ようこそ(勘違い)大和撫子の学校生活へ 作:エカテリーナ
今回はアンケート通り、Dクラス視点でお送りいたします。
それでは、お楽しみくださいませ。
―――〇―――
Side.綾小路 清隆
2月15日。バレンタインが終わった次の日の教室で、俺は危惧していた事態が現実となった事を知る。
「………」
「………」
「………はぁ」
朝の挨拶をする相手は、いつもならグループの皆や須藤、堀北、あとは平田たちくらいだが今日は様子が違う。昨日の件から佐藤やその友人からの印象が悪くなる事は織り込み済みだったが…どうも女子の大半から睨まれている。
一部*1を除き、まるで人を犯罪者のような視線を向けてきている。普段なら近くに居る啓誠たちも、近寄っては来ない。…まあ昨日の今日だしな。俺はため息を吐きながら、窓の外に意識を向ける他なかった。
・
午前中の授業も女子たちの視線に耐えつつ、ようやく昼休み。食堂に向かって昼を取ろうと足を運ぶと、スマホに着信が届く。松下からの「少し会って話したい」という内容に、了承を返す。予定を変更して売店でパンと飲み物を買うと、彼女の指定した空き教室の一つに向かった。
「あ、綾小路君…」
「待たせた。…軽井沢。櫛田も居たのか」
「あ、あはは…うん」
「ちょっと…ね。私もその…相談を、受けてて」
「………
「うん。…まず、ごめんなさいっ!」
「ごめんなさいっ!」
「………」
二人そろって髪がたなびく程、勢いよく頭を下げてきた。れっきとした謝罪だ。恐らく、先に話した佐藤の件が不首尾に終わった事への謝罪だろうな。…おそらく、軽井沢の提案か。それに遅れれば悪印象を与えると危惧した松下がついてきた形。だが、ちゃっかり櫛田を連れて来たことを見るに誠意は感じられない。
そう当たりをつけていると、案の定というか櫛田が二人の擁護をし始める。佐藤の件、フォローをしたがうっかり婚約者の事を漏らしたこと、そしてそれを佐藤が広めてしまったこと。
「はぁ…」
「綾小路君、二人も本当に悪いと思っているの…」
「「………」」
「………二人とも、頭を上げてくれ」
そうして顔を上げた二人の表情は対照的で、軽井沢はばつが悪い顔を。松下はかなり申し訳なさそうな様子を浮かべている。…昨日の協力やらの約束から、いきなり
噂話が好きな波瑠加から聞ければ間違いなかったんだろうが、今はタイミングが悪い。俺は二人に、今クラスの連中にどんな話が広がっているのかを確かめる。
「えっと…綾小路君に婚約者が居て、それを理由に…その」
「佐藤の告白を断ったと。…俺は佐藤にそのことは話していないぞ」
「う…」
「俺は佐藤には、"まだ異性の事を好きになった事がないから好意に応えられない"と言って断ったんだ。…それが何故、婚約者の事が広まっている?」
「落ち着いて、綾小路君…!…怖いよ」
「俺は落ち着いている。…純粋に、何故それを佐藤が知っているかが知りたいんだ。そして何故、昨日の今日でそれがクラス中に広まっているんだ?」
「それは…」
気まずい表情の松下を見てか、軽井沢がポツポツと話し出す。昨日、俺が佐藤と別れた後に予定通りに佐藤のフォローに当たったらしい。
暗い気持ちを晴らそうとカラオケに誘ったのだが、飲み物を取りに席を外した時になんとクラスの他の連中と遭遇。なんとか追い払おうとしたが、平田と一緒ではないかと邪推した連中が佐藤のいる部屋に入り、そこで佐藤が振られたと事情を漏らしてしまう。
軽井沢はなんとかしようとしたそうだが、その場に松下が居ない事を指摘された。道中、彼女が誰かを待っていたとの目撃証言が出ると「実は松下さんが綾小路君狙いなんじゃ?」「だから佐藤さんの告白を断った」等々、女子特有の恋愛トークが展開。…方向はともかく、微妙に合ってるのが凄いな。
更に落ち込んだ佐藤に、軽井沢は本当の事情*2を話してしまったらしい。…これが一人ではなく、松下もいれば信用されたが、当の本人は俺と下校中だった。…これも噂に信憑性を持たせてしまった。松下が朝から佐藤のご機嫌取りに必死だった本当の理由は、これだろうな。
「…そういうことか」
「本当にゴメンっ!…私も、こんなことになるなんて…」
「ごめんなさい…。私からも、佐藤さんにしっかり言っておくからっ!」
「綾小路君、二人もこうして謝っているから…ね?許してあげてくれない?」
「………」
つまり、事前の対策として頼った二人は何の役にも立たなかった訳だ。まあこのことは、信用できない人間を使った俺のミスだ。初めから堀北…は役に立たないな。櫛田に相談すべきだった。彼女は最近、西園寺と関係を深めようとしていた。それを邪魔してはと思ったが、やむを得ない。手遅れとは思うが、彼女たち*3の心象を悪くしてメリットはない。
俺は二人の謝罪を受け取ったことと、佐藤へのフォローを頼むと軽井沢や櫛田は表情を明るくする。…反して、松下は余計に顔色が悪くなったようだが俺の知ったところではない。
「それで、一つ聞きたいんだが。…クラスの女子たちが俺を敵視している理由は?」
「あぁ…うん、えっとぉ…」
「その、結局…婚約者の件が佐藤さんを振る為の嘘なんじゃないかってなってて…」
「そ、そうっ!…ぶっちゃけた話、本当に居るの?」
「軽井沢さんっ!」
「なるほどな…。櫛田」
「えっと、何かな?綾小路君」
櫛田に改めて確認すると、二人の言う事は事実らしい。正直、これは佐藤本人というより周囲の事情を聴いた女子たちが騒ぎ立てているのが強いようだ。つまり、佐藤に事情を話したところで問題は沈静化しない可能性が高い。俺はその場でスマホを取り出すと、訝し気な三人をそのままに茶柱に電話を掛ける。
『…もしもし、どうした綾小路』
「茶柱先生、近くに真嶋先生はいますか?」
『…?居るが、どうした?』
「事情はまた話しますが、目の前に櫛田、軽井沢、松下が居ます。婚約者の件が事実かどうかだけ伝えて貰えますか?」
「「「えっ…」」」
『…待てっ!…真嶋先生、少しよろしいですか?』
席を立つ音と、真嶋先生の声が遠くに聞こえる。場所を移動して、人目につかない場所に移動したのだろう。直ぐに「もしもし?」と声が返ってくる。
『それで…なにを伝えろと?』
「俺の婚約者の事です。表沙汰にするなと言ったのはそちらでしょう?」
『…分かった。どういう事情か解らんが…良いだろう。スピーカーに変えろ』
「分かりました。…櫛田、お前が出てくれ」
「っ…」
「え?…あ、うん。…もしもし、茶柱先生ですか?」
『櫛田か?綾小路の件だが―――』
その後、茶柱と真嶋の二人の口から俺の婚約者が在校生であることを伝えられる。顔を赤くしたり口に手を当てて驚いたりとリアクションは三者三様だったな。どうやら教師からのお墨付きで漸く信じて貰えたようだ。そしてその相手については親によって強制的に決められており、まだ先方には明かされていない為に他言を禁じることも伝えられる。この辺で三人とも顔色が悪くなった。…まあ他言しなければなんでもいい。
この学校のクラス対抗戦という
「あっ…ええっと…先生、すいません実は…」
『なんだ…まさか』
「その、Dクラスの女子の間でその噂が流れてしまっていて…」
『………なんだと』
「あ、でもっ!まだ綾小路君の嘘だったんじゃないかって信じられてはいないです!」
「………」
『………』
「…軽井沢さん」
「はあ…」
「えっと…?あれ?」
自己保身に走った軽井沢に思うことは何もない。その後に茶柱からどうすべきかと言われるも、どうしようもないと答える他ない。
ここで本当の事を茶柱の口から言って事実を広める訳にもいかないし、この疑われている状態を維持する他ない。人の噂も七十五日。そう信じて耐えることにすると伝えて電話を切る。
「綾小路君…その、重ね重ね、ごめんなさい。…あの!」
「松下。お前は半ば、渦中の当事者だ
「…っ!」
「それより櫛田。…あと軽井沢、して貰いたいことがある」
「なにかな?」「なに?」
「…今回の一件が全ての理由ではないが、昨日の件を切欠に俺はけい…幸村たちのグループと距離を取っている」
「え…」「そうなの!?」
「ああ。アイツらにも迷惑がかかると思ったからな。今日の放課後に会う約束をしていたが、暫く会わない方が良いと思う」
「それは…」
「二人にはこの場であったことを四人に伝えて貰いたい。…次の期末試験も近い。余計な事で頭を悩ませて、赤点になんてなったらそれこそ事だ。…頼めるか」
「うん…。うん!分かった。しっかり私から伝えるよ!」
「私は…ん、出来るだけ早く、噂が収まるように頑張るっ。…元はと言えば、私が言っちゃったのが原因だし」
「………」
最後まで暗かった表情の松下に目を向けることはしない。暫くは疎遠でいる対象に、当然ながら彼女も含まれるのだから。
その後、昼食を食べながらグループに今日の件の断りと櫛田、軽井沢から事情を聞く様にと伝える。そこからの約2週間、俺は入学当初の頃を思い出しながら一人で過ごすことになる。…いや、あの頃はこんなに敵視されていなかったな。
・
そうして3月となった。その間、俺は図書室に入り浸ってDクラスの椎名にお勧めの本を聞いたり、何故か体調を崩していた南雲会長を保健室まで運んだりとぼっちライフをエンジョイしていた。
当初はぽつぽつとグループでメッセージが届いていたが、それも徐々に落ち着いて最近は朝と夜に一度、メッセージを告げるだけだった。試験については少し上振れをしたようにいくつかの教科を70点前後。他を50点ほどで終えて無事退学者なしで今季最後の試験を迎える。
茶柱の脅しなのか激励なのかよくわからない発言を聞き流して、そろそろグループとも一度会おうかと考えていたそんな頃。次の日に茶柱の口から告げられた追加試験に、俺は内心で顔を顰める。
『クラス内投票』
その試験内容は退学者を生み出す要素を存分に孕んでいたが、俺はどこか別の疑問を抱いた。担任教師が重く受け止めているという茶柱の発言から、この試験がイレギュラーである事。そしてクラス移動チケットの存在。その二つが、俺に向けられたあの手紙の一文を思い出させる。
―――坂柳理事長は来期に更迭予定、後任は協力者。来年に後輩も入学予定。好きに使え
こうして俺の、俺達Cクラスの試験が幕を開く。上手く熟せば退学者が出ないが、リスクはゼロでは無い。
平田や櫛田が纏めようとして上手く行かない様子だ。事実この試験、確実に生き残る人気な生徒に退学することは無い。そんな二人の言葉は、この試験において酷く軽く聞こえてしまう。隣の席の堀北が立ち上がって教壇に向かうのを黙って見送る。…この試験の結果が、俺やクラスにとっての分岐点となるだろうな。
「…退学者」
「ねえ、それなら…」
「………」
「………はあ」
俺は自分を刺す、クラスの
―――〇―――
Side.堀北 鈴音
「はぁ…」
ぼすん、と身体をベッドに傾けて脱力する。…本当は色々するべきなんでしょうけれど、今日は本当に疲れた。
急遽告げられた追加の特別試験。退学のリスクと、特別な報酬。なんとか話を纏めたものの、細かい所まで詰めないといけない。
夕暮れ時が過ぎて、部屋の電気をつける時間になっても起きる元気が出なかった。
「………撫子お姉さまなら…っ」
ぼそりと、お慕いしている方ならどうするかを夢想する。でも、どんな策を立てるのか考えてもそれは私程度の想像の範疇。…きっと私の思いつかない程の作戦を思いつくお姉様を穢している気がして、かぶりを振る。
真っ白な天井を見る。私はどうするべきなのか。Cクラスは、どうしたら良いのか。カチカチと時計の音だけが部屋に響く。チラリと視線を音に向けると、そこには誕生日にお姉様から頂いた置時計―――白い花が文字盤に咲いている、私の誕生花だとか―――が時を刻んでいた。
気が付けばとっくに夕飯時を超えている。なにか冷蔵庫に食べ物はと思い出そうとするけど、今日は一日だったわね…。月に回数制限がある無料の食材でも買って帰ろうと思っていたから、中身はきっとなにも残っていない。
思わず自嘲的にクスリと笑ってしまう。やむを得ず、私は上着を羽織り、学生証を持って外出をすることにした。
・
月の始め、一日は学年を問わずにポイントが支給される。それ故に学年問わずにそこそこの生徒が外食にとケヤキモールに足を運んでいる様子だった。
私はその喧騒から足を遠ざけていると、人気が無いレストランが目につく。あまり贅沢は出来ないけど、今日ぐらいはいいかとそこに入る。店に入ると直ぐに店員さんが気が付いて「ご予約はありますか?」と聞いてくる。…そんなものは無い。ここは一見お断りの店だったのかしら。
私はその事を詫びて踵を返すと、たった今入店した人とぶつかりそうに身を引く。…そこに居たのは、ついさっきまで想像の中で微笑んでいてくれたお姉様だった。
「な、…お、……西園寺、さん?」
「…あら?鈴音も夕食だったかしら?」
「あ、いえ…ええと」
「?」
恥ずかしながら予約制と知らない事を伝えると、なんとお姉様からお誘い頂いた。慌てて断ろうとすると、「一人で食べるのも寂しいから…ダメかしら?」と手をギュッと握られた。…あれ?気が付いたら席に?え?…いつの間に…。あ、ちゅ、注文ですか?す、直ぐに選びますっ!
その後、私はビーフハンバーグ(デミグラスソース)とパン&スープのセットを。撫子お姉様は…ええと、お子様ランチを注文していた。
「お子様ランチ…?」
「…!ええ、子供っぽいでしょう?」
「いえ、そんなこと…」
「ふふっ…、このお店、実は堀北前会長に教えて頂いたんですよ?」
「えっ…!?に、兄さんが?」
そういって思い出すように、兄さんの様子を教えてくれた。生徒会に誘われた日にここに連れていってくれたことや、このお店でお子様ランチをご馳走してくれたこと。注文した料理をシェアしたり、部活の事を教えて貰ったり、スマホの事を聞いたり。そんな思い出を聞いていたところ、頼んでいない飲み物が届いて困惑しているとお姉様がグラスを掲げていた。
「…とても嬉しいです。先日、誕生日まで祝って貰ったばかりだというのに」
「では…ええと、Cクラスに上がったお祝いという事で♪」
「撫子お姉様…。っ…!ありがとうございます、頂きます…!」
「では…乾杯♪」
「乾杯っ」
チン、と軽く音を立てたグラス。薄い琥珀色の炭酸はマスカット風味を感じるもので、呑みなれないそれを恐る恐る煽っているとクスクスと笑っているお姉様に顔に熱が籠る。
「ふふっ…大丈夫、お酒ではないわよ?*4」
「…は、はい…それは、その」
「?」
不思議そうに首を傾げるお姉様。口をまごつかせていると、ちょうど料理が届いた。行儀よく「頂きます」と手を合わせる様子に、慌ててこちらも習う。
ポイント相応というのか、料理はとても美味しかったけれど…きっとそれは、一緒に食べている相手がお姉様だからだとも思った。チラチラ見ているのに気が付いたのか、一口貰った時には顔が真っ赤になっているのがグラスに写っていた。
最後にケーキと紅茶が届く頃には、私の心にあった暗雲のようなものは綺麗さっぱり晴れているようにすら感じた。お互いに違うケーキを頼んで、シェアするまでがセット。…それに、なんとこの店の事を教えて貰ったのは私が初めてらしい。
仲の良い一之瀬さんや、同じクラスの坂柳さん。うちのクラスの櫛田さんよりも、私にという言葉に、ますます顔が赤くなって、じん…と心に温かいものが満ちるのを感じる。
「そんな、よかったんですか…!?」
「ふふっ…。ええ、私も堀北前会長…鈴音のお兄様に聞いたのだから、構わないと思うわ」
「撫子お姉様…!」
その後、話題はバレンタインの事やクラスの事、そして本日発表された追加試験の事に移る。どうやらお姉様のクラスは戸塚君という男子生徒に票を集めることで合意となったみたい。その事について不満は出たみたいだけど、実質多数決でその方向で進めるみたい。流石に表情が曇りつつも、どこか達観した様子のお姉様に私も同じことで悩んでいたことを明かした。
「…という感じなんです」
「そう…。Dクラスは以前から、各々の自由意志を尊重していて、臨機応変…即応していく気風と思っていたけれど…」
「そ、そうです…ね…」
「だったら…」
口元に手を当てて、考え込むお姉様。…なんというか、凄い美化した評価をされている気がするけれど…。ええ、まあ嘘ではないわよね。
その後、お姉様が自分だったらと触れてからおっしゃった助言は、私に勇気と覚悟を与えてくれた。お姉様自身、今回の試験で退学になっても構わないなんて縁起でもない事をいっていたけれど…まさか、本気ではないわよね?
いくら
その後、お姉様と一緒に寮に帰って、分かれる時にはハグまでしてくれた。…お姉様?そう、一之瀬さんが教えてくれたの。…一之瀬さん、普段は思う所もあるけれど、今回はナイスよ。
私は部屋に戻ると、お風呂に入って、眠る準備を済ませる。そして偶然とはいえ、夕食を共にしてくれたお姉様に一言だけお礼を送った。迷惑じゃないかしら?そう思っていると、なんとスマホが鳴った。驚いて落としてしまったけれど、直ぐ拾ってベッドに飛び乗りスマホに出る。相手は予想通り、撫子お姉様だった。
「も、もしもしっ!?」
『やっ…!』
「お。お姉様…?」
『や、夜分っ…に失礼…しま、す。っ…迷惑、だったかしっ…ら?』
「いえっそんな事ありません!…お姉様、今日はありがとうございました」
『いえ、こちらこそ…んんっ、たの、しかった、わっ…!』
「…あの、お姉様?」
『~っ…!くぅ、んぅ…!』
電波が悪いのかしら?お姉様の声が…どこかくぐもっているような、途切れ途切れに聞こえる。耳を澄ませると、荒い息遣いも。お加減でも悪いのかと思い尋ねると、慌てたような口調で否定された。
『ひうっ…!だ、大丈夫よ?ちょっと、…お風呂で、逆上せちゃ…っ!!だけ、だか、らぁっ…!』
「そ、そうでしたか…。あまり身体を冷やさない様に、気を付けて下さい」
『え、ええ…。ありがとう、すず…ひゃうんっ!』
「お、お姉様…?」
『ら、…らいじょう、ぶ…ちょっと、はぁ、はぁ…足っが…吊った、だけよ?』
つい、甘い声…その、喘ぎ声のようなソレに私も逆上せた時のような熱を頬や額に感じる。…もう少しだけ、聞いていたい。そう思った私はつい口を噤むと、スマホの向こうに意識を集中させる。
「………」
『っはぁ…っあ、あぁ…っ!つぅ…!』
「………っ」
『あ、ん…ふぁ…。す、鈴音っ?…眠ってしまったの?っはぁ…』
「………っ…ふー、ふー…!」
「ん…、お休み、なさい…すず…!あんっ!」
「っ!」
ブツン。ツー、ツー、ツー。…電話は切れた。最後、寝たふりなんてした私に届いた最後の声…嬌声が、耳を離れない。
「………………………はぁっ…!」
気が付いたら、息を止めていたみたい。荒い息が口から漏れていることに気が付く。ドクン、ドクンと脈打つ心音や時計の秒針の音が、とても大きく聞こえる。
…
……その晩、私は夜更かし*5をしてしまった。…どうしましょう。暫く、お姉様を直視できないかもしれないわ。
読了、ありがとうございます。
お互いになんというか、不穏な終わり方をしてしまいましたね?
詳しくは次回、A(一之瀬)クラス視点でお送りできるかと思います。
お楽しみに!ご感想、高評価お待ちしております!!
さて、学期末特別試験。見たい対戦カードは…?※あえてクラス単位で表記。…組み合わせが少ない?君のような感の良いガキは大好きだよ。
-
Aクラス対Bクラス
-
Aクラス対Cクラス
-
Aクラス対Dクラス
-
Dクラス対Bクラス