ようこそ(勘違い)大和撫子の学校生活へ   作:エカテリーナ

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2,3日の更新に間に合いました。
7話です。


UA10000ありがとうございますー
誤字修正もありがとうございます。

今回は3年生と会ったり、アンケート結果を反映したりします。
では、お楽しみくださいませ。


2日目③:部活説明会と、生徒会

 

 

第一体育館についた撫子は、大勢集まった同級生達を見て出遅れた事を察する。

ただ、声はマイクで拡散され、視力も両目共2.0()()の撫子は入口近くの壁近くでステージ壇上に注目する。

 

あと数分で会は始まる。そんな最中、チラチラと撫子の様子を見て話す声。

「あ!あれ見ろよ…!」「Aクラスの…」「………」ザワザワ

 

 

一人が気付くと(男子の)大凡の生徒がバレバレの様子でこちらを覗き見るのを感じる。

これだ。正に入学式の一幕の再開だ。あの時とは違い、咎める教師が居るわけではないのに、近寄っては来ない。

 

 

撫子は直接声をかけらないのに此方の事を話されるのがあまり好きではなかった。こういった反応をする男性の反応は大体決まっている。

1、目が合うと、逸らされる。

2、話しかけると、挙動不審になり逃げる。

人類皆友人な撫子にとって、(本当に)数少ない辟易としてしまう存在が、遠巻きに見ている他人(かれら)だった。

 

 

つまり彼らは私と仲良くなりたくない方々なのだと、撫子は幼い頃にあの人に教わっていた。

 

悲しいとも思うし、残念とも思う。ただ、撫子はその時は撫でてくれた大きな掌と、忘れない言葉を思い出す。

『撫子、全ての人と仲良くすることは出来ない。人はそういう生き物だ。

だから、撫子と仲良くなってくれる人とは、仲良くしてあげなさい』

 

『はい、あなた様』

 

 

どんなことでも覚えている筈なのに、どうしても顔を思い出せない記憶。耳に残ったその言葉に撫子は今日も縛られている。

 

 

 

暫く壁の花として、貰ったパンフレットをパラパラと見ている撫子。既に100余名ほどの人が集まって、1年の半分以上の生徒がこの場にいることになる。一人で来る男子生徒、集団で来る女生徒、暇つぶしに話しているグループの顔ぶれを覚えていると、バスで見たような…?男女のペアで入ってくる生徒も入ってくる。チラリと見られたようだが、他の生徒よりも関心が薄いのか、自分と少し離れた壁側で会の始まりを待つようだった。

 

その後、説明会の開始を告げる放送と共に、檀上には各部活の部長だろうか。上級生と見られる生徒たちが各々の部活の紹介をしていく。胴着姿で初心者歓迎と紹介する柔道部の先輩、着物姿で活動内容を伝え、体験だけでもと勧める茶道部の先輩。

一つずつ部の説明が進むにつれて、会場の雰囲気は和気藹々としたものに変わっていく。生徒たちは、周囲の生徒とのあれが良い、ここに入りたいと相談していた。

 

撫子も茶道部に興味があったが、時間ギリギリに入ってきた二人組。男女の生徒の漫才の様な掛け合いにクスクスと上品に笑いが漏れる。

ハッとしてパンフレットで口元を隠して誤魔化そうとしたが、周りの生徒の視線を集めていることに気付き顔を赤らめて俯く。横目でこちらを見て目が合ったカップル(?)にもペコリとお辞儀をすると、撫子は目を閉じ説明に耳を傾けるのだった。

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

「―――我が校の生徒会には、規律を変えるだけの権利と使命が、学校側に認められ、期待されている。

そのことを理解できる者のみ、歓迎しよう」

 

 

そういって、最後の案内となった生徒会長の話が終わり、部活の入部勧誘が始まる。先ほどまでの静寂も、徐々に解け始めている。

 

目的の部活が決まっている生徒はその受付に向かっているが、大半の生徒がざわざわとその場に立ち尽くしている。

茶道部に興味があった撫子だが、この人波に飛び込む勇気はない。仕方なく待っていると、入部は後日で用紙の提出でも良いというアナウンスが流れた為、その場を離れる。

 

 

撫子が立ち去った後の第一体育館では―――。

 

 

「あの子が入る部活に入部しようと思ってたのに…」「…部のマネージャーとか…やってくれねえかな」ザワザワ

 

「茶道部とか…弓道部とかか?」「ばっか!テニス部に決まってんだろ!」

 

「お、おい…もしも…もしもだぞ?水泳部だったら、俺、俺…!」

 

 

そんな会話があって、女子や教師からの冷たい眼差しを向けられる男子生徒達の姿があった。

 

奥の机で受付を待つ上級生たちは気を取り直して新入生たちの手前、優し気な声で呼び込みをしている。

しかし、その目は共通して「ぜひ彼女を我が部に!」と爛々とした輝きを宿していた…。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

体育館から比較的早めに出ることになった撫子は、夕飯はどうしようかと考えながら帰路につこうとする。

しかし、校舎側から「きゃあ!」という声と、『バサバサ』となにか落としたような音を捕え、方向を変える。

 

校舎の中は人気がなく、音の発生源へは直ぐ辿り着いた。階段から下へ書類か何かを落としたのか、広範囲に散らばったそれを集める女性生徒―――。恐らく、先輩。

それに「先輩、お手伝いします」と声をかけ、書類を拾うためにしゃがむ。

 

 

「ふぇ?あ、ありがとう…ございます?」

 

「いえいえ、お仕事お疲れ様です」

 

 

自然に手伝いを申し出た撫子に、上の空な返事を返す―――()()()()の先輩。書類の中を断片的に目で捉えると、意見書や何かの発注書などが散見された。恐らく、学校の運営に関わる業務に就いている相手との推理だ。

 

その後、集め終わった書類だが、女性が持つにはそこそこキツイ量だ。どこまで運ぶかと手伝いを申し出ると、あわあわしながら遠慮される。

その後に何度かの説得(おねがい)で、書類の半分(+気持ち多め)を受け取ると目的地―――生徒会室へと入室をする。

入室前に、一度止まる。先に入った先輩は不思議そうに振り返るが、撫子は丁寧にお辞儀をして入室の挨拶をする。

 

「失礼いたします。1年Aクラス、西園寺です。入室致します」

 

「ふふっ、どうぞ。生徒会室へ」

 

 

礼儀正しい態度にほっこりする先輩。その後、お礼と一緒に自己紹介をした先輩、橘茜は飲み物を用意する。

むん、と意気込んで紅茶を入れる橘を微笑ましく見守っていると、ドアが開く音でそちらに目を向ける。

 

先ほど部活説明会で壇上にした生徒会長、堀北学の姿があった。あちらも、部外者のそれも一年生が居るとは思わずかすかに瞠目するも、直ぐに気を持ち直す。

 

 

「あ、会長。お帰りなさい!説明会お疲れ様でした」

 

「いや、これも生徒会長の役目だ。気にするな、橘。それよりも…」

 

 

何故ここに一年生(ぶがいしゃ)が?と目を向ける堀北学。それに応える様に立ち上がると、改めて生徒会長に向き合い丁寧な礼と挨拶をする。

 

 

「お邪魔しております、1年Aクラス、西園寺撫子と申します。本日は橘先輩にお招き頂きました」

 

「あ、会長。彼女は書類を運ぶのを手伝ってくれたんですよ!本日は生徒会はお休みですし、なのでお礼にお茶でもご馳走しようと…不味かったでしょうか?」

 

「…そうか。いや、構わない。西園寺も礼を言う」

 

 

ホッとした表情で「会長は何を飲みますか?」と飲み物を入れに行く橘。それに応え、堀北は撫子に鋭い表情を向ける。

生徒会長、その権限は非常に大きく、通常の生徒が閲覧できない情報や教師からの非公開情報にも触れることが出来る。それ故、目の前の後輩の姿に奇妙なものを感じる。

 

 

西園寺撫子。家族構成、祖父一人、公職についていたそうだ。両親は死別済。実家は地元で有名な旧華族。小中は地元で有名な一貫校で優秀な成績を残し、授業態度や人柄、社会貢献など特別問題という問題はない。

しかし彼女には不審な経歴がある。中学の途中で突然の転校をしたのだ、理由は病気の治療、そして家庭の事情とだけ記載があった。

その後の転校先での登校日数はなし。その後、この学校へ()()()から願書を提出した。病気の症状は不明。

 

―――これらの経歴は、彼女の評価を高く見積もってもBクラス相当にするに十分な理由となる。

()()()()()()()()()()()()()()()と疑問が首をもたげるのは、当然の流れだ。

この生徒会室に来たのも、何か目的あっての事では? ※ありません。

 

疑問を疑問のままにしない。当校では優等生(Aクラス)どころか欠陥品(Dクラス)の1年生の内に()()()()()()()学ぶことだ。

 

 

「西園寺。少し聞きたいことがある」

 

「…?はい、なんでしょう?」

 

「お前の、過去についてだ」

 

「会長…?」

 

 

不思議そうにこちらを見る橘。それをあえて無視して堀北は言葉を重ねる。まるで普段、学級裁判をする時のように厳かに、

私情を挟まない様に。しかし誤魔化しや虚偽は認めないと、鋭い眼差しで問いかける。

転校の理由の不明瞭さ、空白期間、不自然な病。特殊な家柄というなら、有数な大企業の生徒がAクラス以外に入学した例が過去にも、なんなら今年にもある。

そのことを一つ、一つと追及するも、撫子の表情に後ろめたさの影はかけらもは無い。

 

 

「―――これが、俺の知る西園寺撫子という生徒の情報だ。お前の経歴には、いささか不審な点が多すぎる」

 

「確かにそう客観的に事実を告げられると、少々恥ずかしいものですね」

 

「あの…会長、まだ彼女が入学して2日目です。あまり込み入った話をするのは…」

 

 

どこか申し訳無さそうに咎める様に口を出す橘だが、堀北から「西園寺と彼女のAクラスはSシステムについておおよそ掴んでいる」事を告げられ、驚きの声を上げて撫子を見てしまう。

 

 

「これは来月知る情報だ。誰かに伝える事は許可できないが、Aクラスから順に入学までの評価の高い順に配属される。一部例外はあるがな」

 

「かしこまりました。誰にも言わない事を約束します。…そして、このお話をして頂けるという事は、つまり…?」

 

「話が早いな。西園寺、お前の過去について教えて貰いたい。お前の存在は、入学2日目の時点で、いささか目に余る。この学校に相応しいのか、見極める必要を感じるほどにな…」

 

 

「会長…!」今度こそ、咎める為に声を荒げる橘。その様子を黙殺し、撫子から目を外さない堀北。険悪になりそうだった生徒会室の空気を破ったのは、渦中の撫子だった。

 

 

「構いません。絶対に言うなと止められている訳ではありませんので」

 

「西園寺さん…では、私は退出を―――」

 

「いえ、橘先輩もいて下さって結構ですよ」

 

 

席を立とうとする橘に、「あまり、広めてはいけない、信用できる人にだけ伝えて助けて貰うように」と言われています。そういわれ、不安そうな、どことなく誇らしく、少しこそばゆい表情で座りなおす橘。

 

入口の近くの棚に置かれた鞄から、撫子は白い封筒を取り出す。封は切れているようだが、大切そうに抱えたそれを堀北に差し出す。

 

 

「どうぞ」

 

「…これは?」

 

「私の祖父からです。お渡しする人は、養護教諭と、自分の信用できる人へ見せる様にと。あ、それと…」

 

「?なんだ…?」

 

 

―――私には、決して見るなと言われています。

 

 

「…どういうことだ?」

 

「……。申し訳ございません、私にも分かりかねます。ただ、私の病気について知りたい方へ見せる様にと、そう、聞いています」

 

「………拝見する」

 

眉をひそめた撫子は白い封筒に焦がれるような視線を送るものの、それを奪い返すなどの様子は見られない。

 

カサ、と数枚の手紙を取り出し、背後に回り、此方を覗き込む橘と一緒に手紙を読む。

 

 

これを読んでいる方へ。まずは、お礼を言いたい。撫子の理解者、友人、そういった存在になってくれたことを。

彼女を支えてくれようとしていることを。

まず初めに、――――――――――、――。

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撫子を、よろしく頼みます。 西園寺 大和

 

 

 

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生徒会長として、俺は様々な案件に関わってきた。クラス間の諍いの仲裁、トラブルの解決、教師だけでなく、外部の業者や企業との連絡、手続き。果ては、男女の不純異性交遊などの問題の解決にもこの学校の生徒会は関わることがある。

 

だが、西園寺の話を聞いて、俺は所詮ただの高校生の子供なのだと分からせられた。

校内の秩序を守り、運営するために生徒会はあるのだと俺は考え、全てのクラスの全ての生徒が、将来の為の努力を邁進することができる、この学校が好きだった。

その生徒たちを守る生徒会の存在を、非常に大切に思っていた。()()()だった。

 

―――俺の大切なこの学校(そんなもの)は、大人の世界の、それも一般家庭とは遠く離れた家の一族の常識には何も通じなかった。

 

俺には何もできない。怒りや憤りに身を任せる事も、自分がどんな理不尽に遭ってたのか解らない迷子を抱きしめる事も。…今の彼女には、何を言っても伝わらないだろう。

 

それは眼の前の歪な光景が物語っている。泣きながら抱きしめる橘を、西園寺撫子(ひがいしゃ)がオロオロと慰めている。

 

夕焼けが注ぐ生徒会室で、艷やかに輝く黒髪に、一人の少女を幻視する。自分の、血の繋がった妹の姿を。

 

この学校に入ってから疎遠になったーーー否、遠ざけた妹が。

アレが兄に向ける感情は、親愛には行き過ぎていた。自らの世界を内に内にと狭めていく妹を、兄として無視する程には無関心になれず、兄として支えるには自分は若すぎた。

 

結局、この学校に追いついてきてしまった妹。

生徒会の勧誘に立った壇上から、こちらを見つめた愚かな妹。

自らが置いてきた問題(ツケ)は、何時かは自らが解決しなければならないと自分は学んだ筈だったのに、想像よりも衝撃は強かった。

 

そんなことを夢想してしまうほど、自分は彼女へ重い感情を抱いていた。義憤というには私情に塗れ、憐憫を抱くには彼女は無知だった。

 

彼女は何も知らぬ子供なのだ。愛も情も好意も嫌悪も知らぬ幼子。

何故、橘が泣くのかも分からない。何故、慰められるのが自分だと理解していない姿は、歪だった。悔しかった。悲しかった。

 

才に溢れ、容姿に恵まれ、人に愛される。すべてを持って生まれてきたのにそれを享受する事が叶わない。そんな不条理があってたまるか。

 

 

「泣くのをやめろ。橘」

 

「ほり、ぎたくん…でも…!」

 

「会長、だ。橘。西園寺も困っているだろう」

 

「生徒会長?私は別に…」

 

「いや、こちらの役員が失礼した。それよりも、西園寺。提案がある。…生徒会に、入らないか?」

 

 

驚きを見せる二人。前者は、突然の誘いに。後者は、3年で培った付き合いから自分が急に勧誘(こんなこと)をする事へ。

 

涙を拭い、赤くなった目元をそのままに、何度も頷き「歓迎します!」「でも…私は…」とやりとりを重ねる橘と西園寺。突然の話で混乱もあるのか、両手を重ねて祈るように握っている西園寺。少し強引に間に入ると、しかと目を見て右手を差し出す。

 

その手を見て、そして期待を向ける橘の顔を見て不安げに結んでいた両の手を解く。

少しでも心が傾いているのならと、畳みかける様に勧誘理由を重ねていく。

 

 

「今年の一年の募集枠は埋まってない。会長枠の推薦があれば席は問題なく用意できるだろう。…むしろ、お前が入れない生徒会では、他の生徒を入れるわけにもいかなくなるな…」

 

「凄く…!凄く良い考えです!良いと思います!」

 

「あの…私は…」

 

 

おずおずと、こちらに伸ばそうとして止まるその手を伸ばして掴む。()()()()()()に握りしめる。

 

「きゃっ」と驚きに肩をビクリと震わせる。その手に重ねる様に、橘が両手で包み込む。

 

 

「生徒会に入れ、西園寺。俺達と共に来い」

 

「あの…よろしく、お願い致します…?」

 

「歓迎しますよ!歓迎会とか、やりましょう!これからたくさん楽しいことをするんです!」

 

「よろしく頼む。西園寺。改めて、言わせて貰おう。―――歓迎しよう、生徒会にようこそ」

 

 

 

俺はもう、全てを置き去りにはしない。したくない。妹も、後輩も、この学校生活もだ。

 

堀北学(幼かった自分)は、堀北鈴音(置いてきた少女)を、今度こそ見捨てない。

 

 

 

 




堀北(兄)「優秀な後輩ゲット!」

橘「守護るべき後輩ゲット!」

撫子「私は茶道部に入りたかったのですが…」


勘違いが広がりますね。また感想とかあると、
励みになります。よろしくお願いいたします。
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