ようこそ(勘違い)大和撫子の学校生活へ   作:エカテリーナ

68 / 110
おまたせしました、分割版の続きになります。
体育祭開始まで、もう一話差し込んで開催予定です。
それでは、どうぞ!


④:秘密契約

※ある日のAクラスー家庭科室ー

 

「こう…ですか?撫子さん」

 

「ええ、上手よ有栖。…後は、コレが焼きあがったら完成ね。

 

「作ってみたのは初めてでしたが、意外と単純でしたね」

 

「そう?…なら、この調子なら次は、ケーキとか作ってみる?」

 

「ふふっ、よろしいんですか?皆さん一緒に練習したいと楽しみにしているのに、私ばかりお時間を頂いてしまって」

 

「大丈夫。…良いのよ?有栖の事を気にしているのは、私ばかりじゃないってことね」

 

「…!皆さんが…そうでしたか、それならまた是非、お願いしますね?撫子()()()()?」

 

「先生なんて…もう。…有栖は物覚えが早いから、自慢の教え子よ?」

 

「……ふふふ、お願いしますね?(…計画通り!)」

 

「お任せあれ♪」

 

「…(めっちゃ美味しそう、クッキー、味見できないかな?)」

 

 

―――〇―――

 

Side.椎名 ひより

 

 

「………」

 

「………」

 

「………」

 

 

目の前には正座をさせた龍園君と伊吹さん。そろそろ1時間になり、きっと感覚もないでしょうが許すつもりはありません。…まさか、あんなことをお姉様にするだなんて…!

でも、お姉様…カッコ良かったです。龍園君の事を、まるで小説の登場人物みたいに避けて、転ばせて、最後には投げ飛ばしてみせた。

 

そ、それに私を最後まで庇って下さって…凄かった…!この、ペン型カメラの映像は私だけの…あっ!でもお姉様のお姿を独り占めすると、隊則違反(※)で除名処分に…!うぅ~。…今日、今日だけは…私だけの思い出に…!記憶の全てに焼き付けないと…!!

※親衛隊

 

お姉様の活躍を思い出していると伊吹さんが辛そうな顔で手を上げます。

 

 

「………あの、ひより…そろそ「ダメです」はい…」

 

「チッ………」

 

「舌打ちをしたので1時間追加します」

 

 

まだまだ反省が足りない二人。延長を伝えると元気そうな声を上げたので、まだ大丈夫でしょう。…それに、伊吹さんはお姉様から抱き着かれて、見つめ合って…!あ、あまつさえか、壁ドンまで!

※主観

 

全く、撫子お姉様がお許しになったから正座で済ませていますが、本当だったら暴力事件で停学やクラスポイントの減となっている所です。それを、お姉様が

 

 

『…ええと、これも青春?というものなんですよね?私は大丈夫でしたし…ね?ひより』

 

 

クラスの方に教えて頂いた本にありました。なんて言っていましたが、どんな本をお姉様に勧めてるんですかっ。

 

しかも龍園君、お姉様が怪我していないかと心配するや否や治療費がどうだなんて、厚顔無恥にも程がありますっ!

『もし請求したら、Cクラスから手を出したことを証言する』と言えば舌打ちをして引き下がりました。…その様子をみてお姉様がクスクスと笑ってくれたのが、唯一の救いでした。

 

 

「はぁ…」

 

 

全く、どうしてこんなことになったのか。私は、昼休みに話した龍園君たちとの話を思い出すのでした。

 

 

・◇・

 

 

「狂言…ですか?」

 

「そうだ」

 

 

昼休み、Cクラスで龍園君の机の周りには彼の取り巻きの方々。それにいつもはいない金田君、伊吹さん、私が集まっています。

そんな中にクラスのリーダーである彼の口から出た言葉に、皆さん首を傾げています。

 

 

「狂言…て、なんすか?」

 

「元々は能の演目で使われた言葉ですが、分かりやすく言うと嘘や騙す、誤魔化すという意味です」

 

「お、おぅ…?」

 

 

言葉の意味の方が分かっていなかったんですね…。山田君は兎も角、他の方は日本生まれの日本育ちでしょうに。納得を見せる周囲に龍園君は鼻を鳴らすと、話を続けます。

 

 

「今日の放課後、Aクラスの西園寺を呼び出した。…目的は、参加表の入手だ」

 

「で、でも相手はAクラス…。敵対してる赤組なのに、参加表を手に出来るんですか?」

 

「………そこで、先ほどの狂言というのが計画に関わってくるのですか?龍園氏」

 

「ククッそうだ、金田。…お前ら、無人島、そして船での奴の印象を言ってみろ」

 

「!」

 

 

お姉様の事なら100でも200でも言えます。そう、口を開こうとすると「ひよりは黙れ。…おい、石崎」と止められます。…むぅ。

 

 

「えっと、可愛かったです!」

 

「あぁ、確かに…」「それに優しかったな…」

 

「…他には?」

 

 

口々に、お姉様を褒める皆さん。それにうんうん頷いていると、今度は金田君と伊吹さんにも水を向けました。

 

 

「私は…船での試験を全員正解で終えたのはアイツなんでしょ?かなり頭がキレる…とか?」

 

「…金田」

 

「はい、龍園氏。…他のクラスへ、非常に強い影響力を持った方かと」

 

「影響力?」

 

「そうだ金田。奴はAクラスだけじゃあない。Bクラスの一之瀬や神崎、Dクラスの櫛田とも太いパイプを持っていやがる。…他にも生徒会や、部活も含めればその影響力は未知数だ」

 

「そっか…」

 

 

深刻な表情を浮かべる伊吹さん。…ふふ、実際、親衛隊のメンバー(私も総数は把握していませんが)のネットワークは広い。

貢献度が高いメンバーには、お姉様の憩いの時間を過ごす穴場スポットなども共有されるとか。羨ましい限りです。私も、もっともっと、お姉様の事を…!

 

 

「それで?…その、狂言だっけ?何の関係があるの?」

 

「………なあに、話は簡単さ。端的に言えば、奴を騙くらかして、参加表を手に入れる。」

 

「ど、どうやってです?」

 

「あ?それは俺が直接やる事だ。…テメェらは当日、余計な部外者がちょっかいを掛けに来ねえかを見張れ」

 

「「はい!」」「分かりました!」

 

 

龍園君はそういうと、取り巻きの方々に解散を告げます。…残ったのは、私達と山田君、石崎君。金田君は眼鏡をクイ、と直しつつ龍園君に向き合います。

 

 

「それで、龍園氏。…僕や椎名氏、伊吹氏を呼んだ理由を聞いて良いでしょうか?」

 

「クク、よく分かってるじゃねえか金田。…お前やひよりに求めてるのは、そういう部分での働きだからな」

 

「恐縮です」

 

「……さっさとしてよ」

 

 

名前を呼ばれなかったからか少し不機嫌そうに、伊吹さんは腕を組んで先を促します。

 

 

「伊吹。お前がやる事は、直前に話す。…今は黙って話だけ聞いてろ」

 

「ちっ…」

 

「大筋はこうだ。―――"俺達CクラスはDクラスと遺恨がある。その借りを返す為に直接対決をしたい。…だから参加表が欲しい"―――とまあ、こんな具合だ」

 

「遺恨…例の事件の事ですね?」

 

「………」

 

 

…あれはたしか、Dクラスの生徒へと冤罪をかけて暴力事件を起こしたという。それを理由に、白黒をつけようとしたい…。まあ、信じる信じないは兎も角として理由は納得できました。ですが…

 

 

「…そんな理由で、敵のクラスに参加表をくれる訳ないでしょ?」

 

「ククク、参加表をってのはあくまで叩き台だ。本当の目的は、別にある」

 

「別…?」

 

「………()()()()()()西()()()()()()()()。これだけ出来れば、目的の8割は達成したも同然って事だ…!」

 

「え?………」

 

「…!そうか、()()。それが今回の目的ですね?」

 

「?」

 

 

訝し気に首を傾げる。でも、金田君のハッと気が付いたような態度に、上機嫌になる龍園君。その表情から、相変わらずダーティな戦術と取ろうとしているのではないかと不安になります。

…そしてその予感は、やはり的中してしまいました。

 

 

「クク…!良いぞ、金田。その通りだ」

 

「え?ど、どういう事ですか?龍園さん」

 

「石崎、もしもお前が今回の、…俺が預けた参加表を落としたとしたら…どうする?」

 

「え!?えっと、…全力で捜します!」

 

「当然だな。…で、その参加表を目の前で拾ったAクラスの奴がいた。どうする?」

 

「取り返します!」

 

「だよなぁ?…でだ。ここからが肝心だ」

 

 

クツクツと嗤う様は、完全に悪役のよう。同じクラスの筈なのに、全く安心できない悪意…恐怖を植え付けてくる。思わずゴクリと生唾を呑む石崎君に、勿体つけて龍園君は続けます。

 

 

「Aクラスの奴がこう言って来る。『返して欲しかったら100万ポイント寄越せ』…さぁ、どうする?」

 

「そ、そんな大金…無理ですよ」

 

「だろうな。…で、だ。お前がそういうと相手は笑って、『冗談だ。5000ポイントで良いぞ。龍園には黙っておいてやるよ』ってな」

 

「そ、その位なら…払うと思います」

 

「ドア・イン・ザ・フェイス…ですか」

 

「ドアイン…?」

 

 

首を傾げる伊吹さんに、説明をする。

 

ドア・イン・ザ・フェイス。―――先に過大な要求をして、その後に簡単な要求をする。その落差や、後ろめたさ等によってその2度目の()()の要求を通すという交渉術だ。

小説で登場したテクニックを諳んじてみると、伊吹さんや金田君も頷いてくれる。

 

 

「な、なるほど…そ、それで俺はポイントを払っちまった訳なのか…」

 

「…あんたが単純なんでしょ」

 

「なんだと伊吹っ!」

 

「チッ…うるせえぞ、お前ら。…おい金田、後はお前が説明しろ」

 

 

うんうんと納得を見せる石崎君に、軽口を漏らす伊吹さん。それに話の腰を折られた龍園君は、金田君へとバトンタッチをします。メガネを直しながら頷いて、石崎君に話の続きを始めます。

 

 

「続きですが、石崎氏。ポイントを支払ってあなたはAクラスの生徒から参加表を取り戻しました。…ここまではいいですか?」

 

「お、おう…大丈夫だ」

 

「そして、無事に体育祭の当日。…なんと、僕たちCクラスは大敗しました」

 

「え!?なんでだ!?」

 

「敗因は、参加する競技のほぼ全てで自分たちよりもやや強い生徒が参加して、完封されたからです」

 

「ま、まさか…」

 

「そう、参加表の情報が、漏れていたんです」

 

 

実際に想像してしまったのか、顔色を悪くする石崎君。他人事ではないと思ってるのか、固い表情の伊吹さんといつも通りの山田君。

 

 

「当然、龍園氏は大激怒です」

 

「うぅ…」

 

「『一体だれが参加表を漏らしたんだ、絶対に犯人を見つけて制裁をする』…と。さて、石崎氏」

 

「ま、まだなんかあるのかよっ」

 

「内心、恐怖に怯えているあなたの前に先日のAクラスの生徒が現れます。…どうしますか?」

 

「ど、どうするって…そりゃ、俺達のクラスの参加表を使ったのかって、聞く…と思う」

 

「…っ」

 

 

ニヤニヤと嗤う龍園君に、この話の終わりを理解します。…やはりなんというか卑劣な。まるで、ヤクザのようなやり方です。

 

 

「はい、そうすると彼はこう続けます

 

『もちろん俺達は参加表を使った。()()()()()()()()()参加表を使って』―――と」

 

「なっ!なんだよ、そりゃ…!」

 

「彼は…そう、こう続けます。

『このことを龍園が知ったらお前はクラスの裏切り者になる。…バラされたくなければ』、」

 

「―――これからも()()()()しようぜ?…てな。ククク…!」

 

「………あっ」

 

 

最後に言葉を被せる様に、龍園君が口を開きます。少しして意味が分かったのか、思わずというように声を上げる伊吹さん。山田君もスラング…だと思います。なにか小声で呟いて、驚くようなジェスチャーをしていました。

 

そう、これは契約を…秘密を利用した脅迫だ。

 

 

今回のお姉様への交渉を今の例えに落とし込むと、こうなる。

 

 

まず、パターンA.

『撫子お姉様が素直に聞き入れて、参加表の事を教えてくれる』

=この場合は、そのまま情報を得られたので問題はない。…でも恐らく、こうはならない。

 

そして、パターンB.

『撫子お姉様が一部、お願いを聞き入れて情報を教えてくれる』

=この場合が、さっきのパターン。

 

情報を漏らしたという事実を盾に、これからも撫子お姉様を…()()()。秘密をバラされたくなければ、と。

 

 

「で、でも脅すんなら俺らは体育祭、奴らに勝たなきゃダメですよね!?」

 

「はい。…ですが、龍園氏の元で一本になっている僕らと、一之瀬氏の元で纏まるBクラス。向こうはAクラスが手強いでしょうが、バラバラのDクラスは更に3名の退学者を出したと聞きます。全体は兎も角、学年では白組の勝ちが濃厚でしょう」

 

「お、おぉ…それなら…!」

 

 

石崎君も改めて金田君に説明を受けて、理解に及んだのか首をぶんぶんと振っています。…しかし、私と致しましてはこんな作戦に協力する気は毛頭ありません。席を立つ私に、皆さんの視線が刺さります。

 

 

「龍園君。こんなことを聞いて、私が協力するとお思いですか?」

 

「不服か?ひより。…お前の役割は正直なにもない。ただ突っ立って、後は俺と伊吹が交渉する」

 

「………」

 

「それに、今回の作戦はある目的の為、必要な一手だ」

 

「目的?」

 

「これを見ろ。…他言したら、殺すぞ」

 

「…は、はい」「なんなのよ…」

 

「…?」

 

 

龍園君は何かの用紙を取り出して、机の上に広げます。皆様でのぞき込むと、それは先日の船上試験でも見た契約書のようで、その内容は以下の通りです。

 

 

―――

 

契約書

 

西園寺撫子(以下、乙)は以下の条件が満たされた場合、契約者①(以下、甲)または契約者②(以下、丙)の所属するクラスに移動する。

またその際に必要とするプライベートポイントは、移動先のクラスの甲、または丙が常に保持し、使用するものとする。

1.乙が所属するクラスが、クラスポイントにおいて甲、または丙よりも下回った時。

2.1を満たした時点で、甲または丙が個人でクラスの移動を行っていない。

 

・・

 

 

1-A 西園寺撫子

契約者①

1-B 一之瀬帆波            

契約者②

1-C 龍園翔            

 

―――

 

 

「クラス移動、契約…!?」

 

「ちょっと…これって…!」

 

 

契約書を読んだ金田君と、伊吹さんが驚きの視線を龍園君に向けます。…声を上げようとしていた石崎君は、山田君に口を塞がれていますね。

 

 

「フン…理解したか?」

 

「………まあ、なんとなくは。とりあえず、西園寺をCクラスに引き込むってこと?」

 

「あぁ。…奴の能力は、非常に高い。友好関係(パイプ)や生徒会役員って権力は、俺達CクラスがAクラスで卒業するのに必須な要素だ。…敵を牽制する意味でもな」

 

「大半はアンタのせいでしょ」

 

「ですが西園寺さんの学力は学年随一です。勉強会を開いていたとも聞きますし、僕たちCクラスの学力向上にも大いに役立つかと」

 

「ぷはっ。…そ、そうだよな!なんていうか、BBQの時も他の連中も満更じゃなかったし…」

 

 

皆さんの声を聴きながらも、私の視線は契約書にのみ向いています。………これは。

 

 

「龍園君」

 

「…なんだひより。お前が大好きな西園寺がウチのクラスに来る「契約書はこれ一枚ですか?」………」

 

「え?」

 

「椎名氏?」

 

「………」

 

そういうと途端に無言になる龍園君。二人で言葉なく見つめ合っていると、伊吹さんや金田君も同じように視線を向けます。そうして漸く、という風に舌打ちをして、龍園君は()()()()の契約書を取り出します。

 

―――

 

契約書-2

 

1.甲及び丙は乙の所属するクラスの生徒(以下、丁)へ特別試験を除き暴力・諜報活動・イジメ行為などの丁への不利益を理解した上での一切の行動・言動を禁じ、甲及び丙の所属するクラスの生徒へそれを遵守させなければならない。

2.本契約は乙の同意なしに丁へ漏らしてはならない。

3.甲、または丙、並びにそのクラスの生徒が1または2を破った場合、乙はそのクラスへの移動を拒否する事が出来る。

4.2回目以降、1または2の契約を破った場合、該当する契約者①、または契約者②の署名を行った生徒は自主退学する。

5.本契約は、乙が契約締結時のクラスから移動をするまで有効とする。

6.乙は本契約とクラスポイントの変動を除く理由で、自主的な個人でのクラス移動を行わない。

―――

 

 

「っ!やはり…!」

 

 

………思わず手に取った契約書に皺を作ってしまう。

覗き込んできた金田君や伊吹さんも顔色を変えて、契約書を凝視する。

 

 

「ククク、相変わらず撫子の事に関わると感が冴えるじゃねえか」

 

「契約者…これは」「……そういうこと」

 

「龍園君…あなたと言う人はっ」

 

 

不愉快な龍園君の声に思わず激昂しそうになりますが、横からの金田君の必死な声に頭が冷えます。

 

 

「待って下さい、椎名氏!…龍園氏、この、一枚目の第2項…それに契約者の欄。これは…」

 

「目敏いな、金田。…お前の予想通りだぜ?」

 

「…!で、では…契約を…2()()破ったら、………()()()も?」

 

「ああ、()()()()()退()()()()()()()

 

「…はぁ!?」「え!」

 

 

驚く伊吹さんと石崎君の声に、再び契約書に目を走らせます。

…、……、………!これは…。

 

 

「ちょっと、どういうことなの龍園…!」

 

「ぎゃあぎゃあ喚くなよ、伊吹。文句は()()()()()()。クク…」

 

「椎名に、…ですか…?」

 

「………はい、伊吹氏、石崎氏。…この契約は、徹底して隠蔽する事が第一義。もし暴力沙汰や、この契約がバレてしまったら、西園寺氏はこちらのクラスへの移籍を拒否することが出来ます」

 

「で、でもそれは…二回やったら、それで退学するのは契約した龍園だけじゃないの?」

 

「いえ。…それを許すと、秘密を知った龍園氏や一之瀬氏をよく思わない方があえて契約違反を犯して、」

 

「…契約をした生徒の退学を誘発できます」

 

 

どうせ、それを防ぐ為の2つ目のルール。そして最後には単独でのクラス移動を防ぐ文言まで盛り込まれている…!

この契約、Bクラスの一之瀬さんまで…!?なんということでしょう。―――おそらく、この契約はお姉様が自らのクラスの方々を護る為に…!

※5点

 

 

「ククク…」

 

「…ちょっとついていけないんだけど。それで、なんで私達も退学になるの」

 

「………」

 

 

その後、眼鏡の位置を直した金田君が解説をします。…すなわち、契約の()について。

 

この契約、端的に言うとクラスでAクラスを上回ると撫子お姉様がクラス移動をしてくれるのがこちら側のメリット。

そしてB・Cクラスからの盤外戦を防げるのがAクラスの…いいえ、契約を内密にしている以上、撫子お姉様のメリットです。

 

最後に、契約違反を防ぐ為のペナルティ。…権利の喪失と、自主退学。

 

権利喪失はそのまま、お姉様は契約を破ったクラスに行かなくてもいい。自主退学は、一見すると退学になるのは龍園君か一之瀬さんだけ。…ですが、一枚目の2項と、契約者の記入の空欄。

金田君からも説明が為され、皆さん違いはあれど理解の色を示します。

 

 

「―――と言う訳です。そして、クラス移動用ポイントは契約者が保持するという文言。…退学を許すということは、2000万ポイントごとクラスから損失を出すということです」

 

「…はぁ。…面倒ね」

 

「けれど一定数、クラス内でこの契約を知る人は必要です。…Bクラスなら、全員に周知しても良いのでしょうが」

 

「クク、俺らCクラスじゃあ、そうはいかねえよなぁ?」

 

「………」

 

 

そう、私達のCクラスは龍園君の独裁体制。成功している内は良くても、失敗すればその体制は瓦解する。常に裏切り者を警戒する以上、この密約を知ったら一蓮托生にするしかない。

 

 

「そ、そうか。…あ、だから契約者のところにこんなに空欄が多いんですね」

 

「そうだ。…別にお前らに裏切る気が無ければ書けるよなぁ?おい…」

 

「も、もちろんです!」

 

 

凄んだ龍園君に、慌ててサインをする石崎君や金田君。ため息を吐きながらサインをする伊吹さん。

私も、回って来たペンを受け取ります。ですが…。

 

 

「………」

 

「なんだひより。お前は反対なのか?」

 

「…」

 

 

本当なら、こんな契約結びたくなんてない。でも、

 

 

「ククク、…ま、分かってんだろ?この契約の―――」

 

「分かってますっ…!!」

 

 

乱暴に名前を書き記す。…そう、この契約には正味()()()()()()()()のです。

今までのような龍園君の命令で、私達がAクラスへのちょっかいをする必要がなくなる。その上、クラスが上回ればお姉様がクラスに来てくれる。

ひとつだけ、この胸に刺さったトゲがあるとすれば、それは―――。

 

 

「(お姉様に、嘘をつく事に―――)」

 

「…よし、これで契約完了だ。…おい、放課後には動くぞ」

 

「「はい!」」

 

「…はいはい」

 

「Yes Boss!」

 

「この場に居るお前らは、Aクラスにちょっかい出す奴が居たら遠慮はいらねえ。実力行使で止めろ。俺の名前を出して良い。とは―――」

 

 

ああ、お姉様。お許しください。

…もしも、私たちのクラスに来てくれたその時は…私が―――

 

 

 

―――――――――

※特別棟裏の後、Cクラスの反応。

 

龍園「(コイツマジか…)」

 

伊吹「は…!?え、強っ…」

 

ひより「お姉様お姉様お姉様…」

 

石崎「( ゚д゚)…」

 

山田「………Japanese "Ninja"…?」

 

金田「何故、龍園氏に汚れが…?交渉が荒れたのですか?え?負けた?は…!?」

 

 




読了、ありがとうございます。
さて、ここまで長かったですがこれで撫子がクラス移行するフラグ建設は済みましたね。
…もう、いつこの契約を漏らしてAクラスとか曇らせようか楽しみで仕方ありません。
しかし今すぐではないので、皆様はいましばし展開をお楽しみにお過ごしください。

続きは今3割くらいです。最近は、面白いよう実作品が多々生まれていて嬉しいです。
最新刊、10/25が待ち遠しいですね。

それではまた、お待ちくださいませ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。