ようこそ(勘違い)大和撫子の学校生活へ   作:エカテリーナ

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どうぞどうぞ。


④:満点の回答、0点の問題。

 

本日はついに試験当日。先日の抽選の結果、私達のAクラスは抽選の結果、Dクラスの問題を解くことになりました。

逆に私達Aクラスの問題は龍園君たちCクラスが解くようです。…なんというか、少しだけ意外な組み合わせになりました。以前の協力契約も、流石に直接対戦する相手には意味を為しませんし…。

 

クラスの対戦相手はこの通り。

 

Aクラス→Dクラス

Bクラス→Cクラス

Cクラス→Aクラス

Dクラス→Bクラス

 

奇しくも直接の対戦は無いようですが、やる事はそんなに難しいことはありません。

結局のところ、相手のクラスよりも多い点数を取る、それだけの筈…です。ええ。

 

仮に、A→B→C→Dのクラス順に高得点を取った場合のクラスポイントの推移は…。

 

A:Dに勝利、Cに防衛成功、+100ポイント

B:Cに勝利、Dに防衛成功、+100ポイント

C:Aに敗北、Bに防衛失敗、-100ポイント

D:Bに敗北、Cに防衛失敗、-100ポイント

 

同点などがあれば別でしょうが、こうなる。今までの1()()()()()()()()から考えれば、CとDクラスの順位が前後するくらい。…でも、これは特別試験。用意された問題によっては結果は変わるかもしれない。

 

私も…まだAクラスから移動するつもりはありません。帆波や龍園君との契約もあり、有栖にそれとなく状況をお尋ねすると…。

 

『―――まあ、C,Dクラスには点数で負けることはないでしょう。…他の要因があれば分かりませんが』

とのお墨付きを得られました。…有栖がそういうのであれば問題は無い筈。彼女の瞳には自信と確信のような強い意志が感じられました。

 

とはいえ、勝負は時の運とも。私は自分の最善を尽くすべきでしょう。…少しだけ、クラスの緊張が弛緩した空気が気になったといえば、そうなのですが、ん…。

私のペアの相手は清水君。お願いしますと伝え、お互いの健闘を祈りました。

 

 

 

「では全員、問題は行き渡ったな?チャイムの音と同時に捲るように。―――始め」

 

「…!」

 

「っ…」

 

 

真嶋先生の合図と同時に、皆様も一斉に問題を目にします。…、……、………ん。大丈夫…でしょうか?

サッと問題を見ると一見わからないものはない。後は名前の記入忘れや、解答欄のズレに気を付けて、と。

私は一番最後の設問から、ペンを走らせるのでした。

 

・・

 

ふぅ…

 

残り時間は半分ほど。二度目の見直しをして問題ないことを確かめると、意識を周囲に向ける。

…これは、自己満足に過ぎない。過去に先生には相談したことがありますが、私は()()不正(カンニング)が出来てしまう。

 

文字を記す音で、書き順や間隔から何が書かれているのかが分かってしまう。普段なら集中が必要になりますが、テスト中は皆様が静寂を保っている。そんな中では回答のほとんどは筒抜けになる。

それを避ける為に問題を逆から解く、意識を周囲の音が聞き取れないほど集中する。そうすれば、私自身の知識でテストに挑むことが出来る。

 

私は問題用紙を裏返して視線を時計に向けると、真嶋先生と目が合う。驚いたような顔をされましたが、小さく会釈して視線を机に戻します。

他の方の迷惑にならないように静かに目を瞑っていると、ペラリとテストを捲る音が。

 

 

「………」

 

「………ほう

 

 

眼前には、教室を巡回する真嶋先生が机のテスト用紙を見ております。…心配してくれたのでしょうか?

その後、問題ないと判断して頂けたのかポン、と肩に手を置いて巡回に戻られます。

チャイムが鳴るまでの間、教室には皆様のペンの音だけが響くのでした。

 

 

・・

 

 

「そこまで。皆ペンを置くように。…本日のテストは以上となる。明日も1時間目から―――」

 

 

チャイムと共に、本日の分のテストが終了します。

各時間に少しの休み時間はあるのですが、お手洗いに行く方や見直しをする方など集中を邪魔しない様に皆様あまり会話はありません。

しかし、本日はテストが終わったので皆様リラックスをしているご様子です。

 

 

「お疲れ様でした、撫子さん…結果は、聞くまでもないようですね?」

 

「有栖」

 

 

話しかけてきたのは有栖でした。私も回答に問題ないことを伝えるとペアの鈴木君も歩み寄って来ていくつか答え合わせをします。表情から、問題がないことを確認すると明日もお願いしますと労を労います。…何故か、赤くなって足早に教室を去りましたが、どうしたのでしょうか?

有栖や真澄は「心配いらない」「放っておけば大丈夫」と言っていましたが、風邪でしたら心配ですね。

 

 

「西園寺。…坂柳、少し良いか?」

 

「葛城君?」

 

「…あら、どうしましたか?葛城君」

 

 

わたしもこの後はどうしようかと思案していると、葛城君とそのお友達が。…気が付くと、クラスの半分くらいが残っていて注目しているのが目に入ります。

 

 

「時間はかけない。…悪いが確認したい事がある。内容は分かっているな?」

 

「ふふっ。さあ?一体何の話をしているのか分かりませんね。…撫子さんはどうですか?」

 

「…?いえ、私も特に。…葛城君、一体どうしたのですか?」

 

「西園寺、お前は…。………いや、そう言う事か。坂柳、お前は利用したのだな?」

 

 

ハッとした表情を浮かべた後、葛城君は有栖を強く睨みつけます。彼が無体なことをするとは思いませんが、身長差もあって思わず彼女を庇えるような位置に着く。

張り詰めていく空気に最初に口を開いたのは、問いを投げられた有栖自身でした。

 

 

「利用だなんて…人聞きの悪い。一体何のことです?」

 

「しらばっくれるなっ!…俺達が手に入れた問題が、全然違ってるんだよ!お前が情報を漏ら「戸塚っ!!」…っ、葛城さん、でも!!」

 

「…?」

 

 

戸塚君が指を指して有栖を非難します。…原因は分かりませんが、どうやら計算違いがあったのでしょうか?それに有栖が関わっている?

 

 

良いから止めろ…!…俺が、話している。悪いが黙っていてくれ」

 

「は、はい…」「………っ」

 

「…鬼頭君」

 

「………、分かった」

 

 

その後、葛城君の怒号―――恐らく、今までで最も強い口調―――で皆様の言を封じます。その様子に有栖も、気が付けば盾のように侍っていた鬼頭君を下がらせました。

 

 

「これだけは答えて貰おう。―――Aクラスを裏切るつもりか?」

 

「なにを聞くのかと思えば…私は、十全にAクラスに尽くしているつもりですが、葛城君は違うのですか?」

 

「当然だ。仮にもクラスを指揮した立場として、なによりクラスの一員として全力を尽くしている」

 

「………」

 

「…(葛城君…)」

 

 

だからこそ、と葛城君は続けました。その表情は誠実さと、意志の強さを感じさせるもの。

クラス中の皆様の耳目を集めるに足る、クラスのリーダーとしてのものでした。

 

 

「もし、お前が勝利の為にクラスを裏切ったり、ましてや犠牲にするようなことがあれば…俺はお前をリーダーとして認めることはない」

 

「…そうですか。話は終わりですか?」

 

「ああ」

 

 

葛城君の言葉にも有栖に動揺はありません。いつものように自信に溢れていて、自らの優勢、勝利を疑っていない強い瞳。

そうしてお友達と共にクラスを去ろうとする葛城君を、今度は有栖が声をかけ足を止めます。

 

 

「こちらから一つお伺いしてもよろしいですか?…もちろん、A()()()()()()()としての質問です」

 

「………なんだ?」

 

「先ほどそこの戸塚君が言っていましたが、手にした問題とは、一体なんのことですか?」

 

「それは…「お前っ!」戸塚!…それはお前が十分知っているのではないか?」

 

「………?」

 

 

断片的な情報を繋げると、どうやら葛城君たちは今回のテストの問題を手にしていたのでしょうか。ただ、私も有栖からそういった情報は頂いていない。

とすると、葛城君たちは独自の方法で相手となるクラスの問題を得たことになる。にも拘わらず、有栖がそれについて承知している…?

 

数瞬の間に疑問が横切りますが、それよりも目の前の状況、その旗色が徐々に変わっているのを感じます。

質問は追及となり、そして糾弾となりつつある。

 

有栖の言葉は的確で、問題を手にしたことへの疑念からそれを共有しなかったことへの批判を分かりやすい形でクラスに広めている。今はそれを入手した経緯に話が移ったようです。

…このままでは明日のテストにも支障が出てしまうかもしれない。私はパン、と手を叩いて注目を集めると事態を収める為にお二人の間に。

 

 

「撫子さん?」

 

「西園寺…」

 

「お二人とも、一度落ち着いて下さいっ。…明日もテストがあります。お話は、その後でも「…っそうか、またお前か西園寺!」…え」

 

「お前…!お前が手を回したんだろ!?」

 

「…なに、を…」

 

「お前が他のクラスと繋がってるのは分かってるんだよ!!」

 

「いい加減にしろ、戸塚!!」

 

 

お二人の仲介に入った私に、戸塚君が指を指します。怒りを孕んだ目に、思わず凍り付いてしまう。戸塚君とはあまり良い関係を築けなかったから?…いいえ。これは、甘えですね。

彼の事を蔑ろにしてしまった。彼の事を慮ることをしなかった。その結果が…これ。

 

私はまた、間違えてしまったのでしょうか?

 

 

「お前、何言ってんだよ!!」「うるさい!お前らだって…!!」

「お姉様になんてことをっ!」「落ち着けお前ら!」

 

どこか声が遠くに聞こえる。いいえ、耳元で聞こえているようにも感じるけれど、耳に届いた音が、声が、意味が、聞き取れない。()()()()()

 

「撫子さん?…大丈夫ですか?撫子さん?」

「ちょっと撫子、あんた平気?」

 

目の前の有栖や真澄が心配してくれているのは分かる。表情から、なにを言っているのかも読める。でも声、声声声。

 

みなさまの、こえが、わからない。

 

 

―――その後、駆け付けた真嶋先生が収束するまで、私はその場に無様に立ち尽くすことしかできませんでした。

 

 

―――〇―――

Side.龍園 翔

 

 

「っしゃあ!」

 

「くっ…」

 

 

密談するなら定番となったカラオケルーム。今回はパーティ用のデカい部屋だが、面子は普段の半分も居ない。俺とアルベルト、ひよりに伊吹、石崎、金田。ひよりと金田は今回の用事の為に連れて来た。

対するBクラスは10数人が居るが、大抵が雑魚共で話に混じるのは一之瀬と神崎、後は挑発に乗りやすい柴田や渡辺、周りを見ている白波、網倉当たりか。

 

試験前に忙しいこのタイミングで俺達がわざわざ時間をずらして、個々に部屋まで借りて周囲にバレないように集まったのはつまり―――話し合い(わるだくみ)の為だ。

 

情報は武器だ。頭も並み、運動も出来ねえ雑魚共でも監視の真似事ぐらいなら出来る。そういう連中の働きはこういう所で生かされる訳だが…まあ、連中に言ってやる必要はねえな。

 

目の前ではジャンケンに勝ってガッツポーズをする石崎と、負けて慰められている柴田が居る。…こっちに喜び勇んで寄ってくる石崎を適当に褒めて、本命の一之瀬との()()()()を進める。

 

 

()()は俺達の勝ちだ。…分かってるな?」

 

「ん~、まあ、仕方ない…かなぁ。今回は譲ってあげるよっ」

 

「クク…別に裏切っても良いんだぜ?ペナルティは設けたが、お前らからすれば()()()()だろ?」

 

「にゃはは~どうしようかな?…龍園君はどうして欲しい?次の試験で負けたらリーダーを降りるって噂だけど、いいのかにゃ?」

 

「どっちでも構わねえさ。勝つのは俺だ」

 

「………へえ?」

 

 

ピシリと緊張が走る。リーダーの俺達が笑っている最中、クラスの連中の表情は強張っていく。…仮に今回の一件、俺達Cクラスが騙されてクラスの順位を落とせば俺はクラスの王を退く。そう言った言葉に嘘はねえ。

 

―――だが、一度オリた後にまた王に返り咲かねえと言った覚えはねえ。

この事はアルベルトと金田にしか伝えてねえ。他の連中に漏らせばどこかでボロが出る。現に石崎も伊吹も、表情に緊張が出ちまってる。

 

その後、一之瀬はひとしきり頷くと神崎らと視線を合わせて契約に同意してきた。用意した契約書は、3枚。

お互いの控えと、教師へ提出する1枚だ。俺が記入して、一之瀬が記入する。2人のサインがされているのを確かめる事3回。

 

 

「………」

 

「………」

 

 

問題ない筈だが念には念を入れて、金田にも渡す。「大丈夫です、龍園氏」とアイコンタクトを貰い、一之瀬を見るとシレっと2枚目に手を伸ばそうとしている。…。それをひったくると、非難がましい視線を向けてきた。

 

 

「電話が先だ」

 

「む~…分かったよ」

 

 

油断も隙もねえ。ため息を一つ零して、部屋を出て電話をしている一之瀬を待つ。2,3分の後に帰って来た第一声は「OKだって」というもの。

これには石崎たちもBクラスの連中も関係なく歓声を上げる。腰に手を当てて手を差し出す一之瀬に提出用の契約書を渡してやる。

 

 

「…うん、後はこれを先生に出すだけだねっ」

 

「クク…そうだな。それにしても…」

 

「なにかな?」

 

「いやなに、()()になったじゃねえか」

 

「………」

 

 

今回のBクラスが取った作戦は俺も当たりはつけているが…。最悪コイツらは()()()()、その提出する問題を手にしている可能性がある。

当初は見下していたものの、何が一之瀬を変えたのか。…決まっている。

 

 

「そんなに撫子が欲しいのか?」

 

「そうだけど?」

 

 

即答かよ。まあだが、契約が上首尾に済んだならもう用はねえ。俺が席を立つと石崎らも着いてくる。後ろからの引き留める声をスルーして帰る道中、案の定というか伊吹が声をかけて来た。

 

 

「…で?どうなの」

 

「なにがだ?」

 

「なにがって…アンタが説明なしに呼んだんだろうが」

 

「ふん、少しは察しろよ。…ひよりを見習え」

 

「え?」

 

 

珍しく文句なくついてきたひより(テスト前で部活がないらしい)に伊吹の相手を押し付けると、俺は着信音が鳴るスマホに視線を向ける。そこには、契約の履行となる写真が添付されていた。察してこちらを見ている金田に転送してやると、察して直ぐに動き出した。

 

 

「龍園さん。金田の奴、どうしたんですか?」

 

「………」

 

「あ?…明日には分かる」

 

「わ、分かりました!」

 

「Yes,Boss!」

 

「…ちょっと、私と対応違くない?」

 

「伊吹さん、まだ話は終わってませんよ?この前の休みの日―――」

 

 

コイツ等うるせえな。…だが、まあ良い。後の事は金田が上手く動くだろう。Bクラスのお手並みを拝見といくか。

 

 

―――〇―――

Side.茶柱 佐枝

 

 

「…それでは確認させて貰おう」

 

「はい。お願いします」

 

 

私はDクラスの堀北から提出されたテストの問題を受け取る。放課後の職員室は、偶然か私一人でそこに堀北が訪れた形だ。本来、このペーパーシャッフル試験の攻略法は2つだ。

1つ目は、純粋に対戦相手のクラスよりもより高い点数を取る事。その為に対戦クラスを考えたり、ポイントによる買収を行う。

2つ目は対戦相手のクラスの問題を入手すること。作成した生徒から買い取ったり、何らかの手段で奪取したりと様々だ。

 

 

「………」

 

「………」

 

 

だが、今年の1年生は事情が異なる様子だ。本来は作成した問題については合否を出すだけなのに、思わず確認をしてしまった。

念の為に全ての問題を見るが、問題はない。合計8教科全てのチェックは数分で終わり、堀北に提出可能だと告げる。

 

 

「…では、それでお願いします」

 

「確かに受理した。…だが、ふむ」

 

「なんでしょうか?」

 

「少し、意外だっただけだ。…変わったな、堀北」

 

「………そう、かもしれません」

 

 

入学当初、Aクラスを目指すのだと息巻いていた堀北もいつの間にかDクラスの中心にいる。時には厳しく、それでもクラスの連中に伝わる様に言葉を選んでいるようだ。

…何が彼女を変えたのだろうな。私も、もしもあの時に―――

 

 

「私は、必ずAクラスに上がります。…その為に、今回は回り道をする。それだけです」

 

「…、そうか」

 

 

過去へ思いをはせる。未来だけを眼に宿している生徒を前に。

堀北が去った後、常備しているレモンの飴を口にする。今日だけはどこか、飴の酸っぱさに顔を顰めるのだった。

 

 

――――――

有栖「…チェック、メイト」

※予定外

 

一之瀬「一緒にAクラスを目指そう」「私達は協力できるよ」「今回だけだからねっ」

※三枚舌外交

 

坂上「…?……それにしても、Dクラスの問題は良く出来ていますね」

※テスト確認時

 

 




読了ありがとうございます。
アンケート更新しているので、また回答の程お願いいたします。

『更新』主人公とのカップリングで許せるのは?本編、番外編問わず

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