ようこそ(勘違い)大和撫子の学校生活へ   作:エカテリーナ

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まさかの日間ランキング10位。
皆様のおかげで、モチベーションが爆発したので投稿です。
続きもほぼ完成済み、夜に手直しして投稿する予定です。

それでは、どうぞ。


混合合宿編
①:復帰戦:混合(っていうほど一般生徒は他学年と絡む場面のない)合宿。


―――

年が明け、新学期が始まった。

休み明けで各々が生活リズムを取り戻すのに難儀していても、学校からの特別試験は躊躇なく実施される。

 

特に、今回の試験は3学年合同で行われる。それも生徒会員しか知らない情報だが新会長“肝いり”の試験だ。だがそんな事情を知らなくとも、各々が程よい緊張を持って試験に挑む生徒達はバスに揺られていた。

 

各学年、各クラスごとに目的地へとバスが進む。途中休憩を挟むものの、目的地などは知らされずに各々のクラスで歓談に興じていると車内マイクを通してアナウンスが入る。

 

 

「―――皆、これから今回の試験の説明を開始するので聞く様に。…先に資料を配る。読み進めても構わないが、説明は順番に行うのでそのつもりでいる様に。では、3ページ目の―――」

 

 

Aクラス担任の真嶋が特別試験―――『混合合宿』の説明を始める。

 

平たくいうのならそれは、学年の垣根を超えて()()()()順位を競うというもの。

 

男女で別れ、各クラス合同で小グループを6つ構成。次いで各学年で同じく作った小グループとも合流、纏まったそれを大グループとし、最終的に6つの大グループを構成して平均点を競うというもの。

 

この大グループで試験を行い、1位から6位の成績によって各クラスに報酬か罰則が与えられる。

 

そしてこのグループ作成が非常に厄介で、自分たちのクラスだけでは構成出来ないのだ。

必ず2クラス以上の生徒が所属しなくてはいけない。普段は敵対するクラスと、どうやって共同歩調を取るか。それもこの試験の要点となるだろう。

 

真嶋の説明は続く。次に構成する人数について。これは、その学年の生徒の数によって変動し、1年生は女子は80人と退学者はいないものの男子は77人。Dクラスが3名の欠員を出している為に、構成人数が最大の15~10人から14~9人と少なくなっている。

 

 

「…ふん、やっぱりDクラスは…」

 

「…!おい、戸塚…止めろよ」

 

「うるせえな、事実だろっ」

 

「………」

 

 

一部、雑音(ヤジ)を挟みながらも真嶋は試験の報酬に話を移す。

1位のグループは一人につき10,000プライベートポイントと3クラスポイント。

2位は5,000プライベートポイントと1クラスポイント、3位は3,000プライベートポイント。

 

4位からは減少だ。5,000プライベートポイントの減少、

5位で10,000プライベートポイント/3クラスポイントの減少、

6位で20,000プライベートポイント/5クラスポイントの減少。

 

 

「今回の試験、理論上の最大得点は他のクラス3名を含み構成最大の15人で小グループを作る。そして責任者を自クラスに指名して、1位を取ると―――総額108万ポイント、336クラスポイントを得る事になる」

 

「…!」

 

 

巨額の報酬に、バス内でもざわめきが沸く。しかしそれも長くは続かず、静寂の戻ったバスに真嶋は説明を続ける。この試験のキモ…責任者について。

 

 

「グループにおいて責任者になった生徒と同じクラスの生徒は、報酬が二倍になる。ただし、試験において規定のボーダーをグループが下回った場合は責任者は退学となる」

 

「退学…!」

 

「それと、これは退学が出たグループの責任者の権利だが…もし、試験の結果が振るわなかった原因と認められた場合に限り、同じグループの生徒を1名指名し連帯責任。すなわち、()()()退()()とすることが出来る」

 

「そ、そんなっ…じゃあ他のクラスが責任者のグループに入ったら、何も悪くなくても退学になるってことですか?」

 

「…繰り返しになるが、対象生徒がボーダー。赤点の原因だと監督する我々が判断する場合だ。真摯に試験に挑めばその点では問題ないだろう」

 

「………なるほど」

 

 

その言葉に、安堵する生徒も居たが察しの良い生徒は気付く。

責任者となった生徒は、退学のリスクを孕む試験だということを。

 

その後、真嶋は目的地までの到着時間を告げると座席に戻る。各々が考察をする中、真嶋からマイクを受け取ったのか、クラスのリーダー格でもある男子生徒の葛城の声がバスに響く。

 

 

「皆、試験についての方針を相談したいと思うが…坂柳、構わないか?」

 

「…ふふ。どうぞ?葛城君」

 

「感謝する。…では、方針としては俺は作成可能な最大人数をAクラス内で詰めて、残る1名を他クラス…CかD辺りから充足する主力グループを作成。残りの7名を予備グループとして、適切にグループ分けしていく。そう考えているが、皆の意見を聞きたい」

 

「良いと思います、葛城さん!」

 

 

葛城の打ち出した方針は、事故率を抑えたグループを作り1位を狙うというもの。複数クラスで小グループを作れば報酬は高いものの、順位が振るわなければ絵に描いた餅。ペナルティも倍増するならそれは得策ではないと、葛城はそう締めくくる。

盲目的に同意を示す葛城派の生徒とは違い、一部の生徒はそれが実現可能かどうかを考察して質問をする。最初に手を挙げたのはクラスのどの派閥とも仲の良い、橋本だった。

 

 

「なあ葛城、作戦は分かったがソレって他のグループに配置されるメンバーが狙い撃ちにされるんじゃないか?あわよくば責任者にさせて退学…なんて他のクラスが手を組んだらどーすんだ?」

 

「…それについては主力グループに加わる他クラスの生徒に、特約として“一切のリスクを負わせない”事を約束する。それを取っ掛かりに、Aクラスの生徒は他グループで責任者とならない姿勢を伝えるつもりだ」

 

「…いやそれ、根本的にはリスク回避できてねえじゃん」

 

「橋本っ!文句を言うならお前はなにか作戦あるのかよ!」

 

「それを話すための場だろうが!」

 

「戸塚はもう話すなよ…!」

 

「…なっ!お前ら…っ」

 

 

そう噛みつく戸塚に、肩をすくめる橋本。露骨な態度により立ち上がろうとする戸塚だが、周囲に抑えられて強引に席に座らされる。…冬休みが明けても、両陣営には拭いきれない確執があると、感じる一幕だった。

 

その後にスッと手が上がるのは坂柳有栖。葛城と対する彼女は、回って来たマイクを受け取るとよく通る声で話し始める。

 

 

「まず最初に、この場の皆さんにお願いがあるのですが…いくら試験が待ち遠しいからといっても、あまり大きな声を出すのは止めて頂けますか?慣れないバスでの長時間移動。お疲れになって、()調()()()()()()()方もいる事でしょうし、それを()()()()()方が同じくクラスに居ると…私は思いたくはありませんが」

 

「「「っ!!」」」

 

 

その一言に、バス中の注目が一点に集まるが直ぐに離散する。該当生徒―――西園寺撫子に気付かれるのを避けたかったからだ。

 

 

「っ…!それは、すまなかった。注意を徹底しよう」

 

「ふふっ葛城君が謝る必要はないのですが…まあ良いです。私の方針は正直、臨機応変に他のクラスに合わせて勝てるグループで責任者を、負けるグループには極力人員を回せないように配置すればいいと思います」

 

「それは…だが、他のクラスが許すだろうか?」

 

「立ち回り次第といった所でしょう。…真嶋先生、今回の試験、完全に男女は接触する機会はないのですか?」

 

こちらはその程度のことはできる、そう言わんばかりの態度に葛城も眉をひそめるが、表立って文句は言わない。他事で貴重な時間を消費するのは得策ではないからだ。

 

話を振られた真嶋からは、「毎日1時間だけ本館で食事を取り、その際は自由。それ以外は基本禁止」とのこと。それを聞いた有栖は数瞬してから葛城に方針を伝える。

 

 

「葛城君、女子の方は私が差配しますから男子の方はお願いしてよろしいでしょうか?役割分担としましょう」

 

「ああ、任せてくれ。…グループの編成で、なにか意見はあるだろうか」

 

「いえ特には。…あぁ、先ほどの約束通り、責任者を引き受けて妨害を受ける事だけが不安要素です。そこの管理は徹底して下さいね」

 

「…心得た」

 

 

荒波を立てることなく、すんなりと意見は纏まった。葛城本人はもちろん、傘下の生徒たちも喜色を浮かべ、対する陣営は表情を曇らせる。…だが、リーダーの指示なのだ。黙って従うくらいの分別は各々持ち合わせている。

そしてAクラスの女子は、坂柳が。男子は葛城がリーダーとしてこの試験に挑む。いくつかの不安要素を抱えてつつも、Aクラスの特別試験が幕をあけるのだった。

 

 

―――◇―――

Side.西園寺 撫子

 

 

バスに揺られる事、数時間。無理せずに休む様にと真嶋先生に助言を頂いて、私はそのほとんどを眠って過ごしたのであまり負担はありませんでした。…最近の…その、寝る時の癖で、腕に抱き着いてしまった山村さんに謝罪をするとパタパタと身振り手振りで気にしていないとふぉろーを頂きます。

 

 

「…ごめんなさい、山村さん」

 

『あ、あの…大丈夫、ですから…その、もう少し眠っても…そのう…』

 

 

…いけません、折角、名誉挽回の機会を頂いたのですからAクラスの為に全身全霊を尽くさねばなりません。

今回の試験は有栖がリーダーとして管理をするそうなので、私は無理のない程度によろしくとお気遣いかけてもらっています。

 

新学期、クラスの皆様は体調を崩して離脱した私を暖かく迎え入れてくれました。

普段の生活も、常に気を回してもらっています。周囲の音を拾いづらい現在も、誰かがすぐ近くにいて助けになってくれます。

いま横にいる山村さんも、入院しているときからずっと見守ってくれました。(そのことの感謝を伝えると、何故か驚かれましたが。…?)

雅会長にもお詫びに伺うと肩を叩かれて『これからもよろしく頼むぞ』と激励を頂きました。

本当に、皆様お優しい方々ばかりです。

 

それ故にこれは、贅沢な…?我儘な意見なのかもしれません。

少々、居心地が悪くも思います。言葉を選ばすに言うなら、そう。腫れ物に触るような…いえ、それも私の不徳が招いたこと。甘んじて受け入れなければ。

 

真嶋先生も、葛城君も有栖も、少々過保護なくらい気を使ってくれてますが、私はもう大丈夫です。

 

確かに今の私は耳に保護具をつけていて、あまり声が聞こえにくい事実はあります。…ですが、この1ヶ月ほどで読唇術は習得することが出来たので会話に問題はありません。

落ちた体力が心許ないですが、今回の試験では恐らく問題ない…筈。集まった体育館で他のクラスの面々や上級生の先輩方と挨拶を交わし、先生の指示に従いグループの編成に移ります。

 

 

 

 

『では、撫子さんは一之瀬さんのグループにお願いします』

 

「ええ、お任せあれ」

 

『よろしくねっ撫子ちゃん!』

 

『撫子ちゃん、一緒に頑張ろうね』『お姉様…!』

 

 

有栖の主導する話し合いの結果、私が所属するのは、どうやらBクラスの帆波が責任者をするグループ。有栖直々にお願いをされましたので、もちろん否はありません。Aクラスからは私のみですが、4クラス編成で愛理やひよりもいらっしゃるので疎外感のようなものは感じません。…やはり、気を使って頂けたのですね。

 

その後、恙無く大グループも出来ると荷物を運びに宿舎の部屋へ。お昼をグループの皆様で作り、上級生の方々ともスケジュールを詰めているともう夕方。慣れない共同生活にどこか非日常を感じて楽しんでいると、先生の噂話を聞いたのかDクラスの愛理の友人…長谷部波瑠加さんが気になる事を言っていました。

 

―――『男子たち、まだグループ決めてるらしいよ』と。葛城君?大丈夫…ですよね?

私は一抹の不安を覚えながらも、本日の献立を手早く調理するのでした。

 




読了、ありがとうございます。
ちなみに撫子の配置グループは一之瀬委員長の丁寧()な話し合い()によって協議()の結果、
公正()で公平()に決まった模様です。
次回はいよいよ男子サイド。

お楽しみに。…あ、某次回予告は皆様、脳内で再生しておいてくださいませ。
よろしくお願いいたします。

本作もついにアニメで言う3期に突入しました。また募集なのですが、番外編や幕間、別作品扱いでも書きたいネタはたくさんあるのですが、どれが需要高いか教えてください!

  • 本編番外編、他クラス編など
  • 本編幕間、キャラとの絡みなど
  • 別作品番外編、R指定の作品など
  • 本編優先、とりあえず1年生完結まで
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