ようこそ(勘違い)大和撫子の学校生活へ 作:エカテリーナ
ギリ間に合いましたでしょうか?
次回も早急に完成して、追加試験に行きたいです。
それでは、どうぞ。
―――◇―――
Side.松下 千秋
バレンタインまで数日と迫り、学校中が何処か浮かれている中で私と軽井沢さんは綾小路君に放課後に呼び出されていた。それも、普段から一緒の佐藤さんには内緒でと言われれば…これは、ひょっとして?
「いや~何の用なんだろうね、綾小路君」
「…そうだね、それも私たち二人だけでって」
「もしかして…もしかするかもっ!?」
どこかワザとらしい軽井沢さんは、乙女のスイッチが入っている様でテンションが高めみたい。…でも、前の教室での佐藤さんからのアプローチがあって、その後のすぐに仲の良い女子だけ呼び出すってなれば邪推も仕方ない。
―――綾小路君。
入学当初は目立った生徒じゃなかったと思う。でもこの学校の特色とも言えるクラス対抗制度、そして特別試験。無人島、船上試験に体育祭。徐々に彼は頭角を現していて、気が付けばクラスの主要陣の輪の中に常にあった。
テストの点数は平均値なのに、赤点組みたいに心配されてなくて。
クラスを指揮する平田君、櫛田さん、堀北さんに頼りにされていて。
体育祭では目を見張るような実力、そして行動力を発揮した。
…元々、顔立ちは整っていて少し暗いけどイケメンラインキングなんて女子の順位付けでは上位の存在でもあった綾小路君。バレンタインは元より、クリスマスでも熾烈な女子の争いがあったとかなかったとか。
そんな彼が、この時期に、私たちに相談。
「ここだよね?」
「っ、そうみたいね、じゃあ入ろう」
気が付けば約束のカフェに着いていた。軽井沢さんに動揺を悟られない様に先陣を切って店に入ると、目的の彼はまだのようだった。
私たちは連れが来ることを店員さんに伝えて、目立たない店の奥の席に座ってコーヒーを頼んだ。軽井沢さんと女子トーク(当然、話題は綾小路君と佐藤さんの件だ)に花を咲かせていると、カランとベルが鳴って彼が到着したことを報せる。
「綾小路君遅ーい…って、あれ?幸村君と…三宅君?」
「…軽井沢?清隆、相談の相手って」
「ああ、合ってる」
「どういう事なんだ?俺はいつものメンツで集まるのかと思ってたが」
「………?」
てっきり綾小路君ひとりで来るのかと思っていたら、仲の良い二人も呼んでいたらしい。…二人も、相談相手が私たちとは知らなかったみたいだけどね。絶対に綾小路君を揶揄おうとしていた軽井沢さんも、途端に不満そうな顔を浮かべる。
まあでも、いつまでも立っていても店の迷惑になる。注文用のタブレットを三宅君に渡すと、意図を理解した綾小路君が二人を促して、席に座らせる。
急激に機嫌が悪くなった軽井沢さんに、しぶしぶという表情を隠さない幸村君。ため息をつく三宅君と、無表情の綾小路君。
飲み物が届くまでの数分間、店内のBGMだけが私たちの沈黙を誤魔化してくれていた。
・
「…それで、相談って佐藤さんのこと?」
届いた飲み物に彼らが口をつけたのを皮切りに、軽井沢さんが本題を切り出す。もう少し焦らすのかと思っていたけど、部外者がいる手前あんまりからかうのは自重したのかも?
それに驚いた表情をしたのは幸村君だけで、三宅君は特に反応はしない。当然、綾小路君も。…二人は気が付いていたんだろうね。
「そうだ」
「ふーん。…まあ佐藤さんはけっこう露骨だしね。それで?」
「彼女の期待には
今度はこっちが驚かされた。軽井沢さんなんかコーヒーを飲みかけていたから、
「…バレンタインに、チョコレートを貰うからって、ちょっと自意識過剰じゃない?」
「そうだぞ、清隆。別に佐藤がお前と「啓誠、ちょっと静かにしてようぜ」…あ、あぁ。分かった…」
「………」
同調しようとした幸村君を、三宅君が諫める。…確かに三宅君はともかく、幸村君は真面目過ぎて、この手の色恋の話は真面目に考えすぎちゃうと思う。…でもそれなら、なんでこの二人を綾小路君は同席させたんだろう?
当の本人は軽井沢さんの視線にも動じずに、コーヒーを口にしてからゆっくりと口を開いた。
「それなら俺の勘違いで良い。俺はチョコレートを受け取り、ホワイトデーにはお返しをして終わりの話だ。
「えっ?は…!?」
「き、清隆?」
「…時間を取らせて済まなかった。ここの代金は俺に出させてくれ」
「…ちょ、ちょっと待ちなさいよっ!」
「なんだ?」
「え?えっと…。えーっと…」
いきなり席を立って話を終わらせようとする綾小路君に、私たちだけじゃなくて男子の二人も面食らっている。思わず、という風に呼び止めた軽井沢さんも助けを求める様にキョロキョロ視線を彷徨わせていた。
…でも、なんだか話の持って生き方が性急だ。特に佐藤さんと仲の良い、だなんて半ば脅すような言い方。
多分、というか勿論、私と軽井沢さんは佐藤さんから相談を受けている。内容は想像の通り、「綾小路君に告白するから応援して」というものだ。
女子はそういう所をしっかり根回ししていないと、知らなくても変な所で恨みを買う。噂話からハブにしたり、いじめが起こったりするからこういう話はあっという間に広がってしまう。
「ちょっと綾小路君、落ち着いてよ。…軽井沢さんも」
「…あ…うん」
「………」
シュンとした軽井沢さんに目で頷くと、綾小路君とジッと目を合わせる。数秒の沈黙の後、スッと席についてくれる。さあ、選手交代だ。
「ごめんね?こっちもちょっと…友達の恋愛相談だから過敏になっていたの」
「そうか。それは悪かった。俺もこういうのは初めてでな。事情も説明せずに友人を連れて来てしまって悪かった」
「ううん、こちらこそ。…二人もごめんね?」
「あ、あぁ」「気にしなくていい」
事情を話して、お互いに謝る。当初のギスギスしていた雰囲気も緩和されて、これで
「それで、綾小路君」
「あぁ」
「佐藤さんの事だけど、本人の居ないところでアレコレ言うのはダメだと思うの」
「………」
「だからさ、
多分、これが綾小路君の本題。私と軽井沢さんを呼んで佐藤さんの件を伝えるなら友人を呼ぶ必要はない。何かの打ち明け話なら、私たちじゃなくて仲の良い佐倉さんや長谷部さんを呼んでると思う。なら、この面々を集めた理由は?きっとそこに、綾小路君の本題がある筈。
「そうだな。…結論から言うと、相手がいる」
「相手…。それって…」
「付き合っている人が居るってこと!?」
「そうなのか清隆!?」
「おい、落ち着けって…」
再び色めき立つ軽井沢さん。今度は幸村君も。…初耳なのかな?落ち着かせた三宅君には感謝しつつ、先を促す。もしかして、堀北さんじゃないよね?この前の教室で花を贈る話は誤解だって言ってたけど…佐藤さんが少しの間、二人を凝視してて大変だったんだから。
あ、軽井沢さんが聞いた。…もうちょっとは恥ずかしがったりしても良いと思うのに、いつもの表情で淡々と「ありえない」と一刀両断。なんでも、親の決めた婚約者が居ることを説明された。
その事を興味津々に聞く軽井沢さんを尻目に、私はどこか納得をしてしまう。先日のバレンタインを知らなかったこととか、ちょっとズレているトコとか多分、イイトコの箱入り息子?とかなのかな?そう予想を立てていると、どうやらまた落ち着いたのか。でも上機嫌で軽井沢さんが綾小路君に相手を聞いている。
「ねえ、どんな子!?年上?年下!?」
「俺も知ったのは最近で詳しくない」
「昨今、そんなドラマみたいなことがあるんだな…」
「俺もそう思う」
「だが、それならそうと言えばいいんじゃないか?」
「それは…」
幸村君の歯に衣着せぬ一言に、初めて綾小路君が言い淀んだ。でも、分からなくはない。断り文句に「婚約者が居るから」って…流石に。
「いやいやいや、流石に無いから。そんなこと言われたらドン引きだし、ありえないって!めっちゃ痛い奴だよ、それ!」
「そ、そうなのか…」
「そ、う、な、の!絶対断る為の嘘の言い訳だって誤解する!…まだ、タイプじゃない!とか…好きな人が居るとか、その方がマシなレベル!」
「すまん…」
「まあ、すまないがそう言う訳なんだ」
「いや、納得したよ」
これが私や軽井沢さんを呼んだ理由だったのね。多分…佐藤さんが日和らない限り、綾小路君に告白する。その時に婚約者が居る綾小路君は、OKしても婚約相手に不義理だし断るにしてもそんな理由じゃ噂に…え?あれ?もしかして
「ね、ねえ…綾小路君」
「………なんだ、松下」
「その…婚約者の人って、もしかして…この学校に居るの?」
「………」
「えぇ!?」「なに!?」
驚く声をよそに、綾小路君は微動だにもしない。…でも、否定もしてこなかった。だってそう。佐藤さんのフォローなんて、本当は綾小路君が気にしなくていい。手酷くフッても婚約者と結婚するなら関係ないんだから、それを穏便にしたい理由なんてそうはない。
「そうじゃなかったら、佐藤さん。…ううん、誰が相手でも付き合って、卒業後に別れてもいいだろうし、付き合わなくてちょっと噂になっても別に綾小路君は困らないよね?」
「…清隆」
「………」
この外部と遮断された学校で自分の評判なんて、卒業後に校外の人に伝わる可能性は限りなく低いのに。それでも彼がこうやって迂遠に動くのは、きっと
「それを何とかしたいって私と、軽井沢さんに相談する理由。…つまり、耳が入る相手がこの学校に居て、それが」
「松下」
最後の一言は、言わせて貰えなかった。思わずドキリとするほど、冷たい声。普段のぼんやりとした表情は変わっていない。でも、その視線は、瞳は、いつもよりもずっとずっと暗くて、怖かった。
「
「あ、…えっと」
「やはりお前は優秀だったな。
「………っ!」
バレていたのかと、ヒヤリと肝を冷やす。間違いなく、今の念を押す様は偶然じゃない。なにか言わないと。そう口を開こうとしても、普段とは違う綾小路君に言葉が出てこない。彼はそんな私に見向きもせずに、隣の幸村君に口を開く。
「啓誠、話は変わるがお前はAクラスでの卒業を目指しているよな?」
「え?…あ、ああ。それは、当然だ」
「その為にはクラスの協力が必要で、堀北や櫛田や平田や、それに俺や明人や軽井沢や松下も欠かすことが出来ない仲間だ。最近Cクラスに上がったばかりだが、前回の混合合宿では特にそれを実感したはずだ。そうだな?」
「…?…そう、だな」
「………何の話?」
「………」
饒舌に、でも熱のない言い方はどこか先生みたいだと感じてしまう。今日だけで何度目だろうか。綾小路君は何度も、何度も新しい表情を覗かせる。
「事情は詳しく話せない。…だから、啓誠。結論だけ言うぞ」
「なんだ?」
「もしも、俺の婚約者が誰なのかクラスや周囲にバレたら―――俺が、俺達がAクラスに上がるのは、きっと不可能になる」
「「え?」」「は…?」
「………あ、綾小路…くん?」
「―――堀北、櫛田辺りは自発的に協力を止めるだろうな。愛理も多分、そうなる。…いや、他のクラスも協力して俺達を攻撃するかもしれない。まず今の―――」
あなたは誰?って思う程、綾小路君は饒舌に自分の考えを話し始めた。
本当に、目の前の人は私の知っている綾小路君なの?…違う。きっと誰も、私も友人の二人も、もしかしたら堀北さんたちも、本当の綾小路君を知らないのかもしれない。
―――〇―――
Side.南雲 雅
「南雲先輩、これ…どうぞ!」
「あ、チョコか。…ありがとな」
「は、はいっ!」
今日はバレンタイン。同級生は勿論、上級生や下級生からもチョコや贈り物を大量に受け取る。毎年のこととはいえ、嬉しさ半分。煩わしさ半分だな。今も顔を真っ赤にした下級生からチョコを受け取ると、適当に手提げの紙袋に放り込む。教室に着いて、なずなから「いつもよりもなんか気持ち悪い顔」とボソリと刺される。毎時間の休憩時、移動教室の移動時とチョコを受け取ること受け取ること。
60点、80点、55点、70点…。中には
付き合いの長い、同じAクラスの女にチョコの仕分けを任せる。…当然といえば当然だが、こんな量を食ったら即病院送りになる。だから手作りや、俺が目をかけている相手以外は受け取った相手の名前だけ目録にして処分を任せている。
チョコは嫌いじゃないが、こんな量を見れば喰う気も失せる。少し気が遠くなっている所、丁寧なノックの音に我に返る。
「入れ」
「失礼いたします。…1-B、西園寺です。入室致します」
入って来たのは予想通り、撫子だった。こんなに丁寧に礼をして入室するのは、学校でも撫子だけだろう。少し前に病気したらしいが、通院はもう形式的なものらしい。その時の撫子は儚げで抱きしめれば手折れる花のようだったが、今の後輩然とした撫子の態度も変わらず心地いい。Bクラスに落ちて落ち込んでいるなら慰めようとも思っていたが、Aに上がった帆波との中も良好な様子で余裕すら感じる。…ま、クラス落ちの理由も内輪揉めらしいし内紛が収まればってとこだろうな。
「撫子。何時ものことだが、お前はノックなんてしなくていいんだぞ?」
「雅会長…。ですが、親しき中にも礼儀ありとも言います」
「相変わらず奥床しいな、お前は。まあ良いさ」
そう言って視線を受け取ったメッセージカードに向けると、狙い通り撫子はそれに言及してくる。
「雅会長、こちらはもしかして…」
「ああ、バレンタインの贈り物って奴だ」
「流石といいますか…やはり、雅会長はとても人気なんですね」
「まあな。…ああいや、実は去年の堀北先輩もな…」
「まあ…そうなんですね」
そう言って談笑しつつもチラリと撫子の持つ手提げ袋に視線を向ける。…俺へのチョコレートか?出来るだけ自然にそれに触れると、友チョコって奴らしくクラスや帆波たちから貰ったらしい。
…帆波はともかく、それ以外の面々の名前には覚えがあって思わず胃のあたりに手を当ててしまう。心配して来た撫子にはなんとか誤魔化すと、撫子は鞄からラッピングされたチョコレート?を取り出し、丁寧に渡された。
「雅会長、いつもお世話になっております」
「お、ありがとうな。…開けても構わないか?」
「はい、…(洋菓子は)あまり(作り慣れていないので)自信はありませんが、お口に合えば幸いです」
「はは、こういうのは気持ちが一番さ。どれどれ…って」
おぉ、う…凄いな。思わずそんな感想が浮かぶ。
小さな箱は安っぽい型紙ではなく黒い木箱で漆塗り?漆器って奴か?和風調のタッチで滝や木々、風や雲が描かれておりちょっとした芸術品みたいだった。周囲からの息を呑む声を耳に、恐る恐る箱を開ける。
すると中には4分割されたスペースに、おそらく季節の花だろう。まるで店売りのように丁寧に描かれたそれぞれ4色、ホワイトチョコ、ミルクチョコ、ダークチョコ、最後のはナッツ類か?それが数枚ずつ収められており、特別感が感じられる出来だ。
…いったい幾らしたんだこれ?…いや、さっき手作りって言って無かったか?流石に箱は店売りだとしても、これは…。
チラリと撫子を見ると心配そうな表情でこちらを見ている。
「なあ撫子、これって…マジで手作りなのか?」
「…!申し訳ございません、やはり、何か至らぬ点が…」
「い、いや、違う違う、なんていうか凄い…そう、出来栄えに関心していたんだよ。書いてあるのは、季節の花だな?」
「…!はいっ、その通りです雅会長。お気付き頂きありがとうございます」
そう言ってぱあ、っと花の咲くような笑顔で安堵の息をつく撫子。無事にフォローが出来たと冷や汗を誤魔化すと、改めて貰ったチョコと箱の絵を見る。………そうか、これは。
「
「…!…はいっ」
「…そうか、俺の名前にかけて作ってくれたんだな…」
…貰いもので感動なんて、俺のキャラじゃないが、これは嬉しい。目にかけている後輩が、俺だけの為に作ってくれたチョコレート。周囲で見ていた連中も小さく黄色い声を上げているが、それだけのものだ。俺は割と本心で撫子に礼を言って、勿体ない気持ちもあるが一つ口にしてみる。
「…美味い」
「ほ、本当ですか?」
「ああ、お世辞じゃない。…凄い美味い。ありがとな、撫子」
「はいっ!お気に召したなら、幸いです」
その後は撫子が他の連中にも手作りのチョコ(俺ほどは手の込んでいない)を配っていた。…若干の羞恥もあり、撫子にも俺の貰ったチョコの在庫処分も兼ねて好きに食べて良いと伝える。最初は固辞していた撫子だったが、周囲がチョコを差し出すと根負けして、あれよこれよという間に餌付けされるようになっていた。
「西園寺さん、これも…」
「あ、こっちの生チョコ美味しかったわよ!」
「んっ…。あの皆様…「次はこっちも!」あう…はい」
ひとつ、またひとつと口にする度に小さく歓声が上がる。写真を撮っているヤツまでいるな。まあ分からんでもない。普段から真面目で、何でもできる撫子を構い倒す貴重な機会だ。…撫子も、気恥ずかしさか顔が赤らんできてるし。どれ、俺も撫子に少し早めのお返しをやろう。
山となっているチョコの中から、出来るだけ高級そうなチョコの箱を開封する。中には
「はい、いかがしましたか♪」
「お、ご機嫌じゃないか撫子。俺からも一つやろう。あーん、てな」
「雅会長まで…。もうっ。ん…」
「っ」
そういうと赤い顔のまま、割と躊躇なくチョコを啄んだ。一瞬ふれた唇の温度に、逆にこちらが驚く。…少しだけ、そう。もう少しだけ構ってもいいだろう。
「ん、おいふぃいです。雅、ん…会長」
「そうか。…まだあるぞ、食べるか?」
「はいっ♪」
このチョコを随分とお気に召したのか、満面の笑みだ。…撫子はチョコが好きだったのか?なら次から…いや、今はこの機会を楽しむとしよう。俺は箱からチョコをいくつも取り出すとそれを撫子の前で焦らすように見せつける。
「…」
「…」
「……?」
「………」
「…!……よし、良いぞ」
「っ♪」
飛びつかない事に疑問を覚えたが、なんてことはない。こっちの態度を「待て」と思ってジッと我慢してたんだな。案の定、「もういい」と言えば従順な犬のように飛びついてくる。何度か繰り返して今度は少し高い所でチョコを差し出せば、上目遣いかつ背伸びする姿勢となる。届かない事に焦れたのか、こっちの胸板に体重をかけてきたのは二重の意味で楽しめたな。…予想外だ。撫子のやつ、こんなにチョコが好きだったのか?
「ふにゃぁ…」
「撫子ちゃん、こっちも食べない?」「ポッキーもあるよ!」
「はいっ♪」
その後、片手にたっぷり乗っていたチョコを間食した撫子は他の連中の元でまた愛でられていた。
「ふぁ…ん、ごく、ん…♪」
「西園寺さん…。こっちも食べる?」
「…んー?んっ♪」
「はわわわ…!」
学年クラスを問わない美少女同士の交流に癒されていると、ふと先ほどの箱にチョコが残っているのに気が付く。撫子が何個も所望したそれを、何気なく口にする。濃いカカオの風味を感じて直ぐ後、どろりとした甘さが舌を刺激する。少し眉を顰めて呑み込むと、鼻腔を刺す洋酒の香りを感じる。…そうか、これウイスキーボンボンか。箱を改めてみれば筆記体で大人向けのようなデザインのソレだ。
…俺は少し嫌な予感を感じ、撫子の方を見やる。
「んぅ…
「え?撫子ちゃん、平気?…食べ過ぎかな?のぼせちゃった?って、あわわっ」
「暑い…ん、んんっ…」
「な、なんか飲み物買って来る!?」
「あふ…ん…」
椅子ではなく床にペタンと座る撫子。普段している綺麗な姿勢や正座などでなく、制服のスカートは乱れ、足も投げ出すように自然なままだ。…そして、当然のようにその表情は赤らんでる。
「ちょっと…大丈夫?撫子ちゃん、聞こえる?」
「にゃあ…?ふぁいっ、聞こえてまふ!」
「可愛い…じゃない、もしかしてこれって…!」
…やばい、撫子のやつ酔っぱらっていやがる。
周囲がざわつくのを、パンと手を叩いて事態の掌握に努める。
生徒会室で生徒が飲酒(正確には違うが)で緊急搬送とかシャレにならない。最悪俺の更迭事案だ。俺は季節にそぐわない冷や汗をかくと、早急に内々で処理する為に手を尽くした。
「みやび、せんぱい…もっと」
「撫子。…さっきのチョコはもう止めとけ」
「ん…!」
「………(別のなら良いか)ほらよ」
「♪」
その後、時間稼ぎに普通のチョコをちまちま上げてると帆波が来て「撫子を酔わせて何をするつもりだったんですか」とこっちに火の粉が飛んだり、
暑い暑いと言って服を脱ぎだした撫子に悲鳴や歓声が上がったり、急に甘えだして誰彼構わず抱き着いたりとバタバタした。…全く、業務どころじゃなくなったな。
当然、脱いだ当たりで桐山や俺は生徒会室から摘まみ出された。ピンクだったな。帆波の趣味か?服の上からでもすげえ大きさだが、着崩して隙間から見える様子はかなり色っぽかったな。
ホント、騒がしいバレンタインだったぜ。まあ、撫子の新たな一面を見れたのだけは悪くは無かったがな。明日は散々揶揄てやるとするか。
※再び怪文書によって胃痛になるまで、あと1■時間。
読了、ありがとうございました。
温度差が酷い松下さん視点と南雲会長視点でした。
次回は、チョコを貰った各々のシーンとか次回試験への布石とか刺して
追加試験にゴーしたいですね。
アンケートの回答、高評価、感想。
いつもいつも、助けになっております。
無言低評価とか来ると心が折れそうになるので、(もっと良い作品をかければとは思うのですが)
評価あると執筆にブーストがかかります。かまってちゃんですが、これからもよろしくお願いします。
次の試験、ちょっと露骨に改変が入ります。皆様の率直なご意見をお願いいたします。
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特別試験はできるだけ変えないでほしい。
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原型があれば、付け足しとかは可。
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改変するなら全く別物にしてほしい。
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やってみて面白ければ◎、ダレるなら△