仕事人『ヘルメス』   作:八坂ノ宮

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水曜日更新予定でしたが月曜日更新にします


ハンター試験会場へ向けて
フナタビ×ノ×ゼンジツ


 ルメーネはとある港町に来ていた、目的は勿論次の日にやってくるドーレ港行きの船に乗ること。

 辺りを見渡すとハンター志望者なのであろう人々が町に滞在しているのを見かけた。

 

(実力がない連中ばっかり。私からすれば大抵は雑魚に見えちゃうけど……でも面白い人はいる)

 

 その時お腹が「ぐ〜」と鳴る。

 都合がいいと思ったルメーネはその面白い人がいる店へと入っていく。

 

 

 

「こちら相席になります」

 

「すみませんね、失礼します」

 

「いえ、こちらも構いません」

 

 相席相手は彼女が目をつけた金髪の少年だった。彼はルメーネの事を気にせず食事をしている、食べているのはイカ墨を使った海鮮スパゲッティのようで、彼女も同じ物にする事を決めた。

 

「イカ墨のスパゲッティを五人前、あと海産物のフライは三人前お願いします……それとさっきのパスタに合うワインは?」

 

「そ、それでしたらスフラン産ノワールレーズンは如何でしょうか」

 

「自分で注ぐから一本丸ごと頼みます。そうだパスタとフライはそれぞれ一つの皿にまとめてくれないか?」

 

「畏まりました……」

 

 一人でここまで頼む人間は普通いない、少なくとも店員は彼女の注文にドン引きさせられている。

 それは目の前の少年も一緒だった。

 

「……失礼ですがよく食べられるのですね」

 

「これくらい食べないと生きていると感じないので……ところで貴方はハンター試験を受けられるのですか?」

 

「っ、貴方も同じ目的ですか」

 

「ルメーネと申します。試験を受けるライバルを見つけれてラッキーですね」

 

「私はクラピカ、ルメーネさんは──」

 

「ルメーネでいいわ、私もクラピカと呼ばせて貰っても?」

 

「分かった。ルメーネも明日の船が目的か?」

 

「その通りよ、ドーレ港行きの船に乗るのが目当て。ちなみにこの町の中にいる人はどうだった?」

 

「どうかとは?」

 

「強いかどうか、ライバルが強いと苦戦するかもしれないから相手はよく見ておいた方がいいよ。ハンター試験で死者が出るのは毎年恒例、それに志望者同士の潰し合いが起きるかもしれないからね」

 

「なるほど、それなら私はお前を敵にしたくない」

 

「かはは、それはそうよ。だって私は表の人間ではないもの……おっ料理がキタキタ‼︎」

 

 運ばれてきたのは山盛りのスパゲッティとカラッと揚がったばかりで油が跳ねる音がするフライの盛り合わせ。そしてパスタに合うワインとグラスが届く。

 

 「いただきます」と小さく呟いた後に、彼女はパスタの山を音を立てずに啜る。ペペロンチーノベースの辛味とイカ墨の濃厚な味わい、そして黒く染まったイカをじっくりと噛み締める。

 口の中がイカ墨に支配されたところで頼んだワインを開けてグラスに注ぐ。

 

(濃いけど濁りはない……色も良い赤をしている)

 

 ワインの色を見た彼女はワインをくるりと三回ほど反時計回りに回し、そして空気を含ませたワインの香りを試す。

 

(うん、匂いも問題なし)

 

 大事な確認を終えて、ゆっくりと一口ワインを味わう。渋味が口の中にあるイカ墨の香りと合わさり力強く味を感じる。

 

(う〜ん‼︎ このワインにして正解。結構結構……さてフライも頂いちゃいましょ)

 

 口をリフレッシュし次に揚げたてのフライに手をつける。軽く噛もうとするとその熱はまだ消えておらず、驚いて食べるのを中断してしまう。

 

「あっつ……‼︎」

 

 それでも再び熱々のフライをゆっくりと齧り付く。すると、じゅわっと白身の旨味が口の中に広がっていくのを感じる。

 

(やっぱ熱いっ、でも美味い! 噛めば噛むほど味が広がるわ……次はソースをかけて。これも最高‼︎ 丹精込めて作ったオリジナルソースと見たわ。様々な具材を混ぜてできた程よい酸味と旨味の効いたソースで食べるのがやめられない‼︎)

 

「美味し〜い‼︎!」

 

 店内に響かない程度に声を漏らすルメーネの手は止まらず山盛りのパスタとフライ、そしてワインは彼女の胃袋の中へと消えていった。

 ちなみに従業員は本当に食べ切るとは思っておらず、彼女の食べる姿を見て俄然としていた。それはクラピカも同様。

 

「どういった胃袋をしているんだ、キミは」

 

「んふふ、食べれる時に食べておかないとね。 昔は腹三分目まで食べれることなんてなかった影響かもね? それじゃ店を出ましょう」

 

 会計を済ませて外へ出た二人は近くの座れる場所でカフェで休憩をする。先程ワインを飲んだばかりだと言うのに珈琲を楽しむルメーネにクラピカはまた引き気味だった。

 

「いい豆使ってるわね、この香りもいい」

 

「先程の話についてもう少し聞きたい。表の人間ではないと言うからにはお前は裏側の人間なのか?」

 

「ん〜、その通り! 仕事の為にライセンスが必要になってね、かはは。クラピカはなんで受けるの?」

 

「……私の志望理由は他者の前で話せるものではない」

 

「復讐は辛いよ?」

 

 何気ないルメーネの一言はクラピカを驚かせるに十分だった。

 冷静であろうとした彼は取り乱し始める。

 

「何故分かった⁉︎」

 

「言ったでしょ、私は裏の人。恨まれる事もあるし……復讐を目当てに私に近づいた人もいた。だから分かる、貴方は復讐者(リベンジャー)だってね」

 

「…………」

 

「別に言わなくてもいいよ、辛いでしょ」

 

「いや……周りに客もいない今なら話せる。私はクルタ族の生き残りだ」

 

「クルタ族……⁉︎ なら狙いは()()?」

 

「その通り、奴らを捕まえる為にハンターでなければ得れない情報や入れない場所に行く必要がある」

 

 クラピカの復讐話を聞く中で、ルメーネは別のことを考え始めていた。ルメーネの()()である()()()()のことを。

 

(クルタ族か。クロロの奴、刈り残しているとは……でも今の(クラピカ)じゃ会うこともできないし気にする必要もないか)

 

「アイツらは神出鬼没、私も殺しの依頼を受けたことがあるけど割に合わないから断る……そんな連中よ。それでもやるの?」

 

 割に合わないのは事実だが、本当の理由は違う。それは彼女が流星街出身であるから。

 流星街の住民は家族よりも強い絆で結ばれている。現在旅団にいるメンバーの内、八人は当時から付き合いがあり実の兄妹姉妹のように親しかった。

 

 だからルメーネは旅団を狙わない。

 向こうから殺しに来たら反撃ぐらいはするだろうが。

 

「その為にまずはハンターになる。それからだ」

 

「良いね! 気に入った、もしハンターになれたら私の連絡先をあげるよ」

 

 クラピカを気に入ったのは目の奥に見える自分さえも犠牲にするであろう漆黒の覚悟。

 それは日々を復讐に生きたことのないルメーネからは面白いものだと思ったから。

 

「……裏に生きる人間の連絡先か」

 

「そ! 情報屋紛いの事もしてるし、ブラックな相談でも乗るよ。なんなら悪い知り合いを通して仕事の斡旋もできるよ」

 

「分かった、その時は頼む」

 

 話を終えた二人は珈琲を飲み終わると解散する。クラピカは宿へ、ルメーネは飲み直すと酒場へ。ちなみに酒場へ行くと聞いたクラピカは心底呆れていた。

 

 

 

 酒場。それは情報が集まる場所、特に会場へと向かう前日に気合を入れ直す為に酒を飲む輩は少なくなかった。

 いつもよりも賑わう夜の酒場で彼女は。

 

「旦那、ビール五人分追加〜」

 

「おらよ。大酒飲み!」

 

 たらふく酒を飲んでいた。

 既にビールを八人分飲んでいるのに彼女の飲むのは止まらない。

 

「いいねぇ、ワインの味わいとは違うこの炭酸……そしてこのペッパーソーセージがまた美味い‼︎」

 

「なぁアンタ」

 

「んぁ?」

 

 ルメーネは後ろにいる男の方を向く、そこにいたのは二十代ぐらいであろう青年。黒のスーツにサングラスをかけている。

 

「俺も酒は好きだけどよ、いくらなんでも飲み過ぎじゃねぇのか? 船員でなさそうでこの町にいるって事はアンタ、ハンター志望だろ」

 

「正解だよー、つまりあなたも志望者って訳ね」

 

「まぁな。そんだけ飲んだら明日の船で大変なことになる、ゲロ引っかけられんのも嫌だからよ。ホレ」

 

 そう言って青年が差し出したのは吐き気止めなどの船旅必須の薬。それを受け取ると彼女は青年を分析しはじめる。

 

(ふむ、チンピラのようにも見えるがコイツから感じる雰囲気は気前のいい兄ちゃん。ハンターってより教師とか向いてそうだ)

 

「どうも、優しいのね」

 

「ん、んーまぁな」

 

(うわ、ちょっと女に褒められただけでゲヘゲヘと言いそうな顔しちゃって。さっきの評価台無しね!)

 

「し、心配してくれてありがとう……でも気にする必要ないわ。私アルコールの分解が早いの、翌朝にはスッキリしてるわ」

 

 ルメーネは特異体質であり毒やアルコールなど体に害を与える物質をすぐに分解し無害化させる。それは彼女の種族故なのかは不明。

 

「だとしてもトイレはどうすんだよ。こんだけ飲んでれば篭りっぱなしになるぞ」

 

「ま、今日くらいなら一徹しても大丈夫でしょ。船の上で眠ればいい」

 

「そうかい」

 

「このご縁だ、一緒に飲まないか」

 

「じゃあそのビール飲み終わるまでだ」

 

「かはは、了解だ」

 

 青年が酒を飲むとルメーネは自分のつまみを差し出す。それじゃあと青年はつまみをもらい頬張る。

 一口噛むとパリッと音が鳴る、そしてもう一口噛めばソーセージの肉汁が口中に広がる。そして肉に混ぜてある黒胡椒が刺激となりビールを欲する。

 堪らずグイッとビールを口に入れると肉汁が洗い流され炭酸が口内を刺激する。そして飲み込み、空となった口は先ほどのソーセージを求めてしまう。無限ループだ。

 

「止まらないでしょ〜、ここのソーセージの美味しさがビールと合い過ぎて飲みすぎちゃう」

 

「否定できねぇ」

 

「かはは、私はルメーネ。そちらの名前は?」

 

「レオリオってんだ、よろしくな」

 

「酒も進んでいることだし、どうしてハンターになりたいの? 私は今してる仕事の為に使いたいって理由」

 

「まぁつまみを奢ってもらった訳だし断るのもアレだしな。金だよ、金さえあればなんでも手に入るからな!」

 

「いいねぇ、欲に素直なのは好きだよ。でもどうして金に固執するのさ、私の経験上貴方のようなタイプは金が必要なときになかったタイプだからね」

 

「それは言わねぇ。例え殴られてもな」

 

「ごめんごめん、深入りしすぎた。まだつまみ余ってんだから飲んだ飲んだ!」

 

「お、おう」

 

 レオリオはルメーネに薦められるがままつまみとビールを何杯も飲む。ビールを飲めば飲むほど彼もまた気が抜けていき、そして。

 

「ぐぉおおおお〜…………」

 

「かはは、酔い潰しちゃった。大将、勘定頼むよ。コイツの分も払うからさ」

 

「あいよ」

 

 二人分の会計を済ませて、店を出る。外は星空が見えるほど晴れており夜に散歩するにはちょうど良い景色をしていた。

 レオリオを放置する訳にもいかないため、彼を担ぎ町中を移動する。そんな時だった。

 

「……俺が、医者に……なれてれば。……お前は…………死なずに、ピエトロ」

 

(なるほどねぇ、良い理由じゃない。素直に言うのは恥ずかしいのかしら…………あ、彼の宿屋知らない)

 

「ねぇちょっと、どこに泊まってるの?」

 

「………………ん、ぁ。んん、ビ……ビッグキャッチ…………」

 

「なんだ、私と同じ宿か。送るぞ」

 

 そうしてルメーネは酔い潰れたレオリオを宿屋に連れて行き、部屋のベットに彼を寝かせて退室する。

 彼女も自室に戻り明日に向けて、色々と準備をするのであった。




という訳で2話です。
本編前にクラピカ&レオリオと知り合いになりました。
はたして仲良くなれるのでしょうか。

ちなみに前回の大学生の姿は仕事の為に入ってました。
仕事の為なら彼女は会社にマフィアに学生でも潜入します。

ちなみにルメーネは復讐者(リベンジャー)は好きです。面白いから。
自分に対して復讐をしようとしている相手を返り討ちにするのはもっと好き。

次回から更新は2週間に一度の予定です。
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