仕事人『ヘルメス』   作:八坂ノ宮

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これからよろしくお願い致します。


始まり
シゴト×ノ×タメニ


サヘルタ合衆国 ゴルデンステット

 

 国内有数の名門大学と呼ばれるハルバート大学は騒がしい。

 多くの人々が立ち止まる中、人混みを掻き分けるように一人の女性が急いで進んでいる。今朝はいつもと違う道を通ったからか予定時間を過ぎてしまっていたからだ。

 

「退いて退いて〜!」

 

 金髪ポニーテールの女性、ソニア=ギメイデスは幸運の持ち主だった。宝くじで1万Jを当てたり、虹をよく見かけたりこの前は懸賞の品がプレゼントされるくらいに。

 そして今日彼女は日時生活においてまずお目にかかる事がない、男性の死体を見る事ができた。

 

「うわぁ!?」

 

 驚きのあまり躓いて死体と目と目が合ってしまう更なる幸運が起きる。こんな時人間は意外と冷静に頭が働いてしまうもので、彼女は。

 

(あ、口から溢れている血……私の眼より真っ赤…………っ!!?)

「う、ウゲェ!!」

 

 一通り理解した後、死体を避けるように吐いた。朝食べたトーストも目玉焼きも朝食全て吐く、その姿を見た友人達に支えられながら彼女は大学内に入っていく。

 

「……はぁ」

 

「朝からついてないわね、ソニア」

 

「何が起きてるか分からないのに突っ込んだソニアも悪いかもしれないけどね」

 

「でもシッタイが殺されるなんてね、マフィアと親しくしてるって噂があった位だから誰も絡まなかったのに」

 

「逆にアレじゃない? ミスでもしたんじゃない」

 

「やめて! 朝から目の前で死人を見たのよ、その話はなしにして……」

 

「「ご、ごめんソニア」」

 

「私、教授の所にレポート出してくる」

 

 ソニアの向かう先は心理学の教授ザーコーの部屋、「なぜ人は殺意を隠せないのか」というタイトルのレポートを提出するために。

 部屋の前に着いたソニアは違和感を覚える、いつもよりなんか空気が重いと。

 だが気のせいと思い、普段通りノックをせずに扉を開けて中に入る。

 

「先生、おは──」

 

「約束が違うぞ、殺しで500万程度払えないとはどういう事だ‼︎」

 

「え……⁉︎」

 

 中に入ると聞こえるのは教師であろう人の怒号、彼女が見た人の眼は知っている人間のものではない。

 人なのだろうか、とさえ思わせるほどに鋭く歪んだ眼をしている。

 

「…………また連絡する」

 

 携帯を切った男は彼女を睨みつける。

 

「見たな」

 

「何も見てないし聞いてません……」

 

 いつの間にか男の手に拳銃が握られ、彼女の方に向けられていた。

 

「ま、待って……⁉︎」

 

「聞かれたからには始末するしかないんだ」

 

 そう言い、凶弾が放たれる。

 その弾丸は正確に彼女の眉間を捉え、ぬるりと()()()()()()

 

「……何?」

 

 彼女はくつくつと笑う、その顔は男の知っているヒトの顔ではなくなっていた。

 

「かははっ、それで殺すつもりなの? せめて弾の威力を上げてきなさいな」

 

 次元が違う、男は理解した。

 咄嗟に窓を蹴破ってでも飛び出そうと動く。

 

 しかしその前にヒトが投げたペンが正確に頭蓋骨を貫き、男はずるりと倒れ込む。

 仕事を終えたばかりの殺し屋ザーコーは突如と現れたヒトにあっさりと始末されたのであった。

 

「殺し屋名乗るならもう少し上手くやりな、ざーこー君……いや雑魚(カス)

 

 そう言いながら彼女は貼り付けているマスクをべりべりと剥がす。そこから現れるのは紺青色のレイヤーショートボブで灰色の瞳を持つソニアではない別のヒト。

 彼女の名前はルメーネ=マーキュリー。

 闇の世界で素晴らしい腕前と評される仕事人である。

 

「バイバイ、先生」

 

 机の上に造られた指紋と嘘の癖字で書かれた犯人は()()()=()()()()()()になる証拠を置いていく。

 そしてペンを回収し()()()()=()()()()()()()が犯人である証拠を隠滅した彼女はひっそりと大学から脱出をする。

 しっかりと脱出時に彼女が映るカメラだけは破壊を行ってだ。

 

 

 

 その夜、街はいつもよりも騒がしく警察が街中を散策しているのを見ながら彼女はコートから煙草を取り出して吸う。

 コートの内側にしまっていた携帯を取り出し連絡を取る。

 

「奴を始末した」

 

『ご苦労、わざわざ済まないな。あの程度に君を使ってしまい……ところでザーコーの痕跡は?』

 

「今朝、奴の自宅に忍び込んで消しておいた。残っているのは教授としての物だけ」

 

『さすがだな、“ヘルメス”』

 

 “ヘルメス”とは彼女が仕事で使っている名前であり、仕事を始めてまだ数年だが業界では受けた仕事に失敗はないと頗る評判となっている。

 

『近いうちにまた依頼をしたいんだが大丈夫かね?』

 

「無理だ、暫くは休業する」

 

『何故だ、この時期に何かあるのか?』

 

「貴方は私が新人の時からよく利用してくれたから話すが、顧客を増やしたくてね。そのために“ライセンス”を取るつもりさ」

 

『なるほどな、理解したよ』

 

「助かる……それでは失礼」

 

 そう言い電話を切る。

 実際のところ、顧客を増やしたいのは三割で残り七割は単純な事だった。

 

(変装マスクや偽造パスポート、指紋の準備が面倒なんだよねぇ……アレのために大金を積むのも馬鹿馬鹿しい)

 

 闇の住人ならその道の人間と良い関係を結ぶのが彼女のやり方であった。だがその出費は想像を超えて負担となっているためルメーネはライセンスの取得を決断したのだ。

 ライセンスを持つことによって、ハンター専用情報サイトの閲覧可能、交通機関や公共施設をほぼ無料で使用可能。一般人の立入禁止区域の八割以上立ち入り可能。そして殺人による罪の免除といったものが非常においしい。

 これさえ持っていれば、本名で活動しても支障が出るどころかお釣りがでる。

 

「さてと、試験も近いしそろそろ行くか……確か試験会場近くのドーレ港行きの船に乗るんだったな」

 

 そう呟いた彼女は軽く欠伸をしながら()()()()()()()()。ゴルデンステットの警察は彼女の姿を見かけることすらなく、ただひたすら見えない彼女を探すばかりだった。




主人公 ルメーネ=マーキュリー
通称『ヘルメス』

出身は流星街の24歳。
普段は黒いコートを身につけており、そこに暗器などを隠している。
靴はテンペスタース社製のサンダル(通称:タラリア)を履いている。
友人や家族に害を成そうとする人間は絶対に許さない。
顔立ちはボーイッシュ。

次回投稿は一週間後を予定
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