第四次試験が終わり私達が飛行船に乗り込んでから約三日が経過した頃。
そのアナウンスは船内に流された。
『皆様、長らくお待たせ致しました。まもなく最終試験会場に到着します』
やっと着いたのかと、窓から外を見てみると宮殿のような場所に着陸し始めていた。
確かここは最高級ホテルで一泊当たりかなりの大金がいる所だったはず。
それが最終試験会場だなんてハンター協会は随分と奮発したね。
「しかしまぁ、遂に終わるんだな」
「どうしたのさレオリオ。もしかして緊張しているのかい?」
「当然だろ、やっとここまで来れたんだぜ。絶対にハンターになってやるさ……!」
「いい気合だね。私も張り切っちゃおうかな」
「やめてくれ、君が本気を出したら私達では太刀打ち出来るとは思えない」
「クラピカに止められちゃった。かはは」
どれだけ本気を出すかはこの後次第、まずは最終試験の内容を知らないといけないね。
予想としてはあの会長さんの質問からして一対一の決闘みたいな事をするんじゃないかな。
戦いたくない、なんて組み合わせを決める際に参考になるものだ。つまり戦ってもいい者同士が戦い勝った方が合格かな?
それから少しして完全に着陸した飛行船から、スタッフの案内を得て試験会場へと連れていかれる。
そこは広いホールで、中央にはネテロが待っていた。
「最終試験じゃが、一対一のトーナメント形式で行う。その組み合わせはこうじゃ」
そう言い、ネテロはホワイトボードにかけられていた布を外し組み合わせが公開された。
組み合わせは十一人を二つのブロックに分けたトーナメント。一回戦は……
「……ゴン」
まさかのゴンだ。
もう一つのブロックではヒソカとクラピカが戦うようになっている。
「さて、最終試験の合格条件だが。たったの一勝で合格となる。つまりこのトーナメントは負けた者が上に登る形式……頂点に立った者は不合格じゃ」
つまり合格できないのはたった一人だけということだ。そのまま会長は説明を続ける。
今回の試験の組み合わせはこれまでの試験内容と船内の質問から決めたらしい。
つまり戦えるチャンスが多い者ほど期待をされているということだ。
このトーナメントからするに私とゴンは当たる回数が最も多いので期待大か。
しかしキルアは不満げなようで会長さんに内容を細かに説明してほしいと噛み付く。
素質ならキルアもかなり高いのだから、納得いかないのも分からない訳ではない。
だが恐らく、キルアには足りていない面があるとすればそれは精神面。
技術はあれど中身はまだ子供。成長途中故に不安定な心は何をしでかすか分からない。この前の飛行船での出来事のようにだ。
「さて戦いのルールじゃが、簡単じゃ。武器の使用は可能、決着のつけたかは相手に『参った』を言わせるだけ。ただし相手を死に至らしめた者は即時失格じゃ」
なるほどね、殺し合いではないと。
手加減していいならいくらでもやりようはあるわ。ゴンに使いたくないが。
そう考えていると協会員であろう黒服が前に出て、宣言。
「第一試合、ルメーネ対ゴン! 両者は前に」
「はいはーい」
おや、あのおじさんは確か忍者の動向を見守っていたおじさんではないか。なるほど観察者が多いと思っていたがやはり協会側も紛れ込んでいたわけだ。
それじゃあ始めましょうか。
覚悟はできてる? ゴン。
「始め!」
「(ルメーネは俺よりも速いけど、それでもまずは動いてみる‼︎)」
開始の合図と共にゴンは私の死角へと回ろうと動き出す。確かに少年にしてはとても速いのだが、私からすれば鈍いので軽く小突く。
「ぐっ!」
「どうしたのさゴン。今のは軽いジャブだよ」
「まだだ」
隙だらけのゴンの顎めがけてもう一度ジャブを打つ。手応えは抜群、今ごろ脳みそはガンガンに揺れているだろう。
意識を失ったであろうゴンが倒れようとしているので軽く叩いて正気に戻す。
「はっ!?」
「どう? ギブアップはする?」
「しない!」
「じゃあもう少し続けよう」
私はゴンを軽く拘束し、彼の右腕を捻りながら掴む。ゆっくりとじっくりと、じわじわ関節が悲鳴を上げるように。
「う……」
「私だってこんなことしたくないよ。仲間だからね、恨むならあそこにいるジジイを恨みなさいな」
本当にこのルールは意地が悪い。
ここまで来た人間が簡単に参ったなんて言えるはずがない。私だってそうだ。
私はゴンを壊したいわけじゃない。
だから早くギブアップしてよ……じゃないとここから地獄を見るよ?
「絶対に嫌だ‼︎」
「そうかい」
「ゴン、無理をするんじゃねぇ! まだ次があるじゃねぇか‼︎」
「ほらレオリオもあぁ言ってる。次の忍者相手に頑張ればいいじゃない、ここで無理をするのはあいつを有利にするだけだよ」
しかしゴンは諦めることはない。
指や腕を折る、関節を外すか破壊する。切り落とすこともできるのだがそれでもゴンは頑なにギブアップを拒むだろう。
「ルメーネ‼︎ お前だってゴンとの実力差を分かっているだろう⁉︎ 大怪我でも負わせてみろ、お前でも殴りに行くぞ俺は‼︎‼︎」
「そうすれば失格になるのは貴方ではなくゴン選手になりますよ」
「ぐっ……」
分かっているよ。
私だってゴンに怪我を負わせるつもりはない、けれど簡単に降参なんて出来るわけないでしょ。
だからゴンには私の提案を呑んでもらえる状態まで疲労を蓄積させるしかない。
じっくりと二時間をかけてゴンの疲労をピークにまで持っていく。敢えて拘束を解き動き回らせることによってゴンの体力は残り僅か。
ここで仕掛ける。
「ゴン……ギブアップしなさいな」
「い、やだ‼︎」
「じゃあ私がギブアップするわ。それで良いでしょう」
「ダメ‼︎」
そうよね、あなたはそう言うと思っていた。
本当にわがままな石頭少年だよ。
自分は勝ちたいのに相手には降参を簡単には選ばせないなんて。
ゴンじゃなければぶっ飛ばしてる。
「でも実力差はハッキリしてるでしょ。ただ貴方を降参させる手段が私にはない、どうしたいの」
「それは二人で決めようよ!」
「あのねぇ……」
ゴンの頓珍漢な押し付けに周りの空気が緩んでいく。あぁダメだ……やっぱ私はこの子を降参させることが出来そうにない。
「はぁ……だったらこれなんかどうかしら?」
「1ジェニー?」
「コイントス、知ってるよね。上に飛ばしたコインの柄が表か裏を当てるゲーム、これで外した方がギブアップをするでどう?」
アイツらが揉めた時、いつもコレで解決していた旅団のルール。これで納得してくれないならゴンを気絶させてギブアップするしかない。
お願いだから賛成してよね。
「どうかな、ゴン。審判さんにやって貰えば公平だと思うんだけど」
ゴンは「うーん」と顎に手を当てて考える。
しばらく考えてゴンは結論を出す。
「分かったよルメーネ! それで勝負‼︎」
「よし、じゃあ審判さん。Jの模様が入っている方が表だからよろしくね」
「分かりました」
「それじゃあゴン。私達は審判さんが投げるところを見ないようにしようか」
「なんで?」
「私とあなたならコインの表が裏かは多分見える。目が良いと結構見えるものよ」
そう言うとゴンも反対することなく目を瞑る。素直なところはいい子なのよね。
そして私も目を瞑る。
目は見えなくても感じ取れる。
今、審判はコインを上に飛ばした。
空中で回転するコインの挙動、表か裏かまでは分からないが回転数が多い。勝負の決め手となるコイントスであるからか審判も力んだのだろうか。
それから数秒、パンと手を打つ音が聞こえる。さてどちらの面が当たりかな。
「ゴン、表か裏どっちか決めなさいな」
「じゃあ表!」
「なら私は裏になるね。さぁ審判!」
「結果は………………表です」
「やったぁ‼︎ 勝ったぁ…………」
両手を天に突き上げて喜ぶゴン。
これまでに溜まったダメージや疲労が一気に襲いかかりそのまま眠ってしまう。
「やっと言えるよ。“参った”」
長い戦いがようやく終わった。
ゴンとやると分かった時からこんな手段を取るしかないと思っていたがここまで辛いか。
「待てよ、ルメーネ」
「うん。待つよ」
「アレしか無かったんだよな」
「そうするしか選択肢が思いつかなかった」
「分かった……」
ゴンの疲労をピークまで持っていく必要があったんだ。元気な状態のゴンならそれ以外の戦いを望むと思っていたから。
限界にしておけば、いくらゴンでもその状況の最善策の方に傾いてくれると思っていたさ。
目が覚めたらゴンに謝らないと。
長い一戦目が終わり、二戦目、三戦目へと繋がっていく。そして私はその戦いの中で今までに経験したことのない悪意を目の当たりすることになった。
お疲れ様でした。今回は以上になります。
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誤字のお知らせいつもありがとうございます。
トーナメントを弄りたかったのですがストーリーを変えすぎることになり変えないのでルメーネはハンゾー戦前の初戦として、ポンズはボドロとレオリオの間にいます。
次回で最終試験は終了します。
お楽しみに!