ゴン、キルアがルメーネやウイング師弟と共に念の修行を始めてから二ヶ月が経過した。
「そろそろ試合に参加していきたいところだけど、その前に【凝】をやってもらおうかなぁ」
「「「押忍!!」」」
そう言ってルメーネは【隠】でオーラを見えなくする。彼女の本気の【隠】は並大抵の【凝】では視るのは難しいのだが……
「右上に炎」
「左下に雷!」
「足元に葉っぱがあるっす!」
「…………それだけ?」
ゴン達が見ているオーラよりも更に【隠】で隠した文字を見つけれるかを試すルメーネ。流石にまだ早いか、と終わりにしようとしていると。
「……薄らですが見えたっす!!」
「こんな文字を隠していたなんてな、態々隠すなんて性格悪い。素直に言ってくれよ」
「“合格”だぁ!!!」
そう、彼女が隠していたのは“合格”の文字。これを見るレベルまで行くとは思っていなかった彼女は心の底から喜んだ。
「よくやったよ、あんた達! まさか私の【隠】を見破るほどまで成長するなんてね」
「驚きましたよ。まさかここまでとは」
「それじゃあ三人とも、右拳に【凝】してみて」
「「「え?」」」
そう言うとルメーネは右拳にオーラを集中させる。彼女のオーラが一箇所に集まった事でオーラの威圧感は増していた。
「眼に瞬時に集めれるならもう出来るはずだよ、【凝】は眼だけじゃなく身体の一部分にオーラを集中させる技術だからね」
「この前は眼に集める技術って言ってたじゃねぇか」
「あの時はヒソカの戦いを見る為に眼の方の【凝】を覚えて欲しかったんだから仕方がないね。マスターしてくれたから本当の事を話しているだけさ」
「ねぇ、その状態で殴ったらどんな感じになるの?」
ゴンが突拍子もなく問いかけた言葉を聞いてルメーネは、にこりと笑った。この状態ともう一つの応用技を見せてあげようと思ったからだ。
「間違いなく凄い一撃になるよ、サンドバックが窓を突き破ってどっかに飛んでいくくらいはあるかもね」
「すっげー」
「で、これを更に強くしたのを見せてあげる。これはどうやっているか考えなさいな」
そう言ったルメーネは更に右拳へオーラを集中させて、【硬】の状態へと変えた。
爆発的オーラの増強はそれだけで周りのものを建物ごと吹き飛ばすのではないかとゴン達に思わせるほどである。
「はい、終わり」
「(……師範にも負けず劣らない【硬】とは)」
「あーでもオーラを一箇所に集めると他の部分は【絶】状態みたいなものだから気をつけなさいよ。大怪我で済まないから」
「それも念の応用技術ってやつなの?」
「そうだよ。他にも色々あるけど、それも自分で見つけなさい。ヒントを与えるなら応用技術は念の基礎の【纏】【練】【絶】【発】、そして【凝】の五つを応用するからね」
「(考えなさいと言いながら……実はこの方、結構弟子に甘いタイプなのでは)」
ルメーネが身内には甘いところを見せている話が終わり昼過ぎ、外出禁止を解かれたゴンを連れてキルア達は準備期間切れ前の日付で試合申し込みを行う為に天空闘技場を訪れていた。
「キルア、ズシ」
「押忍!」
「いるな、あいつら……」
新人狩りを主とする三人組。サダソにギド、リールベルトはゴン達が初めて二〇〇階の登録をした際に挑発をしていた。
結果としてゴンはギドと戦闘する事になったのだが戦いの結果、ゴンは怪我をした為に他の二人は試合準備期間が近づいていたのもあり再び勝負の申し込みをする為に待ち構えていたのである。
「しつこいなー、あんたらと試合を合わせる気はないよ。こっちは日付で申し込むだけなんだから」
「そんな風に言わないでよ。君らとは是非戦ってみたいんだからさ……俺らも締切が近くてね。焦っているんだよ〜、なんなら俺の能力をここで見せてあげるからさ」
サダソのオーラが膨れ上がるのを感じ取った三人は癖ついた【凝】でサダソを見ると左の袖から手型のオーラを確認した。
「これは……左腕?」
「っ……もう見れるレベルに到達していたんだね。でもいいか、俺らの能力は周知されてるし……くくく」
「悪いけど……オレとキルアは師匠の言いつけの方を優先するから、ごめんなさい」
「別に謝る必要ないだろ、ゴン」
「でも……」
「いいんだよ。こいつらの日付じゃオレらとは今回縁が無いんだろうし。行こうぜ」
キルアが話を終わらせて、ゴン達は受付の方へと申し込みに向かっていく。その後ろ姿を新人狩りの三人は見ていた。
「だったら仕方がない、ね」
「あぁ……二〇〇階に到達していない少年をダシに誘い込むとしよう。いつも通りにな」
「げっげっげ」
六月に申し込みを入れたゴン達は闘技場からいつもの拠点へと帰る最中であった。
キルアの持つ連絡用携帯が鳴る。
「ん、ルメーネだ。もしもし?」
『あーキルア、ここからは普通の電話のように自然体で受け答えしなさいな。ゴンと戦ったギドを含めた三人が監視してる』
「あーなんだよ、ふーん」
「(やっぱりそうか、追跡されてるのは分かっていたが……それにしても素人の追跡に気づかないふりとか逆に難しいな)」
『三人は別に動きなさい。ズシには商店の方で商品の受け取りを、ゴンは拠点に戻る。キルアは裏道を使って追跡を振り切り【絶】の状態で監視をね』
「えーなんで今からお使いなんて……面倒な注文をしやがってよ」
「(これはズシを狙っているって事か、オレとゴンと戦うならズシを人質に取れば日付を合わせるのも簡単だろうし)」
『ズシは私が守るから安心しなさいな。アイツらには私の方から話もつけておくしね』
「あぁ分かった、分かったよ! 受け取りに行けばいいんだろ、オレとズシで受け取ってから帰る」
「えっオレは?」
「ゴンはビルで特訓があるから先に帰ってこいだってよ。ウイングさんが準備してくれているらしい」
「んー、できればオレも手伝いたいけどルメーネに怒られちゃうしなぁ。分かった、オレは先にビルのほうに戻ってるね」
「ちなみにオレはこっち、ズシは向こうの商店で治療道具を取りに行ってくれってよ」
「分かりましたっす!」
何も知らないズシは商店を目指して進んでいると、突如何かに掴まれるような違和感を覚えて辺り見渡した。
何かに追跡されている、それを察知したズシは裏道を使い逃げ出そうとするのだが。
「裏道に詳しくなかったみたいだ、ね」
「げっげっけ」
「あんた達は……!?」
「俺たちの為にちょっと眠ってもらうよ、ズシ君?」
「うっ……」
サダソの見えない左腕がズシの身体を掴み拘束すると、そのままズシは呼吸困難に陥り気絶。倒れた少年をリールベルトが回収して立ち去ろうとすると。
「待ちなよ」
「……誰だお前は」
裏路地にいるサダソ達は冷や汗が止まらない。
そこにいるのは一人の女性、そのはずなのだが自分達との圧倒的な実力差がある事を見るだけで理解してしまう。
この空間にいるだけで寿命を削られるような感覚が彼らを襲っていた。
「私の弟子によくもまぁ手を出すね。どうしてもゴンやキルアと戦いたいなら正々堂々とやりなさいな……さもなくば」
「さもなくば……ど、どうなる…………?」
その時、風が吹いた。
「死ぬよ」
サダソの右脚、リールベルトの両掌、ギドの左腕が突如、血を噴き出し地面を赤く染めた。
三人がそれぞれ痛みの箇所を見るとそこから何かに切りつけられたかの様な傷跡がある。
彼女が一瞬で自分達にやった。
本気でやるなら自分達は間違いなく赤子の手を捻るが如く、呆気ない最期を迎えていた事を理解してしまう。
「ヒィ……!」
「ッゥ……!!」
「安心なさいよ、こんなの一晩で治る傷なんだからさ。誤って包丁の先端が刺さっちゃった程度のもの…………殺すなんて勿体無い」
「勿体無いだと……」
「ゴンとキルアにはあんたら三人を捻り潰すくらいの実力を手に入れてほしいからね。その為に協力してもらうよ、逃げたら殺す」
脅しでないのは既に理解している三人は黙ってルメーネの
一悶着が起きた後、ルメーネは気を失ったズシを背負いビルへと帰宅。
事情を説明されたゴンとキルアは卑怯者達に怒りを向ける。友人を傷つけてまで、戦おうとする精神が気に食わなかったから。
「はいはい、怒る気持ちは分かるけど精神を乱さない! 戦いにおいて必要なのは冷静だと何度も話しているよね、今の二人でもアイツらを倒す事は可能だけど乱されたら分からないよ」
「だけど……アイツらはズシを」
「安心しなさいな、私だって今回の件は本気で怒っているから。だから徹底的に鍛えて圧勝を狙う……あの連中が二度とここに来れないようにしてやりたいくらいの圧勝をさ」
「(怒るなって言った割にはお前が一番キレてるだろ)」
かくしていつもの修行が始まるが内容が変化。その内容は【練】の状態を維持しながら筋トレやランニングをするから始まり、ルメーネとのスパーリングが入る。
「ま、スパーと言っても私は親指と人差し指を使うだけの超ハンデ戦さね。私のスピードに慣れたらアイツらの攻撃なんて余裕」
「じゃあまずはオレから……」
先手はキルア、ゴンは部屋の隅でルメーネの動きを観察する。キルアはオーラを脚の方に集めて高速移動で彼女の背後に回り、踵蹴りを放つ。
しかし彼女は人差し指をキルアの踵に軽く引っ掛けるとキルアは宙へと浮き上がってしまう。
「なっ⁉︎」
「遅いよ」
ルメーネは落下しているキルアを見上げながら人差し指を親指に引っ掛けて力を溜め込む。
キルアも避けようと試みるも重力には逆らえず、ただ落下するだけ。諦めず彼にできたのは【堅】によるガード。
「良いガードだね……でも」
ルメーネのデコピンはオーラの盾をも簡単に突き破り、キルアは意識を失った。幸いにも頭蓋骨にヒビなどはなくすぐに目を覚ますのであった。
「かはは、どうだいキルア。完敗だろ」
「うっせ……悔しいけど焦っても良い事はないしどうしようもないよ。とにかく鍛えるしかない」
「ルメーネ、次はオレだよ!!」
「気合十分だねゴン。じゃあ始めようか」
二戦目の相手はゴン。しかしゴンはキルアよりも単調な攻めをしてしまいあっさりと顎に一撃を受けてしまい簡単にノックアウト。
「二人ともそろそろ終わりにしよっか」
「う、うん……」
「助かった……」
起きてはスパーリングをして気絶、また起きてはスパーで気絶を繰り返す二人は数日間のハードトレーニングとスパーリング地獄の日々を続けた。
その結果、念を覚えて二ヶ月弱で動きながら【練】を五〇分弱維持できる程度に成長。
その間にルメーネは卑怯者達と試合の日程を五月二九日から数日間設定させてゴン達にも合わせるように試合を組む。
そして初戦、キルア対サダソ戦の一週間前のタイミングで彼女は遂に【発】を教える事にした。
ゴン、キルア、ズシの三人は二人の師と共にソファでくつろぎ休憩していた。目の前に置かれているのは何故か葉を水に浮かべているコップ。
「三人とも我々の予想よりも早く、そして順調に成長してくれました。この【発】を教えたらあなた達は念の基礎である四大行を収めた事になります」
「とはいえまだまだ、ひよっこさん。収めるだけで常に鍛える事は忘れちゃ駄目だよ。ちなみに【発】とはオーラを自由自在に操る能力である事を指す」
「発には六種類存在します。強化系、変化系、放出系、具現化系、操作系、そして特質系。これらにはその人によっての得意不得意があります」
そう言いながらウイングはホワイトボードを持ってきて、縦長六角形を描き中にオーラの六性図
を書いていく。
「ヒソカやカストロが使っていた必殺技ってやつさね。ヒソカは変化系、カストロは強化系だったかな」
「ヒソカがカストロに
「それは【
「条件があるって事か」
「言っておくけど、この割合も念を極めたとしてもこの割合程度しか使えないから気をつけなさい。だからもし覚えるなら相性のいい系統と組み合わせて能力を作るといいよ」
「もしかしてルメーネが船から投げ出されて海に落ちそうになった時、空中に浮いた事があったけどそれも念能力?」
「え!? 中に浮くっスか⁉︎」
「ほほー、覚えているとは嬉しいね。その通りだよ、大雑把に説明すると私は変化系能力者でこの能力は具現化系と掛け合わせて使っている」
「念って奥深いんだな……」
「でも、どうやってその向き不向きを見つける事ができるんだよ。この目の前にあるコップで分かるのか?」
「かはは、その通り。今からアンタらには“水見式”ってやつをやってもらい得意系統を知ってもらうね」
ゴンとキルアはサダソ戦に向けて、【発】の取得を目指しての修行がまさに今からスタートするのであった。
お疲れ様でした。今回は以上になります。
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ルメーネの特訓のおかげでゴンとキルアはグリードアイランド編後並みに【練】を持続できる状態になりました。防御力などは原作以上です。