長かった!!
何が起きたのか、よく分からなかった。
気がついた時には兄貴はいなくなってそこにはルメーネが…………でも、コイツは本当にルメーネなのか?
「……キルア」
寒気がした。
いつもの声のはずなのに別人のように重く、冷たい視線。今すぐにでも逃げ出したい……それでも俺の脚が固まって動くこともできない。
「私が助けたせいで試験は貴方が失格になる……ごめんなさい。後でゴンを連れて迎えに行くから、一度家に帰ってくれる?」
「……ぁぁ」
「安心しなさいな、あの男は暫く大人しくしなければならないから」
ルメーネの言葉は丁寧だが、その言葉に逆らうのだけはしてはいけない。そう思わせるほど、アイツはキレていた。
俺も限界だったし……素直に帰る事にした。
……ミルキの奴、刺した事怒っているんだろうな。
「さて、と。会長さん」
「なんじゃ?」
「この場合、失格になるのはキルアだけで間違いないかな」
「うむ、この場合お主がイルミを吹き飛ばした事はキルアを助けた行為として取られる。よって失格はキルアだけじゃ」
キルアには悪い事をしちゃったよ、本当に。
あぁ動かなかったらキルアは恐らく、あのクソ兄貴に操られていただろう。
だからアイツへの恐怖を私の方で誤魔化して正気に近い状態に戻す必要があった……とはいえだが。
「さて、そろそろか」
軽く吹き飛ばしてやったがそろそろ起き上がる頃だろう。向こうを見てみると瓦礫で埋もれているが気配を感じる。
殺気は隠せているが気配から怒気が伝わる。どうやって私を殺そうとしているか、かな。
そう思って警戒を強めた時、奴は瓦礫を吹き飛ばしてその場に立つ。
「お前さ……何してくれてるの?」
「は! キルアを洗脳しているようなクソ兄貴、ぶっ飛ばして何が悪いさね」
「殺すよ、お前だけは。今すぐに」
「顔面に膝入って、全身ぼろぼろの状態でやれるわけないよ。全身ヒビだらけなんだからこれ以上力を込めたら死ぬのはアンタ」
「(……右人差し指に力を入れたら砕けた。この状態じゃ厳しいか。アイツは飛行船で始末しておくべきだったな)」
お、絶にしたか。
この場で勝てない、そして私がこれ以上やる気がないのを理解し回復に専念。
キルアの方に集中していたのもあるけど、アンタの失敗は私が手を出すと予測しなかった事。そして私の怒りに気づかなかった事。
狂った愛でキルアを縛り付けて洗脳する。気に入らなかった、ゾルディック家に生まれた以上殺し屋になるのは仕方がない。
ただ針を刺して縛り付けるのは気に入らない。例え愛だとしても、今のキルアに必要なのは鎖ではなく自由。
世界を知り、多くの知識を得て経験を積み自らの未来を決めることがキルアに必要だ。
そして何よりも、キルアの事を大切に思う割にキルアの事を何一つ考えていないアイツに腹が立った。恐らく私と奴は水と油……考えが合わないのだろう。
「あーあ、これじゃあ次の仕事に支障が出るんだけど」
「だったら私に依頼でもしなさいな、ちょちょいとやってあげるよ」
「さて、よろしいかな。失格者が現れたため残りの受験者を含めてこの場にいる十名はハンター試験合格となる。また明日、簡単な講習を受けてもらったら解散じゃ」
今日はこのホテルでゆっくりと休んでくれとネテロは言い、ホッホッホと笑いながら去っていく。残された私達は。
「やっと終わったか……長かったような短かったような」
「ルメーネ‼︎」
「詳しく話を聞かせてもらうぞ」
レオリオとクラピカが不機嫌そうに迫ってくる。二人から見れば私はキルアを失格にさせた張本人だから仕方がないか。
納得するかは分からないが説明しないと。
「だったら食事でもしながら話そうか」
そうして私達はホテルにあるレストランで食事をしていた。クラピカはパスタを啜り、レオリオはピザに齧りつき、そして私は三本のワインと五人前のステーキとライスを堪能。
それぞれリブロース・サーロイン・肩ロース、ランプ、ヒレの最上級はソースが合わさり格別の時間であった。
「そろそろ頼むぜ、ルメーネ」
「そうだね。どこから話そうか」
「キルアを失格にするしかなかったのか?」
「……しないとキルアはアイツの操り人形になっていただろうよ。それこそキルアに人殺しをさせて失格にさせるとかね」
これはあくまでも予測。
だがハンターになるのを望まないキルアの兄ならキルアを失格にさせる。つまり他の受験者が戦っている時に乱入でどちらかを殺し、キルアを不合格にと思ったのだ。
「望まない殺しをさせる可能性……か」
「しかし洗脳なんてどうやるんだよ」
「二人がまだ知らない技術や力があるのさ。私が何もない所で浮いていたのも似たものだよ」
「船でのやつか!」
別に【
自由に走りたい、幼い頃からの願いが自然と叶った能力なだけだ。
「しかし洗脳か……どうにかできないか?」
「キルアが自分で乗り越えるしかないね。ガヤが余計な事をして悪影響を与えたくない」
キルアの兄が操作系の念能力者であるならた考えられる対策は二つ。キルアが成長して乗り越えるのと頭に埋め込んである針の除去。
針に関しては抜きたいがあの男の事だ、キルア以外が触れるとキルアを壊す仕組みをしていてもおかしくない。
だから私から助ける事はできない。キルアが自分で針に気づき針を抜くのを待つのが正解。
「洗脳と言っても、人格を変えてるレベルではなく潜在意識を歪ませる程度だからキルアの成長次第で打ち破れるさね」
「そうか……」
「だから二人ともキルアに洗脳されていると話さない事。それでおかしくなっちゃうケースもあり得るからね。次に会う時はこれまで通り接してあげて」
「「分かった」」
やはりこの二人はいい人だ。
ゴンには洗脳の事も伏せておきたいのでその事も二人には口止めをお願いし、二人は快く了承してくれた。
キルアが洗脳されていたなんて知ったらゴンの事だ、ゾルディック家を恐れずに暴走して殺されるに違いない。
「それとこの試験が終わったら私はキルアを迎えに行こうと思っているから」
「迎えにって、ゾルディック家って所にか⁉︎」
「いくらなんでも危険だ! それに彼らの住処が分かっているのか⁉︎」
「知ってるよ、私の業界で知らない人はいないレベルの有名一家さね。それとあいつら危険だって言うなら私も一応危険人物だから」
「けどよ、お前なんて言うか気さくだし。話せる人間だからよぉ」
「かはは、狂人ではないからね。……ん」
一つの気配がこちらの方に近づいてくるのを感じ取れた。ゴンか……
足音が止まり扉がバンと勢いよく開かれたかと思うとこちらの方に向かってくる。どうやら私に思う事がある様子だ。
「ゴン! 目を覚ましたのか!」
「心配したんだぜ‼︎」
「……ねぇ、ルメーネ」
「何さね」
「キルアを失格にさせたのがルメーネなのは本当?」
「そうだね」
そう言うとゴンはワイングラスを持つ私の左手、手首の部分を掴み握りしめる。
時間さえあれば【堅】をしている私には通用しないが今のは良い力だ、念を使わなければ手首を折られていたかもしれない。
「ちょっとゴン」
「どうしてキルアを‼︎」
どこまで話せば納得してくれるか。
キルアの洗脳は禁句だが、納得いく説明しないとゴンは理解してくれないだろう。
「キルアは実の兄に精神的に追い詰められていた、ゴンを殺してほしくないなら戦おう。とかね」
「キルアが……」
「危うかったし、正常な判断能力が見られなかった。このままだと失格のルールである殺しをやりかねないから強制終了させたまで」
「…………」
「これでも私、観察眼は悪くない方だと思っているから。あぁしないといけなかった」
「ゴン、俺もルメーネから説明を受けて納得がいったんだ……完全に間違いではねぇよ」
「ルメーネからの提案で研修会が終わった後、私達はキルアを迎えに行こうと思う。ゴンも来るか」
「ん、ちょい待ち。別に二人に来いとは言ってないけど」
「水臭いな、私が行くのを止める理由はルメーネにはないだろう?」
「俺も行くぜ。試験ではキルアを助けてやる事が出来なかったが俺でも出来ることがあるはずだ!」
かはは、本当にいい人だ。
この縁だけは断ちたくないな。
「これで三人、ゴンはどうする?」
「当然行くよ! キルアを助ける!」
「よし、よく言った! ゴンもテーブルに座って食事を摂りなさいな。疲れた身体にエネルギーを流し込みなさい」
「うん‼︎」
それからはお腹が空いていたゴンが料理を食べる中、私たちはその様子を見守っていた。
さてと説明会の前に四人分の飛行船チケットを用意しておかないといけないね。
翌日、朝食を済ませた私たちに待っていたのは試験後に説明を受けた通り説明会であった。
最初に手渡されたのはハンター
再発行もされないと言うので大切に保管しておかないといけない。
しかし……まぁ、あれだね。
今までは偽物の戸籍や名前を使っていたけれど、これだけは“ルメーネ=マーキュリー”の存在を証明する世界に一つしかない一品。
何故か、嬉しいものだな。
想いに浸っていると、続いての説明に移る。
内容はハンター協会の定めているルール、その中には同党のハンターを狩ってはいけないとあるが……キルアの兄ならお構いなしだろう。
私だって殺しに来るハンターがいれば当然、反撃して始末する。
そのような話を数時間聞き、説明会は終了。
それぞれ行動を許可され解散する。
私はゴン達と一度別れて、飛行船の乗り場で合流を条件に別れた。
「ルメーネ!」
「ポンズ、どうしたのさ」
「これからあなたはどうするの?」
「私は失格になったキルアを迎えに行くよ。ポンズはどうするつもり」
「私は幻獣ハンターとして活動できるように街に行って調べ物から始めようと思う。だからこれでお別れ、あなたがいたから合格できた。ありがとう」
「かはは。これ、私の携帯の電話番号とアドレス……持っていて後悔はしない。どうしても力のいる仕事があったら安く請け負うよ」
「じゃあこれが私の番号とホームコード。それじゃあね、ルメーネ!」
「はいはい、また会える日が来るといいね」
まさか友人との連絡先をこの携帯に入れる日が来るとは思わなかった。日常用兼仕事用の携帯電話に。
そう思っていると次にやってきたのはポックル、ゴン達ともホームコードを交換したので私とも交換したかったようだ。
「私ホームコードは使わないから。はいこれ電話番号とメールアドレス、もしかしたら盗聴する輩が出るかもしれないけど何かする前に私がそいつを始末するから安心しなさいな」
「お、おう……ありがとう」
「依頼したいことがあったら連絡してちょうだい、余程の事態でもなければ電話に出るから」
挨拶を済ませる必要がある相手にはやり終えたしさっさと飛行船乗り場で待機しようと、していると背後から「ちょっとよいか」と呼び止められてしまう。
振り返るとそこにいたのはネテロ会長。
「お前さんには伝えておきたい事があっての、ハンター試験には表と裏がある。表はこれまでしてきた試験、そして裏は念の会得じゃ」
「念……なるほどね。ハンターとしての強さを得る必要があるってわけか」
「その通り、その点でお前さんは最初から表も裏も合格じゃ。それでのワシからお前さんには頼みたい事がある」
会長さんが私に頼みたい事?
想像がつかないな。
「お前さんはこれからゴン達と行動を共にする予定だろう。せっかく合格した者が死なないように見守ってほしい、そして念もじゃ」
「死なせはしないよ、ただし念については私からはぼかす。私は教えるの得意ではないから」
「ふむ、まぁこちらからも派遣する予定じゃからそれは仕方がないか。無駄話に付き合わせて済まなかったの」
「かはは、それでは失礼させてもらいますので。会長さんもお元気で」
ネテロ会長とも別れて、飛行船で私たちは合流する。向かう先はゾルディック家があるパドキア共和国にあるククルーマウンテン。
そこで私は少しだけ暴れる事になる。
お疲れ様でした。今回は以上になります。
よろしければ評価やコメントをお願いします。
作者のモチベーション向上に繋がります。
因みにルメーネはイルミに対して
①顔面に膝蹴りを入れる
②即座に掌底打ちを背骨に叩き込む
③そのまま放出系の念を込めた【伝衝】を行い、全身にヒビを入れる
をしてました。イルミはキルアに集中し過ぎて殺気を感じないルメーネの攻撃を一方的に受けてしまいました。
またルメーネの携帯の仕様
①自己の電話回線で契約している。
②闇業界の知り合いにより、盗聴するものがあれば逆探知をして相手のデータを分析して居場所などを特定する。