ルメーネ、ゴン、キルア、レオリオの四人は再会した祝いとしてよくあるチェーンレストラン店に入り、食事をしていた。
この場のお代はルメーネ持ちなので四人とも遠慮することなく食べたい量を注文している。
「レオリオは最近どうなのさ、医大の勉強頑張っているのかい?」
「まーな。ハンター証のお陰で勉強にも集中できるし少しずつ自信も湧いてきたってところだ」
「レオリオは念の方は受験後に行うんだよね?」
「え、そうなの?」
ルメーネはゴン達から離れていた為に知らない。
「そういやルメーネは途中でいなくなったから知らないのか、ウイングさんが色々教えてくれたんだよ。あの人ハンター試験の裏試験官だったらしくてさ」
「なるほどね、念を知っていたし普通ではないと思っていたけど試験官様だった訳か」
「ちなみに俺は一応、念を覚えたぜ」
「え、マジかよ」
意外なレオリオの返答にルメーネは少し疑問が浮かぶ。覚えたの割にはレオリオの念は弱々しいと。実はまだ念の始まりに触っている程度ではないかと。
彼女は彼を確かめることにした。
「ほい、レオリオ。私のオーラが見える?」
「ん? いや……全く見えない。これって【絶】ってやつじゃないのか?」
「あ、オーラが雨のように動いている!」
「そんな風にオーラって操れるのかよ」
ゴンとキルアは彼女の優しいレベルの【隠】を見破り、レオリオが不正解であることから【凝】の取得をしていない。そして【隠】の存在を知らないことを彼女は悟り、レオリオの修行はまだ途中であると確信した。
「まだまだ甘いねぇ、せっかくならゴン達と一緒に鍛えなさいな。念の修行はかなり必要みたいだからね」
「……マジかよ」
「それにしてもグリードアイランドを手に入れようだなんて天空闘技場の後で何があったのさ」
「実はね」
そこでルメーネが天空闘技場を去った後、ゴンはヒソカと再戦し多少は戦えたが余裕のあるヒソカに負けた事。
その後にゴンの地元であるくじら島にキルアと行くと念を込めないと開かない箱があり、その中には父親であるジンが作ったと言われているグリードアイランドのメモリーカードを手に入れて、そこに何かしらのヒントがあると狙いプレイを目指している事を知る。
「はー、なるほどね……もしかしてジンってあのジン=フリークス……ってそのままじゃん」
ジン=フリークスがゴンの父親である事を理解した彼女はなぜ気づかなかったのだと額に手を当てて目を伏せた。
「ジンを知ってるの!?」
「会ったことがないけど、超が付くほどの有名人だよ。遺跡などの発見や探索による貢献は数知れず……ハンターの中でも最高峰と評されるね」
「ゴンの親父ってすげぇんだな」
「オレも会ったことがないけど絶対に会いたいんだ。そのためにもグリードアイランドを手に入れないと」
「でもよ、サザンピースのオークションといえば今回のオークションハウスの中でもトップ。しかもそのゲームの最低落札希望価格は八九億で二〇〇億はいると思っているんだろ?」
「さすがに二〇〇は大きすぎるからね……」
「今から手に入れようとしても不可能に近いんじゃねぇのか、金は簡単に手に入らねぇしよ」
「ん……仕方ない、一肌脱いであげる。私は今回のオークションに実は別名義で参加しているんだけどその金くらいなら貸してあげてもいい」
彼女が参加しているオークションはサザンピースに近い大型のオークション。そこには昨年までに仕事で手に入れた宝石やお宝を出品していたのである。
「えぇ悪いよ!?」
「貸しだって言ったでしょ、それでも足りるか分からないんだから稼ぐ手段探しましょ」
「ゴン、もしかしたら借金持ちになるかもな」
「えぇー!!」
それから彼らはとあるホテルの一室を借りて、お金を稼ぐ手段を探す。その中で見つけた“縛り”という競りの方法の一つを見たレオリオの発想でとある賭けを試すことになるのであった。
ヨークシンは夜になれど盛り上がる。
そんな街のある場所で彼らはそこにいた。
「さぁーいらっしゃい、いらっしゃい!! 条件競売が始まるよ! 競売品は三〇〇万相当のダイヤに五〇〇万程のネックレス、そして一〇〇〇万を超えるブレスレット!! それぞれの落札条件は腕相撲、そこにいる三人の誰かを選び勝つことで担当している景品を獲得という仕組み!」
それぞれルメーネが購入したものである。
しかし羽振りのいい景品に観客からは疑問の声が飛ぶ。それは本物なのか?と。
「もちろん本物でございます、先程購入したばかりの鑑定書付き! 参加費用はダイヤは一万、ネックレスは三万、ブレスレットは一〇万ジェニー!! 早い者勝ちですよっ!!」
ダイヤ担当はゴン、ネックレスはキルア。そしてブレスレットはルメーネになっている。
開始の合図と共に勝負を挑まれるのはルメーネ。一〇〇〇万を担当する彼女に挑むのは屈強な男達。
だが始まって数分でその流れは終わる。
「ほらほら〜もっと力込めないと! いいんだよ、自分が有利になるように腕を寄せても」
「ぐぐぐ……ぁぁ」
屈強な男一〇人斬りをあっさり達成してしまったのだ。さすがの観客もざわざわと騒ぎ始める。
ルメーネが手を抜かない理由は一つ、ゴンとキルアに挑む客を増やすためである。金額を分けたのもそれだけ三人には力の差があると思わせ、ゴンとキルアならば勝てる可能性があると観客に錯覚を与えるためだった。
「化け物かよ、腕相撲の世界チャンピオンか!?」
「プロの格闘家してましたー、この子供達は私の弟子でまだ未熟だから頼みますよー。やる気があるなら私も受けて立つけどね」
「くっそ見た目に騙された……」
「だけどあのガキなら勝てそうだ」
「そうだ! 三〇〇万でも充分だ!」
それからはゴンとキルアに対する腕相撲が続く。念を使える二人は相手を余裕で倒せるのだがギリギリを演出しながら勝つように行った。
キルアは気にしていないがゴンは騙すのも悪いなと思いながら冷や汗をかいている。
そして合計二〇〇人抜きを達成した時、次の挑戦者として彼女が現れた。それはルメーネの知り合いである眼鏡をかけた黒髪の女性。
「シズク?」
「あれ、ルメーネさん。お久しぶりです」
「なんでこんなところに……」
「なんだ、ルメーネの知り合いか?」
「ん……まぁ友人だよ。シズクはどうしてここに」
「このダイヤが欲しいので……」
「……あっそ」
マイペースな彼女の返答にルメーネは少し呆れる。旅団のメンバーである彼女がこんな目立つ場所に現れたのが主な原因であったが。
そんなことを知らないシズクは挑戦料一万ジェニーを支払い、ゴンとの腕相撲を始める。
「ゴン、この子は強いから全力でやりなさいな。油断したら簡単に負けるよ」
「え……わ、分かった」
「それじゃあお嬢さん、左腕を握ったまま机に置いて……さぁ〜〜レディ…………ゴォッ!!!」
レオリオの合図と共にシズクは右腕に全力を込めて押し込む。師であるルメーネに警告を受けていたゴンも全力で対応していたので拮抗していたが女子とは思えない力強さに驚いていた。
「(す、凄いパワー……ちょっとでも油断していたら簡単に負けてしまいそうだ)」
「(ゴン……全力でやってるじゃねぇか。ルメーネもバケモンだけど知り合いまで怪物なのかよ)」
「おぉ! お互い力が同じなのか動かないぞ!! これはまさかまさかの金星があり得るのかぁ!?」
この腕相撲が始まってから初の大勝負は一分間膠着状態にあったがそこからはスタミナの差かゴンの方が少しずつ押し始め、最後はシズクの右手の甲を机に倒すのであった。
「はい残念、負けちゃったー!!」
「ふぅ」
「負けちゃった……ありがとうございました」
「また会おうか、シズク。今度は暇な時にね」
「そうですね……ルメーネさん、ここにいて良いんですか? 彼がここにいますけど……」
「ぇ?」
「久しぶりね、ルメーネ」
人混みを分けて現れたのは、鋭い目つきと口元まで隠している黒いコートを着ている男。流星街時代からよく喧嘩をしていた悪友。
「げぇ、フェイ……」
「シズクは先に行くといいよ。私はコレと
「んー……フランクリンは?」
兄貴分の一人であるフランクリンの名前を聞いた彼女は昔の時を懐かしむ。ウボォーギンの妹分として暴れていた彼女は前座としてよく彼と殴り合いをしていた。なお勝てたことはない。
だが喧嘩で負けた後も色々と世話を受け、たまに話し合うことで彼女は大兄貴であるウボォーとは少し違う部分を持つフランクリンに尊敬を覚え、兄貴と慕っていた。
「フラ兄もいたのか……それは会いたかった」
「何故、私は嫌がるか。……
「分かりました、それでは」
ルメーネは覚悟を決める。この空気で勝負を逃げることはできないし、そもそも
「お、おいおい……横入りは」
「レオリオ、これ」
そう言ってレオリオに渡したのは一〇〇万ジェニーの札束。悪友との勝負に邪魔を入れたくないので金の力で黙らせることにした。
「さっさと決着つけようか、フェイ。……まぁ私が勝つんだろうけどね」
「何を抜かすか。ルメーネが負けて私が勝つだけね、捻り潰すよ」
互いに挑発をして、腕相撲の体勢に移る。
念を込める全力勝負が始まった。
その直後、オーラとオーラがぶつかり合いその余波が周りの空気を吹き飛ばし風が起こる。
戦う二人の腕は止まっているかのように動かないが、かかっている力は互いに全力。
「「…………ッ」」
「やるねフェイ、前より強くなったんじゃない?」
「お前は相変わらずゴリラね」
「その手を握りつぶしてあげようか」
「怖い怖い、猛獣の機嫌を取らないと早死にするね」
そう言いながらもお互いに余裕を示しているが実際は互角。常に全力を維持しなければならないために着実に疲労が溜まる。
お互いが膠着して数分が経過すると周りの観客も手に汗握る戦いであると理解し見守っていた。ゴン達はルメーネと同等の力を持つフェイと呼ばれる男が何者なのか、それに困惑する。
そして決着の時は突然やってくる。
みしりと軋む音が聞こえたと思うとその刹那、腕相撲の台としていた木が粉々に砕け散ったのだ。
どうやら二人の力に台が耐えれなくなったらしい。
「…………また引き分けね」
「そうだね、これは引き分けの景品。私からの気持ちみたいなものだから受け取っておきなさいな。いらないならクロにでも渡しなさい」
「次会うときは
彼女が昔馴染みに送った景品は一級物の宝石。その名前はシリマナイトキャッツアイ。
その名が表す宝石言葉は“警告”。
「(旅団の皆は間違いなく強い……だがクラピカには嫌な予感がする。強者故の油断をしなければいいけど…………)」
「おいおい、ルメーネ……どうすんだよ。台をぶっ壊しちまったら腕相撲できないじゃねぇか」
「ん、ごめんよレオリオ。今直す」
そう言いながらルメーネは散らばった破片を集め、粘着オーラを駆使しながら元の形に修復をしていく。客からすれば壊れた椅子がみるみる修復されていき、すぐに元通りになった事で驚きと称賛の声が飛び交うのであった。
「まさか人前で念能力をあっさり使ってこんなのを見せるなんて……」
「まるで何かのショーみたいだね、キルア」
「あ、そうだ。レオリオ……私今日はもう休むことにするよ。なんだか知り合いに会ったのもあって疲れが溜まっちゃってね」
「ん、そうなのか。分かった、また明日頼むぜ」
「あいよー、ゴンとキルアは頑張りなさいな」
「分かった」
「おっす!」
そうしてルメーネは街中へと姿を消す。
ゴン達は深夜まで賭け形式による腕相撲を続けた。
ルメーネはヨークシン郊外にあるアジトに戻ることはなく、とあるビルの屋上にて今夜事件が起きるであろう建物の方を見ていた。
「(旅団のターゲットは恐らくマフィアンコミュニティ主催の地下競売……皆のことは分かっている。邪魔な客を皆殺しにするはずだ)」
懐から携帯を取り出した彼女はとある番号を入力をして電話をかけ始める。その相手は……
『ヘルメス、久しぶりだな。ハンター試験前の依頼依頼……ザーコーの時以来か』
「話は後だ、そちらの方に向かう幻影旅団のメンバーを目撃した。それだけで私が連絡した意味を察していただきたい」
『ッ⁉︎ 分かった。すぐに立ち去る。依頼人にもこの話は通してもいいか、流石に話さないのはマズイ』
「別に構わない、あんたは昔から世話になってると言っただろう。そちらも無事であることを祈る」
『あぁ、助かる』
数ヶ月前に仕事をした際の相手であった。
昔馴染みの依頼人は信用をしているのもあり旅団に巻き込まれるのはヘルメスとして良くないとの判断である。
それからもルメーネは他にオークションに参加するであろう昔からの依頼人達に連絡を取り続けるのであった。
そしてそれらを終えてから数十分経過した頃、事態は一変する。異変が起きたと察知した構成員が慌てて建物内に入っていくのだ。
その様子を見て彼女は察する、中にいた人間と連絡がつかなくなったのだろうと。
彼女はコートの内側に入れていた豪華な装飾を施されたフルマスクで顔を隠し、黒いローブを羽織り正体をバレないように変装して動き出す。
向かうのは建物から飛び立とうとしている気球を観察できる建物。粘着オーラを駆使しながら建物から建物へと渡った。
「…………へぇ、気球の感じからしてお宝は無し。ということは今回のオークションの品は持ち出されていた。あの気球に乗る理由はそれに関わっている能力者……恐らく“陰獣”のメンバーを誘き出すといったところか」
旅団の目的を理解した彼女はマフィアからも旅団のメンバーからもバレないように気配を殺しながら移動していった。
遅くなってしまい申し訳ありません。
話の大まかなプロットだけであれば実は最終話まではできているのですが、なかなか文章を書く手が動かなかった為に遅くなりました。
これからも遅くなることがあると思いますがよろしくお願いします。
よろしければ評価やコメントもお願いします。
作者の文章作成へのやる気向上になります。
ルメーネとフェイタンの腕相撲は互角です。
仲は悪くなく、軽いちょっかいをかける仲。
次回はウボォーの兄貴大暴れの巻