ようこそ(勘違い)大和撫子の学校生活へ 作:エカテリーナ
ついに体育祭が始まります。
恐らく皆様のお気付きのイベントも出来る筈…!
そしてタイトルの意味は…直ぐには分からないかなと思います。
それでは、お楽しみください。
Side.撫子
学年合同で練習を始めたあの日から、早数週間。皆様に胸を触られたり、帆波にお仕置き?をされてから気が付けば体育祭の当日です。
私の参加する推薦競技は、男女混合二人三脚と借り物競争です。借り物競争だけは、運の要素が絡むためくじ引きで参加者を募り、私にも参加の権利が得られました。
私自身、本番に備えて皆様との練習を熟しておりました。玉入れでの役割分担や、男女合同での二人三脚の練習などクラス内でも必須となる協力には殊更に力を注ぎました。
…何故か、一緒に走る事となった方はボロボロでしたが、本人は「気にしないで欲しい」と言っていたので頷きました。どうしたのでしょう…??
最初の競技は100m走。女子で三番目の走者としての結果は、なんとカメラ判定待ち。他のクラスの走者には陸上部の方もいて、接戦でした。
競技の進行を優先する為に待機場所で同レースの方々と待っていると、判定をした先生が判定写真を見せてくれます。皆様でそれを覗き込むと、安堵からか一息つきます。
「カメラ判定の結果、西園寺が僅差で一着だった」
「あっ…(胸が…)」
「あー…(おっぱいの差か…)」
「ふぅ…ありがとうございました」
「はい…(…胸)」
カメラ判定での紙一重の勝利でしたが、先に到着した皆様と喜びを分かち合います。
「撫子さん、早かったね!」「1着?2着?」
「1着でした。皆様もご健闘、お疲れ様です」
「撫子もね」
競技が終わった私達は原則、これから参加する方々の応援を推奨されています。皆様と一緒に声を上げて、クラスメイトやDクラスの方々を応援している。
応援や歓声、悔しがる声や気炎を吐く様子に、ちょっと場違いな心地よさというか、楽しさを感じています。皆様と一緒に競技に挑み、一喜一憂する。…不謹慎ですが、皆様と目標を共有して、競い合う。今まで得る事の無かった充実感が私の心を満たしています。
「―――皆様、頑張って下さいっ!!」
少しだけ、はしたないと思いつつも大きな声を出す。周囲の驚いたような顔。…少しだけ気恥ずかしく思うも、私は赤組の応援を続けるのでした。
最終スコアは赤組2011点、白組1899点。僅差ながら、赤組が勝っている形で第一競技は幕を下ろしました。
・◇・
その後、ハードル走や玉入れ、綱引きもなんとか好成績や勝利を飾ることが出来ました。半面、男子側の綱引きは龍園君の奇策でしてやられた形。一斉に手を放す作戦に皆様、万全に力を振るえず残念ですが負けてしまいました。
私は協議の合間に、見学用のテントの有栖の所へ向かっています。レース前にこちらを見ていた彼女が手を振ってくれたので、そのお礼に。
勝手な振る舞いを皆様に内心で詫び、テントの有栖…と、六助君?いったいどうしてでしょう。外傷のようなものは無い様子ですが。…??
「ごきげんよう、有栖。…それに六助君?ええと、お疲れ様です」
「ふふっ、撫子さんこそ、お疲れ様です。…今の所、個人種目は全て1位。流石ですね」
「おや、それは見事なことじゃないか撫子嬢。私も同じ赤組の生徒として誇らしく思うとも」
ちょこんと座って見学の姿勢を取っている有栖と、ベンチをギシリと軋ませて足を組みかえる六助君。どうやら気分が優れず、ここで休んでいるそうです。
彼の姿が見えなかった理由に納得と、その実力を知っているからこその少しの落胆を感じてしまう。出来るだけ顔には出さない様にしていたつもりでしたが、六助君には見抜かれてしまったようです。
わざとらしく肩をすくめたポーズの後、立ち上がりこちらに近づいてきます。
「そんな顔をしないでくれたまえよ、撫子嬢」
「その…申し訳ございません。そんなつもりは無かったのですが…」
「ではどんなつもりか言ってみたまえ。…私と君の仲じゃあないか」
「………」
そう言われて沈黙を返すのは、逆に失礼に当たってしまうかもしれません。私はぽつりぽつりと言葉を零します。彼の力が得られないことを残念に思う事、彼の活躍を楽しみにしていた事、せっかく一緒の赤組になったのに、声援をかけることも、かけられることも出来ない寂しさ…。
…言ってから気が付く。とても赤裸な訴えに、テント内の視線を集めてしまっている。慌てて六助君に断りを入れようとすると、彼がくつくつと笑いを漏らします。
「―――フッ、フフ…なら仕方ない。撫子嬢」
「は、はい」
「元より我がDクラスは3名の
「よろしいのですか…?」
「なに、旧友の頼みだ。それに―――高円寺家の男子たるもの、女性の期待には応えねばなるまいよ」
悪戯に「違うかね?」とウインクをしてくる六助君にお礼を言って、本来の目的である有栖にも応援してくれていたことに感謝を伝えようとすると………。
「(高円寺君と旧知の仲?…私と彼のような?…いいえ、もっと親交がある様な言い方です。それをこの場で、他のクラスや学年の生徒も居るような場所で明かす理由は?そもそも何故、撫子さんがここに来た?…ハッ!まさか、明かす事が目的なのですか?高円寺六助の破天荒な振る舞いに実家が資産家である背景は学年を問わず噂として広まっている。そんな彼との関係を明け透けにしてこれからの戦略の一手としてアピールしているのでしょうか?…半々ですね。虚をつくのならギリギリまで隠しておくべきカードの筈。ですが、彼の自由人としてのキャラクターが判断にノイズを生じさせます。偶然、テントに居たからこの機会を生かしたのかもしれません。もしくは―――)」
「有栖…?もし?」
「(―――少々不味いですね。この体育祭は実質、特別試験といっても過言ではありません。それに恐らく撫子さんも把握しているでしょうがこれは1年生へ"今後は学年を超えた協力が勝敗に関係するぞ"という学校側からのメッセージでもある筈。既に特別試験が3つ行われようとしているのに、
なにか考え事でしょうか?俯き加減に何か呟いていて、返事がありません。
【―――次の競技の開始は5分後です。参加生徒は所定の待機地点まで集合して下さい、繰り返します―――】
「あ…」
「…ふむ、行きたまえ撫子嬢。リトルガールには私から言っておこう」
「そう、ですね…?六助君、お願いします」
「任せておきたまえ。…私の活躍の時には、盛大な声援を期待しているよ?」
「ふふっ、ええ、任せて下さい」
そういってテントを出て、Aクラスの元へ向かう。…次の種目は棒倒しの筈。男子の皆様を応援しないと。
※この後、めちゃめちゃ応援しました。
皆様、大きな掛け声と共に競技に挑んでいました。
―――――――――〇―――――――――
Side.綾小路
体育祭が始まった。俺達は1-Aと一緒の赤組でB.Cクラスの白組と得点を競うことになる。
最初こそ徒競走では須藤や平田、明人など運動部の連中の活躍が光ったがそれ以外は
前後。今回の参加表の順番は4クラス合同で決めたそうだが、俺が櫛田や平田にアドバイスをしたのは2つ。…いや、3つか。
・個人戦では勝つ生徒と負ける生徒をしっかり決めること。
・Cクラス相手の場合を除いて実力の拮抗する組み合わせの場合は出来るだけ対決を避けること。
平たく言えば、この体育祭は如何にダメージを抑えるかに主目的を置くべきだ。運動能力が高いが学力が低い須藤は基本、全勝を目指せる組み合わせに入れたい。
なんなら、他のクラスが
だがそうすると、今度は学年合同の赤組としては兎も角1年のDクラスとしては惨敗する可能性がある。
それを防ぐ為に、一つ上のCクラスを相手として設定する。理想は実力の中層の生徒がCクラスよりも勝っていることだが、厳しいだろうな。どのクラスにも当然、運動も勉強もそこそこの生徒が居る。
だからこそ、3つ目の助言。それは―――
「…南は4位か。本堂も4位だったな」
「うん、女子は今の所、井の頭さんが6位、篠原さんは4位だった。…この調子なら」
「今のところは、貴方の思惑通りかしら?」
「決めたのは平田や櫛田だろ?…俺はアドバイスをしただけだ」
「アドバイス、ね…」
自分のレースが終わり、ジト目でこちらを見る堀北に特に返す言葉はない。確かに現状は理想的な滑り出しだが、まだ序盤。勝負は何が起こるか分からない。
次のレースでは佐倉がフォームを崩しながらも快走し、Cクラスの生徒よりも早くゴールし
逆に先の2人や、西村、石倉などは文句なく
―――今回の副目的は、
出場の順番などもそれを意識して組んでいる。これならAクラスとの協力契約も満たして、かつCクラスには要所の所で負けない中堅層~実力者を宛がう。
最後のレースでも、皆から応援や歓声を受けた櫛田が1位でゴールした。俺達は
・◇・
問題が起きたのは障害物競争、女子の部。
堀北が並走していたCクラスの女子と接触して倒れ込んだのだ。その後Cクラス側、陸上部の木下がリタイア。堀北はこれまでの好成績から今回は7位と大きく順位を落とした。
…まさか。俺は予感をそのままにせず、Dクラスのテントにいつもの仏頂面で戻って来た堀北の手を取る。振り払おうと文句を言って来るが、その手を放さずに救護のテントに向けて堀北を連れ出す。みんながざわつく中、須藤が声をかけてついて来る。
「っ、ちょっと、なんのつもり…!」
「おい、綾小路っ!」
「足、痛めただろ」
歩みを止めずに堀北に指摘する。普段よりも歩くときに片足を庇っていた。そう続けると須藤も心配そうな目を堀北に向ける。
「…ホントなのか、堀北」
「まだ競技は前半だ。お前のリタイアは厳しいが…」
「っ!大したことは無いわ…競技に影響は、きゃっ」
意地を張ろうとした堀北は、再び手を振り払おうとする。面倒に感じた俺は、手を引かれる瞬間に離す。
バランスを崩し、倒れそうになった堀北の足に負荷を掛けない様に抱き抱える。
「ジッとしてろ。…これは事故じゃなく、故意の可能性がある。黙って治療を受けろ。必要な事だ」
「は、わ、な、な…!!」
「須藤、先に行ってアイシングの用意をして貰って来てくれ」
「お、おうっ!」
耳元で堀北にそう話すと、大人しくなった。須藤も非常時だと判ったのか猛スピードで先行してくれた。
俺も堀北が怪我をしている、自力歩行が出来ない点をアピールする為に出来るだけゆっくりとテントに向かう。丁度、レースが終わった女子ともすれ違ったので周囲に聞こえる程度の声で事情を話す。堀北も落ち着いたのか、痛みに耐えているように黙って俯いている。この様子なら、周囲には被害者らしく見えるだろう。
十分に注目を集めていると、(何故か堀北だけでなく俺の顔もチラチラ見ていたが)救護テントから須藤が手を振ってアイシングの袋を準備させているのが見える。俺はDクラスの男子たちに事情を説明して置いて欲しいと伝えて、堀北をテントへと運んだのだった。
その後、堀北の患部を冷やしていると堀北が小声で「見られた…皆に…に、兄さんも…」と何かぼそぼそと呟いていたり、
何故かやる気を出していた高円寺が競技に出ると言い出して須藤とひと悶着あったりしたが…。前途多難だな。
…それにしても、Aクラスの坂柳だったか?何故、こちらを凝視して来たんだ?堀北の知り合いなのか?
――――――――――――
・100m走、並びにハードル走の某クラスのテント
「はっ、はっ、はっ…!!」
※某クラスメイト、競技中の一コマ。
ワーワー!!
キャーオネエサマー!!
「………(ごくり)」
「………おぉ…」
「………揺れたな」
「…あぁ、揺れた」
「…凄いな」
「あぁ、凄い…」
※この後めちゃめちゃ女子から冷たい目で見られた
――――――――――――
※女子、弾入れの某クラスのテント
「えいっ、やぁっ…!」ピョン、ピョン
※某クラスメイト、競技中の一コマ。
キャーキャー!!
ワーワー!!
「「「…」」」
「…お、俺、ちょっと…ストレッチしてる!」
「俺も付き合うぞ」
「俺も」「おい、鼻血出てるぞお前…」
※この後、戻って来た女子たちに変な目を向けられた。
読了、ありがとうございました。
本日、朝一で私も最新刊買ってきます。
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