ようこそ(勘違い)大和撫子の学校生活へ   作:エカテリーナ

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連投です。
これにて、追加試験編は終了。
ちなみに途中の言葉は翻訳サイトなんで雰囲気で
脳内変換お願いします!
 
次からいよいよ、1年生最後の特別試験へと参ります。
もしかしたら合間に設定的なの差し込むかもなので、
ご承知ください。
それでは、どうぞ。



⑥:予定調和の双六

―――◇―――

Side.綾小路 清隆

 

教室の喧噪をそのままに、ひとり立ち去る。背後から名前を呼ぶ声がした気がするが、俺にはもう関係がない。

予想外といえば予想外だが、この結果は一体どこからどこまでがヤツの筋書きだ?追加試験が発表された時には既に…いや、バレンタインでの一件が契機か?…結果だけ見れば、早いか遅いかの差。あまり変わらなかった可能性の方が高い。だが、ここまで円滑に今のクラスを去ることになるとはな。

 

 

「………」

 

「………?」

 

 

道中ですれ違った西園寺に会釈をされるが、無視する。…悪いとは思うが、一緒にいた龍園に絡まれたくはない。ヤツも上機嫌だったのか、ちょっかいが無かったのは助かった。

 

そうか、Dクラスになったのか。Aクラスにでもなるんじゃないかと思ったが、随分と手を回してくれるようだな。そうして一階の職員室を目指して歩くと、待ち構えていたように…いや、待っていたんだろうな。どこか胡散臭い中年の男。にこやかに笑みを浮かべてはいるが、初めて見る職員だ。

 

 

「おや、こんにちは」

 

「…こんにちは」

 

「一年生ですね?今は試験中と聞いていますが?」

 

 

…何か武道をやっているな。歩いていても体の軸がブレていない。どう見ても一般人ではないが、この学校に部外者が紛れ込むのは考えにくい。俺は試験で退学になった為に職員室に来たことを伝えると、わざとらしいくらいに手を叩き控室とやらに案内された。

 

 

「実は私は先日赴任したばかりでして。この学校の生活はどうですか?」

 

「………そうですね、楽しかったと思いますけど」

 

「おや、それは何よりです。…ああ、ここですね」

 

 

退学した生徒に何を聞いているんだと思っていると、控室とやらに辿り着く。ガラリと無遠慮に開けると、長机がいくつかと椅子。そのひとつには以前の試験で退学の危機に瀕していた戸塚が頭を抱えて座っている。

一瞬こちらを見たが、直ぐに頭を抱えるのに戻った。…酷い顔だな。まあ退学となれば、こうもなるのか。俺はついてきた職員に礼を言って席に着こうとするが男は立ち去る様子を見せない。

 

 

「………」

 

「………」

 

 

なんだ?胡散臭い笑み崩さずにこっちを見ている。俺が口を開こうとすると、男の持つ端末が音を立てる。それを見たと思ったら、すぐに「良いお知らせですよ」とわざとらしい態度で捲し立てて来る。

 

 

「たった今、申し立てがありました。Bクラスへ移動するようにと、チケットを使ったみたいですねぇ」

 

「………」

 

「そ、それって…!じゃ、じゃあ退学は取り消し…?やった…やったぞ、うおおっ!

 

 

話を聞いていた戸塚が立ち上がって、机を叩きながら歓声を上げる。…まあ、そう思うだろうな。自分のクラスへの移動チケットを使われたとなれば、当然()()()と思う。

だが、目の前の男はなにか不思議そうに首を傾げると歓声を上げる戸塚に声をかけた。

 

 

「…ええと、君の名前は何かな?」

 

「は、はいっ!お、おれ…僕は戸塚です!Bクラスの…こ、これで退学は…」

 

「ああ、そうか。残念ながら相手は君じゃないみたいですねえ」

 

「え………はぁ!?」

 

「綾小路君、君がBクラスに移動となった」

 

「………俺が?」

 

「は、…はああああああ!!?

 

 

随分と大きな声を上げる戸塚に構わず、目の前の男はこちらの肩に手を置き端末を見せて来る。その画面には確かに、【Cクラスの綾小路清隆をBクラスに移動する】とある。…腑に落ちないな。

 

もしも、先ほど西園寺をDクラスへと落としたのが()()の手回しだとすれば、俺はAクラスにでも放り込まれると思っていた。

 

…いや、Aクラスの一之「おい、お前…!ゆ、譲れよ!」瀬は西園寺と仲が良かったな。それを危惧したのか?それなら「黙ってないで返事しろよ!!お前みたいな落ちこぼれと違って俺はゆ、優秀で、エリートなんだ!こんな所で退学に」…いい加減うるさいな。

 

 

「…なんだ」

 

「うるさい!お、俺なんかじゃなくてお前みたいな出来損ないが退学すればいいんだ!!お、お前なんかより俺の方が、絶対に将来立派になって、海外で活躍して!それから、それからぁ!!」

 

「………」

 

 

口角泡を飛ばしながら、戸塚は真っ赤な顔で俺の胸倉に詰め寄ってくる。制服のジャケットは皺が出来て、ボタンはいくつか千切れるほどの力で掴み掛かっていて、とても正気には見えない。

退学処分という絶望に、一瞬垣間見えた救いの糸。それを手繰るのが自分でなく俺だったことに激昂しているのか。そんなことをこの学校が認める訳がないだろうに、我を失っているのか。

 

…それにしても不愉快だな。出来損ない、そして俺より立派に、か。

そう言われたヤツはいくらでも居たが、俺が言われるのは初めてだな。…俺に劣って脱落したアイツらを見縊られたようで、先ほどの教室とは別種の不快感を覚える。

 

というか、何故この男は止めようとしない?いよいよ殴り掛かって来た戸塚の拳を避け続けていても、何一つ表情を変えることなく見ているだけ。

 

 

「この、このぉ!避けるな、くそ、くそくそっあああ!!!」

 

「なあ、これ、は、暴力じゃ、ないのか?」

 

「ん?そうみたいですねえ」

 

「みたいって…止めない、で、良いんですか?」

 

「そうですねえ。…君はどうしたいですか?」

 

「俺?」

 

 

そういってニヤニヤしながら俺を見る男。戸塚は気付いているのか、気にもならないのか構わず拳を振りかざして来ている。

 

…、俺がどうしたい、か…。………そうだな。

()()()()()()()か。

 

目前に迫った戸塚の拳。コース的に右頬に当たるそれを、避けずに食らう。あえて衝撃もそのままに受けると、鈍い衝撃と口内に鉄の味がする。どこか切れたのか、口の端から血が垂れて、ワイシャツに赤いシミを作る。

 

 

「あ…」

 

「…痛いな。ところで、一つ聞いても良いですか?」

 

「何です?」

 

「Ist er noch Schüler dieser Schule?*1

 

「は?」

 

「…Diese Person hat nichts mit der Schule zu tun.*2

 

 

ドイツ語だったが、分かるみたいだな。なら、遠慮はしなくていいか。俺は殴れたことに驚いている戸塚に視線を向けると、素人丸出しの姿勢で拳を構えて来た。

 

 

「お、おい!…どうだ!これ以上やられなかったら、さっさと俺にゆず、ぶぎゅっ

 

「………」

 

 

まず顔面に一発。高いだろう鼻っ柱に叩きこむと、柔らかい骨を砕く感触。たった一撃で戦意を失ったのか、何が起きたのか分からないという風に座り込み、ぽたぽたと滴る血を見て呆然としている。

 

 

「あ…?っぶ…はえ?い、痛え…ら、らにが、がふっ!」

 

「………」

 

「ひ、や、やめ、やめへふ、ぎゃうっ!」

 

「Non capisco una parola di quello che dici*3

 

「おぐ、ぎ、ひぎ、ぐふっ!」

 

 

先ほどされたように胸倉を掴み上げる。意味を為さない言葉に、今度はイタリア語で話しかけるが返事はない。…なら、唯一通じる暴力(ことば)で伝えるしかない。拳を顔に何度も、何度も叩きつける。最初は腕を掴んでいた顔も次第に力を失い、次第に為すがままにされている。

 

 

「Porfavor, digalo de nuevo*4

 

「ひ、ひぃぃぃ…やめ、やめふぇっぐぎゃっ!」

 

「Quién es mejor que yo?*5

 

 

頭を庇う腕を足で薙ぐ。蹲った相手の腹を蹴り上げて、耳触りな声を上げる口を塞ごうと顎に拳を打ち込む。

 

 

「ぶげ、ひ、ひぃ、へぅ…へぅ…ああぁあ"あ"ぁ…!」

 

「Это грязно*6

 

(うう)ひて…も、もう(ゆう)ひてふれぇぇ…!」

 

 

…少しやり過ぎたか。鼻と顎を砕いたからか、もううまく話せないようだ。俺もなかなか返り血やらなんやらで酷いことになっているな。最後に顔面を床に叩きつけると、それから奴は静かになった。

 

 

「ぅ…う"ぅ…」

 

「………」

 

「流石、見事でしたねえ。おや、どうかしましたか?」

 

「………いや」

 

 

おそらく、初めてだと思う。自分の思うまま、必要以上に自分の力を発揮して相手をねじ伏せる。誰に請われた訳でもなく、だが…どこか悪くないと思う。だが、今はそんなことよりも重要なことがある。

 

退学したとはいえ、生徒間の暴行を静止の言葉ひとつなく、見逃した。あげく、拍手までしているこの男の正体。

 

 

「―――アンタが新しい理事長代理か?」

 

「おや、御父上から聞いていたんですか?」

 

「…いや、()()()()いない」

 

「月城と言います。以後、お見知り置きを。さて、ではBクラスまで行きましょうか」

 

「………」

 

 

ドアを開け、退室を促す月城。…いや、この格好で校内を歩いて平気か?

ボタンやらネクタイが乱れて襟や胸元が(はだ)けているのは…まあ、いいが。ワイシャツには明らかに流血沙汰があったような痕が、これでもかと付着している。こんな姿で外に居たならノータイムで警備を呼ばれるだろう。俺は制服を指差し月城に確認を入れる。

 

 

血の跡(コレ)については?」

 

「…?ああ、暴力沙汰(ソレ)については問題になりません。なにせ、相手は退学した部外者なのですから」

 

「………そういうものか?」

 

「むしろお手を煩わせてしまった事、学校関係者としてお詫びします。替えの制服や慰謝料、治療費などは今日中に手配して置くのでご安心を。…これから教室にご一緒するのも、妙な誤解を生徒達へ与えない為の措置とお考え下さい」

 

「…至れり尽くせりだな」

 

「当然です。…あなたは当校の、()()()()()ですから」

 

「………」

 

 

恭しい態度で礼を尽くす月城だが、どこか慇懃無礼に感じてしまうのはこの男の持ち味なのだろうか。…というか何か意味が上手く伝わっていない気がしたが…まあいいか。俺は背後のくぐもった悲鳴をそのままに、月城についていく。

 

階段を上り、()自分たちの教室の扉に辿り着く。中からは先ほどと変わらない喧騒が聞こえるが、月城は無遠慮に開いて足を進める。

―――そして一瞬の沈黙の後、直ぐに悲鳴のような声が上がった。…まあ当然だろうな。

 

 

「きゃっ…!!」「血…!?」

 

「ひいっ!」「清隆…それ…!」

 

「…なっ……綾小路…!それに、月城理事長代理…!?」

 

「お邪魔しますよ、茶柱先生。…さあ、綾小路君。君の荷物を取って来なさい」

 

「………はい」

 

 

言われるがまま、窓際の自分の席に近づいていく。道中の健や愛理の視線を無視して机に近づき、ノートや教科書を鞄に詰め込んでいく。

 

 

「あ、綾小路君…その」

 

「………」

 

 

普段の堀北らしからぬ、言い淀んだ声に手を止める。視線が重なったが、特になにかを言い出す様子はない。他の連中も様子を見ているだけで、口を挿む様子はない。

 

 

「…なんだ、堀北」

 

「その…。………ごめんなさい…」

 

「………」

 

「………」

 

「……はぁ…」

 

「っ…」

 

 

…それだけか。

 

思わず、ため息を吐いてしまう。もっと建設的な質問かと思ったが、単なる謝罪だった。…いや、そう見せかけてクラス内での雰囲気を罪悪感一色から俺への敵愾心を煽るのが目的か?事実、一部の女子…篠原は直ぐにでも爆発しそうな表情だった。しかし、それをより前に口を開いたのは最も意外なことに高円寺だった。

 

 

「ちょっと!その態度はな「Salut !,Garçon Ayakoji*7」…って、高円寺くん?」

 

「…?」

 

「Ça a l'air mieux qu'avant*8

 

「…Peut-être*9

 

「Oui, j’en suis certain.J'aurais été sauvé si tu étais là, mais...,Je suis triste pour toi*10

 

「…C'est dommage*11

 

「えっ…え!?」「何語…?」

 

 

試験後でも関係ない自由人、高円寺節だったな。…というか、何故にフランス語。コイツ俺がフランス語を話せるのを不思議がっていないな?

 

 

「………?」

 

「「「…」」」

 

 

ニヤッと笑う様子に首を傾げるも、周囲がポカンと固まり得心がいく。つまりコイツも、先ほどの教室での一幕に辟易していたんだろうな。その為にわざわざ、他の連中が分からないようにフランス語で話してきた、と。

 

荷物を纏め、適当な所で話を切るといつものように「adieu!」と言われる。…まさか、最後に気を使われるのが高円寺とはな。

 

…人のつながりなんて、最後まで分からないものだな。

 

その後は引き止められることなく、Bクラスへと向かう。道中、Dクラスの教室を横切ると中からは西園寺の声とそれを歓迎する面々の様子が不透明なガラス越しにもよくわかった。

 

 

「どうしましたか?」

 

「…()()は随分と歓迎されてるみたいだな、と」

 

「…その様ですねえ。ですが、まあ…()()()なるでしょう」

 

「………だと良いがな」

 

 

最後のは本音だ。おそらく、ほぼ間違いなく西園寺のクラス移動もコイツが手を回したんだろうな。結果は変わらない訳だが、こうも人生を好き勝手されているのを見ると、同情を禁じ得ない。

 

―――それに、Bクラスに俺が入るなら西園寺は絶対に古巣に戻ることは無い。それが確信できるだけに、彼女が居なくなったBクラスに行くのが憂鬱になっていく。

 

その後、案の定というかめちゃめちゃ暗いBクラスに移動した挨拶をすることに。…罵声のひとつでも来るかと思っていたが、よほど血の跡が効果的だったのか放課後になっても表立ってどうのは無かったな。

いや、その後の月城の真嶋先生への嫌味…戸塚が襲い掛かって来たこと、俺が撃退したことを説明した辺りで見る目が変わったようだったな。…これも計算ずくか?いや、考えすぎだろうな。俺は何度もなるスマホへの着信やメールの返事は明日に返そうと無視して、ベッドへと倒れ込む。

 

こうして俺の新たなクラスでの生活が始まる。きっと、今まで以上に苛烈で、そして自由を目指す日々が。

 

翌朝、スマホを見るとデータが全て消えていた。

もう、()()たちに連絡を返せなくなったな。まあいいか。

 

ホームルームでは謝罪とポイントでの保障、原因である来季の学校仕様のアプリのアップデートが云々の説明をいっていたが、何か俺の知らないところで動きがあったのか?

 

 

―――〇―――

Side.椎名 ひより

 

「むう…」

 

「ん~?どうしたのかな、椎名さん」

 

「ひより?どうかしたの」

 

「…その、お二人はいつもそんな感じなんですか?」

 

「「?」」

 

 

キョトンとした二人の表情はそっくりで、まるで姉妹の様でした。しかし、そんなことよりも目につくのはお二人の格好。

この後は寝るだけという時間でリラックスタイムなのは分かりますが、方やスケスケの…ネグリジェ?を下着の上に一枚纏っただけのお姉様。もう片方も妙にボタンが無かったり、胸に余裕があるワイシャツを羽織る彼シャツ姿の一之瀬さん。

 

二人とも非常に豊満なお胸を惜しげもなく晒している。恥じ入る所など無い、…とばかりに隠していないので、私も胸に手を当てて大きくなる方法を考えてしまいます。

 

…一之瀬さん?そのシャツ随分胸元が空いているようですが…やはりお姉様のお古…!独占なんてダメですっ!そ、それは私達が責任をもって…え?この後ご一緒しても…え…?本当ですか…!?も、もうっ!今回だけですからね!

 

 

「それで…一之瀬さん?」

 

「なあに~?」

 

「ひゃんっ。帆波…どこを触っているのっ…!止めっ…!」

 

「ええと、…そのお」

 

「ん~?はむはむ…あれ?撫子いつもよりびんか「だ、だめっ!」あいたっ!…普段はもっと甘やかしてくれるのに…」

 

「も、もうっ。…先に、ひよりの話を聞いてあげて?」

 

「むう…耳掃除コショコショ1回だからね!」

 

 

…うらやましい。私もお姉様のお膝枕に身を委ねて「で、ですが先週もして頂きましたし」は?「主治医のせんせーからは綿棒なら毎日してOKって言ってたよ!」ちょっと待って下さい事情が変わります。あっあっ…!後退りするお姉様も可愛い…じゃなくて!

 

 

「い、一之瀬さん、お姉様が嫌がっていることを「椎名さん、逃げないように撫子を捕まえて!」…し、しかし…「医療行為だよ!」お姉様、お覚悟をっ!」

 

「ひより!?」

 

 

週末の夜、読書以外で夜ふかしをしたのはいつ以来でしょうか。それも、一人ではなく愛おしい方(+α)と共に。…これから同じクラスになったお姉様とこういった時間が増えるはず。

 

そんな期待も込めて、私は目の前で顔を真赤にして耳掃除に耐えるお姉様を堪能するのでした。

 

…そういえば、聞きそびれました。どうして一之瀬さんはお姉様の部屋で出迎えてくれたのでしょうか?…もしかして、合鍵でしょうか?私も欲しいですっ!

 

 

 

 

週が明けて、月曜日。龍園君に言われるまでもなく、お姉様と(一之瀬さんとも)ご一緒に登校します。途中、Bクラスの方が来てざわりとしたのですが、いつの間にか来ていたAクラスの方々がシャットアウト。お姉様も悲しそうなお顔をしていましたが、気丈に振る舞って教室までたどり着きました。

 

そうして予定通り、坂上先生から次の試験についても説明されて、金田くんが私やお姉様も含む面々を放課後に招集して回ってます。きっと龍園君の命令ですね。私もお姉様と一緒に予定されていたカラオケに向かう。…このお店は…。

 

慣れた様子で受付に待ち合わせについてと、コスチュームのレンタルを申し出る。頼んだのは以前のメイド服で、女性の店員さんもチラチラ見ていて、期待が透けて見える態度でした。

 

 

「あの、お姉様…、なぜメイド服なのですか?」

 

「え?…龍園君が以前、おもてなしする側の正装と。…なにか違ったかしら?」

 

「い、いえ!それなら平気です。ですけど…その…?」

 

「…ひより?」

 

「あっ…えっと、…そのぅ…」

 

 

首をかしげるお姉様に、どう伝えるべきか。メイド服は魅力的すぎるからダメなんて言えないし…。

言い淀む私の前を店員さんが横切る。その前掛けには料理のソースなのか、赤黒いシミがついていた。…!…これです!

 

私はその後、レンタル品はあくまで写真撮影やカラオケを使う方のための衣類であること、以前のは龍園君の冗談であること、そしてその服装で身の回りのことをしたら服を汚してしまうかもしれない。そう、一気にまくし立てるとなんとか頷いて下さった。

 

 

「…確かに、借り物を汚してしまうかもしれないのは申し訳ないかしら?」

 

「はいっ!だから今日のところはそのメイド服は…」

 

「分かったわ。…申し訳ございません、こちらのめいど服ですが、今日は結構です」

 

「そ、そうですか?そんなに気にしなくていいですが…」

 

「いいえ、店員様のお仕事を増やすのは本意では無いので」

 

「………わかりました」

 

 

そういって項垂れた店員さんを尻目に、私はお姉様に見えないようにガッツポーズを取る。よかった…これで昨日の一之瀬さんに言われた「撫子のことを龍圓くんから守ってあげて!」という約束を守ることができた。

メイド姿の尊いお姿を見せたら、きっとクラス中の心を奪ってしまう。そんなライバル…じゃなくて、お姉様の負担を増やすようなことは避けないとっ!

私とお姉様は約束された部屋に向かって歩を進める。これで、ひとーーー

 

 

「あ、あのっ!お客様!」

 

「…?どうされましたか?」

 

「実は、()()()の衣装は先輩が発注したのですが…残念なことに、利用者がお一人も現れず未使用のまま処分予定となっておりまして…」

 

ーーーひと、あんしん…

 

「まあ…それは残念なことですね」

 

「はい!…なので、よろしければお客様にどうかと思いまして…」

 

「ちょ、ちょっと待って「もちろん、そのままお客様に差し上げますので、いかがでしょうか!?」あわ、あわわわ…」

 

「そんな…本当によろしいのでしょうか「もちろんです!」それでしたら…ありがたく「ありがとうございますっ!!お手伝いさせて頂きますので、更衣室までどうぞ!コチラです!」…は、はい。…ひより、先に行っていて?」

 

「あ、ああああああ…」

 

 

圧の強い店員さんが、お姉様の手を引いて連れ去っていく。…え?本気であの服を着て…その、給仕を?ど、どうしましょう…どうしましょう…!?

 

私は足早にカラオケルームにたどり着く。電話して思い留まるように連絡しようとしますが、連絡先が消えたことに今気がついた。詰みました…。がっくりと項垂れている様子を伊吹さんに心配されますが、適当なお返事しかできません。かといってここを離れるのも、お姉様を猛獣の巣に放り込むのと同義。

 

数分後に龍園君が来てもお姉様はまだいらっしゃらない。イラついた彼に周りが怯えていても、私には返事をする余裕もなくて…。

 

 

「おい、ひより…撫子からは目を離すなと言ったはずだが…?」

 

「…(どうしましょう、一之瀬さんは当然、親衛隊の方の連絡先も無い。…というかさっきの店員さんもたしか親衛隊の集まりで見かけた方のような…)」

 

「おい!聞いてるのかよひより!」

 

「………ひより?」

 

「チッ…要領を得ねえ。撫子は何処に「申し訳ございません、お待たせいたしました!」…遅えぞ!一体何をーーー」

 

 

…ああ、来てしまった。撫子お姉様が。横で誰かが「ヒュッ」と息を呑んだのが分かる。

 

 

「申し訳ございません、龍園さん。お待たせしてしまって…」

 

「………」

 

「店員様に着替えを手伝って頂いのですが遅れてしまい…?あの、龍園さん?」

 

「「「………」」」

 

「…?皆様、あの…?伊吹さん?ひより?」

 

 

そこにいたのは、()()()()の撫子お姉様でした。白いカチューシャ、黒い生地に白いフリル、首にはチョーカーとリボン。そして剥き出しにされた()()()、魅力的な()()()に、最も目を集め、今にも零れそうになっている()。頼りない()()()を隠すようで全く隠れていないレースのエプロン。

 

ーーービキニメイド服。…残念ながら後で知ったそれを身に纏った撫子お姉様に、室内の時間は凍りつきました。

 

…はっ、しゃしんを、とらなければ。

※SANチェック失敗。

 

その後の話し合いは、当然ながら中止となりました。私や伊吹さん、その他の方々も、今回ばかりは黙って退室した男子の方々を咎める気にはなりませんでした。

 

…以外にも、最後に龍園君が上着をお姉様に投げ渡していたのは…まさか!

 

 

※このあと、めちゃめちゃ記念撮影しました!

Dクラスでの、お姉様への好感度が〇〇上がりました!

 

*1
彼はまだこの学校の学生ですか?

*2
彼は学校とは何の関係もありません。

*3
お前が何を言っているか分からないな

*4
もう一度言ってみろ

*5
誰が俺よりも優秀だって?

*6
汚いな

*7
やあ!綾小路ボーイ

*8
随分と()()()になったじゃないか

*9
……そうかもな

*10
私の目に狂いはない。だが…君が居れば私ももう少し楽が出来たと思うのだが、それは残念だねえ

*11
…それは残念だったな




読了、ありがとうございました。
続きもなるだけ早く用意したいので、お楽しみに。
高評価、感想を楽しみにしております!

このあとの展開について相談です。次は各キャラの現在までのまとめやらなんやら貼るつもりですが、その先の希望をアンケートしたいです。よろしくお願いいたします。

  • 本編進行(クラス対抗試験へ)
  • 幕間(キャラとのコミュイベント等)
  • 番外編(本編の別ルート、IFルートなど)
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