あの後何とか黒い物体を完食し、腹痛に耐えながら何とか山から脱出した。
もう絶対にあんな失敗はしないと強く決意しながら林の中を歩いていると、
「止めてください!イヤッ、離して!!」
「おい、暴れんじゃねえよ!!」
「おとなしくしやがれ!!」
着物を着た女の子が二匹の妖怪に襲われていた。
鬼のような顔をした奴が女の子の腕をわしづかみされていて、その姿を見てもう一匹が気持ち悪い笑みを浮かべている。
朝から酷いものを食べた上に先程から続いている腹痛のせいでイライラしていた俺は、
――バシュ!!――
「なっ――」
無言で笑みを浮かべていた奴の頭を切り飛ばした。
そいつは何が起こったのか理解できない内に死んだ。
それを見ていた鬼面の妖怪が、
「テメェ、何しやがる!」
女の子を放り出して俺に向かって殴りかかってきた。
俺は鬼面の拳が当たる前に自分の周りに結界を作る。
「ギャアアァァァ!!!!」
いつかの豚猪と同じように腕がひしゃげて、地面をのたうち回る。
俺が無言で鬼面に近寄ろうとすると、
「ま、待て!許してくれ!俺はあいつに命令されて仕方なk「うるせぇ」ガハッ――」
言い切る前に鬼面の脳天に刀を突き刺した。
「ふぅ、これで終わりか。お嬢さん、ケガは無いかい?」
俺は少し離れたところに避難していた女の子に声をかけた。
「え、あ、はい。大丈夫です。助けて頂いてありがとうございました。」
よかった。さっき放られた時にどこかにぶつけたんじゃないかと思ったんだけど。
それよりも……
「いや、別にお礼を言われるようなことはしてないよ。
助けたのだって自己満足だし。それよりさ……」
俺は最初に会ったときから疑問に思っていたことを聞いてみた。
「どうしてそんなに妖力持ってるのにどうしてさっきの奴らを追い払わ無かったんだ?」
俺が見た感じだとこの子が纏っている妖力はそこいらの雑魚妖怪とは比べ物にならないくらいの量だ。
なのに、たいして強くもない妖怪に捕まりそうになっていた。
「えっと、私、産まれたばかりで、妖力とかの使い方が良く分からなくて、それで……」
(つまり、他の妖怪よりも妖力が多いが、その使い方が分からずに困っていると)
そんな風に頭の中で整理していると女の子が突然
「お願いします!私を弟子にして下さい!」
とお願いされた。
(どうしようか?別に断る理由は無いけど……まぁ話し相手がいるだけでだいぶ違うだろうし、別にいいか。)
「よし、わかった。今日からお前は俺の弟子だ。よろしくな!」
「本当ですか!よろしくお願いします!私は
「雨音か。良い名前だな。俺は……」
ここまで来て気がついた。
俺には名前が無い。
いや、転生する前の名前ならあるけどそれはあんまり使いたくないし……
「?、どうかしました?」
「よく考えたら俺って名前まだ無い……」
「え!そうなんですか?」
「ああ。参ったなぁ、このまま名前が無いって訳にもいかないしな……」
「だったら、私が師匠に名前をつけても良いですか?」
雨音がそんな提案をした。
正直言って自分でつける気気はなかったのでちょうど良かった。
「じゃあ、お言葉に甘えようかな。」
「本当ですか!そうですね…それじゃあ"
「蚩尤か、まあ、悪くはないかな。よし!これからはその名前を使わせて貰おうかな。」
「やった!ありがとうございます!」
こうして、俺に名前と可愛い弟子ができた。
雨音の能力については次の話で説明します。