この世界に転生してからもう一ヶ月になる。
展開が早いって?気にしたら負けだ。
まぁ、とりあえずこの世界のことが大体分かってきた。
まず、この世界には妖怪や神様なんかがいるということ。
妖怪は妖力、神様は神力という力を持ってること
妖怪や神様の中には、『○○する程度の能力』という力を持った奴がいること
ちなみに俺の能力は『結界を作る程度の能力』だ。
ひとまずこの一ヶ月で得た情報はこんなものだ。
今俺は山の中を散策してる。
妖怪だって腹は減るし喉も乾くからな。
山なら動物もいるし食べられる山菜なんかもあるだろうと思って入ったのは良いんだが……
「迷った……」
まさか自分がここまで方向音痴だとは思わなかった。
参ったなぁ、まだ何も見つけて無いのに……
あぁ、腹減った。
あれから山の中を歩き続けたが、これといった収穫もなくいつの間にか夜になってしまった。
「しょうがない、今日はここで寝るか。」
近くにあった手頃な洞窟の中に入って結界を張る。
「ホント、便利だなこの能力。」
こうしておけば寝ている時に襲われる心配も無いしな。
そう心の中で思いながら寝転がる。
ゴツゴツした岩が当たって少し痛かったが、贅沢は言ってられない。
一日中山の中を歩き回って疲れが溜まっていたのか、俺はすぐに眠ってしまった。
「ふぁぁ……よく寝た….」
なんていうベタなことを言いながら起き上がる。
今は多分7時ぐらいだろうと思い外を見ようとして、おかしなことに気がついた。
外が真っ暗なのだ。
まさか夜になるまでずっと寝ていたはずはないし、寝てすぐに起きた訳でもない。
(いったいどうなってるんだ?)
そう思いながら外を見てみれば、その疑問はすぐに解決した。
何故なら……
『グルルルル……』
体長5mは越そうという馬鹿でかい熊が洞窟の目の前に立っていた。
おそらくこの洞窟は目の前の熊の住み処だったのだろう。
自分の住み処を勝手に使われてかなりおこらしい。
しかし、こんな危機的状況の中俺は、
「今日の朝飯は熊か…」
なんて呑気なことを言っている。
何故なら、もう分かっているんだ。自分の力っていうのを。
俺は腰に差してある愛刀の『飛焔』と『陽炎』を抜く。
抜くと同時に走り出し、一気に熊の後ろに回り込む。
そしてそのまま熊の両腕を切り落とした。
『グオアアァァアア!!!!!』
熊が苦痛の声を漏らしながら倒れる。
立ち上がろうとしているみたいだが、腕が無いからなのかうまく立てないでいる。
俺は熊の目の前に行き、
「悪いな、俺が生きる為なんだ」
そう言って刀を振り上げて、熊の頭を切り飛ばした。
熊の身体は激しく痙攣を起こした後、全く動かなくなった。
「ふう、いくら生きる為とはいえ、生き物を殺すのはいい気分じゃないな。」
俺はそう言いながら今食べる分だけを切り出して残りを結界の中にしまう。
(こういう時にも使えるってホント便利な能力だな。)
そんなことを思いながら手頃な木の枝や葉っぱを集めて火を起こす。
ある程度火の勢いが強くなってきたら、適当な枝に肉を刺して焼いた。
残りの肉をどうしようかと考えて、今の自分の力について考えてみた。
最初の豚猪も、多分今の熊も、この世界ではかなり強い部類に入るらしいのだ。
そんな奴らを簡単に殺せてしまう自分は本当に妖怪なのだろうか?
何故初めて使うはずの刀を扱えるのか?
そもそも何故俺はこの世界に転生したのか?
考えれば考える程訳が分からなくなってくる。
(まぁ、今は考えていても仕方ないか)
そう思って目の前の肉を見てみると、
「………」
そこにあったはずの肉が無く、代わりに焦げ臭い匂いを放つ黒い物体があるだけだった……