ようこそ(勘違い)大和撫子の学校生活へ   作:エカテリーナ

73 / 110
お久しぶりです。
投稿が遅くなり申し訳ございません。
完全に、言い訳もなくこちらから離れておりました。
まだお待ちいただける方がいらっしゃいましたら、どうぞ。


⑨:お題『妹』

Side.綾小路 清隆

 

保健室に辿りついた俺達は、さも偶然というような態度の龍園と遭遇する。…無論、そんな偶然ではないだろうし、呼んだのはヤツだ。

ワザとらしい茶番を流しつつ、ベッドで横になる女子…木下だったか。その足を見ると、確かに赤く腫れていて試合に出場するのは難しいのがみて取れる。

 

彼女の口から出たのは、堀北()()接触をされて、転んで怪我を負った事。そして立ち上がる際に、「絶対に勝たせない」との挑発のような発言があったとの証言だ。

 

―――成る程な、()()が今回のCクラスの作戦なのだろう。

俺は目の前で水掛け論に興じる連中をよそに、その狙いを考察する。

 

俺達がクラス間での闘争に注力したように、Cクラスはこれ以上、格下のDクラスが突出しないように釘を刺しにきた訳だ。

主目的は有力な選手への直接攻撃。その一点の為に今回のクラス全体での参加表の共有に同意したのか?

いや、それだけではない筈だ。無人島でのヤツの作戦や、船上試験での立ち回りでも奴は常に二枚腰。メインプランとは並行して裏でも優位を得る為に手を回す蛇のような狡猾さを持っている。

 

そうなると今回は、ちょっかいを出して俺達の対応力を見る威力偵察が目的という所か。

俺が手を尽くしても良いが、これはコイツ()の育成にも役に立つ筈だ。

 

俺の平穏な学生生活の為に、もっと成長をしてくれ。

 

 

意識を眼前の状況に戻す。

どうやら龍園側は200万PPの請求と土下座を要求。それに対して堀北は強硬に冤罪を主張している。

傷んだ足を庇い、櫛田に肩を借りているとはいえ、まだ目は力を失っていない。それにニヤリと笑みを深めた龍園は、生徒会に審議をして貰う事と絶対に逃がさない事を言って保健室を去ろうとする。

 

それを悔しそうに見る堀北に、不安そうな表情の平田と櫛田。まあ、まだ仕方ないか。

 

 

「おい」

 

「あ?…なんだ、鈴音の腰巾着が。雑魚に用は「いや、先に言っておいた方が良いと思ってな」―――なに?」

 

「審議をするのは結構だが、コイツの兄は生徒会長だぞ?」

 

「っ、綾小路君…!!」

 

 

一番早く反応をしたのは、堀北。目くじらを立て、俺の発言を咎めてくる。コイツにとっては色々複雑なのだろうが、視線だけで黙るように訴える。…こういう時の反応は櫛田が一枚も二枚も上手だな。直ぐに状況を理解している。

 

観察をしていると呼び止めた男、龍園がくつくつと笑い声を零し、天を仰ぐように片手を顔に当てている。

掌で隠れた表情は見えないが、口元は笑みの形に歪んでいる。

 

 

「………ククク。…で?だからなんだ?鈴音が生徒会長のお兄ちゃんに泣きついたら必ず勝てるってか?」

 

「………」

 

「それならそれで構わねえぜ?…その次の()は生徒会長だ。身内贔屓するような奴がこの学校の生徒会長だなんて、いったい何人が納得するんだろうなぁ?おい…!」

 

「っ…!にいさひゃん!?

 

 

余計な事を言おうとした堀北だが、普段からは信じられない声を上げて崩れ落ちる。

…櫛田が脇腹を摘まんだのがチラッと見えた。悶絶する堀北を庇うように床に座らせて、何食わぬ顔で「堀北さん、大丈夫…!?」と声をかけている。

 

良い感じに間を外せたので、俺は()()にも聞こえるくらいの声量で龍園に続ける。

 

 

「いや、俺が言いたいのは逆だ。…本当に審議をしても構わないのか?」

 

「なんだと?」

 

「うちの須藤との一件、忘れた訳じゃないだろう?」

 

「………」

 

 

1学期の夏、須藤がCクラスに嵌められた一件。あの一件は周囲には審議は取り下げられた結果だけが周知され、真実は闇の中だが当事者は違う。

原告被告は勿論、審議を行った生徒会サイドも先の件から先入観を持って審議に関わる筈だ。Cクラスは()()()()クラスだと。

 

それを龍園が気が付かない筈がない。そうなると、次に奴が言って来るのは―――

 

 

「はっ、馬鹿か?…こっちの木下は陸上部。この後の推薦競技でも3つ参加するうちの稼ぎ頭だぜ?それを「ならこっちの堀北はリーダー格で、これまでの競技でも1位、2位と高成績だ。…そっちの木下はどうだ?」………チッ」

 

「あ、綾小路君…」

 

「あぁ、そうだったな平田。たしか4位、3位、そして()()でリタイアだったか?…どうやら今日は調子が悪いみたいだな」

 

「………」

 

「テメェ…いい度胸じゃねえか」

 

 

青筋を立てる龍園だが、手を出すようなことはしない。無論それはこの部屋に監視カメラがある事もそうだが、この状況でもつぶさに見極めているのだろう。

―――誰が脅威になるのか。…性格、能力、関係。

 

やがて、睨み合いの末に龍園は鼻を鳴らすと捨て台詞と共に保健室を去った。終始譲らずに居た俺の背後からは、安堵の息を着く声が聞こえる。

 

 

「綾小路君…今のはちょっと危険だったんじゃないかな?」

 

「そうだよ…もし、この後の競技でも危ないことをされたら…ちょっと怖いよ」

 

「………」

 

 

非難がましい視線を送ってくる堀北も合わせて、()()()()に難色を示してくる。だが本来はリーダーであるお前達が競り合わなくてはいけない訳だが…まあ、これからか。

俺は三人に向き合うと、チラリと木下の居るベッドに視線を向けてから話し始める。

 

 

「それはない。…何故なら推薦競技は出る選手が限定され、配点も高いために注目を浴びる。…つまり」

 

「ラフプレーをすれば、疑われる可能性が高いってこと?」

 

「そうだ。…それに初回はともかく、これ以降も続くなら好都合だ」

 

「え?」

 

「先手を打つ。…堀北、俺と一緒に茶柱先生の所に行くぞ」

 

「…どうするつもりなの?」

 

「簡単だ。Cクラスからラフプレーを示唆する発言を受けたと報告する。出来れば教師が集まっているテントが望ましいな」

 

「えぇっ!?」

 

 

露骨に驚いたように声を上げる櫛田。…良いアシストだ。意図を考えている二人にも教師の注目をCクラスに集める事、先に声を上げる事で、揉めた際の心象を良くするなどの適当な理由を伝えて納得して貰う。

 

そして、本命はここからだ。―――察しているな?櫛田。

 

 

「櫛田、平田には別に頼みたいことがある」

 

「なんだい?」「うん、なになに?」

 

「推薦競技中は自由な時間もある程度あるはずだ。全学年の…()()()の生徒を当たって欲しい…特に、女子中心にな」

 

「え?…どういうことだい?」「陸上部の…女子…、っ…!」

 

「―――っ!」

 

 

今度の反応は二分化される。「何故?」という表情を浮かべたのは平田。「ハッ」と理解を示したのが櫛田だ。

―――平田洋介という存在は、Dクラスの中でも優れたキャラクターだ。誰にでも優しく、正義感と善性を持って人に接する。その評価は他のクラスでも広く浸透している。

 

そんな彼が声をかけてきて、無下にするのは元から悪印象を持っているようなヤツか、敵対関係にある同学年の男子くらいだろう。…特に女子からは協力を得られる、非常に有効な探偵になってくれるはずだ。

 

俺の話を真剣に聞いている平田だが、おそらく半分程度しか理解をしていないだろう。…が、そこは櫛田が管理してくれる。

彼女は直ぐに思い当たったはずだ。―――Dクラスとはいえ、1クラスのリーダーで、優しい王子様のような平田が女子にどれだけ効果的か。……これは、愛理や波瑠加に関わって学習したことだが、曰く―――()()が関わると女子同士の関係は急激に変化する。

 

 

「とにかく時間との勝負だ。俺は、出来るだけ二人が動ける時間を稼ぐ。…堀北、俺は先に行く。櫛田と教員のテントに向かって来てくれ」

 

「…分かったわ」

 

「平田は1年のAから順に、櫛田は堀北を送った後に平田に合流してくれ」

 

「分かったよ!」「うんっ、任せて!」

 

 

本命は、俺と堀北が。そして副目標を櫛田と平田が攻略する。

別に両方で勝利しなくともいい。どちらかが結果を出せば、今回の一件はこいつらの成長につながるだろうからな。

 

そういって俺は、こちらを覗き見る視線を無視して保健室を後にする。

…道中、偶然遭遇した生徒会長に割と本気で襲われたり堀北との関係を詰問されたが…シスコン、というやつなのか?

 

 

・◇・

 

 

そうして時は進み、俺の出場する借り物競争がスタートする。…出来るかは賭けだったが、この学校でポイントで出来ない事はない。

何故か一部の教師が乗り気で賛成してくれたのもあり、事前に茶柱先生らにポイントで依頼したルール変更は無事に為された。お題の変更不可や交代制度によってかなり時間が稼げている。…悲鳴や罵声も上がっているが必要な犠牲だった。残る問題は―――

 

 

「…なんだよ、『クラウンハーフアップの髪型』って…どんな髪型だよ…!」

 

「『結婚してくれる異性』って…居る訳ねえだろ、そんな奴!」

 

「こんなお題考えたヤツ誰だよ…ぜってぇ許さねえ!」

 

「………」

 

 

一緒にスタートを待っていると、大きな電光掲示板に表示されるお題に目が行く。

 

…そう。問題は、俺がそのお題をクリアできるかどうかだった。まあ最悪、先輩に交代すればとは思うが、既に大半の3年生は逃げ惑っている。残っているのは既に競技に参加・協力して交代を拒否できる生徒だけのようだ。

 

結局、俺達の前の組は誰一人として規定の10分でゴールできず、据え置きで俺達の順が回ってくる。パン、というスタートの合図と共に走り出す。

全員が全員、死んだような。あるいは、覚悟を決めた表情でお題を取りに行く。俺のお題、は…。

 

 

『妹or弟(のような生徒も可。その場合は異性限定)。良い所を5つ答える』

 

「…まだマシなお題のようだな」

 

 

電光掲示板を見ると、他の連中のお題は…

 

『スキンヘッドの人』

『イニシャルが違う生徒、被りなしで10人』

『車のタイヤ(ホイール部分ごと)1つ』

 

…なるほど。一筋縄で行きそうにないものばかりだ。スキンヘッドのお題を引いたのはBクラスの生徒だな。DかAが引けていれば即ゴール出来たんだが仕方ない。

 

俺はDクラスのテントに戻ると、駆け寄ってくる生徒の他に櫛田の姿があった。…そうか、使えるかもな、このお題。

 

 

「あ、きよぽん。愛理を迎えに来たの?」

 

「え?波瑠加ちゃん、私?」

 

「少し待ってくれ。…櫛田、経過はどうだ?」

 

「え?あ、それは今も平田君が頑張ってるんだけど…って、綾小路君、競技、競技!」

 

「問題ない。他のお題も時間がかかるだろうし、こっちの方が大事だ」

 

「そ、そうなの?じゃあ、えっと…」

 

 

そういって聞き出した成果は、割と悪くないものだった。特に走っていた際の最寄りテントの先輩が陸上部で、『声をかける木下の態度やスピードに違和感を覚えた』と証言を得られたのは大きい。本命がダメでも、これで()()()()()()()()

平田は今、他のテントでも目撃者が居ないか回っているらしい。櫛田自身は一つ前の推薦競技に出ていた為、この場に丁度居合わせたとのこと。

 

 

「―――て感じかな。…後は、その先輩が証言してくれれば…」

 

「そうだな。…軽井沢、少し良いか?」

 

「…えっ!?わ、私!?…妹っぽいかな?え?私!?」

 

 

かなり驚いた様子だったが、取り巻き達と固まっていても話は聞いていたのだろう。今回の件に関わってはいないが、軽井沢のクラスでの地位は高い。遺恨を残す可能性がある以上、無視は出来ない。

 

 

「仔細はこの後、櫛田に聞いて欲しい。堀北の一件、Cクラス絡みで審議になる可能性がある」

 

「え?え?あ、うん…そっちか」

 

「証言者として陸上部の先輩の力を借りる為、平田の手を借りたい。その許可をくれ」

 

「…平田君?えっと、今もなんか手伝ってるじゃない?」

 

「そうだよね?」「うん」

 

「………」

 

 

疑問符を浮かべる軽井沢一行だが、俺は勝つ為の作戦を提案する。

 

 

「この借り物競争には傾向がある。必ずいくつかに、異性への協力を必要とするものがある。愛の告白をする、抱き合うとかな」

 

「告白っ!?」「たうわっ…!?」

 

「(たうわ?)その競技を俺達やAクラスが引いた際、平田に交代して貰ってその先輩に助けて貰う」

 

「それって…!」

 

「…」

 

 

上級生の先輩からすれば、俺達の学年の諍いなんてどうでも良い筈だ。ポイントで買収という手が有効かも分からない以上、後輩(イケメン)の頼みひとつで協力してくれるなら安いもの。

平田としても建て前としては競技の為、クラスの為という名目も立つ。だが、それを自発的に行えるほど平田は鈍感でも傲慢でもない。だれかが導く必要がある。今回はまだ、俺がする必要があるだろう。

 

周囲の取り巻きや女子からキツくなった視線を受け流していると、軽井沢は真剣な顔で頷き返してくれる。

 

 

「…うん、分かった。平田君がやってくれるなら、良いよ」

 

「そうか。…助かる」

 

「軽井沢さんっ」「良いの?だって…」

 

「みんなありがとう。大丈夫、私は平田君のこと信じてるし、平気だから!」

 

 

心配そうな視線を向ける周囲に、気丈に振舞う軽井沢。…彼氏彼女の関係の割には、苗字で呼び合っている。そんな疑問も浮かぶが、一先ず置いておこう。俺は明人に平田を呼び戻して貰うように伝え、櫛田にもAクラスにお題の件の交代を受けると伝達して貰う。

こんな所だろう。残すところは、俺のお題だが…。

 

 

「堀北」

 

「…なにかしら、綾小路君」

 

 

俺は再び救護のテントに向かい堀北に近づくと声をかける。そこには坂柳と他にも数人の生徒や教員が居た為、近づいて声を潜める。

 

 

耳を貸せ

 

「はぁ…もう、…なんなのかしら?蚊帳の外にしたり、急に巻き込んだり…

 

…俺はこの後、堀北会長にお題の交代を盾にとって交渉してくる

 

えっ…!?

 

 

存外、大きな声で驚く堀北。変に注目を集めてしまい、顔を赤らめるが意味を吟味しているのだろう。ジッとこちらを見ているが、反対意見は出ない。

 

 

「………」

 

「………」

 

「………そ、それで?

 

「…?……交渉が決裂した場合、つまりお題を交代した場合はお前も競技に参加することになる。怪我人であることを忘れるなよ

 

あ、あぁ、そういう…

 

…他に何があるんだ?いいか?肩でも借りて無理に走るなよ?

 

「………えぇ、分かったわ」

 

 

その後、俺は(何故か)協力を申し出て来た坂柳に空返事を返しながら生徒会室に向かう。

 

もちろん、やる事は一つだ。

俺は、最終的に俺が勝っていれば、それで良いのだから。

 

 

※この後、めちゃめちゃもっと加速した。

生徒会長と走り回った結果、審議の件は引き受けて貰う事が出来た!!

 

 

・◇・

 

 

生徒会長「………(無言の壁ドン)」

 

幼馴染()「久しぶりですね綾―――あ、あの少し、…ちょっと!」

 

?「………ふーん」

 




ご覧いただきありがとうございました。
続きは不定期更新になるかもしれませんが、
気長にお待ちいただければ幸いです。よろしくお願いいたします。

主人公とのカップリングで許せるのは?本編、番外編問わず

  • 綾小路清隆
  • 堀北鈴音
  • 櫛田桔梗
  • 佐倉愛理
  • 軽井沢恵
  • 龍園翔
  • 伊吹澪
  • 椎名ひより
  • 一之瀬帆波
  • 神崎隆二
  • 白波千尋
  • 坂柳有栖
  • 葛城康平
  • 神室真澄
  • 橋本正義
  • 山村美紀
  • 茶柱佐枝
  • 坂上数馬
  • 星乃宮知恵
  • 真嶋智也
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。