今年もよろしくお願いいたします。
私は少し困っている。
何故ならば私が受けているハンター試験の2次試験で私以外の100人以上が不合格となり、私だけになってしまったのだ。
そのせいで周りからはイヤな視線がこっちに飛んでくるし、特にヒソカ。私にまで殺気を飛ばしてくるなっての。
そうこうしていたら不合格者の一人が試験官メンチに向かって罵声を浴びせはじめた。
その内容は美食ハンターを侮辱するものであり、非常にまずい。
案の定、メンチも来るなら殺すと言いたげなオーラで
…………面倒だけどさ。
他人が目の前で殺されるのっていい気はしないんだよね。
悪い事を沢山している私の台詞ではないか。
甘いよね。
「やめときなよ」
「ああ!?」
「そのまま試験官に向かってみなさいな、殺されるよ。あの人は実力も高いからさ」
「うるせ——ッ⁉︎」
やっぱりそうだ、こいつは実力があまりにも低い。スローモーションに見えるほど初動が遅すぎる。
この程度がメンチに襲い掛かっても彼女が隠し持っている武器でおしまいだっただろう。
無謀な事はさせたくないので威力を弱めに抑えて【伝衝】を255番に行い、気を失わせた。
「アンタも乱暴ね」
「よく言いますよ、コイツほっといたら貴女殺す気だったでしょう」
「まぁね」
そうしていると空から何かが近づいてくるのが見える。どうやら飛行船のようだ。
その正体はハンター協会の審査委員会のもので合格者1名のみを出したメンチにそれで良いのかを確認するためにやって来たのである。
それにしても飛行船が来たと思えば、大きな気配がこちらの方に降りかかってきているではないか。
着地した衝撃で舞い上がった土煙が流れ現れたのハンター協会の会長であるアイザック=ネテロである。
【凝】で見なくとも分かる、あの人はヤバイ。匿名による暗殺依頼も受けた事はあるが丁重にお断りしたくらいだ。
メンチやブハラも流石に固まっている様子でネテロからの試験が厳しすぎないかという問いが出るまで焦っていた。
メンチ自身、色々なハプニングのせいで試験で厳しい判定をしていたことを認めた。そして即座に詫びて試験のやり直しとメンチは試験管を降りる事を懇願。しかしネテロも待ったをかける。
話し合いの結果、2次試験を再テストする事が決定。メンチは受験者に実技で見本を見せることで話がつく。
そしてメンチの要望で私たちは審査委員会が乗ってきた飛行船に乗り、マフタツ山に向かうことになった。
「課題はこの山に生息するクモワシの卵から作る“ゆで卵”よ」
確かクモワシは谷の間に糸を張ってそれに卵を吊るしていたはず。その糸は多少の重さでは千切れないほど丈夫だ。
そしてこの谷は並み以上に深いため下から上に突風が吹き上がっている。
つまりまずは谷に飛び込んでからクモワシの糸を掴んで、卵を回収。そして自力のクライミングで登るか突風で上まで飛ぶかの二択で達成する必要がある訳だ。面白い。
飛び込む度胸と糸をつかむための集中力や風が吹くタイミングを読む思考力など必要な能力が多いため試験にはもってこいだろう。
「試験官、私もやってみていいですか」
「別にいいけど……アンタは合格してるのよ?」
「ゆで卵、食べてみたいもので」
「ふふっ、私も見本を見せなきゃいけないし行きましょ」
息を合わせた訳ではなかった。
私達はほぼ同時に谷へと飛び込む。
メンチは水泳の飛び込みの如く、私は自由落下に身を任せて。
落下スピードが速いため糸がすぐに見えてくる。こりゃ下手なやつがやろうとしても難しいものだ。
だけど私くらいになれば手にかけるのは容易く、簡単にぶら下がる事ができる。そうして近くにある卵を一つ回収した。
風が吹くのを待って少しすると僅かにしたから吹き上がる弱い風が肌に触れたので糸から手を離し大の字で落下。
すると弱い風は徐々に力強くなり、やがて私の体をも持ち上げて飛び込み場所まで戻る事ができた。
「ルメーネ!」
「マジかよ、すげぇな」
「なるほど……」
「やっと面白そうなのが来たな」
戻ってきた私を迎えてくれたのはこの試験で知り合った四人。いい友人になれたらいいものだ。
「これが新しい2次試験よ、さぁ始めましょうか。スタート‼︎」
メンチの掛け声と共に試験は再開される。
しかし周りの人は崖に飛び込む勇気がなかなか湧かないようで躊躇しているようだった。
そうしているとゴン達が話しかけてきた。
「ルメーネ、オレも行ってくるね!」
「あと30秒くらい待ってから飛びなさいな、そうしたらすぐに突風が吹いてくれるよ」
「レオリオはやる気いっぱいみたいだね」
「おう! スシでは何も出来なかったからここでは絶対に合格してやるぜ!」
「かはは、いいね」
「この谷かなり深いな」
「糸を掴むことだけ考えなさいな、余計な事を考えてると蜘蛛の巣に手も届かないよ」
「…………気をつける」
「キルアにはアドバイスは要らなそうだし頑張りなさいな」
「まぁね、風なんて使わなくても突破してやるさ」
そんな会話を交わして彼らは谷の中へと飛び込んでいく、それは周りの受験生も同様。
しかしそんな中でも255番を始めとして数十人は飛び込む事が出来ずにいた。それもまた彼らの選択だから別にいいけどね。
生きてさえいればまた試験を受けられる、自らの命を守ることもハンターとして必要な能力だ。
その点見ればここまで来た彼らの選択は決して悪いものではないだろう。
こうして飛び込んだ何人かは帰ってこなかったが合計42人がこの2次試験を突破したのであった。
ちなみに自分達でとったクモワシのゆで卵は半熟にして食べたが黄身の濃さや舌触りなど市販のものとは比べ物にならない程に美味であった。
私たちは飛行船の中にいる。
どうやら第3試験場は遠い場所にあるようでこの船で現地まで向かうそうだ。
簡単な説明を終えて私たちは翌朝までの自由時間を得ることになった。
レオリオとクラピカは今日の疲労からすぐに就寝する事を決め、ゴンとキルアは飛行船の内部を探索するようで私はフリー。
だったらいつも通り【纏】と【練】の鍛錬を積むことにしよう。
船の時とは違い、周りの連中も休んでいたり大人しいため集中しやすい環境なのはありがたい。
なんて思って数時間が経つ。
そうしたらアイツがやってきた。
「やぁ♥︎」
「何のようさね」
「別に何もしないさ♣︎ 良いオーラを感じちゃったから来たんだ♠︎」
目をつけられているのに鍛錬を積もうとしたのは間違いだったかぁ……
無理矢理にでも寝ていればよかった。
「私はアンタとやり合わないよ、依頼でもないのに戦うなんて損でしかない」
「じゃあ僕が君に僕を殺すように依頼したらやってくれるのかな?」
「内容次第さね」
好条件を出してくれると言うなら私はやれる限り仕事は全うする。お得意様ならその条件も緩くしてもいいが。
しかしまぁヒソカは中々帰ってはくれない、なんやかんや雑談をしてしまう。
そうしていたら疑問があったので問うことにした。
「そういえば1次試験でアンタと手を組んでいたヤツがいるみたいだけど誰だったのさ」
「それはね」
「
私の背後から声がしてきた、なるほど完璧な絶で気配を殺して迫ってきていたか。だとすれば同業者かしら。
そう思って振り返るとそこにいたのは顔や首などに針を打ち込んでいた301番の男、試験前に見た時から嫌なオーラを放ってるヤツがいると思ったらコイツだったのか。
「ふーん……アンタは同業者?」
「俺はゾルディック家だよ」
「ゾルディック……」
「そっちは?」
まさかの2人目のゾルディック家が出てくるとは酷いもんだな。しかもキルアと違って念も使えるみたいだし本当に面倒なヤツが増えた。
私も嘘をつく必要がないためキルアの時同様に“ヘルメス”の名前を出す。それに反応を示したのはヒソカ、目つきがより危険な状態になっている。
その次に私は何でゾルディック家の者が複数もハンター試験を受けているのかを問うと次の仕事に使う為と私に似た理由だった。
「アンタの弟もこの試験受けてるみたいだけど一緒に来たの?」
「いいや、キルが参加しているのは知っていたけど向こうは知らないよ。だから顔を変えてるし」
「なら伝えないよ、そっちの都合もあるだろうしね。だから品定めするのやめてくれる?」
さっきからコイツ、ヒソカみたいに殺気を飛ばしてきているし……なんなのさ。
殺しに来るなら相手になるけどね。
「ま、キルに変な事さえしなければこっちも何もしないよ。忠告って事で覚えておいてね」
「かはははは、気をつけておくさね。でも私を殺すなら…………覚悟してね?」
しまったなぁ。殺すなんて言われてしまったから私も殺気を出しちゃったよ。船内が少し騒がしくなってきた。
それにしてもさすがはゾルディック家の人間、私の殺気を見ても平然としているや。
「やっぱり君はいいね♥︎
「マチ? ……なんでマチの名前がアンタの口から出るのさ」
「怖い顔をしないでよ、僕は
なるほどね、立場は違うが同郷の私は旅団の
……ん、ヒソカは蜘蛛?
「ちょっとヒソカさ、自分が旅団だってことはあまり多くの人に言わないでよ。旅団のメンバーに恨みを持つものは多いし」
「フフフ♣︎ それならそれで楽しみだよ♠︎」
……コイツ、本当に大丈夫か?
ちょっと話しただけで伝わってくるほどの戦闘狂、最悪他のメンバーにまで手を出す可能性があるんじゃないか?
殺しておくべきか…………いや、まだ黒と確定している訳じゃないし見ておくか。
それからも少しだけ話し、ヒソカとは離れた。
ヒソカと会話した後は念の鍛錬を再開して夜中まで行っていた。それからは夕食を軽く摂り船内をぷらっと巡る。
そうしているとちょうど私が進む先の通路から隠しきれていない殺気を感じた。しかも私の前には2人組の男がいる、このままだと殺されるな。
「……チッ」
目の前で人が死ぬのは御免被る。
仕方がないので前にいる2人は手刀で気絶してもらい、私が殺気の発生源を抑えることにした。
殺気の正体はキルアだった。
どうやら汗をかいて疲労している様子、何かしらの運動を行なっていたが良い結果を残せなかった所だろうか。
でも彼はやはり子供という事か、殺気の使い方が下手くそだ。
殺気を隠すことも出すこともアレンジが効く、私がキルアの兄にぶつけたのは重力が増して身体が重くなったと錯覚させる殺気。それに対してキルアのはただの殺気、闇業界なら耐えれる者も多いだろう。
とりあえず様子を見るために彼の方にゆっくりと近づくとしよう、そうするとキルアは考えることに夢中だったのか私にぶつかってくる。
その瞬間。キルアの腕が鋭い刃のように変わり私を殺そうとしてきたではないか。
流石に念が使えないとは言ってもあの若さで殺し屋をやっているキルアの攻撃を受けるわけにはいかないのでその攻撃を捌く。
そして殺気を混ぜたオーラを辺りに漂わせ、彼の様子を窺う、そのおかげでキルアは怯んでくれたので良かった良かった。
「……ルメーネ」
「全く殺気を漏らすなんて殺し屋としていかがなものかね、本気だったでしょ。ん?」
キルアを観察していると思った以上に萎縮しているのが見てとれた。様子がおかしい。
ふと思いついたので【凝】をしてみると答えは明らか、キルアの頭に当人とは違うオーラが見られたのだ。
つまりキルアは誰かの念によって影響を受けているという事。
そしてオーラの質からそれはキルアの兄が出していたものと同じだと推測される。
「す、すまなかった……」
「まぁいいよ、でも覚えておきなさい。仕事と関係ないのを殺しても何も得られないからやるだけ無価値……ゴンが知ったら悲しむよ」
「‼︎」
「黙っておいてあげるから大人しく寝なさいな」
少なくとも先ほどよりかは呼吸は落ち着き興奮した様子もなく大丈夫そうであった。
私も最近寝ていないため軽くでいいから睡眠を取りたいので立ち去る事にする。
そうするとキルアが私のコートを引いた。
「待ってくれよ、向こうでゴンとゲームみたいなのしていたんだけどさ。その途中で大きな殺気を感じとったんだ……もしかしてアンタか」
「へぇ。気づいたんだね、そうだよ。ちょっと他の受験者と揉めちゃってね。それで少し殺気を出しちゃったのよ」
私も彼には用事はないので会話を切り上げて仮眠を取ることにした。
試験はまだまだ続く。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
今回は以上になります!
よろしければ評価やコメントをお願いします。
作者のモチベーション向上に繋がります。
新年初日から投稿したかったのですが年末年始の準備などの影響で時間がかかってしまいました。申し訳ない。
今回は第二試験やり直し→飛行船にて(ヒソカ&イルミ)→飛行船にて(ボール取り後キルア)となっておりました。
彼女はキルアの頭にあるアレに気づきましたがイルミのお願いに従い何もしませんでした、ゾルディック家の人間と喧嘩する意味がないからですね。
アレの処理をするか否かは悩みましたが今回はスルーです。