仕事人『ヘルメス』   作:八坂ノ宮

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イルミ×ノ×オシゴト

 

「こちらでございます」

 

 ゾルディック家執事長ゴトーの案内でルメーネが連れられてきたのは大きな食堂。

 普段はゾルディック家の人間が利用する場所。客人だからといっていいのだろうかと困惑するルメーネ。

 そんな彼女をよそにゴトーは鈴を鳴らし料理を運ばせる。じゃがいものポタージュとサンドイッチと優しめの夜食だ。

  

「ほー……サンドイッチの中身はフルーツドレッシングにトマトやレタスとスモークチキン、入っている卵も燻製しているね。なかなか美味しそう」

 

「こちら、白ワインになります」

 

「あぁいいよ、まだ栓を開けなくて。私が飲みたい時に開けるからさ」

 

「ですが」

 

「ムラタ、失礼ですよ」

 

「失礼しました」

 

 別の執事が持ってきたワインはもう少し後に、と断るルメーネは「いただきます」と手を合わせ、サンドイッチを一口食べる。

 

「ねぇゴトーさん」

 

「いかがなさいましたか?」

 

「“毒”を盛るならもう少し隠してよ。バレバレ過ぎるよ、燻製の匂いで誤魔化せるとでも思ったのかな」

 

「何?」

 

「このチキンにはイソギンチャクから取れる強力な神経毒が入っているし、サンドイッチの具にはアルコールと食べ合わせてはいけないドリアンの果実が入っているし……どうしても私を殺したいんだね」

 

 ニヤニヤと笑いながらサンドイッチを食していくルメーネ。どうやら毒は一切効いていないようだ。

 ため息を吐きながらポタージュを一口飲むと顔を顰める。

 

「最悪、ポタージュの旨みを全てかき消しているよ。これトリカブトどんだけ入れてるのさ……実に不愉快」

 

「申し訳ありません、ヘルメス様。この度はなんとお詫びしたらよいか……」

 

「ゴトーさんは関わっていないのは今の反応で分かったよ。けど私に盛るとはいい度胸してるね、かはは」

 

 笑っている様なトーンであるがルメーネは笑ってなどいない。その顔にあるのは食事を邪魔された事に対する怒りだけだ。

 その怒りを鎮める為にワインを飲もうと、コルクを抜こうとしていた彼女の手が止まる。

 

「ねぇゴトーさん、これも舐めてるのかな? そこにいるムラタ君が持ってきた白ワインのコルクに注射痕があるよ」

 

「ムラタ……!」

 

「…………ッ」

 

「開けて、飲んでみると……あーあ、これカエルのやつでしょアルカロイド系のやつ」

 

 礼儀知らずには無礼をと言わんばかりに毒入りワインを一気飲みするも彼女はケロッとしていた。

 

「さてと誰だ? 食事の邪魔をする奴は」

 

「ひっ」

 

「話しなさいな」

 

 ルメーネはムラタを一瞬で拘束し、両手で彼の頭を掴み【練】(千変万化)を行う。するとムラタは必死に抵抗していたが顔がどんどんトロけていき遂には発狂し出した。

 

「これは一体何をされているのですか」

 

「ん、脳内麻薬(エンドルフィン)をイジった。拷問用でさ……これやると快楽に頭を支配されてベラベラ話してくれるってわけ。話さなくても中毒になっていずれは話す寸法」

 

「ヒ、ヒヒ……イルミ、しゃまにょ……めーれー……れす」

 

「やっぱりイルミか、これで奴に私は毒で死なない事がバレたなぁ」

 

 かはは、と笑いながらルメーネはムラタを元通りに戻して放り捨てる。

 そしてコートの内側に隠していた違法拳銃を取り出し眉間に当てた。

 

「私用に作った特注品、重さは4キロほどで弾も専用のマグナム弾……当たれば凄い事になるよ。因みにコイツの使い方は──」

 

 悪意を混ぜたオーラで脅すルメーネ。

 それを間近で受けるムラタの顔は真っ青を通り越して血の気がない真っ白。

 

「こうやって近距離で撃ち込むようなんだよね。しかも私のオーラで部品が壊れないように、弾丸がより破壊力を出せるようにコーティングをして、な」

 

「カッ……ハァ……」

 

 ルメーネの脅しのオーラはゾルディック家中に響き渡る。彼女の脅しは、たかが執事ではとても耐え切れるものではなかった。

 

「なんだ気を失ったか、ゴトーさんにコイツの始末を任せようかな。どうしようといいよ」

 

「では旦那様に報告してから対応させていただきます……が宜しかったのですか?」

 

「何が?」

 

「この場で殺してしまうと思いましたが」

 

「そんな事したら掃除が面倒くさいじゃない。ゾルディック家を汚して何かされるのは勘弁だよ」

 

 そう言いながらルメーネは食堂から立ち去りゾルディック家の中を移動する、が自分の泊まる部屋を知らない彼女は別の執事を捕まえて部屋まで案内してもらうのであった。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 次の日、ルメーネはゾルディック家の人間と会食をしていた。

 メニューは洋食を中心にしたものとなっている。今日は毒なしであった。

 

「昨日は済まなかったな、執事をはじめとして料理人など関わったのはこちらで片付けた」

 

 シルバの詫びを素直に受け入れていると、横からイルミが申し訳なさも無く両手を合わせて詫び始める。

 

「ごめんねー、俺がちょっとお願いしたら本当にやるとは思ってなくてさ」

 

「嘘つけ」

 

「後、仕事もよろしくー」

 

「やれやれじゃな……」

 

そんな他愛もない会話をしながら食事を終えると何人かは立ち去り残ったのはルメーネ、シルバそしてゼノ。

 

「(ゾルディック家の中でも有名な二人がいるとよりプレッシャーが凄いや)」

 

「さて、イルミの仕事の件だが。ターゲットはサヘルタ合衆国ライザノ州のギャング、“ルインズ”の殲滅だ」

 

「ライザノで1番危険と言われるギャングを始末するのね。どのくらい始末すればいいのかな、組織ごと?」

 

「ライザノには他にもギャングは存在する。じゃから潰しても問題ないじゃろう」

 

「じゃあ出来る限り潰すとしますわ」

 

 そう言いながらルメーネは二人に向かって一礼して食堂から立ち去る。

 部屋に戻ったルメーネは準備を整え、仕事へ向かう。

 

 試しの門を出ようと門を押した時、その向こうには重石を身につけた彼らがいた。

 

「やぁ三人とも、元気かい?」

 

「ルメーネじゃねぇか、無事だったんだな!」

 

「かはは、なんとかね。三人は修行中が……頑張りなさいな」

 

「ルメーネは?」

 

「私はイルミの仕事を肩代わりしないといけないから少し出かけるのさ。サヘルタまでね」

 

「サヘルタとはまた遠くだな」

 

「まあすぐに仕事を終わらせて帰るからさ、あんたらも頑張りなさいな」

 

 会話を済ませ、彼らの方に手を振ってルメーネは仕事へと向かう。

 最初に向かったのは飛行場、そこでハンター証を使いファーストクラスの席をとり優雅な時を過ごす。彼女はハンターになって良かったと改めて思ったそうな。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

「あれから一週間だが首尾はどうだ」

 

「かはははは、親玉から子分までざっと二千人近くのギャングのお掃除は終わったよ」

 

「随分とはやいのぅ」

 

「いやいやコレでも時間かかった方よ、護衛にそれなりの実力者がいたから一日は無駄に使っちゃった」

 

 電話したルメーネの足元に転がるのはつい数分前まで元気な声を上げていた護衛四人の惨殺死体。

 一人は全身が爛れ、一人は全身が紫色に変色し、一人は頭の先から股まで一刀両断され、最後の一人はバラバラにされていた。

 

「其奴らがカウンター型かどうか確認していただけじゃろ」

 

「実際のところ数分で終わっているな」

 

「ありゃ分かるか、その通り。全員戦闘特化の単純な雑魚だったよ……もう少し癖があって欲しかったよ」

 

 その後も彼女の報告は続く、ギャングの構成員の殆どは麻薬製造工場に閉じ込めて工場ごと粉塵爆発で始末。

 上層部は一夜一夜に自宅に忍び込み暗殺、長である男も先程殺されている。結果サヘルタ合衆国ライザノ州最大のギャング“ルインズ”はたった一人の仕事人によって壊滅するのであった。

 

「じゃあ戻ってもいいかな」

 

「もう一件頼もう」

 

「……分かったよ」

 

「ターゲットはその州にいる資産家だ、名前はロバート=インポスター。不動産屋で多くの恨みを買っている人間だ」

 

「明日報告するよ」

 

「奴は常に命を狙われている身で自社ビルの地下に引き篭もっている。不審者がビルに入った瞬間に不審者の姿を映したカメラ映像が奴の息がかかった警察に通報される仕組みだ」

 

「かはは、任せなさいな」

 

 

 そして夜中、ルメーネはターゲットを始末するためにターゲットのビルに堂々と入り込んだ。

 まだビルには残業を終えた社員達がいたがお構いなしにビルの奥へと進む。当然、侵入者用サイレンが鳴り響いた。

 

「五月蝿いなぁ……」

 

 そう思いながらエレベーターのボタンを押しても反応がない。どうやらサイレンが鳴っている間は機能しないようだ。

 

 仕方ないとルメーネはエレベーターの扉を引き剥がし直接地下へと殴り込む。

 彼女の能力、【天を駆ける草履(カエルム・タラリア)】を使い少しずつ最下層まで降りていった。

 

「ほーん、最下層は流石に厚みが違うね」

 

 最下層の扉を軽く触るだけで厚さ数十センチがある事が分かったルメーネは【裂拳】で扉を引き裂く。

 ようやくターゲットの住処に入り込んだ彼女を襲ったのは二人組の念能力者。

 

「死んでもらいます‼︎」

 

「(念弾……)」

 

 マシンガンの様に繰り出される念弾は一発一発が辺りの壁を砕き壊していく。数百発撃ったところで部屋には土煙で満たされた。

 

「温い仕事ですわ、これだけで数千万だ」

 

「俺が楽しめなかったじゃないか兄弟」

 

「すまないな兄弟、ワシ一人で十分だった」

 

「ほー……誰が十分なんだろなぁ」

 

「っ⁉︎」

 

 土煙を斬り裂く刃が念弾の男を裂いた。

 そこにいた彼女は土煙で服が汚れている程度でダメージを受けた様子はまるでない。

 

「ば、馬鹿な……兄弟が、ギュンがこんなアッサリと‼︎?」

 

「タカ……助けてくれ」

 

「ふ、ふざけるな……こんなのに敵うわけがない! こんな化け物が来るとは聞いてないぞ」

 

「タカ……」

 

「黙れぇ‼︎ 俺は逃げる、逃げてやり直す!」

 

 かはは、と彼女の笑い声が聞こえた時にはもう遅い。タカと呼ばれた男も首筋をやられて地に伏せた。

 コツコツと足音を立てて進む彼女、その先には大きな扉が一つ。

 

 それを彼女は軽く息を整え、扉に正拳突きを叩き込む。その破壊力は扉を剥がし奥の壁に叩きつける程であった。

 

「邪魔するよ〜…………あら?」

 

 扉がめり込んだ壁には赤い何かが飛び散っているのを見た彼女はやれやれと困った顔をして

 

 “クローゼット”の方に銃を撃ち、そのまま立ち去った。

 

「影武者用意するのはいいけど、【絶】も使えない人間がプロ相手を撒く事はできないよ」

 

 そして数時間後、発見された死体は四つ。

 護衛二名、影武者一名、そしてターゲットとなったロバート=インポスターを殺した犯人は警察の誰にも分からなかった。




お疲れ様でした。今回は以上になります。
よろしければ評価やコメントをお願いします。
作者のモチベーション向上に繋がります。

ルメーネには毒は効きません。
彼女はゾルディック家並みかそれ以上の毒の耐性を持っています、例え効いたとしても特異体質により毒が彼女を殺す前に分解してしまいます。

ヘルメスの仕事は調査や護衛でない限り、すぐに終わらせる。
それ故に闇業界ですぐに人気になった。

月曜日には現在のルメーネのプロフィールを出します。
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