ゴン=フリークスは無謀なのを理解しながらも好奇心を抑える事が出来なかった。
新しく手に入れた力……“念”。
それがルメーネにも、ウイングにも怒られる行動であったとしても。実戦でこそ得られるものを感じたかったのだ。
「二人共、正々堂々と互いの誇りと名誉を懸けて……始め‼︎」
開始の合図と共にゴンは【纏】を維持しながら相手のギドを深く観察する。するとギドはふふふ、と笑い声を上げながらある物を取り出した。
それは小さな
「初戦がこの俺でよかったな……俺は非力だからな。受けてみろ、【
死ぬことはないだろう、と言い残しギドは独楽を周りに飛ばした。その独楽はゴンの周りを回転していると、内二つがぶつかり弾かれた独楽がゴンの背中に直撃。
「(ぐっ……⁉︎)」
「クリーンヒット!!」
「(あれで非力……⁉︎ 小さな独楽の攻撃一発がハンマーで殴られたような衝撃だったぞ⁉︎)」
小さな独楽の一撃はゴンに大きなショックを与えた。念の恐ろしさ、そしてどう対処すればいいのか理解ができない為に。
「はー……だから早いんだって」
そのゴンの様子を見てルメーネは嘆く。
せめて戦うには【凝】を使えるようになってから、念能力者との戦いにおいて必要なのは力よりも相手の【発】を見破る分析能力が必要だと。
それを覚えず【纏】と【絶】しか使えないゴンの無事を祈りながら、怒りを覚えながら試合を見守っていた。
「念の攻撃を防ぐなら【練】でオーラを増やして守らないと……【堅】なら余裕なんだがね」
そこからもゴンは飛んでくる独楽を防ぐ手段が無く、直撃してダウンをしてしまう。
そりゃ当然そうなる、と思いながらルメーネは相手のギドの【発】を分析していた。
「強化系で独楽の威力を高めて、操作系で独楽を長い間操る……あの位の念でここまで出来るのは独楽に対する思いが強いからこそ。何を込めているのかな、独楽回しのように“
ルメーネがゴンと同じ立場ならばどう攻略するかを考えながら彼女は戦いを眺める。
「(気配を感じ取って躱さないと……目で追うんじゃダメだ……でも【纏】が乱れる!!)」
どうすればいい、どうすればギドと戦える?
ゴンは正面から飛んでくる独楽を多少、ぐらつきながらも受け止めてポイントを取られるのを回避。
「(正面からならまだ耐えれる……でも横や後ろからだと防ぎきれない!! どうすればいいんだろう…………あ、そういえば)」
『長い時間【練】の状態を【纏】で維持できるようになるとだいぶ戦いが楽になる』
ルメーネが午前に話していた事を思い出している中、正面横後方と三方向から独楽が飛んでくる。
「やってみるしかない……【練】ッ!!」
咄嗟の【練】を行ったゴンのオーラは午前中に見せたものよりも倍以上のオーラを放ち、独楽を逆に弾き飛ばした。
『な、なんとぉー!!! ギド選手の舞闘独楽を耐え切ったー!! ここからゴン選手の反撃となるかぁ!?』
「馬鹿な……偶然だ!」
そう言いながらも余裕を持てないギドは更に回す独楽を追加してゴンの流れを断ち切ろうとする。
「(いける……! 【練】の状態なら攻撃を耐える事が出来る。ここから攻めて……っ!?)」
攻め上がろうとするゴンの【練】が急に途切れてしまい、突撃を止めるゴン。
パニックこそ起こさなかったがピンチには違いない……何故ならば【纏】が少し乱れかけているからだ。
「馬鹿……【練】を維持するには【纏】を覚えないといけないと言ったでしょ。まだ一日も経ってないんだからさ……でも」
口にはしなかったがルメーネはゴンの才能の恐ろしさを実感していた。ギドとの戦いで見せた【練】は午前中の修行での始めてやった時に対して数倍以上の念を練り上げていた為に。
「(どうするゴン、独楽を無視して突っ込んでみるか? だったら思考を止めるなよ……ギドが自分への攻撃を想定していない訳がないから)」
するとルメーネの考えている事が現実になり、ゴンはギド本体を狙おうと突っ込んでいく。しかしギドは躱そうせず、その場でオーラを練り上げながら回転しゴンを弾く。
「奴も独楽みたいなものか。そしてあのオーラの量、奴は強化系のタイプだな、だとしたらあの回転を止める手段が必要になる……さぁゴン。現在七対〇の大差でどう動く?」
ゴンは点差がつくのは分かっていた。
それでも此方の攻撃が一切通じない事が彼に緊張を生んでいる。そして楽しみが湧き上がっている。
「(前から攻めるだけじゃダメだ、上でも回転に対応されてしまう……どうすればいい!!)」
悩み、つい地団駄を踏んだゴンは床を砕いてしまう。衝撃で舞台にはヒビが入る。
「これだ……!! それ!」
ゴンは砕いた床の破片をギドへと複数投げつける。刃のように鋭く尖った破片が直撃すればギドといえどダメージを受けるだろう。
直撃すれば、だが。
「
『ゴン選手の破片攻撃はあえなく防がれてしまったー!! これは万事休すか!?』
「なら……これでどうだぁ!!!」
先程失敗した【練】、それを再びゴンはオーラを練り上げて床に貼り付けてある石板をギドめがけて投げ飛ばした。
「な、な、な!?」
ゴンの石板投げを見てルメーネは感心。自分で可能な事を考えて出した作戦が対ギドに適していたからだ。
「上手い……ギド本体は義足一本で戦う選手、移動するにも杖を使用する事から咄嗟に避けるのは出来ないだろう」
しかしルメーネはゴンが慣れない【練】を発動した事によって限界がより近づいた事を考えると試合の流れは良くないと考える。
「決着を急がないと……負けるよ、ゴン」
そう彼女が口にした時、石板がギドに直撃し破片が全体に飛び散り僅かに土煙が発生。
ゴンからギドの位置が見えなくなってしまう。
「クリティカルヒット!! 2ポイント!」
『遂にゴン選手がギド選手からポイントを獲りましたー!! ここから逆転できるのかー!?』
見えないならば、とゴンが取った行動は飛び込んだ衝撃を活かすフライングパンチ。空中からギドの居場所を発見しそこをつくのだろう。
数メートル跳躍したゴンは相手の位置を探ると僅かながら倒れているギドの姿を目視。空中で態勢を変えて敵の位置へと飛び込んだ。
それを見てヘルメスは……
「うん、それはアリだよ。念を覚えたてで良くここまで戦えたと思う……
そう、ゴンが空中からギドを探せたようにギドも土煙の中で冷静さを取り戻してゴンを探していたのだ。
勝利に向けたカウンターを狙って。
攻撃態勢に入っている為、身体を動かそうと思っても思うように動かない。
ならばと、攻撃しようとするも拳は届かず。
仰向け状態から腕だけで身体を持ち上げたギドの義足がゴンの顎を思いっきり蹴り上げた。
「かはっ……」
念で多少はガードしたとしても相手はゴン以上の念使い。その一撃はゴンの意識を完全に刈り取る威力であった。
「ゴン選手、気絶による戦闘不能! 勝者、ギド選手!!」
ルメーネは担架で運ばれるゴンを見て会場から去って行く。治療室の方に向かい状態を確認する為に。
「キルア」
「げ、ルメーネ……」
「げ、って何だ……失礼な。全くゴンは無茶するんだから……念を教えるの止めたくなるよ。そう言ってもゴンは勝手にやるか」
「えと……悪い。俺もゴンが今日試合をする事は分かっていたんだ」
文句を言いながらもゴンを心配する彼女を見てキルアは申し訳なくなり謝罪。
「知ってる、携帯いじってる辺りで私に言えない何かがあると思っていたよ」
「ルメーネさん」
後ろから声をかけられて振り向くとそこにいたのはウイングとズシ。彼らも試合を見ていたのだろう。ウイングはルメーネ程ではないが怒ってるようだった。
「私は知らなかったよ、まさか初日から試合するとは思いもしなかった」
「私もです。……こう危険な行動を取られると此方としても困りますがどうしようと思っていますか」
「私のビルに軟禁する。外出禁止で試合には無理矢理でも出さない……次の試合をするならば二ヶ月程修行をさせてから」
「…………なるほど、分かりました。私もズシに良い修行をつけたいので、これからも共に修行をさせて下さい」
「いいよ、私もその時は外出しようと思う」
ゴンに対する処罰を決めたところで治療をしていた医者が出てきて、ゴンの診断が出た。
結果は下顎の骨折で全治一ヶ月。
その後はゴンとの面会になったのだが。
「ごひぇん、にゃひゃい……」
ゴンの顎は少し歪んでいた。
「修行一日目で試合に出るからだよ、アホ」
「しっかし顎歪んじまったな」
「これを治すのは大変ですよ」
このまま治療できたとしても発音が変になったり食事が辛くなってしまう状態のゴンを見て、ルメーネは怒りを通り越して哀れに思う。
そして……
「はぁ……怒る気失せた。顎見せて」
そう言いながらゴンの顎にオーラを当てるルメーネ。そのオーラを浴びてゴンは話す度に顎が痛くなっていたのが引いていく。
「成程……今までの顎の形からしてズレているのはこの位か。だったら骨を繋げながら……」
【千変万化】、今回はゴンの顎に対しオーラを鎮痛剤として使用している。そしてオーラを浴びているゴンの顎元をおおよそ形ではあるがズレている分の骨を操作し修復。
ルメーネの知り合いである幻影旅団のメンバーである一人は筋繊維から骨や血管までを綺麗に繋ぐ技を汗ひとつかかずに済ませれるが彼女はそこまでの技術はない。
特に変化系の真逆の位置にある操作系で修復している彼女の疲労は想像以上のもので大量の汗を流しながら修復を続けていた。
「(ルメーネ……勝手に試合をしたオレの為に)」
ゴンも怒られる事を覚悟はしていたが、ルメーネは殆ど怒ることなく自分の顎を治そうとしてくれている彼女に心の底から申し訳なくなった。
修復を始めて数時間が経過……ルメーネは滝のような汗を流し、顎の治療を完璧に終えた。
結果はゴンが顎を壊されていると誰も疑わないくらい、綺麗に整っている。
「かはは……やっと終わった」
得意でない操作系、それも目に見えていない内側にある骨を操ってのものであった為に彼女の疲労は仕事の時以上である。
今回ルメーネは見えない内側を探るのには放出系を使いサーチ、骨を操る操作系、痛みを感じないように【千変万化】と多数の念を使い分けていた。
「すっげぇ、念ってそういう事も出来るのか」
「素晴らしい集中力と念でした」
「(何よりも凄いのは……多数の念を使い分けて疲弊しても尚、尽きる事ないオーラ量)」
「お見事でしたっす!」
「しんどー、今日の飯はたくさん食べないと」
「ルメーネ……」
「ん」
「本当にごめんなさい……オレ、念を覚えてどうしても我慢できなくて。受付の時に煽ってきたあいつらの挑発に乗っちゃった」
受付の時の挑発、それを聞いたルメーネはどうしてそんな真似をしたのかを理解し彼を許す事にした。
「良いよ、許す。その代わりもう謝らない事……後は今日の晩飯に私に対してステーキを焼いて出す事で終わりにしてあげる」
「‼︎ ありがとう!」
そうしてゴンの二〇〇階初挑戦はゴンの完敗によって終わるのであった。
ちなみにゴンは深夜になるまでルメーネのステーキを焼く羽目になったそうな……
お疲れ様でした。今回は以上になります。
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ゴールデンウィークキャンペーンで毎日更新してみましたが楽しんでいただけたでしょうか。今回からまた今まで通り、日曜日または月曜日投稿になります。
原作との違いはゴンの敗北内容が変わりました。