「それじゃあ念の特訓を始めるよ。まずは念を扱えるように精孔を開く必要がある……その方法は私のオーラを二人に流し込む事」
「これが外法と言われる所以は?」
「リスクがでかい。私は殺す気で念を送りはしないけど二人がオーラのコントロールが出来なければ生命エネルギーを全て垂れ流してしまい死んでしまうとか、ね」
するとウイングがルメーネの伝えていない危険な事を話し始める。それは天空闘技場二〇〇階の危険性であった。
「ルメーネさんは二〇〇階前に念を教えるという事は知っているのですよね。二〇〇階クラスの人間は全員“念の使い手”であると」
「え!?」
「マジか」
「正解。だから二人には百五十階を超えたら呼ぶように伝えていた。ちなみにこの外法はその念使いの攻撃を受けるだけで精孔が開いちゃうんだよね」
「攻撃を受けるだけ? でもルメーネみたいな鉄球を砕く力で殴られたら……」
「最悪の場合は死にますね。私もルメーネさんがいなければお二人に念を教えていたと思います……念による攻撃から身を守る為に」
「まぁ安心しなさいな、二人には私とウイングさんがついているからね。ほら上着を脱いでこっちに背中を向けなさい」
ゴンとキルアは彼女に精孔を開けてもらう為にルメーネの方に背を向けた。
後ろにはいつもの彼女がいるのに、雰囲気が違う。不気味のような、おおらかのような不思議な何かが背中をさすっているように感じる。
「(何だこれ……手で触られているみたいな感覚はあるのに違うものだ。嫌な感じはしないけどまるで兄貴を前にした時のような……)」
「(これがオーラ。すごく熱い……まるで押されているような感じがする)」
「いくよ……ッ!!!」
合図と共にルメーネは二人の背中に念を流し込む。その衝撃と共にゴンとキルアの精孔からオーラが溢れ出すのを【凝】で確認した彼女は微笑んだ。
「どうだい? 見えているよね」
「うん、まるで湯気みたいに溢れているよ! ヤカンの注ぎ口から出る蒸気のように凄い勢いだ!!」
「てか、これってそのままでいいのか!?」
「ダメに決まってるでしょ。オーラを出し尽くしたら最悪死ぬよ、良くて疲労で行動不能状態」
「だよな!?」
「ウイングさん、【纏】の方を教えてあげて欲しいんだけどいいかな。私、【纏】に関しては師範に教えてもらえてないんだよ。感覚で掴め!って言われてさ」
「な、なるほど……ではゴン君、キルア君。目を瞑ってオーラを留めやすいと思う体勢になってください」
ウイングの指示で二人が取ったのは下手に力を入れない、自然体による脱力の構え。
「そのままオーラが全身を巡る血液の循環のようにイメージを浮かべて、その流れをゆっくりと止まり体の周りに揺らめいているようなイメージを思い浮かべて下さい」
「素晴らしい指示ね……ウイングさん、見てください。もう二人共【纏】を出来ています」
ルメーネの声は僅かに震えている。自分は最初出来なかった【纏】を簡単にやってのけた二人の才能に驚かされていたから。
「まさか私の指示一つを聞いただけで出来るようになるとは……素晴らしい」
「(ゴンさんもキルアさんも凄いっす……!!)」
「ゴン、キルア……どんな感じだい?」
「なんかお風呂の中にいるみたい……お湯の中でただ浮いているような」
「重さがない服を着ている感じ……」
「そのイメージを常に持ち続けて下さい。慣れると寝ている時も【纏】を使えるようになります」
「試合のない時間は【纏】を意識して維持してみてね。目標は何もなくても無意識に【纏】を使えるようになる事!」
「「押忍!!」」
「で、ちょっと見て欲しいんだけどさ」
この先の目標を伝えたところで、ルメーネは座禅を組み二人にこちらを見るように言う。
何を話すつもりなのかと彼女の方を向くとルメーネは【纏】をしていた。
そのオーラはゴン達よりも穏やかで波一つ立っておらず滑らかで且つ力強いものである。
「これが私のオーラ、分かるかい?」
「凄い……」
「これがオレと同じオーラ?」
「素晴らしいですね……何年も磨き上げたものであると分かりますよ」
「こんなオーラは初めて見たっす!」
彼女のオーラを見て驚く四人、それを確認したルメーネは見せたいものを始めた。
全身のオーラが膨らむように力強く溢れ出し彼女の身体が大量のオーラで包まれた。
「これは【練】……精孔を更に広げてオーラの量を増やす技。この状態だと更に力と防御が増すから知っておいた方がお得だよ」
「これがルメーネの本気……?」
「違うよ、ゴン。ぜーんぜん本気じゃない……二割ってところかな」
「(二割……これで!?)」
「(分かってはいたけど、化け物レベルかよ)」
「(恐ろしいっす……!!)」
「…………」
これで終わりかと思っていた四人。
しかしルメーネは見せるものをまだ終えない、先程まで大量に放出していたオーラが突然と消滅したのだ。
「「「「っ!!」」」」
それだけでない、四人は気づく。
この部屋に何者かがいると。
眼では見えない、謎の存在が。
「まず説明するよ、二人とも。私のオーラが見えなくなったのは【絶】。精孔を逆に閉じてオーラを見えないようにする技で気配を絶つ事が出来る……潜入する時や隠れる時に使うね」
「…………【絶】は疲労回復の効果もあります。怪我をした時などで使用すると回復までの期間を縮めるなどもできるのです」
「(【絶】ってもしかして……ヒソカを狙う時みたいに気配を殺して待っていたアレ?)」
「そうだ、百九〇階の試合では【絶】を使って戦ってね。まだ二人は念を覚えたばかりで戦闘中にコントロールがぶれる危険性あるから……念の為」
「「押忍!!」」
「「((それにしても、あの時感じた気配は一体何だったんだ……?))」」
それから数時間、ゴンとキルアは【纏】と【絶】の修行を行い午後七時半から始まる試合へと向かう。
ルメーネとウイング、ズシは二人の試合を見る為に闘技場の観客席に。ちなみにルメーネはキルアの方を見に行っていた。
「相手の一九〇階選手は武術家か、元々キルアはスピードがあるしパワーも問題ない……念が使えないなら楽勝になるわね」
『さぁ本日注目の試合が始まります!! なんとここまで無敗で勝ち上がってきたキルア選手は今日勝利すると晴れて二〇〇階に挑戦となります!!』
姿を現したのはキルア、問題なく【絶】の状態を維持して入場できている。
『対するは前回惜しくも敗戦してしまいましたが順調なペースでここまで来ました。今回こそ二〇〇階に到達したい武術家“ボドロ”!!!』
「んぁ? ボドロって……確かハンター試験にいたような」
「久しぶりだな、少年。試験では子供と戦えんと拒んでいたがここまで勝ち上がった実力は武術家としても興味が深い……故に覚悟してもらう」
「覚悟?」
「加減はできんぞ!」
「始め!!!」
キルアとボドロの戦いは流石に一瞬では片付かない。キルアは念を封じている分、ボドロを追い詰める決定打に欠けていた。
キルアの【絶】はまだ付け焼き刃、仕事で気配を殺すのは慣れてる彼でも武術を長い間鍛えていたボドロには見破られていた。
まさかボドロは念使いになったのか? と思い、ルメーネは【凝】をしてボドロの方を見ると念はまだ目覚めきっていない様子でキルアに負けはない事を理解。
「伊達に武術を嗜んでいないか……殺さず念を使わずではやりにくいかもね。でもキルアなら問題ないよ、頑張れ」
「やるな……」
「(やりにくいな、【絶】で戦うは本当に向いていない……なんとかあの爺さんに近づかねぇと)」
手刀の一撃では倒せなかったキルアは高速で動き回る。しかしボドロはキルアの動きを線で見る事で見失う事なく適切な距離を掴んでいた。
「恐ろしいスピードだ、しかし眼で追えればどうとでもなる」
「ちっ」
『当たらない当たらない!! キルア選手の攻撃を的確に防いでいる!!』
「(確かにその通りだよ、ボドロ。でもね……残念な事だけどアンタはキルアに勝てない。だって当たらないでしょ? キルアがそれに気づいたらそれでおしまい)」
それから数分間は高速による攻撃と防御が続くが先にボドロのスタミナが切れ始めた。
「ふぅ……ふぅ……」
「!!」
「(そうか、【絶】には疲労回復にも効果あるってウイングが言ってたっけ。体力の消耗も抑えられている訳か……今ならいけるな)」
「なっ!」
疲労したボドロが見たのは試合開始の時と変わらないスピードでこちらの喉を狙うキルアの姿。咄嗟の事で両腕を交差する事で防げたが、その直後に腹部に鋭い痛みが走った。
「(こ、ここまで……強いか)」
そして気がついたら場外の壁に叩きつけられていたのである。ボドロはそれを信じられず、そのまま気を失うのであった。
『決まったー!! キルア選手がボドロ選手の固い防御をついに破って一撃撃破!!! ストレート勝ちにより二〇〇階に進出だ!』
ボドロとの戦いを制したキルアはルメーネと一緒に反省会をする。
「お疲れさん、ほいスポドリ」
「さんきゅ」
「ちょいとだけ苦戦したね、【絶】での戦闘はやりにくかった?」
「んー、前戦った時よりも力が出なかったかな。それでもあのボドロって爺さんが防げると思ってなかった」
「なんやかんや武に人生を捧げた人間だからだよ、こういった舞台でやる戦いは向こうのほうが有利。何でもありならキルアも圧勝できるでしょ」
「まぁね」
「その中で今回キルアの取った選択は正解だよ、相手がやりたい試合の流れにしてたら時間は更にかかっていただろうね」
「たださ……オレ最後の蹴りちょっとだけ【絶】が解けちゃったんだよね」
「そうね、でもボドロなら大丈夫だと思うよ。食らった瞬間に後ろに飛んでいたから」
ボドロは一撃でやられたが腹部に痛みを感じた瞬間、後ろに飛び衝撃を逃がそうとしていた。壁にぶつかっていたから、あまり効果はないだろう。
そしてルメーネはこの一撃でボドロの精孔が開いた事に気づいたが黙っておく事にした。
「それじゃあゴン達と合流して二〇〇階の登録に行こうか、キルア」
「二〇〇階は全員念使いらしいけどルメーネなら勝てるのか?」
「何言ってんのよ。楽勝に決まってるじゃない、かはは」
「(やっぱ化け物だ、こいつ)」
まさかのボドロ再登場。
生きていたら武術家としてハンターとしての修行の場所に登場するのに丁度いいかなと思い出てもらいました。
キルアの動きを線で見る事でギリギリ攻撃を防いで戦闘をやっていました。決して弱いわけではありません、経験値で実力の差があるキルアと渡り合う人は弱くありません。
キルアが強いだけです。
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次回はあいつとの再会になります。