがある。
堀北鈴音の成長は、俺の胸中に言語化し難い不思議な気持ちを感じさせていた。もう少しだけ、彼女の成長を観てみたい。確かめてみたい。その為に、俺はーーー
「―――だから私たちは今回、ダメージを最小で抑える必要がある。…特にAクラスの契約がある生徒も今回の試験で協力姿勢を見せないと以降のもっと厳しい試験で―――」
「………」
「………?」
堀北の声を右から左に聞き流しながらも、机の下で櫛田にメールを送る。表情こそ笑顔だが、今のクラスは堀北の言葉に耳を傾けている形だ。それを快く思わない生徒が居ることは重々承知だし、それをひと纏めにできるのは彼女しかいない。
視線を戻すと、議題は、3名の欠員が出て複数人の競技の参加出来ない組の話に移っていた。体力が無い生徒で、ただし学力に問題のない啓誠が騎馬戦や二人三脚での不参加枠になることを大筋で決定していた。それが纏まり空気の弛緩したタイミングで、櫛田は手を上げた。
「あ!少しいいかな?」
「…なにかしら?櫛田さん」
「今回の試験、Aクラスと協力するのは凄く分かったんだけれど、
「それは…確かにそうね。何か、良いアイディアがあるのかしら?櫛田さん」
櫛田は…相変わらず
「うん、だから―――Aクラスと相談や、お話合いは
「それは「だ、大丈夫なの?櫛田さん」「そうだよ、Aクラスの人たちちょっと怖いし、心配だよ…」…」
「大丈夫!Aクラスにも仲の良い友達が居るし、…それに、
「櫛田さん…」
「桔梗ちゃんっ」
堀北に向いていた視線は、今や大半が櫛田へと向いている。…これで良い。さて、ここからがお前の腕の見せ所だぞ?堀北。
俺は視線を教壇に立つ平田に向ける。目が合った彼は、再び話の流れを修正した。
この後めちゃめちゃ議論した!
体育祭に向けて、Dクラスの結束が高まった!!
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・ある日のAクラス
「撫子さん、今…少しよろしいですか?」
「あら有栖。どうかしたのかしら?」
「ええ…最近、撫子さんは体育祭に向けて日々を忙しく過ごしていますよね?」
「…そう…ね。でも、有栖も参加表の調整で働いてくれているでしょう?」
「神室さん達にも手伝って貰って、取り組んでいます」
「そういう協力の形も、大切だと思いますよ?」ナデナデ…
「ん…はい。ありがとうございます。…私も仕方が無いことは理解しています。ですが…」
「(………!)」
「もし、私の身体がもう少し健康だったら…。そう…思ってしまうんです…」
「有栖…そうね、なら一緒に皆様の力になれることを考えましょう?例えば…」
「例えば?」
「皆様に差し入れ…なんてどうかしら?」
―――――――――
読了ありがとうございます。
不当な暴力には屈しない撫子ちゃん16歳。若干デバフ状態ですが、
それでも武道持ちでない限り基本的には負けないくらいには強キャラです。
続きは、今日明日に投稿予定です。
またお楽しみにしていて下さい。
感想、高評価力になっています。これからも、よろしくお願いいたします。
今作では、可能な限り登場人物や特別試験などは原作を遵守して進行していますが、オリジナルの試験やイベントなどを差し込んでも良いかのご相談です。ここで結果が分かっても展開的に追加しない事も十分あるので、お気軽にお応え頂けると幸いです。市場調査のようなものと思って下さい。
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大賛成!クラス変動や退学者を出して良い!
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賛成寄り。ただ退学者などはやりすぎ。
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中立。あってもなくても面白ければ良し。
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あまりやって欲しくない。既存試験で十分。
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反対!原作試験でこそ、独自展開を見たい。