ルメーネ=マーキュリーは朝早くから珍しく上機嫌であった。数ヶ月に一度、世界中にある孤児院のうちのどこかに訪れる日を迎えていたから。
マーキュリー財団。
世界各地の孤児を支援する為の巨大な組織、彼女はその設立者の一人。組織の主な活動は親のいない子供やスラムなどに住んでいる子供達を孤児院に保護し、教育。
地域によっては孤児院の為だけの学校を設立し社会に貢献する人材を育成するのを目的とした組織である。
現在では世界中からの支援金で運営できているが設立当初はルメーネの財布から財団は運営をしていた。ちなみに今でも彼女は毎月三〇億程の支援金を振り込んでいる。
そんな彼女は財団のトップと電話をしていた。話の内容はお互いの調子はどうか、教員や孤児院のスタッフはしっかりとしているか。
経営には携わっていないが出資している身として孤児達に負担を与える事はないかの確認である。
『いつもありがとうございます、ルメーネ様』
「いいよいいよー、代表も最近はどう? 流星街の爺さん方に許可は降りそうかな、あいつら偏屈なところあるし」
『もう少しかかると思いますね……こちらとしては敵意はなくとも、そういった組織が入る事で後に悪影響がないか警戒されています』
「はぁ……今度は私からもお願いしてみようかな。一応、地元だから話を聞いてもらえるかもしれないしね」
『ありがとうございます』
「それじゃ、そろそろ孤児院に着くから失礼するね」
『はい、それではまた……』
ルメーネは通話を切り、ゆったりと進む。
彼女の進む先にはサヘルタ合衆国ヨークシンシティ近郊にある孤児院、前日に連絡を入れていたからか院の前には子供達の姿が見える。
「きたよ!」
「おねぇちゃんだ!!」
「ルメーネねぇちゃん!」
「はいはーい、危ないからちょっとどいてなさいな。食料を持っているから溢したら勿体無いよ」
「「「はーい!!」」」
ルメーネが持ってきたのは山のように積まれた食材、片手に持つだけでなくクーラーボックスを何個も肩に掛けている。
彼女が孤児院を訪れるのはそこに住み暮らす孤児達と交流をするため。ここでの暮らしが彼らの幸せになっているかどうかを見るために。
ルメーネは孤児院にあるキッチンへと向かい大量の食材を使った食事を作り始める。スタッフも加わり調理場大忙し。
「はい、炒め物完成。次は小麦がダメな子の別メニューを……スープの仕込みは出来た?」
「あと少しです!」
「お肉の方の準備できました!」
「こっちのと一緒にオーブンで焼いてちょうだい!」
栄養バランスを考えた食事やアレルギーを持つ子供のための特別メニューなどをお昼までに完成させた。
いつもより量の多い食事を作ることになったスタッフはへろへろになっていたが彼女はまだまだ余裕。
「お待ちどうさーん、ルメーネ特製のスペシャルランチのお時間だよ。みんなに渡すからゆっくり待ってね」
完成した料理は子供達の待つ庭の方に運ばれていき提供される。レジャーシートが敷かれた上で子供達は食事を堪能し笑顔が溢れている。
それを見た彼女は優しそうに微笑んでいた。
「美味い?」
「おいしい!!」
「さいこー!」
「そりゃ良かった、ゆっくり味わって堪能してね。急いで食べたって苦しくなるだけだから」
美味しい食事を食べた後は自由時間。
お昼寝する子供もいれば元気に遊ぶ子供もいる。が、一番人気なのは。
「たかいたかい、して!」
「あいよー、高い……高い!!」
ルメーネとの遊びである。
彼女から空中へ放り投げられた少年は数メートル浮き上がり、落下する前に彼女に優しく抱きしめられて着地。
他にもこっそりと【
「ルメーネ様。すみません、知り合いと名乗られている方が入口の方にいらっしゃいまして」
「ん? 分かった。今行くよ……ごめんねみんな、少しの間私は知り合いの人とお話ししてくるから」
「「「わかった!!」」」
「いってらっしゃーい」
「きをつけてね!」
「(何も気をつける事なんてないよ〜)」
そう思いながら表門の方へと向かうとそこには懐かしい友人が一人いた。
「クラピカ」
「やっぱり君だったか……」
話を聞いてみるとクラピカはとある目的でこの街に来ていたのだが孤児院の方で空中浮遊している人間がいると気づいたので来てみるとルメーネかと思い、スタッフに確認をしたとの事であった。
「あはは、ちょっと子供とね」
「しかし意外だった、君がこの財団の関係者だったとは。確か名前はマーキュリー財団……ん、マーキュリー?」
「そりゃ創始者の一人である私の名前から取って作られた財団だからね、かはは」
「君は相変わらずというか……うん。やっている事の規模が常人とかけ離れ過ぎだ」
「ヘルメスだからね」
「ここには君が殺した人間の子供もいるのか?」
突然のクラピカの問いにルメーネは少し気を悪くした。
「…………ずけずけと入りすぎ」
「君が孤児を助ける財団を設立した理由を考えただけだ」
「どっちかって言うなら逆。財団を設立するのにお金が必要だった、孤児を助けるためにね。そのせいで親を失った子供も勿論いるよ……もういいかな。ここでその話はしたくないの」
「済まない、考えが足りなかった」
「いいよ、許す。ところでクラピカはどうしてこの街に来ているのかな、仕事?」
「……とあるマフィア組織の試験であるものを手に入れる為に来た。君を見つけたのは偶然だった」
「ふーん、なら関わらないでおくよ。頑張りなさいな」
「久しぶりに君と出会えて良かった。また九月で会えたら会おう、次はゴン達も一緒に」
「かはは、そうね。闇の方もオークションがあるからクラピカも忙しそうだ…………そうそう、確か“緋の眼”も出品されていたはずよ」
「! そうか……」
闇の情報網から知った情報をクラピカに話し、ルメーネは孤児院の方へと戻る。
友人には隠し事をしない彼女であったが、別の友人の事を伝えるのだけは出来なかった。
「(クラピカ……だいぶ良くなってる。もしかしたら制約と誓約も既に行なっているかもしれない。あの鎖はどっちかな、本物か……それとも具現化系か…………)」
クラピカとの再会を終えた彼女は子供達との交流を深めて施設に問題がない事を確認し、安心しながら楽しむのであった。
八月三一日、ルメーネはヨークシン郊外にあるアジトにてマイペースに過ごしていた。
内容は闇サイトからの情報収集、最近懸けられた賞金首の詳細、仕事道具に対する念入りの点検など。
側から見てマイペースな過ごし方とは言えない。
しかし本人にとってはマイペースである。
「んー、このナイフの新しいモデルが出たのか。五本買って仕事に使えるか試して見ようかね……ん」
新商品を眺めていると玄関のチャイムが鳴る。
デリバリーなどは頼んでいないはずと玄関のほうへ向かうとまたチャイム。すると鳴り響く音が連打し始める。
「あーもー、なにさ。悪戯?」
執拗になるチャイムに苛立ち始めた彼女はドアを開けて誰がしているのかを確認しようとドアの前に立つと音が止まる。
「あ?」
その一瞬の後、ドアは粉々に吹き飛ばされる。ルメーネはヒビの入るドアを目視し【練】でガードしたのでダメージはなかった。
木の破片や木粉が晴れるとそこには、身長2m50cmを超える巨漢。そして彼女にとっての“兄貴分”がそこにいたのである。
「よお、久しぶりじゃねぇか。ルメーネ」
「お久しぶりだよ、兄貴」
「どうした? 見ないうちに大人しくなりやがって……ガキの頃は俺にも噛み付いてくるヤンチャ妹だったろうが」
「あのさぁ、ドアを直さなきゃいけないから早く入ってくれよ。兄貴は変わんないね」
「どういう意味だ?」
「雑」
「ハッ、そんなお前でも変わってないところがあるぜ」
「何処さ?」
「相変わらず女のくせに絶壁だもんな」
その禁句を聞いた瞬間にルメーネは右腕にオーラを集めた全力のパンチを兄貴分であるウボォーギンに叩き込んだ。
まず常人であれば身体の一部が弾け飛ぶ、または肉の塊になってしまう一撃であったがそれをウボォーギンは呻き声をあげるだけで済んでいる。
「さ、流石にお前の拳は効くな……」
「ばーか。普通なら死んでるよ、怪物兄貴」
「俺を殴っておいて拳を壊さないお前はどうだって話だろ、俺が怪物ならお前も怪物の妹だ」
「そりゃどうも」
ルメーネは辺りに散らばったドアであった木片を拾い集めてオーラでコーティング。【千変万化】でオーラを接着性に変化させて木片をつなげ、元のドアを再現した。
「相変わらず便利だな、【千変万化】」
「そりゃあらゆる研究をしているんだからこれくらい再現もできるよ。兄貴が強化系を極めるために鍛えてるようにね」
「そういえば兄貴だけなの?」
「ん、そういやあいつ放っておいたな」
「そりゃ酷いんじゃないの、ウボォー」
「ありゃシャル」
「久しぶり、数ヶ月ぶりかな」
修復されたドアを開けて現れたのはルメーネの友人、シャルナーク。ルメーネはハンター試験を受験する際の情報をシャルナークに聞いている。
「まさかの組み合わせ、野郎同士で仲良くここまでやって来たの? 誰受けよ」
「明日団員が集まるんだけどその時たまたまウボォーと出会って一緒に目的地に向かっていたんだよ」
「で眠いしどっか眠れる場所はないかと探していたらお前の住処があるのを思い出してやって来たってわけだ。お前がいるのは知らなかったがな」
「かー、なるほどね。ドアを壊すのは止めてほしいけど……ま、いいか。すぐ寝る予定?」
「シャワー浴びさせてもらおうかな」
「酒とつまみ……いや飯だな!」
「はいはい、冷蔵庫に缶ビール沢山あるから適当に飲んでちょうだいな。飯の方はすぐにできないから待ってちょうだい」
こうしてルメーネは腹を空かせた兄貴のために夜食を作ることになる。彼女が取り出したのは明日の朝食用に用意していた総重量7kgの特大ステーキ肉。
大型のフライパンを熱しステーキ肉の表と裏、側面に焼き色を入れて鉄板に乗せる。これで完成ではあるが彼女はステーキに焼き加減を調整するペレットを【千変万化】で通常よりも温度高めに熱し、一品目の“特大ステーキ”が完成した。
「ほい」
「おぉ……食べ応えありそうじゃねぇか」
「ソースの方はあっさりこってりなど様々な味付けができるように六種類用意しているからご自由にどうぞ」
「っ、このソース随分と鼻にくるな」
「ジャポンのワサビってやつ。焼いた肉に対して凄く相性がいいんだよ。私はこれが一番のおすすめ」
「んぐ……このままならあと数分で無くなるぜ。ルメーネ、次の飯を持って来てくれ」
「はいはい、とりあえず大きめの蟹玉を乗っけた大盛蟹チャーハンで食べてちょうだいな」
二品目は最高級の蟹のほぐし身をこれでもかと使った蟹炒飯の上に同じカニを使ったとろとろの蟹玉を乗せた大盛炒飯。
どこを食べても蟹を感じるこの一品、ウボォーの食欲を逆に刺激してしまい更なる空腹が襲う。
「ははは、食べれば食べるほど腹が減る料理なんて罪みたいなものを作るとはな。じゃんじゃん持ってこい! お代わりだ!!」
「あいよー」
「ふー気持ちよかった。って、これまたすごい量を食べてるなぁ……なんかウボォーが食べているのみていたらオレも腹減って来たから追加で頼むよ」
「はいはい」
「なんかオレにだけ冷たくない?」
「シャルだからね」
「
「なんか酷い!」
こうして朝までルメーネはウボォー達に酒と手料理を提供しながら楽しそうに過ごすのであった。
お疲れ様でした。今回は以上になります。
よろしければ評価やコメントをお願いします。
作者の創作意欲、モチベーション向上に繋がります。
今回はルメーネの秘密をネタに書いてます
①ルメーネは孤児院施設を運営する財団の出資者
→出資する理由は孤児を減らすため
しかし、金を得るために仕事をするのでその影響で孤児が増えてしまうのが最近の悩み
→世界中に孤児院等の施設があるが
今の目標は流星街に孤児院を作る。
②ルメーネは幻影旅団ウボォーギンの妹分
→他に彼女が慕う兄貴分姉貴分は一人ずついる
→幼い頃からウボォーギンの妹分として色々やっていた。
→当時は短気だったり凶暴性が目立っていた。
次回からヨークシン編が始まるぞー!!