ゾルディック家敷地に入り込み数分が経過するもルメーネは違和感を覚えていた。
誰も探索にすら来ないと。
「(何故だ、私が侵入しているのは伝わっているはず……罠も見当たらない)」
しかし彼女は立ち止まらない、理由がない。
闇夜の森を慎重かつ大胆に進むルメーネはとある建物にたどり着く。それは小さくはあるが少し豪華な館であった
「(ここは本邸ではないな……キルアどころかゾルディックの持つ嫌な気配を感じない。正面にいる人間は執事、まさか執事の住まい?)」
「そこにいるのはヘルメス様ですか?」
観察していた執事に名前を呼ばれたルメーネはあっさりと姿を現した。探索で【絶】を使用せずにいた彼女はバレるのも想定内の事である。
「どうもお邪魔しているよ」
「お待ちしておりました、私……ゾルディック家執事長を務めておりますゴトーと申します」
「かはは、電話でも話した通り。ルメーネ=マーキュリーさね……あ、これ本名ね」
「これはこれは、ありがとうございます」
「それでゴトーさん、ここまで待っていたのはどうしてだい?」
「はい、先ほどの電話の後に旦那様に連絡をさせていただきました。そして旦那様からヘルメス様をゾルディック家の客として歓迎するように申し付けられましたので」
「なるほど、執事長自ら案内してるくれるとはありがたい。探索する必要がなくて助かるよ」
「それではご案内させていただきます」
ゴトーの案内でルメーネは山道を進む。
山の中は調教された獣がいるのか嫌な視線を送られるも彼女は気にせず、寧ろどのような生物がいるのか観察していた。
「ヘルメス様は……何故キルア様の所へ行きたいのですか?」
「ん、ゾルディック家からすればいい迷惑だよね。家族にも関係ない人間が大切な家族を解放しろなんてさ」
「…………」
「ぶっちゃけキルアの兄貴のせいかな、アレが気に入らなかったからこんな事をした。大切な家族に操作系の針を打ち込むなんて大したもんだよ」
「それは…………」
「抜く理由がなかっただけで私は今あの針を抜いてもいいとすら思ってる。でもそれでゾルディック家に狙われるのは勘弁、だから直談判しに来た訳だけど……まさか招待されるとはね」
ゾルディック家の地雷に触れたルメーネ。
それでもゴトーは感情を見せずにいたのだが、少し呼吸が乱れ肩が震えだす。
「少しだけ……よろしいですか」
「どうぞ、不満をぶち撒けて下さいな」
ルメーネが本音で話せと言った直後、ゴトーから怒り、憎しみ、殺意を向けられる。
そんな思いを受けても彼女は微笑むだけ、寧ろゴトーの思いを受け止めようとしているようだ。
「俺はキルア様を奪おうとしているお前が、お前らが憎い……許せねぇと思っている。可能なら始末したいくらいだ」
そうだろうね、と言いたげな顔でルメーネはゴトーの怒りを受け止める。家族を仲間を大切に思う彼女はゴトーの立場になれば同じように怒ると思っていたから。
「かはは、いいのよ。襲ってきても」
「ご冗談を……旦那様の招待客である方に手を出すなど執事として言語道断。愚行でございます」
「そうかい……まぁ勝手な事をしているとは思っているよ。もしかしたら今度こそ始末されるかもね」
「ヘルメス様、ただの執事である私の話を聞いてくださりありがとうございました」
「別に気にしてないよ。恨まれて当然さね」
そのような会話を済ませて二人は山道をまだまだ進む。するとククルーマウンテンに不思議なものが見えてくる。
それは人工的に作られたであろう洞窟、ゴトーはそこに案内をしているようだ。
「まさかこの山そのものがゾルディック家になってるの……?」
「その通りでございます」
規格外の一族、ゾルディック家。
世界一の暗殺一族がやる事なす事は次元が違うと、ルメーネは改めて理解した。
洞窟に入ると、見えてきたのは扉。
扉の先に入るとそこにいたのは大勢の執事たち、歓迎しているのか頭を下げている。
「ここは玄関? 広すぎないかな」
「ヘルメス様……旦那様から談話室に案内するように申し付けられている為、ご案内させていただきます」
「分かりましたよ」
ゴトーに案内されて談話室に入室したルメーネ。部屋内にはまだゾルディック家当主の姿はない、これから来るようだ。
「(怪しいものはないか、ここはゾルディック家の内部……粗相があれば始末も考えられる。慎重にいかないとね)」
ゴトーが退室して十分弱経過した頃、談話室の扉が開かれる。そこにいたのはルメーネ=マーキュリーが新人時代に痛めつけられたトラウマと言ってもいいゾルディック家現当主、シルバ=ゾルディックがそこにいた。
「久しくだな、数年ぶりか」
「どうも……相変わらず凄いオーラね」
「随分と鍛え上げたとみえるな」
「貴方にやられてから技や念を鍛え直した。それでも届いているかは分からないけどね」
格上の暗殺者を相手にしているせいかルメーネも僅かながら心が乱れている。側から見れば冷静沈着だが、本人にそのつもりはない。
「ハンター試験ではイルミとキルアが世話になったな」
「……ケジメはつけるよ」
「そう焦るな。少し話をしたいだけだ」
「何を話せばいいのかな」
「キルアはどうだった」
「キルアのセンスは抜群に良いと思う……暗殺者になるために生まれたようなものね。ただ、まだ子供だから精神の方が怪しいところ」
「……そうか」
「私としてはキルアをこのまま縛り付けるよりも少しの間自由にして成長を施した方がいいと思うけどね。このままならいつか壊れる」
「余計な世話だな」
シルバの睨みにルメーネも困りげな顔でお手上げ状態。ため息を漏らし、後悔を漏らす。
「それは本当にそうね。なんだっけ……あぁ、イルミだ。アイツが気に入らなかったがためにゾルディック家の教育に茶々を入れちゃった」
「だが一理ある。このまま此方の仕事をこなすだけが手段ではない……実際にキルアはそれが嫌になり抜け出している」
「ん」
「それならば少しの間自由にしてみるのも悪い手ではないな」
ルメーネは少しだけ驚いていた。
キルアの頭に針を打ち込むのをイルミの独断ではなく、当主自身も納得の上で行われていたはずだ。そのキルアを手元で育てずに自由にするのはのはシルバも望む訳ではないのに、と。
「最終的に帰ってくればそれで良い。が、自由に放置しすぎるのも問題になる」
「なら無理をさせすぎないように私からも教えておくよ、特に念について」
「ほう」
「私だってキルアは面白いと気に入ってるの、自由にしたからといって危険なやつと戦って壊れて欲しくない」
「…………確かにハンター試験で交流があり、俺たちとはまた違う人間であるお前ならば可能性はある」
「まぁヘルメスとして仕事もしないといけないからたまに会って話を聞いたり打開策を考えるくらいになるだろうけどね」
「因みにキルアの修行場所としてはどこが良いか考えているか」
「“天空闘技場”」
天空闘技場はこの世界でもトップクラスの高さを持つ格闘技の使い手や念使いなど様々な闘士が集まる格闘技場だ。
そこの200階クラスなら念の修行相手として申し分ない、大抵は念の使い手として未熟ばかりだから。
「子供の頃200階行くまでならキルアにさせたな、当時は二年ほどかかっていた」
「今ならすぐでしょうね。だから私としては200階到達前に合流して念を教える。で、200階ですぐに試合はさせずにギリギリまで鍛えてから戦わせる」
「悪くない。では能力についてはどう教えるつもりだ」
「能力を作るのには関わらないよ。それを決めるのはキルア自身にさせる。その方が能力に対して愛着も湧き、どう活かすかを試行錯誤を繰り返すしね」
「随分とキルアを買っているようだな」
「かはは、ある意味一目惚れだね」
ルメーネ=マーキュリーは人を見極める時に必ず話す。話しながら様子を観察する事で人間性などを見ているのだがキルアだけは違った。
最初見かけた時はゴンに似たくらいの歳の子だと思った。だが見に纏う雰囲気が彼女を惹かせたのである。“面白そうな子”と。
そして、試験の中でキルアが不憫に思いイルミに攻撃を仕掛けて今このようになっていた。
「…………次の話にいくか。イルミの件だ」
「最初に会った時から苦手だったよ、じろじろと品定めしてくるわ。洗脳してるのをいいことにキルアを操るわ。それでも……狂っていたとしてもキルアを守りたい、危険に合わせたくない思いだけは信じたいよ」
「……そうか」
それからもシルバとの話し合いをするルメーネ。
その話は長く続いた。
「最後にしよう」
「どうぞ」
「キルアをお前に任せる」
ルメーネは驚いた。
確かに自分が関われるならばの提案はしていたがまさか実際に任されるとは。
「本気でいいの?」
「少なくともキルアに害を与えない人間と判断した。お前ならば何かあった際はキルアを守るともな」
「それは嬉しいけどね、私も常に一緒に動く事はできないよ」
「ヘルメスとして活動する以上離れることがあるのは仕方がない。キルアを任せれるほど信頼できる人間はいるか?」
キルアを預けられる程の信用できる人間は彼女にはいない。だがキルアの心の安寧を願うならばと彼女の口から出たのは。
「…………ゴンかな」
ゴンであった。
ハンター試験の際に仲良くしていた事、年齢が近い事。
何よりも二人とも馬が合うように見えていたから彼女はゴンをキルアの相棒として指名した。
「ほう、そいつはイルミからも聞いた名前だな。キルアの友達で合ってるか」
「間違いない、あの子はキルアの友達。ハンター試験の時から二人は仲良しだったよ」
「そのゴンは報告にあった使用人の家に滞在し始めた三人組の中にいるか」
「いるよ。今はゼブロさんに鍛えてもらってる最中かな、試しの門を開けれるようになったら来いと言ってるからもう少しかかるかな」
「キルアを連れ出すならその時になるか」
「うん、私もイルミの仕事をやらないといけない。時間をかけなければ数日、苦戦しても数週間はいるね」
「今日は客人として滞在してくれ、食事の方も用意させてもらう。そしてイルミの仕事は明日の朝にでも話をしよう」
「かはは、それはありがたい。仕事に行く前に食事などをさせてもらえるなんて」
それから私はゾルディック家で一夜を過ごす事になるのだが、夜食をいただく際に一波乱が起きるのであった。
お疲れ様でした。今回は以上になります。
よろしければ評価やコメントをお願いします。
作者のモチベーション向上に繋がります。
ルメーネは普通に受け答えしていましたが、最後までずーっと緊張していました。
見せないようにしてましたが多分バレてます。
次回はちょっとした一波乱とイルミの仕事編になります。
また月曜日に投稿できるよう頑張ります!