ようこそ(勘違い)大和撫子の学校生活へ 作:エカテリーナ
少し考えましあたが、投稿しときます。
今回は三部構成?くらいの予定になるかと。
それでは、どうぞ。
①:甘い誘惑
合宿が終わり、2月の上旬。
まだまだ冬の寒さが肌を突き刺し、登校する生徒は足早に校舎へと進んでいく。
そんな生徒達の中でも、殊更に表情が二分化されているのが一年生たちだ。
元Aクラス―――否、坂柳クラスと龍園クラスはクラスが下がり暗く、
一方で昇級を果たした一之瀬クラスや堀北・平田クラスは明るい。
「おはよう、一之瀬さん!」「委員長おはようー」
「みんなおはようっ!今日も頑張ろうね!」
教室でもそれは顕著で、
逆に昇級した2クラスは声や表情が段違いだった。Aクラスの生徒達も元気に挨拶を交わしていると、予鈴の音と共に担任の星之宮が教室に訪れた。
「はい、皆おはよう~。今日も寒いけど、頑張っていこうね~」
「知恵ちゃんおはよう!」「先生も頑張ってねー」
ホームルームでは風邪が流行っているので体調管理を気を付けることや、月末近くの期末試験に向けて勉強をしっかりすること等、別段おかしな所はないもの。…しかし入学当初から、担任の星之宮知恵という教師のある種の適当さを知っている。
「…なんか最近さ」
「ね。…知恵ちゃん、何かあったのかな?」
Aクラスになった時も喜ぶ様子があったものの、それでも普段よりも控えめな様子だった。
…ちなみに、担任の様子を心配する生徒も多かったが、酔っぱらって教室に来ることも無くなって、生徒達に余計なちょっかいをかける場面も減り、儚げな様子でため息を零す場面も増えて来た星之宮。教師や生徒問わず、普段とのギャップにドギマギする異性が増えたのはまた別の話だ。
・
「じゃあ迎えに行ってくるねっ!」
「行ってらっしゃい~」
昼休み。Aクラスから見送られた一之瀬が向かったのは隣のBクラス。慣れた様子で失礼しますと一声かけた後に、目的の人物を見つけると声をかけた。
「撫子~お昼たべよっ!」
「帆波。…ええ、喜んで♪」
返事をしたのはBクラス主要陣でもある西園寺撫子だ。この一幕は今までも時折あったが合宿が終わってからはほとんど毎日のこと。日課になっていた。
最初は一部の生徒がついてきたり、後になって苦言を呈してきたこともあったが一之瀬は、
「強制はしていないし本人の意志」「友達と一緒にご飯を食べるのが何でダメなのか」「早くも契約について忘れたのか」
…等々。Bクラスからのアレコレを歯牙にもかけなかった。
当然、面白くない生徒も
「わっ…撫子、今日は凄いねっ」
「ふふっ、よろしければおひとついかがですか?」
「やったぁ!」
結果として、このふたりの時間。昼時の食事風景は様々な場所で目撃されることとなる。時には生徒会室、時にはAクラスの教室と、たまにクラスメイトや先輩知人が招かれる食事会は、一部の生徒*1からは「なんとか参加できないか」と順番待ちが起こるほどの注目を集めていた。
その日は偶然、席が空いていたという理由で中庭が見えるガラス張りのカフェ・ラウンジでお弁当を広げていた。校外では持ち込みが許されないが学校はその点も寛容だ。
食事を終えると、リラックスタイム。その日の2人の話題は専ら近況についてだった。
学校ではカップルのような親密度を誇る撫子と一之瀬だったが、常に一緒には居られない。その結果が先の休学に繋がったと考えている一之瀬は、過保護なほど撫子の事を気にかけていた。
「じゃあ最近は、神室さんとか山村さんと一緒な事が多いの?坂柳さんとかは?」
「ええ。以前から体育の時などは有栖と一緒じゃなかったけど、最近はちょっと…忙しそうで」
「そっかあ…寂しいね」
一方、撫子もそれは理解している。一之瀬に限らずクラスメイトや知人友人先輩らが全員
しんみりした雰囲気を払拭するようにパン、と手を叩く一之瀬は話題を変えた。
「そういえば、来週はバレンタインだね」
「ばれんたいん、ですか?」
「えっ…撫子ちゃんもしかして、バレンタインって知らない!?」
「いえ、たしか仲の良い相手にチョコレートやお菓子を送る日のこと、よね?」
「あってる…あってるけど、なんか曖昧なのなんで?」
ジト目で聞き返す一之瀬。それに撫子は「以前の学校ではそう言う事が禁止されていたから」と伝えて、「あぁ~なるほど」と返事が来る。
「じゃあ今年は、誰かに送るの?」
「…そうですね、それも良いかもしれません」
「お!それじゃあお互いにチョコレート交換しようよっ」
キョトンと首を傾げる撫子に、パタパタと身振り手振りテンションを上げて説明する一之瀬。
曰く、今は女性同士でもチョコレートを贈るのが当たり前。
曰く、好きな相手には手作りを上げると更に良し。
曰く、曰く、曰く…。
「そういう訳だから、私は撫子の手作りのが食べたいかなっ!」
「ふふっ…、分かりました♪では楽しみにしていてね?」
「わーい、楽しみが増えたよ!…あ、それはそれとしてまた試験前…良い?」
「ええ、勉強会の件ね?有栖に聞いてみるけれど、大丈夫だと思うわ」
「お願いねー」
そんな約束をしていた二人だったが、撫子は勿論のこと一之瀬も、ここが何処で、誰が居る場所かを失念していた。
「………なあ」
「………ああ」
「………お姉様の、チョコ…」
表情が見えない角度で俯いた、近くの席に居た生徒達*2。彼らはクラスメイトや友人、部活やコミュニティにその会話を広める。
すなわち、1年生で副会長に抜擢された西園寺がバレンタインにチョコレートを好きな相手に作って渡すという噂を。
※圧倒的ひとり歩き。
「もう時間かあ…じゃあ、放課後に生徒会室で!」
「ええ、帆波も午後の授業、頑張って下さいね」
2人が拡散された噂に気が付くまで、後――時間。
―――〇―――
Side.綾小路 清隆
「ねえねえ、どこで買うか決めた?」
「えーやっぱり手作りの方が良いでしょ!」
混合合宿試験が終わって、2月。俺達はCクラスに昇級し、どこか浮ついた雰囲気で日々を過ごしていた。そしてそれは、今週に入ってから更に強くなったように感じる。盛り上がっている女子の様子に首を傾げていると、隣の席の堀北がチラリとこちらに視線を向けてきていた。
「…どうした堀北」
「………あなたも、あの下らないイベントに興味があるのかと思っただけよ」
「イベント?」
そう聞き返すと、ぱちぱちと瞬きをして、ふいっと視線を外してくる。どこか頬が赤い気がするが、聞き返しても返事が返ってこない。後で啓誠たちに聞こうかと思っていると、珍しく軽井沢たちが声をかけてきた。
「ねえねえ、綾小路君はどっち派?」
「…なにがだ?」
「えー?だから、バレンタイン!2月14日といえば、それしかないでしょ?」
「…バレンタイン?」
バレンタイン…2月14日?…司祭ウァレンティヌスの処刑された日がどうしたんだ?処刑方法について聞かれてるのか?
返事を考えていると、どこか憐れんだ表情を浮かべた軽井沢が肩をポン、と叩いてくる。
「綾小路君…」
「そっか…大丈夫、今までよりもこれからが大事って言うじゃん」
「………」
何故か、松下や佐藤まで引きつった顔をしている。その後、聞くところによると今月の14日は好きな男性に女性からチョコレートをプレゼントする日らしい。
こうして送られた相手には、3倍のお返しを3月14日にするのが男側のホワイトデーとのこと。…男側は3倍なのか。大変だな。何故か熱弁してくる軽井沢に頷いていると、松下に肘で突かれた佐藤がさっきの質問を繰り返してくる。
「それで、綾小路君は手作りと市販のやつ、どっちが良いと思う?」
「…そういうことか」
何故俺に聞くのかと思ったが、どうこたえても角が立ちそうだな。ジッと見て来る佐藤も妙にモジモジしているし、どこかクラスの注目を集めてしまっている。
「………気持ちが込めてあったら、どっちでも貰った奴は嬉しいと思うぞ」
「…ほ、本当?」
「ああ。俺なら嬉しいと思う」
「っ…!」
そう返すと、佐藤は早口でお礼を言って席に戻ってしまう。…軽井沢?なぜ親指を立てているんだ?松下も、にこりと意味深に笑っている。…なんだ波瑠加、愛理。啓誠たちも。一体どうした?
それにしても、バレンタインか。
好きな相手に気持ちを伝える日、日ごろの感謝を伝える、友チョコ、義理チョコ、そんな内容が調べたらすぐに出て来た。その中で気になったのは、海外では男性からも女性に花を贈ることもあるらしい。
「………」
それを見て最初に思ったのは、西園寺のことだった。
依然として、俺は西園寺に例の手紙の件を伝えられていない。祖父である大和氏の手紙は学校側が保管しているらしく、渡す時期については未定ということだ。俺にも伝える日について確認が入ったが、正直なところ俺は伝えなくてもいいんじゃないかと思い始めていた。
正直な所、それを伝えても俺が西園寺と特別な関係になる未来が想像できない。それに軽く調べただけでも、彼女のAクラス卒業への意欲は希薄だ。前回の試験の結果でAクラスとBクラスの順位が入れ替わって、落ち込む生徒が居る中で西園寺だけは変わらずに生徒会業務や部活、果てにはBクラスの一之瀬と昼食を共にしている所をよく見かける。
もし、少しでもクラス対抗戦に関心があれば自分のクラスを落とした相手と表だって仲良くはしないだろう。クラスメイトの心情もある、自重するはずだ。
だから仮に、俺や俺達CクラスがAクラスになっても西園寺は無関心か、知人として祝福してくれるだろう。特に堀北や櫛田は仲が良い分、この事情を聞いたらどんな反応を示すか予想できない。
「(…やはり一度、会って話すべきかもな)堀北」
「なにかしら、モテ路君」
「…お前は何を言っているんだ」
「冗談よ。…なにかしら」
変な呼び方をされた気がするが、気を取り直して女性側の意見を聞いてみることにする。
「(西園寺に)バレンタインに花を送ろうと思うんだが、(女性から考えて)どう思う?」
「………えっ」
「「「…!?」」」
この後、めちゃめちゃクラスがざわざわした。
堀北からも顔を赤くしてコンパスを向けられた。…どうしてこうなった。
読了、ありがとうございました!
人生初のバレンタイン×二人。ですねっ!
続きもお楽しみに!高評価、感想があると執筆速度が上がります、よろしくお願いいたしますね!
次の試験、ちょっと露骨に改変が入ります。皆様の率直なご意見をお願いいたします。
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特別試験はできるだけ変えないでほしい。
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原型があれば、付け足しとかは可。
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改変するなら全く別物にしてほしい。
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やってみて面白ければ◎、ダレるなら△