ようこそ(勘違い)大和撫子の学校生活へ   作:エカテリーナ

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更新お待たせしました。
添削しつつ、この章の一話から結末は決まっていた回です。

そしてタイトルでネタバレになっています。…ちょっと露骨ですかね?
それでは、どうぞ。


⑤:投票する者は何も決定できない。投票を集計する者がすべてを決定する

―――〇―――

Side.坂柳 有栖

 

本日は、待ち遠しかった追加試験当日。既に投票は済んでいて、()()の生徒は落ち着きがないようです。…まあ、もうすぐに落ち着く必要もなくなる。今までそんなに役には立っていませんでしたが、見せしめとしては十分な活躍をしてくれましたよ、不用品(アナタ)は。

 

順番に三位、二位と発表される。…?私と撫子さんですか。これは予想通りですが葛城君の名前はない。まさか、他のクラスと取引でもしたのでしょうか?いえ、()()()クラス思いの葛城君がそんな勝手をするはずはない。すると…ああ、やはり批判票を向けられて…いえ?自分が代わりにと身内からも批判票を引き受けたんですね。まったく…彼には推薦票を入れる様にと言ってあげたのに、ふふっ。

 

そして最も批判を集めた不要で不用な生徒の名を、真嶋先生が重々しい口調で告げる。

 

 

「最下位。…戸塚弥彦、お前だ」

 

「あ、ああ。…ううぅ…!!」

 

「…この結果を覆す場合はクラス移動チケット、あるいは2000万ポイントが必要になる」

 

「戸塚…」

 

「………ふふ」

 

「「「………」」」

 

「あ…、ああああああああっ!!

 

「すまない…弥彦っ…!」

 

 

助からないと悟ったのか、断末魔のような声がクラスに響く。…ちょっと、撫子さんが耳に手を当てて辛そうにしています。鬼頭君、黙らせて…ああ、葛城君?邪魔をするならあなたが黙らせてください。皆さんに迷惑です。

 

その後は葛城君やそのオトモダチと毒にも薬にもならぬ無駄な掛け合いを冷めた目で見つつ、戸塚君が教室を去るのを見送った。真嶋先生もなにか気を使っていたのか咎めませんでしたが、全く、最後まで時間の無駄でしたね。

ため息を零しているとスマホの着信音が教室に響く。…?誰でしょう。試験中は使用禁止だったので、まだ誰も電源を付けていない筈。その発生源は直ぐに分かる。真嶋先生だった。

 

 

「…私のようだ、少し待っていてくれ」

 

「…?」

 

「っ!」

 

 

訝し気な先生に、私はさっそく動いたか目を細める。…一之瀬さんでしょうか?いえ、彼女にしては短慮ですね。龍園君のDクラスが濃厚でしょう。一之瀬さんとコチラのクラス、どちらが先にチケットを使うか拮抗状態が崩れるまでの間に撫子さんを奪う目的。

端末を見て、予想通りに驚く真嶋先生。わなわなと唇を震わせて、震える声で沙汰を伝えます。

 

「馬鹿な…」

 

「せ、先生?」

 

「…っ!クラス移動チケットが使用された。…西園寺は、Dクラスに移動となる」

 

「ふぇ?」

 

「「「っ!!」」」

 

 

…龍園君たちの様ですね。その手は既に対策済みです。まずはこちらのチケットを誰が獲得したかを確認しなくては。推薦票の首位が取れなかったのは少し痛いですが、幸いと言って良いのか、戸塚君には使われませんでした。

すなわち、葛城君たちの派閥ではなくこちらか撫子さん達の誰かにクラス外の推薦票が固められたのでしょうね。

 

 

「皆さん、落ち着いて下さい。決して予想外の動きではありません」

 

「姫さん」「坂柳…」

 

「撫子さんは私達の大切な仲間…それを他のクラスに奪われるつもりはありません」

 

「(有栖…?)」

 

 

手を叩き、混乱を収める。真嶋先生を眼で促してここからは私が仕切らせて頂く。…さて、まずは誰が首位になったのか、そしてこれからの対策について説明しなくては。だから安心して下さい、撫子さん。

 

 

「では、首位となった方は名乗り出て下さい」

 

「…」

 

…無言。暫く待つものの、名乗り出るものは出ない。まあ、予想の範囲内ですね。

 

 

「…、………はあ、分かっていますか?自分がAクラスへと移動する為にチケットを使う。ええ、良いと思います。…ですが、この状況でAクラス…一之瀬さんのクラスに行った方が、円満に迎え入れて貰えると本気でお思いですか?」

 

「「…っ」」

 

少し強い言葉で、皆さんの不安を煽るように続ける。想像したのか、険しい顔や恐れを浮かべる皆さんに内心安堵する。これなら直ぐにでも名乗り出るでしょう。

 

 

「撫子さんが外部のクラスに移動するか、しないかという場面でそれを阻止しない。そんな方が信用される訳がありません。当然、私達もきっとそんな方への遠慮するつもりはありません」

 

「「「…」」」

 

ここまで言ってもリスクマネジメントの出来ない生徒は私たちのクラスには()()居ない。そしてここで、最後のダメ押しをする。

 

 

「もし…ここで名乗り出るなら、私が絶対に非難や理不尽、そういった扱いをさせないことを約束します」

 

「…」

 

「…」

 

「…っ」

 

 

ここまでいえば大丈夫…、そう、大丈夫な筈です。そんな…そこまで愚かな方は…。

 

 

……

 

………っ、どうして。

 

「え?…え?」

 

「ひ、姫さん…?」

 

「…コレが、最後のチャンスです。速やかに、名乗り出なさい…!」

 

―――どうして、誰も名乗り出ないのですか?

 

 

―――◇―――

Side.西園寺 撫子

 

先ほどまで起きていた悲劇。試験の結果、一人のクラスメイトが退学する。他のクラスにも聞こえたであろう戸塚君の悲嘆、慟哭はクラスの皆様に傷跡を残すものでした。

…ですが、その最後。涙を拭った彼の激励は、葛城君の胸に刻まれたことでしょう。私たちは彼が去り、空席となった机をそのままに真嶋先生の言葉を待つ。

 

そう、試験はまだ終わっていないのだから。そう心を落ち着けたからでしょうか。次に真嶋先生の口から出た言葉が、一瞬理解できなかった。

 

 

「―――の結果、西園寺はDクラスへ移動となる」

 

「………ふえっ?」

 

 

思わず、場にそぐわない声が漏れてしまう。ですが直ぐに周囲の皆様の反応に、それが聞き間違いではないことを理解する。

 

 

「そんな…なぜ…」

 

「せ、先生…!もう一度、言ってくださいっ!」

 

「………分かった」

 

 

有栖は…思案気な表情?葛城君や他の方々も驚いている。私も先ほど発表された順位表を見て、状況を把握しなければ。

 

――――――

クラス内投票 結果

 

賞賛票

 

首位:―――

二位:坂柳有栖

三位:西園寺撫子

 

批判票

 

最下位:戸塚弥彦

二位:葛城康平

三位:杉尾大

 

――――――

 

推薦・批判ともに結果は当初の予想通り。…いえ、何故か私が推薦を集めていたり葛城君が批判を集めたり…?彼の友人たちも批判票を集中させていますね。しかし、それなら誰が首位になったのでしょうか。こちらを見る有栖や真澄にも、私はあいまいに首を振ることしか出来ません。

 

それも、咳払いをして注目を集める真嶋先生が話し始めるまで。シン…と静かに収まった教室に、有栖が声を上げて落ち着かせます。そこからの統制は見事でしたが、結果的には実を結びませんでした。

 

数分の沈黙。有栖の呼びかけにも誰も声を上げないで、クラスの皆様は狼狽しはじめる。有栖もどこか呆然としているような…。

ですが、何故?優秀な生徒なら有栖や葛城君の方が、クラスに影響を与えるでしょうし、以前に醜態*1をさらした私なんて…。

 

皆様の混乱を収める立場の有栖も思案気な様子。このままでは…。

 

 

「そんな…誰かっ!?誰かチケットを使ってよ!」

 

「おい葛城!どうせお前らの仲間の誰かだろ!取り消させろ!」

 

「違う、俺達では…」

 

「お姉様っ…」

 

「お、おい!なんで、西園寺さんを…ふざけるな!」

 

「止めろ!俺達じゃねえよ!」

 

「………(これは…誰かが龍園君と通じている?その報酬を持ってして、クラス移動チケットの恩恵を得ようと計画的な犯行を?…クラス内で得られる推薦票は最大で39票、しかし批判票のコントロールはあまり…)」

 

「ブツブツ言ってるの、怖いんだけど。…ねえ、なんとかできる…わよね?」

 

「………なら他のクラスの推薦票を操作した?40票全てと11票差し向けてクラスの首位に至ったなら報酬は?撫子さんを売り渡して得られる恩恵なんてクラス移動しかない。いや2000万ポイントあればクラス移動チケットは任意で保持出来るならそれを譲渡する契約をした可能性がありますしかし一之瀬さんたちAクラスも等しくチケットを使えばいやこちらに貸したポイントの件でクラスの保持ポイントが足りなかったのですか?ならここから交渉を

 

「坂柳っ!」

 

「西園寺、さん…!」

 

「きゃっ…み、皆様?」

 

「行っちゃ嫌っ!」

 

 

葛城君に掴み掛かる橋本君。俯いた有栖の肩を揺さぶる真澄。そして、私に泣きながら抱き着いてくる方々。クラスの混乱もそのままに、真嶋先生は何も言わずにその様子を沈痛な面持ちで見守っており…?どこかから電話でしょうか。小声で出た後に、直ぐに切れたのかこちらを見て何かを言い淀んでいます。

 

 

「…何も、ないようであれば…西園寺は、っ…」

 

「真嶋先生…?」

 

「………(すまない)、西園寺は、速やかに、D()()()()()移動し、以降の指示に従うように」

 

「先生…!?」

 

「そんなっ!もう少し待ってください!」

 

 

唇の動きだけの謝罪。…きっと、私に向けてでしょう。皆様の批難じみた声も、怒気を込めた視線も、その全てを真嶋先生は()()として受け止めている。その視線はどこか意図…諦観のような色を込めてる。

 

…、……。

 

その様子に、私は席を立つとクルリと教室中を見渡す。有栖を除いて、全員がこちらを見ている。その際、皆様の()を見る。

 

…、白、白、白白白白白白白白白白白白白白―――。

 

………いない?

 

…そう、ですか。なら、私に出来ることは…もう無いのかしら。

 

 

「西園寺さん…。っなんでこんな…!」

 

「ごめん、ごめんなさいっ!ごめんなさい!」

 

「皆様…」

 

 

何故、こんなことになったのかは分かりません。私を龍園君のクラスに送った()()の意図や、目的。脳内にどうして?という疑問は尽きませんが、それが決まった事なら()()()()でしょう。なら私は、これからに目を向けなくてはいけない。未だ俯いたままの有栖の元へ歩み寄って、出来るだけ優しく声をかける。…いつものようにビクリと肩を揺らした彼女に、場違いにも微笑ましさを感じてしまう。

 

 

「有栖」

 

「あ…撫子、さん」

 

「…どうやら、私はここまでの様です」

 

「………そ、んなこと、は…待って下さい。…なにか、なにか直ぐに、直ぐに直ぐにす「有栖!」っ!?」

 

「「「…!」」」

 

「聞いて、有栖」

 

 

血の気の引いた表情、そして彼女の綺麗な瞳も、どこか虚ろ。…そっか。有栖は、私なんかのことに心を痛めてくれるのですね。はしたなく大きな声を出した私に、皆様も静かに成り行きを見守ってくれています。

 

 

「…この教室を出たら、私は有栖の、皆様のクラスの一員ではありません」

 

「撫子さん、いえ、そんなことはありません。撫子さんは、私たちの…私の、私だけの…

 

「だから、最後に一つだけ…聞いて頂けますか?」

 

「………っ、なんですか?」

 

 

…涙を我慢している。…やはり、有栖は強い子ですね。やるべきこと、為すべきことを理解している。ここで集団の指導者が、ブレてはいけない。誰よりも早く立ち直り、皆様を導かなくてはいけない。

それは、部外者になる私には出来ない、してはならないこと。だから彼女は、他の方々が俯く中でも前を向いている。眼を潤ませながらも、目を逸らさずに耳を傾けてくれている。

 

 

「貴女は悪くないわ」

 

「………え?」

 

「この結果は、…いいえ?これまでの全ての試験、その結果や成果は、貴女や葛城君だけのせいじゃありません。私も、そして他の皆様も、信じてついてきた皆様も一緒に勝ち取り、そして失った()()なんです」

 

「………ですが、あっ…」

 

「貴女は真面目だから、あまり抱え込まない様に。…もっと、皆様を頼るのよ?」

 

「撫子…さん」

 

 

ぎゅっと抱きしめると、有栖からも手を回して来た。…廊下側、足音がする。この足音はきっと彼ですね。…ならもう、時間切れが近い。

私は名残惜しいですが、有栖から離れる。有栖も同じだったのか、少しだけ寂しそうな表情を浮かべていた。教室の出口に近づくと、皆様の表情を一人ずつ順番に見渡す。

 

何も言わずに見守ってくれていた真嶋先生。悔しそうな様子の葛城君。愕然とした表情の橋本君。少しだけ泣かせてしまったのか、目の周りが赤い真澄。他にも、他にも。

皆様に悲しい思いをさせてしまった事だけが心残りですが、有栖の様子を見ると、きっと大丈夫。…このクラスは、直ぐに立ち直れる。

 

 

「皆様、…本当に、今までありがとうございました。これからは、お互いに競う他のクラスの生徒。…別の、別のクラスとして、共に切磋琢磨しましょう。決して、もう私に遠慮は不要です」

 

「そんな…西園寺さん」

 

「お姉様っ…。お姉様にそんな事!」

 

「…とても。とっても、楽しかったです。これは、本当の気持ち。私なら、大丈夫。どうか皆様のこれからの未来に、幸多からんことを」

 

「撫子っ!」「西園寺さん!」

 

 

キチンとした礼を返し、後ろ髪を引かれる声に背を向けて教室を出る。

 

 

「…っ…はぁっ…!」

 

 

少し乱暴に戸を閉めた音が廊下に響く。一言だけ噛み殺し損ねた熱を喉から零し、足音の主へと視線を向ける。

 

 

「よう、撫子」

 

「…申し訳ございません、お待たせしてしまいましたか?」

 

「クク…なあに、良い女は男を待たせるもんさ」

 

「左様ですか」

 

 

そこに居たのはDクラス、龍園君。てっきり教室に踏み込んで来るかと思いましたが…。廊下側の窓ガラスから見えない位置で待っていてくれたようです。上機嫌な彼の様子を見るに、この度の一件は彼の計画通りなのでしょうか。つい素っ気ない返事をした事を悔やむも、その表情に陰りは見られない。

肩に手を回されて、Dクラスへと歩を進める。道中、Cクラスの綾小路君とすれ違った時にお辞儀して…。…?お気付きにならなかったのでしょうか?

 

 

 

 

正にご機嫌斜めならずといった彼に連れられて、新たなクラス…Dクラスの教室へと入る。教壇には既に坂上先生の姿はなく、そして誰一人として席に座ってはいない。

龍園君がパチリと指を鳴らすと、石崎君や十数人の男子生徒が廊下に出て戸や、窓ガラスの前に立ち塞がる。すっと視線を向けるも、見えるのは彼らの背中だけ。…視覚的に、閉塞感や圧迫感を与える配置です。残る男子生徒も、教室内の入り口に立って逃げられない様に備えている。

 

…おそらく、本気で脱出しようと思えばできるでしょうが、それは悪手。ここで龍園君の手を振り払っても、私にメリットはない。私の肩から手を外して、龍園君は自信の席…ではなく、教壇へと腰かけて尊大に構えて…嗤う。

 

 

「ククク、さて改めてだが撫子。ようこそ、Dクラスへ。歓迎するぜ?」

 

「………」

 

 

教壇に腰かけて、見下ろすような視線の龍園君。行儀が悪いと思いながらも、自信家の彼に似合っている態度だとも思ってしまう。返事をしなかったのは、別に彼の事を軽んじていた訳ではありません。

ですが、どこか彼の様子が可笑しいことに気が付いてしまう。…どこか、戸惑いや警戒を抱いているような…そんな雰囲気。以前の特別棟の裏での一件*2とは異なる雰囲気。

 

 

「………」

 

「………どうした?()()()()くらいしたらどうだ?今日からお前のクラスになるんだぜ?」

 

「っ…」「ひっ…!」

 

 

皆様の動揺した雰囲気。険しくなった龍園君の表情に、萎縮してしまっているのでしょうか。私はひとまず、疑問をそのままに一歩踏み出すと周囲の方々、そして龍園君を見回して、お辞儀。

新参者として挨拶をしていたのですが…それは、遮られます。他でもない龍園君によって止められました。

 

 

「―――これからはDクラスの一員としてい「待て」…っ…?」

 

「えっ?」「り、龍園くん…?」

 

 

ガン、と教壇をかかとで蹴り音を立てる龍園君。他の方々も驚き彼の一挙手一投足に注視します。私は努めて冷静に、彼にことの真意を問いかけました。

 

 

「なにか、不始末を致しましたでしょうか?」

 

「あぁ?…まあ不始末って言えばそうだな。…なあ、撫子」

 

「………」

 

「お前は今日からこのクラスの、俺のクラスの駒の一つになる訳だ。…そうだな?」

 

「はい」

 

「今の挨拶はそう考えりゃ、相応しくはねえだろ。…俺はお前の事を()()()()()()()()。…元Aクラスのリーダー格として、このクラスに来たワケだろ?もっと相応しい、()()()()()があるんじゃねえか?」

 

「…?」

 

 

その、どこか強調した言葉に、首を傾げる。こんな場面を、どこかで見聞きしたような…それに高く買っている?…きっとお世辞でしょう。クラスのリーダー、『王』である龍園君からすれば、私なんて一兵卒も良い所です。

※学年成績一位、生徒会副会長

 

疑問を解消すべく視線をクラスに走らせると、窓際に居る伊吹さんと目が合う。コクリを頷く姿を見て、ハッと思い至る。

 

それは先日、伊吹さんと見た任侠映画の一幕…!新たに一門に加わる方の挨拶…それも、敵対組織の若頭さんがジンギ?を切るという、あの…!

※0点

 

得心して龍園君をみれば、その眼差しには期待の色が見える。間違いない…つまり、そういうことですね!

 

 

「………」

 

「……!かしこまりました」

 

 

言われてみればその通りです。クラスの方々から見ても、私はまだ部外者。それを一和(いっか)に纏める以上、禊は必要になるのでしょう。

 

私は早速とばかりに、一言だけ失礼しますと告げて靴を脱ぐ。周囲からの疑問符には微笑みを返して、教壇の正面。龍園君の目の前に当たる机の横で膝を付く。

 

 

「えっ!?」

 

「ちょ、ちょちょ、西園寺さん!?」

 

「なにしてるの!?」

 

「―――()()()、ご挨拶申し上げます」

 

「…!」

 

 

皆様の声を断ち切るように、第一声を発する。本来、()()とはしている最中に口を開くのは無作法とされている。それ故、丁寧に一度お辞儀を終えてから挨拶を続ける。

 

名を名乗り、所属を述べて、これからお世話になることを希う。

―――そして、慎んで*3

 

クラスを別ったとはいえ、私は有栖たちと相争うことに抵抗がある。それ故に、密かな抵抗としてそれを込めて伝える。

 

その口上の最後の一句まで言い切ると、腰を曲げて頭を差し出して龍園君からの返事を待つ。

 

 

「………」

 

「………」

 

「………」

 

「「「………」」」

 

「………?」

 

「………ク、クク…良いザマだな、撫子」

 

 

話し始めるまで間が少し長かったようですが、龍園君の話は終わっていない。故に、まだ頭は戻さない。それは相手の許しを得てから。いくつか投げかけられた挑発じみた言葉にも伏して控える。言葉短く返事をしていると廊下側でヒュッと息を呑む音が聞こえます。

 

 

「龍園!さ、西園寺さんに何をさせている!」

 

「坂上…?教師が口を「い、いいから来なさい!」ッチ…仕方ねえ、おい撫子っ!」

 

「…?」

 

 

龍園君に名を呼ばれ、面を上げる。声のする方を見ると訪れたのは担任の坂上先生でした。何故か龍園君の腕を掴んで、教室から連れ出そうとしています。それに抵抗するように入口で留まると、一呼吸分だけ言葉を溜めて、()()をして貰えた。

 

 

「これから、王である俺の命令は絶対だ。分かったな?」

 

「…!…かしこまりました、龍園さん」

 

「クク、それで良い…!」

 

「ほら、早く来なさい!」

 

 

そうして龍園君が教室から去ると、伊吹さんやひより、志保さんやそのお友達が駆け寄って来て身体を気遣ってくれたり、髪に櫛を通してくれたりする。他の男子生徒の方々もどこか申し訳ない表情や、逆に謝罪をして頂いたり。

 

 

「あ、あの皆様?えっと…あっ」

 

「お姉様っ…!」「西園寺さん、平気…!?もう大丈夫だから!何か飲む?えっと、えっとっ!」「し、志保、ちょっと落ち着いて…」

 

「ねえ…事故で休学とかってポイント減るのかな?」「俺、ちょっと先輩に聞いてみる」「……電話…電話しないと…

 

 

…?……??何故でしょう、なんというか、歓迎して頂いているのでしょうか?

あ、ひより?…ええ、これからよろしくお願いね?

 

 

―――〇―――

※その後のDクラス

 

「………」

 

「「「………」」」

 

「ちょっと…どういうことなの、龍園」

 

「…うるせえぞ、伊吹。…今考えてる」

 

「…ひよりの奴、めちゃめちゃ怒ってたわよ(というかアンタを闇討ちする話も出てたけど…)」

 

「ひえ…」「oh…」

 

「………」

 

「なんか、よく分かんないけど他のメンツも無表情であちこち電話して「止めて来い伊吹…!」…いや、無理よ。放課後に撫子連れてどっか行ったみたいだし」

 

「チッ…クソが…」

 

「はあ。…まあいきなり土下座するだなんて、誰も予想出来ないけど…」

※不正解*4

 

「…」

 

「さ、坂上先生は何と?」

 

「監視カメラでも見て来いと伝えて、誤解は解いた」

 

「…で、どうするの?試験直後に言ってた『西園寺を右腕としてDクラスに招いた』ってシナリオはもう無理だと思うけど」

 

「………そうですね、彼女に誤解させてしまった僕らにも非はあります。…龍園氏、暫くは」

 

「ああ、分かっている。…おい石崎、とりあえず何人か撫子の周りを張らせろ。寮までで良い。しばらくは、AクラスとBクラスの連中を近づかせるな」

 

「分かりました!!…それで、龍園さん、あの…」

 

「…なんだ」

 

「ぶっちゃけ、なんで西園寺さんが俺達のクラス来たんですか?」

 

「「「…」」」

 

「…さあな。だが、どんな意図にしろ…これは好機だ」

 

「好機…ですか?」

 

「ああ、俺らは依然として、クラス移動チケットと2000万ポイントを持っている。ポイントはともかく、チケットはあと学年で一枚しかねえ。これは大きな武器になるだろ」

 

「なるほど…たしかに脅しとしても有効ですね。…後は、西園寺氏の心象…これがなんとも」

 

「ん…まあ、暫くはひよりが一緒にいるから平気でしょ。(私もまた映画行きたいし…)」

 

「そうですね。暫くはぎくしゃくするかもしれません。…龍園氏、今後の方針について再び内容を詰めて行きましょう。次の試験でも…」

 

「…いいだろう。一年を締めくくる最後の特別試験で、アイツには存分に活躍して貰うとするぜ」

 

 

―――〇―――

 

「先ほど直接会って話しましたよ。…流石、あなたのご子息。素晴らしい実力を秘めていますね」

 

『―――』

 

「…はい、ええ、その通りに進行しています」

 

『―――、――』

 

「その点も問題ありません。鼻薬を嗅がせるまでもなく、何時の時代も後ろ暗い者は居るものでして」

 

『―――?―――、――』

 

「はい。ですが、よろしかったのですか?直接ではなくて」

 

『―――』

 

「…左様でしたか、確かに彼女の優秀さはデータで理解しています。ただクラスの精神的支柱を失って、上手く機能するのかどうか…」

 

『―――――、―――』

 

「…そうですか。ああいえ、疑う訳ではないのですが」

 

『――――。――――――――――――』

 

「はい。来年には入る子たちの件はお任せを。生徒会長や一部の教員にも協力を仰ぎ、秘密裏な特別試験を発動させます」

 

『――――――――――』

 

「お任せ下さい。…ええ、では、失礼します」

 

*1
ペーパーシャッフル後の難聴

*2
③:『空手三段』(略)VS『Cクラスの王』

*3
控えめにする、節制するの意

*4
平伏の間違い。ただし本人以外全員誤解




読了、ありがとうございます!
露骨な改変ポイント!
次回で畳んで、次次回は現時点での各々の紹介パートを差し込もうかと。
連投予定なので、お楽しみに。

さて、学期末特別試験。見たい対戦カードは…?※あえてクラス単位で表記。…組み合わせが少ない?君のような感の良いガキは大好きだよ。

  • Aクラス対Bクラス
  • Aクラス対Cクラス
  • Aクラス対Dクラス
  • Dクラス対Bクラス
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