『品物がない?』
「あぁその通りだ」
ウボォーギンは団長であるクロロへと報告をしていた。
幻影旅団が地下競売に潜伏し客であるマフィアを皆殺しにした後、金庫に保管していたお宝を回収に向かったがもぬけの殻だったのだ。
競売進行者を拷問して得た情報によると、数時間前に一人の男がやって来て出て行った時には全て品物は無くなっていたと。
「団長よ、あまりにもタイミングが良すぎる。まるで俺たちが盗みに入ると知っていたみたいだった……いるんじゃねぇか俺達の中に
彼らはお互いのことを疑っていた。
だからといってここで殺し合うわけにもいかない、故に団長に意見を求めていたのだが。
『いや……それは考えられない。裏切り者がマフィアに俺たちを売るメリットがないからな。例え売ったとしても得れるのはそれなりの金や名誉、地位…………そんなものにオレ達の誰かが満足するか?』
それを否定する団長の言葉にウボォーギンや周りの団員も少し考える。裏切るメリットはあるのか、と。
結論はあっさりと出た。
「……さすがにそんな奴はいねぇな」
『他に考えられるのは俺たちに最も近くて遠い存在である……ルメーネくらいか。マチからの報告ではこの街に来ているそうだが』
団長であるクロロから出た妹分なら可能か、と言う言葉にウボォーギンは多少語気が荒くなる。
「俺の妹がそんな真似をすると思ってんのか、クロロ」
『安心しろ、俺たち以上にあいつは有り得ない。何故ならオレ達に本気で対処するというなら警備を厳重にした上でルメーネ自らが警備に入っていないとおかしいからな』
「確かにそうだな、警備も薄ければ競売に来ていた連中も丸腰だった。俺たちが来ると知ってればもう少しは歯応えある対応になってたろうよ」
『つまりだ、情報提供者は確かにいるがオレたちが襲うということを知らない。あくまで襲撃があるという情報だけが向こうに伝わっていただけ』
団長の言葉を聞いたウボォーギンは先程伝え忘れたことを話す。品物を運んだと思われる一人の男の正体はマフィアンコミュニティーを仕切る“十老頭”の部下である“陰獣”のメンバーであると。
『そうか……なら、お前達を追って来ているマフィアを適当に倒していたらいずれ向こうから現れる』
「
『もちろん』
団長からの許しを得て、ウボォーギンは電話を切る。戦闘狂である彼にとって先程の制圧はつまらなかった、しかし陰獣が出てくるとなれば多少は楽しめそうと上機嫌になる。
場所はヨークシンから離れたゴルドー砂漠の岩壁で囲まれた地帯。逃すまいと数百名もの様々な組のマフィアが集結していた。
ある者は怒声をあげ、ある者は威嚇のために銃を空に乱射。しかし旅団は当然ではあるが驚くどころか反応すら示さない。
その様子を遠くから彼女も見ていた。
「うんうん、馬鹿だよね。兄貴達に敵うはずがないのに……そういえば誰がこれに参加してたんだろ。兄貴に、フェイ、シズク、フラ兄、シャル、マチ、ノブもいるじゃん」
少し見守っていると、ウボォーギンがマフィア達の前に立ち塞がり何かを話している。すると話していたマフィアが彼の命を取ろうと銃撃。
だがそれで死ぬほど彼女の兄貴分は甘くはない。
「うわぁ歯でキャッチするとか魅せるね……私なら拳銃の種類にもよるけど歯が折れそうだよ」
そこからは哀れな光景が広がった。
拳銃を撃った男は軽く頭を小突かれて即死、それを見た周りのマフィアも急いで構えるもウボォーギンの鋼の肉体にはまるで通用しない。
千切っては投げ、千切っては投げの文字通りな一方的虐殺にさすがのルメーネも哀れみの目で見ていた。
「これは酷い……あれは」
マフィア側も用意していた
機嫌を悪くした彼は【凝】で遠くいるスナイパーの位置をある程度把握し、拾った石を壊れない程度の力で投げつける。
ルメーネが石の行方を見ていると、一人のスナイパーの胴体を貫通、もう一人は顎から右頬にかけてまでが吹き飛ばされていた。
「グロ映像注意〜! って感じね。流石にただのマフィアでは兄貴には傷ひとつつけられていないみたい……ん、アレって対戦車用のバズーカ!? 凄いもの持ち込んでるね!」
マフィアが持ち込んだ切り札に彼女も驚く。小型ミサイルの破壊力を彼女自身も体感しようとするも人体の欠損は避けたい彼女は最終的に諦めたそれを自分の兄貴分へと向けられている。
動きたい、そう思うもすぐに彼女はその精神の乱れは治る。何故か、それはウボォーギンが残念そうに右腕をマフィアへと向けているから。
「俺は戦車と同等の評価かよ」と言いたげなウボォーギンの顔を見てルメーネは自分の兄貴を信じきっていないことを恥じた。
「クソが!! 死ねェェェィ!!!!」
ウボォーギンの余裕に対して確実に仕留めようとマフィアは対戦車ミサイルを発射。その直後、黒みのある閃光が辺りを照らし、耳に響く鈍い音と濁った空気がルメーネのいる岩場まで吹き届く。
「兄貴……」
ミサイルが当たる直前にウボォーギンが【堅】を発動し防御力を上げているのを確認した彼女はどうなったかを気にする。
しかし戦場から遠く離れた岩場から目撃していることと爆破による黒煙が重なりその姿が無事なのかどうか確認できないでいた。
マフィア達はミサイルの破壊力に仕留めたと自信があったのか「やったか!?」とやられ役定番のセリフを吐いていたが時間が経つと煙は晴れてその姿が現れていく。
ウボォーギンは火傷などのダメージを受けているが五体満足、欠損箇所もなしで「さすがに痛ぇな」と一言で済ませていた。
「…………はぁ、普通はミサイルなんか受けきれないよ。兄貴は相変わらず規格外の男だなぁ」
彼女にとってウボォーギンは敬愛する兄貴分であるが、ミサイルをほぼダメージ無しで抑えてしまったことには有り得ない、と言いたげな顔で引いているのであった。
そしてウボォーギンに対して完全に恐怖して殺意が消滅してしまったマフィア達は自分だけでも助かろうと必死に逃げ出すもそれを逃す彼ではない。
再開される虐殺は彼らの悲鳴が止むまで続いた。
虐殺が終わり辺りに散らばるのは先程まで元気に威嚇をしていたマフィアの死体。それもウボォーギンの馬鹿力によって体が千切れ、部位を潰され、人の姿を保つものは少ない。
その時、最後の一人を仕留めたウボォーギンの元に近づく三人の男達がいた。
ルメーネはその正体をすぐに察知する、彼らは“陰獣”であると。
それぞれのオーラは鍛えられし念能力者のもの、間違いなく幻影旅団であっても三対一で戦い方さえ工夫すれば倒すことは不可能でないと彼女は考察した。
ウボォーギンが競売品はどうしたの問い、陰獣もまた聞きたいことを問うのを繰り返しているとお互いが構える直前、地面の方から奇妙な体型をした男が現れウボォーギンの左頬を念を込めた右ストレートでぶん殴る。
「陰獣が四人…………でも、兄貴をぶっ飛ばすにはもう少し鍛えておかないといけなかったんじゃないかな。ほらグシャグシャになってる」
ウボォーギンの肉体の強さは念を込みにすると先ほどのように小型ミサイルすらも耐えてしまう頑丈さだ。鍛えた念能力者の拳であってもそれは同じ……彼に手を出した陰獣の一人である“
殴りつけた自分が痛みを味わうことに動揺した蚯蚓はウボォーギンがお返しと殴りに来ていたのことに反応が遅れた。
たった一撃のパンチを顔面で受けてしまった彼の顔から右の目玉が飛び出してしまう。
だが陰獣もただではやられない、攻撃を受けたためか冷静さを取り戻した蚯蚓は折れた右手でウボォーギンの左手首を掴み地面へと潜り込むのであった。
「……あの見た目から蚯蚓を意識していたけど本当に地面に潜り込むなんて。能力のために見た目から合わせた感じかな……これが他のメンバーなら危険性があったけど、ウボォーの兄貴には相性が悪かったね」
彼女は蚯蚓に対して憐れむ。
その直後であった。ウボォーギンは体勢を崩された状態の中、自由になっている右腕にオーラを集めその拳を自身の真下にいるであろう蚯蚓を狙い振るった。
地面に叩き込まれたであろうオーラの衝撃波が半径数メートルの地面を崩壊させ真下にいたはずの蚯蚓の姿はもうない。その破壊力に彼女は相変わらず凄い威力だと感嘆していた。
同じ陰獣がやられたにも関わらず他の三人は冷静なままウボォーギンと対峙する。だが違和感を覚えた彼女はその様子を深く観察した。
「(…………こいつらにあった余裕が少し消えている。まさか蜘蛛の刺青を見られたか?)」
もしもの時のために動こうかとしていると事態は進む。陰獣の三人が同時にウボォーギンへ攻撃するために迫ったのである。
対するウボォーギンも楽しげな笑みを浮かべて中央にいた赤いジャージを着たひと回り小さい男へ拳を振るう。
が、その拳は届かない。
突如、男から伸びた無数の毛がウボォーギンの腕に突き刺さりその衝撃と威力を殺してしまったのだ。
確実に仕留める気で放つ拳を止められたために生まれた隙を突き、細身の男がミサイルさえも耐えた鋼鉄並みの肉体を持つウボォーギンの左肩の肉を食いちぎる。
「嘘でしょ、兄貴の肉体を……ちょっと私もアイツらを甘く見ていたみたいね。でもすぐに死なない辺り毒は致死性はない神経毒かな」
ルメーネは陰獣のレベルを見直していたが一つだけ評価できない点があった。それは牙に仕込んでいるであろう毒について。
まだ判明はしていないが暗殺業も請け負う彼女からすれば攻撃した男、“
そして相手は幻影旅団と判明してはいないとはいえ地下競売を狙う集団相手なら拷問を捨てて僅かな量で致死量になる猛毒を用意するべきだと残念そうにしている。
自分の攻撃をさせず相手にやられる戦いに機嫌を悪くするウボォーギンは右腕に毛を刺す男“
棘だらけだった豪猪の毛が仲間に当たった時にはモジャモジャの塊となりクッションとなっていたのだ。
その隙を病犬も見逃さず、左腿の肉を食いちぎり着実にウボォーギンへダメージを与えていく。
するとウボォーギンの様子がおかしくなり、ドスンと座り込んでしまった。
「やっぱり神経毒か……! 動こう!」
嫌な予感がした彼女は数キロはある岩場まで急いで走る。もちろん地面を走らず、空を進む。
座り込んだ彼にまだ攻撃を仕掛けていない男、“
【凝】で集中してみた彼女はそのヒルが尿から大量のヒルを放出するマダライトヒルと見破っていると蛭が何かを嫌味ありげな風に話しかけているとウボォーギンは蛭の顔を食いちぎった。
何が起きたか分からない、そう言いたげな顔で蛭は倒れる。脳を欠損し、血を噴き出したことで死亡は間違いないだろう。
一人減ったかと思えばウボォーギンは口に空気を溜めて何かを噴き出す。その正体は先程殺した蛭の頭蓋骨、病犬もオーラを高めてガードをするも簡単に貫かれそのまま顔面に突き刺さり後頭部まで貫通した。
次は自分がと身構える豪猪、弾丸であろうと念の拳であろうと防御に自信がある彼は何が来てもいい状態にしていたが。
「は!!!!!」
想定外の音による攻撃は豪猪の鼓膜を突き破り、その衝撃によるショックで心臓は耐えきれずに死亡してしまった。
「くっそ〜、やっぱり兄貴の声うるさい! 耳がイカれちまいそうだよ」
しかし陰獣四人を返り討ちにしたウボォーギンの無事に安堵した彼女はマダライトヒルをなんとかしようと向かっている途中、目撃してしまった。
それは大切な友人であり、大切な昔馴染みの敵である男。
「…………クラピカ!」
今回は以上になります!
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作者の文章作成へのやる気向上になります。
ウボォーギン対陰獣、今考えても猛毒さえ仕込んでさえいれば間違いなくウボォーギンは仕留めることができたはずです。もったいない。
でも襲撃者の情報を得るために拷問は必要だったのは理解できます。