ようこそ(勘違い)大和撫子の学校生活へ 作:エカテリーナ
百合7:本編3な回でしたので、筆の進みが早かったです。
感想評価、いつも活力にしています。
これからもぜひぜひ、よろしくお願いいたします。
ではどうぞ。
―――〇―――
Side.佐倉 愛理
その連絡が来たのは期末試験より少し前のこと。メールの通りに病院につくと、知らない先輩や他のクラスの人と一緒に撫子ちゃんの事情を聞いた。
Aクラスの人たちの諍いに巻き込まれて、よく眠れなくなったこと。それを治す為に協力をして欲しいということ。私も他の人も、すぐに頷いた。その後、気を付ける事や当番のスケジュールを決めると撫子ちゃんと一緒に…その、寝ることになった。
「じゃあ…お休みなさい、撫子ちゃん」
「………」
「っ…」
コクリと頷いた彼女が耳につけたヘッドフォンみたいなのを外して、少しだけ遠慮がちに私の…む、胸に頭を寄せる。思わず息を呑むけれど、声は抑える。不安そうにこちらを上目遣いでいる撫子ちゃんの頭を撫でて、平気であることを伝える。
耳を露わにしている時に声をかけない事、不安そうな表情をみせない事。他にもいくつか注意点はあったけれど、これも大切な撫子ちゃんの為、ちょっとだけ恥ずかしいけれど、私も撫子ちゃんも服を脱いでベッドで横になっている。
衣擦れの音も良くないらしくて、暖房のうんと効いた部屋でお互いを寝具みたいに抱きしめ合っている。…私の胸も大きいって思っていたけれど、やっぱり撫子ちゃんの胸も凄い。一之瀬さんや波瑠加ちゃんも大きいけど、撫子ちゃんのは…こう、圧倒的だった。
必然的に私の左胸に頭を預ける撫子ちゃんの胸は、私のお腹あたりに押し付けられている。こそばゆく感じるところが、撫子ちゃんの大切な所だと思うとちょっと変なキモチになりそうでごくりと息を呑んでしまう。
「………すぅ…」
「……っ…」
程なくして規則的な呼吸を繰り返す撫子ちゃんに、思わず安堵の息をつく。…ジッと顔を見てしまう。仕方ないと自分の中の天使を誤魔化して、悪魔の誘惑に従い役得を味わう。
うわ、産毛が全然ない…。まつ毛…凄い、わぁ…髪の毛、艶々。あ、背中に腕、あっ、あっ、駄目。ギュッとしたら…あ、あぅ…。
「…ん、…」
「っ………」
「………すぅ…」
緩やかな、それでいてとっても甘い拷問のみたい。同性でも。…ううん、同性だからこそ吸い付くような肌も、唇も、それ以外も、手で、口で、触れてみたい。
…でも、今はダメだ。撫子ちゃんは今、とても傷ついている。そんな彼女を癒す為に、私はこうしているんだから。
「んっ…」
「………」
子供が最も落ち着くのは、心臓の音らしい。撫子ちゃんに届いて欲しいと、彼女の頭をかき抱く。すると喘ぐような声を漏らして…ううん、安心して眠っているようだった。良かった。
そうして私と、撫子ちゃんの夜は過ぎていく。願わくばまた、一緒に買い物や撮影に行けるようにと夢見ながら。
…
……
………あ、あっ、撫子ちゃん…!?あ、足…足を絡みつけたら、あ、当たっちゃう…!当たっちゃうから…!や、やっ…あっ…!!だ、だめっ…きゃぅ…!~~~っ!
―――〇―――
Side.茶柱 佐枝
「んっ…」
「………」
教職員用の社宅、その一室。私は教え子と一糸纏わぬ姿で同衾していた。
…ふっ、こんな言い回しではまるで良からぬ関係を持った適当な漫画や映画のようだな。
教え子…撫子は私に身体を委ね、覆い被さるようにして就寝している。教職員の間で直ぐに共有された西園寺の症状は思いのほか深刻で、対処に我々だけでなく生徒にも協力を仰ぐ始末。
…まあ私のクラスも含め、大勢がそれに賛同した。それだけ慕われてるこの子を思うと、自然と笑みが浮かんでしまう。
そんな彼女が、彼女の家が、あんなに
・
応接室で聞いた綾小路の父君との会話。
あの後、理事長にどれだけ詰め寄っても答えははぐらかされた。数日後、Aクラスの担任の真嶋先生と一緒に撫子宛の手紙を検分した。
内容は綾小路篤臣氏のいっていた通り、本来の婚約者が事故で死亡したこと。新たな婚約者は綾小路清隆となること。お互いの卒業時、入籍する為に陰に日向に彼を支えること。そんな内容が丁寧に、しかし無遠慮に書き綴られていた。…まだ本人は知らない。治療中の撫子に手紙を渡すのは医師から保留とされている。…当人の心情を考えれば、当然だろうが。
一読した真嶋先生は激怒し、時代錯誤だと叫んだが結論が変わる事はない。なにより、教師にそのような権限はない。保護者が望み、生徒が希望した以上その進路は確定となる。
「来たか、綾小路」
「茶柱先生、今度はなんですか?」
「…以前の、西園寺の件だ」
唯一の可能性は、撫子や綾小路自身がそれを拒むことだがお互いに親に進路を決められることに肯定的だ。
現状、意思確認が出来る綾小路は親に反抗的かと思いきや、「それがあいつの決めた進路なら仕方ないでしょう」と普段通りの温度を感じさせない声色で告げていた。
少しだけ大人げないが、「西園寺が自分のモノになるならさぞ嬉しいだろうな」と煽ってみせると―――グイッと力強く、ソファに押し倒された。
「な、きゃっ…」
スーツを強引に引かれた為か、ボタンがいくつかはじけ、はだけかけたワイシャツはあられもない様相を呈していただろう。
大人として情けない声を上げてしまったが、怒りを込めて見上げた時のアイツの表情は
「………」
―――何の熱もなく、ただただ冷え切った眼差しと、表情。
「相手がアンタだとしても、俺は同じ答えを返すでしょうよ」
「………す、すまない…失言だった」
「…失礼します」
バタンと音を立ててしまった扉。生徒には見せられない状態の衣服をそのままに、掌を顔に当てて歯噛みする。
文字通り、失言だった。いつもと変わらない綾小路の事を見て、動じていないと勘違いしてしまった。
そんな訳がない。アイツもまだ16かそこらの子供なのに、親に進路を決められて、突然婚約がどうだと言われて混乱していない筈がないのに。
撫子もそうだ。以前、外部の人間に淫らな行為*1をされてもよく分かっていない様子だった。
…おそらく、それも実家の教育のせいなのだろう。彼女はまるで、体だけ成長した幼子のようだった。
どう、償いをしたらいい。アイツと、この子をどう導いたらいいのか。
そんな自問自答を繰り返す内に、決められていた撫子と過ごす日が来た。
彼女を招き入れ、一緒に夕食を作り、耳当てに気を付けながら入浴し、共に身体を洗い合う。その全てに会話は無かったが、彼女は唇の動きで言葉が分かるらしく筆談で意思疎通は取る事が出来ていた。
最近の治療のおかげか撫子は以前の様子を取り戻しているようだった。いつもニコニコとしていて、こちらに十全の信用、信頼を預けているのを感じる。
どこか知恵に対抗して、「佐枝と呼んでくれ」と言えば恥ずかしそうに唇で『さえ、せんせい』と呟くのが分かって抱きしめてしまった。
嬉しさは、あった。だがそれ以上に私の表情を見せたくなかった。泣きそうになってしまった顔で、撫子に心配を掛けたくはなかったのだ。
その後、部屋の明かりを落とす。暗さに目が慣れたらお互いに寝間着も、下着も脱いで肌を晒した。撫子の頬が果実の様に赤くなったのを笑うと、むくれるように脇腹を
少しだけはしゃいで緊張が解けたのか、撫子と頷き合って耳当てを外してやる。瞬間、思わずといったように眉をひそめる撫子を強く抱きしめる。
医師に言われた通り、心音が心地よいのだろうか。直ぐに私の背中にも腕を回して、共にベッドに横になる。寝やすい姿勢を捜す内に、何度か耳や首筋に指を這わせるとぽかぽかと叩かれた。…すまん、猫のようだと思ったんだ。
そうこうしている内に眠くなったのか、仰向けになった私の左側から腕や足を絡ませる。まるで抱き枕のように為すがままだが、不安そうな表情の撫子の頬に手を当てて安心させてやると、すぐに寝息を立て始めた。
「すぅ…すぅ…」
「………(おやすみ、撫子)」
言葉にはせずに、唇だけで安眠を祈る。
今だけは、この瞬間だけは彼女に安息がありますように、と。
―――〇―――
Side.椎名 ひより
「………っは…!」
目が覚めると私は、自分の部屋でした。
…おかしいです。今日は撫子お姉様と床を共*2に…んん、いえ。治療行為をする日の筈です。
ただしっかりと毛布は掛けられていますが、寝間着は着ていない。…え?では、あれは夢ではなく…!
ガバリと身を起こして部屋の中に視線を向けると、そこには誰の姿もありません。
しかし、机の上にはラップを掛けられた朝食とメモ書きがあります。
『おはよう、ひより。昨日はありがとうございました。よく眠っていたので、お先に失礼します。風邪を引かない様に気を付けて下さいね。西園寺撫子』
「~~~、私の、馬鹿っ!」
やってしまった。その怒りを枕にぶつける事、数回。荒い息を整えると、昨日の記憶が徐々に蘇ってきました。
部屋に来たお姉様と、その…一緒にお風呂に入ったこと。お姉様に甘えて髪を洗って頂き、私もお姉様のお身体を洗うお手伝いをしたこと。長湯をした自覚はありましたが、それが良くなかったのかのぼせてしまったのでしょう。
いえ、お姉様の色香にくらくらしていたのもあるのですが、心配そうなお姉様の手を引いて…あ、あぁ…!はしたないっ!
ま、まるで遊女のように誘って、困惑していたお姉様を抱きしめて、そ、それで…キスまで強請って、あ、あう、あうあうあう…!!
どうしましょう、つ、次に会う時に顔を正面から見られる気がしません…。
首をぶんぶんと振りつつも、お腹は空くもので。
作り置きしてくれた朝食は冷蔵庫からレシピを考えてくれたのか、卵焼きもベーコンもサラダもとても美味でした。
「ほぅ…」と息をついていると、スマホに連絡が来ていることに気が付きます。もしかしたらお姉様からかと思えば、龍園君からでした。
半ば興味は失せていましたが、件名には「次の試験について」とあり仕方なく確認します。
・
・・
…そうですか。なるほど。
私は今までで初めて、龍園君の作戦に心から同意をするのでした。
確認した内容に全く否はありません。私は快諾する旨を返信して、歯を磨き、身なりを整えると―――再びベッドに舞い戻ります。
ぼすんと衝撃を受け止めてくれると共に、ほのかに香るお姉様の残り香。いけない事だと思っていても、私はそれを全身で味わいます。
「~~~ん、ほわぁ…!」
元より本日は体調不良で休むと学校には連絡済み。そうして私は、思う存分にお姉様とのこれからを夢に眠りにつく。
その未来の為、邪魔な存在にはとっとと消えて貰いましょう。
―――〇―――
「………」
「………」
「………」
規則的にペラりと紙を捲る音だけがする診察室。
その場に会するのは西園寺撫子の主治医と、担任の真嶋。そして彼女のフォローを約束してくれた一之瀬の三人だ。とうの本人である撫子は今日も他生徒の自室で休んでいるそう。学校や既に休み。つまりもう冬休みは始まっており、既に半ば。
撫子の経過によっては事実上の退院。あとは定期的な通院でどうかという程まで、彼女の体調は戻っていた。
それは偏に彼女を抱いて寝る*3のに協力的な友人知人が多数いたこともあった。その数が実績として。医師やカウンセラーからも一考の余地ありとされたのである。
「先生、それで…西園寺の様子は」
「…ええ、そろそろ日常生活に戻っても構わないと思います」
「っ本当ですか…!?じゃあ」
「ただし!…しっかり守って貰いたい事がいくつかあります。…よろしいですか?」
興奮からか立ち上がる一之瀬に釘を刺すように、医師は用紙を二人に配り日常生活での注意点を話す。
基本的に耳当て*4は自室以外で外さない様にすること。症状の再発防止の為に、周囲への協力や注意の周知は徹底すること。原因である生徒との単独接触やお互いの謝罪などはしない・させないこと。異常が有ったら直ぐに医師の判断を仰ぐこと。
そんな割と常識的な注意に元気よく返事をする一之瀬とは反対に、真嶋はどこか思案気だ。被害者と加害者が同じクラスに居る。故に、その間を取り持つことの出来る生徒を脳内でピックアップしていた。
「…では、本人への問診で問題が無ければ明日にでも自宅療養、通院へと切り替えます。担任の先生さんも、よろしい?」
「あ、はい。…お世話になりました」
「?なにか、気になる事でも?」
「えぇ、まぁ…」
「…」
医師は口を濁す真嶋を訝し気にみつめる。他のクラスとはいえ、生徒の手前だ。弱みのような部分を晒す事を避けた真嶋を責める教師は居ないだろう。…だが、その不安を解消する一言は医師からではなく
「真嶋先生、安心して下さい。撫子ちゃんの事は私がしっかり護りますからっ!」
「一之瀬…。そう…だな、これからも西園寺のことは頼ると思うが、頼めるか」
「はい、任せて下さいっ!」
「………?」
場面だけ切り取れば、教師と生徒の微笑ましい一幕だ。無垢な教え子が素直に、教師に意気込みを話した。教師もそれが気休めとは気付いていても、相手が年下だからかわざわざ否定はしない。
どこか噛み合っていなくて当然だ。大人と子供、それぞれに見えているものが違っているのだから。そしてそれは、
「………」
「…では俺は学校で西園寺の件の報告を」
「あ、分かりました。…先生、さようなら」
「ああ」
気のせいかと、視線を逸らす医師。もう少しだけその様子を見ていれば確信を持てただろう。―――立ち去る真嶋を見つめる一之瀬の瞳に、隠しきれない怒りの感情が籠っていたことに。
これにて冬休み編は終幕。
次回からいよいよ混合合宿編がスタートいたします。
プロットは出来ています。お楽しみに。
それでは次回、お楽しみに!!
久しぶりにカップリング相談になります、混合合宿、撫子と絡んで()欲しいのは…?
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一之瀬帆波
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櫛田桔梗
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椎名ひより
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坂柳有栖
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鬼龍院楓花
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茶柱佐枝
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星之宮知恵
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松下千秋・伊吹澪
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堀北鈴音・軽井沢恵
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白波千尋・姫野ユキ
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神室真澄・山村美紀