「なるほどね〜。ま、それでも聖剣を二本取り返せただけでもラッキーにゃ。で？祐斗はどうするにゃ？」
「・・・分かりません。ゼノヴィアの話を聞いた時も実際に対峙した時も復讐としての怒りではなく、困惑の方が正直大きかったですし・・・。」
「ま、あの聖剣は急ごしらえで作った所もあるしねぇ。」
「「「「「「え？」」」」」」
全員が声の方を向けば、当然の様に天照がソファーに座り寛いでいた。
「急ごしらえってのは？」
「ち、ちょっと待て！何を普通に話を進めようとしているんだ！？こ、こちらの方は天照大御神様だぞ！？」
「主神兼ストーカーだろ。」
「あははは♪僕にそんな事を言えるなんてゾロ君くらいだよ。さて、話を戻そうか。教会の管理しているエクスカリバーは本物では無い。」
「ど、どういう事っすか！？だ、だって、エクスカリバーは過去の大戦で砕け散ったって！」
「ああ。その通りだよ。だからこそ、偽物なのさ。」
「・・・なるほどにゃ。エクスカリバーは折れた際に意思を失ったってわけね。」
「物分りが良くて助かるよ。生物の死とは鼓動が止まることじゃなく、意思を失ってからさ。意思を失った聖剣など、単なる剣と同義だからね。」
「ならば僕達は・・・！」
「言葉を選ばなければ、丸っきり無駄だったと言えるだろうね。」
「エクスカリバーが偽物・・・いや、この場合は本物に近い偽物と言うべきか・・・。」
「その通り。ああ、そうだ。ゾロ君。コカビエル一派が動き出した。あの鴉共の狙いは戦争らしい。場所は駒王学園。今頃、堕ちた聖職者が二本のエクスカリバーを統合している頃だろうね。」
「お、堕ちた聖職者って！」
「お、お待ちください！二本のエクスカリバーとはまさか！！」
「ああ。君の相棒はエクスカリバーを奪われた。単身でコカビエルの元へ行ったみたいだよ。まあ、生き延びてはいるみたいだけどね。」
「ふぅん・・・。駒王学園って言ったらリアス・グレモリーの根城。つまり、鉢合わせする可能性は充分あるってわけにゃ。」
「そういう事さ。僕たち日本神話は今回の一件、手を出さない事にした。もし駒王町が破壊されたのなら三大勢力と戦争をする口実になるしね。」
「だが、お前は戦争をしたくない。というより、関わりたくないわけだ。」
「そういう事さ。依頼は継続している。進むも降りるも君次第って訳だ。」
「やるさ。一度首を突っ込んだんだ。後に引く気はねえよ。お前らはどうする？」
「私は当然行きます。部長の事はどうでもいいですが、駒王町が好きなので。」
「・・・僕も行くよ。過去に決着を付ける為に。」
「当然、私も行かせてもらう。」
「ま、私も暇だから手伝ってあげるにゃ。」
「ふふ♪急ごしらえなパーティーとしては破格過ぎるほど豪華じゃないか。なら、この家と二人は僕に任せてよ。まあ、報酬の一部先払いさ。」
「ああ。頼んだ。んじゃ、行くぞ。」
そう言って、ゾロを先頭に四人も続く。アーシアとミッテルトは四人の背中を見つめるしか無かった。特に、ミッテルトは自身の弱さを呪うばかり。
グリゴリ時代、どれだけトレーニングをしようとも今以上に強くなれなかった。上司に相談すると、堕天使としてこれ以上は強くなれないと、包み隠さずに言われた。だからこそ、ゾロ達が羨ましかった。自分も混ざりたいと思っても混ざれないのだ。
「堕天使ちゃんは随分と熱心な視線を向けるじゃないか。彼女らが羨ましいのかい？」
「っ！は、はい・・・ウ、ウチはこれ以上強くなれないっすから・・・」
「ふむ・・・確かに今の環境じゃ先へは進めないだろうね。」
「か、環境・・・？」
「そう。強くなるには飽くなきまでの貪欲さと環境が必要なのさ。しかし、酷いことを言うのなら君の堕天使としての強さはもう伸ばせない。それでも強さに拘るのなら『外』を利用すればいい。」
「外・・・？」
「ま、主に言うのなら武術さ。どうだい？」
「や、やりたいっす！わ、私も皆さんを守れるくらい強くないたいっす！」
「素直でいい子だね。じゃあ、今はゾロ君達の帰りを共に待つとしようか。」
天照は二人をソファーに座るよう言い、テレビを付けて寛ぎ始めたのだった。