ルメーネ=マーキュリーは仕事のターゲット“宝石狂い”のジュエリー=ジョンがいる小島を目指して水中にいた。
「(……そろそろ着くな。あいつらの情報が本当であればターゲットはまだ家にいるはず)」
『ふーん、水中から近づかないといけないんだね。正面からでもいいんじゃない?』
『それはまずい。ジュエリー=ジョンは宝石を愛しているが盗られるくらいなら宝石を破壊するイカれた奴だ』
『気づかれないように侵入するしかないって訳ね……でも奴が【円】を使えたら意味がなくなるんじゃないの? あいつも念使えるらしいじゃん』
『問題ない、ターゲットは【円】を使えない。それどころか念能力すら持っていない』
『…………へぇ』
『今まで返り討ちにしたのは奴の私兵、ジョンはその様を見ているだけだ。だがお前なら私兵如き捻り潰せるだろう?』
『まぁ金を払うなら仕事はこなすよ』
『そう言うと思ったよ。ジョンは中々外出しないから家にいるはずだ……道具はこちらの方で用意してあるから安心したまえ』
潜る前に最終確認した仕事内容を思い返しながらルメーネは海の中を進む。
そこから身につけていた酸素ボンベがギリギリになってきたところで海蝕洞に上陸。
ちなみにルメーネは島が見えてきた時点で【絶】を使い、察知されないようにしていた。
故にそう簡単には彼女は見つからない。
屋敷の位置は教えてもらっていないためルメーネは静かに潜みながらジュエリー=ジョンのイカれた屋敷を探す。
彼女は数分で屋敷を見つけたが様子がおかしい。何故か屋敷に気配がない、ターゲットや私兵の存在が感じないのだ。
「(……やっぱり“裏切ったな”)」
彼女は薄々気づいていた、依頼主がターゲットの事を妙に詳しく情報を寄越した事。金をケチろうとした割に道具を用意している事、しかもしっかりとした高級品である点から依頼人の狙いは自分自身であると。
「(だったら、もうどうでもいいよな)」
【絶】を解き、辺りを観察するルメーネは察する。屋敷の扉のところに四人いると。
面倒なので隠れるのをやめて姿を現すと向こうからもリアクションがあった。
「おや〜ヘルメスが来ると聞いていたが随分と舐めてくれてますよねぇ」
「全くだ。【絶】を解くなんて」
「僕らの【
【
まずは二人が小さく強固な要塞を創り防御要員、一人は攻撃用の弾丸や砲弾を創り補充要員、そして最後の一人が全方位型の砲撃手を努めていたのだ。
「確か君ら傭兵として活動していたよね。ルーキー時代からまずまずのチームだって評判だったよ」
「俺らを知ってるんだ、嬉しいねぇ。でもアンタは始末しないといけないから覚悟しな!」
「いくぜ、キャッス──」
掛け声と共に現れる要塞は出現しなかった。彼らは能力を発動する前にヘルメスに四人とも始末されてしまったのだから。
ルメーネが【絶】を解除した事で油断した四人は能力をすぐに発動せず姿を現したのが最大の失敗だったのだ。
「本当に馬鹿だよ、よくそれで傭兵として活躍できていたよね」
「ああ、本当に使えん奴らだ」
声の先を見るとそこにいるのは180cmほどの背丈、ルメーネの数倍は大きく膨らんだ肉体を持つ男。彼女のターゲットであるジュエリー=ジョンがそこにいた。
そして念能力を使えないは依頼人の嘘、それを彼女は確信した。オーラの量が異常なのは彼女が一目で理解できたから。
「アンタがジュエリー=ジョンであってるね? 宝石を返してもらうよ」
「ひゅひゅひゅ……オレを舐めるなよ小娘。宝石は俺の宝、だから全て腹の中に隠してやったわ。そしてお前は今からこのオレに残虐処刑されるの──」
「五月蝿いな」
不意打ちの【裂拳】でジョンの首筋を攻撃するが手応えがない。寧ろ、自分の中指が痛むだけで相手には傷一つなかった。
まるでターゲットの身体が硬い鉱物に変化したように感じ、ルメーネは試す為に武器を取り出す。
投げナイフは相手の体に弾かれ、拳銃では正面から受け止められてヒビすらなく、【千変万化】で切れ味を上げたハルパーの一振りでさえも結果は同じ。
想定以上の硬度に苦戦を強いられる。
ジュエリー=ジョンの能力は【
大切にしている宝石を体内に取り込む事でオーラの質を向上させて身体に宝石以上の硬度を持たせ、さらに取り込んだ宝石に応じた能力を発動できる特質系能力である。
デメリットは三〇分以内に吐き出さないと取り込んだ宝石は消滅してしまう事。
今回の場合、ジョンは“太陽の瞳”以外にも持っていた大切な宝石全てを体内に取り込んでいた為に彼女の持つ攻撃力さえも弾くほどであった。
「(想定外の硬さ……‼︎)」
「ぐひゅひゅ……オレはこれで今までも返り討ちにしてきたのだ! お前の死体を宝石に加工してくれる」
「気持ち悪いね、アンタ」
「(馬鹿め、この最高硬度の身体を砕く事なんて不可能‼︎ 近づいてきた所を抱きしめてやる)」
正面から向かってくるルメーネを締め殺そうと腕を開くジョン。そんな事を気にせず彼女はジョンの胸元に両掌を合わせた。
刹那、ジョン身体中にヒビが入りその隙間から大量の血が溢れる。血でコーティングされた宝石の身体は少しだけ綺麗に輝いていた。
「馬鹿な……」
「チッ、脂肪が厚くて心臓まで届かなかった。だけどね……もうそれだけボロボロならこの拳でも攻撃出来るのさ‼︎」
「ギッ!?」
そう言って彼女は腹の中に両手を突っ込み、臓器を探る。狙いは一つ、奴が食べたという宝石を引き抜く為に。
宝石狂いが宝石を食べるなんて能力に関わっているとしか思えない、と彼女の経験ゆえにそう判断したのだ。
「ガ、ババ……アピ」
関係ない臓器を千切り潰していると何やら硬い物の感触、それを胃だと考えてそれを思いっきり引き抜いて距離を置く。
すると、ジョンの様子がおかしくなる。
「あ……ぁぁ…………ぁぁぁああああ゛あ゛あ゛‼︎⁉︎」
突如、敵の身体中あらゆる箇所からどす黒い炎が噴き出し始めたのだ。咄嗟の【凝】で見るとその炎は念で生み出されている炎でこのままだと全てを焼き尽くしてしまうのではないかと考えたルメーネは脱出する為に走る。
「なんだ、あれ⁉︎ 死後強まる念に近いやつか……それとも暴走? ッ、このままだと炎に呑み込まれる‼︎」
「(でもね……それでもやられないのが私なんだよ‼︎)」
彼女を呑み込もうとする炎を振り切ると、そのままどんどん距離を離して胃袋を持ったまま海へと飛び込んだ。
「(この熱量……まさか海水の温度まであがるのか)」
しかしまだ苦難は終わらない。
暴走した炎の熱は孤島付近の海水の温度を引き上げてしまい上の方は高熱風呂並みになっていた。
それはルメーネの潜っている場所も同じ、深海に逃げたいところではあるが深海の圧力に耐えれる人間はそうそういない為に彼女は途中で止まる。
「(【千変万化】……【絶対零度】‼︎)」
これ以上逃げれない彼女が取ったのはオーラを絶対零度のオーラに変化させて、これ以上海水の温度を上げないようにした。
全てを止めると言われる絶対零度は即座に海中を伝わり大きな氷塊を作り出す。
この変化をものにするのには彼女も多くの凍傷や細胞の壊死など研究等で苦労していたが助かったと彼女は安堵していた。
とは言え絶対零度を再現する為にオーラはそれなりに消費した為に彼女も少しずつ焦り出す。
「(まだ光が止まないか……もう少し待たないといけないな)」
最後のジュエリー=ジョンのアレは“太陽の瞳”を取り込んだ際に発現した能力。その名は【
黒炎を身に纏い攻防一体の能力、その炎は伝染する。
そして火力はジュエリー=ジョンの持つ念が見せた最後の馬鹿力によりルメーネでも早々防げない威力となっていた。
それから十五分過ぎた頃、ようやく黒炎の気配が消えた。察した彼女は陸の方に上がるとそこにあるのは真っ黒に焼き焦げた世界のみ。
「何これ……それよりもあいつの死体はどこ?」
彼女は自分の記憶を頼りに中心点であるジョンが燃えた場所に向かってみるとそこにあったのは炭の塊の中でも太陽光を浴びて光り輝く宝石。“太陽の瞳”であった。
「ターゲットの死亡確認。宝石は全て頂いた…………後は、裏切り者を始末するだけだね。かはははは……」
ヘルメスは全てが燃え散った島を後に空へと消えていった。
今日の分は以上になります!
ゴールデンウィーク記念で書いていますが在庫がありません笑
明日までには書けるはず……
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【
使用者 傭兵チーム 相互協力型ジョイントタイプ
塔の具現化担当2名が塔を創り、弾丸砲弾補充の具現化担当1名、攻撃担当の放出系が1名で行われる。
→ルメーネでさえ相互協力型を相手に取ると苦戦は必至なので能力を発動される前に傭兵チームを全滅させていた。もし戦っていたらそれなりに苦戦を強いられていただろう。
【
使用者 ジュエリー=ジョン 特質系
大切にしている宝石を食べる事で身体を硬質化させれる。それは食べれば食べるほど硬度が上がり最硬度はルメーネの切れ味すらも防ぐ。
また、食べた宝石に応じた能力を発現出来る。ルビーなら炎、サファイアならば水、エメラルドなら自然等。
デメリットは三〇分以上食べていると消化してしまう。
→ちなみに彼が食べた大切な宝石全ては彼の胃袋に詰め込まれており、その宝石はルメーネが売り捌く予定。
【
使用者 ジュエリー=ジョン
黒炎を身に纏い、炎操る能力。本来ならば自分の防御に使うべきであるが全身傷だらけで彼の肉体を炭になるまで焼いてしまった。