ルメーネ=マーキュリーはウボォーギンに体内にいるヒルをなんとかしようと向かっている途中、最悪の相手を見つけてしまい隠れていた。
それはハンター試験を共にクリアし、短い間であったが長いと思わせる交流をしたクラピカがいたからである。
彼の持つ旅団に対する復讐の重みは最初の出会いの時から薄々は察していた。そしてついこの間、再開した時のクラピカの念を見た際から常に抱えていたある疑念が生まれる。
クラピカはすでに“制約”と“誓約”を知っているのではないかと。
制約と誓約、それは念能力の威力や精度を高めることを可能とする一種の枷である。
“制約”、それは能力そのものに対してルールを設ける事。ルメーネの場合ならば【千変万化】は自分が研究し知識を身につけなければオーラをその性質に変化させることができない。
“誓約”、それは己自身に対する覚悟から生み出すことができる信念の力。しかしその力を得るためには失うものも多い、自暴自棄となり自分の寿命などを捧げるなどの誓約をしてしまった者の末路は悲惨である。
だからこそ旅団に対する強い恨みを持ち、自身の破滅さえも恐れないであろうクラピカを彼女は深く警戒していた。
「(揉めている……クラピカは入ったばかりのひよっこだから上司に止められている感じかな)」
クラピカとその上司ダルツォルネはお互いに気が立っており、すぐにでも衝突するところであったが突然二人を含めた周囲の仲間たちが足を止めた。
その理由は笛を吹く女性、センリツが奏でた演奏にある。彼女は演奏の音にオーラを乗せて様々な効果を発揮することができるのだが、今回の場合は緊張を和らげるリラックス効果。
落ち着いたからこそクラピカはダルツォルネに勝算があることを説明し、それを実行に移した。
対する旅団側は狙われているとは知らず、呑気なもので病犬が仕掛けた神経毒を抜こうとシズクが向かい、蛭の出したマダライトヒルの卵を対処するためのビールを盗むようにシャルナークが指示を出していたのだが……
突如、“ジャラ”と鳴ったかと思うとウボォーギンの首や脇下などあらゆる箇所に鎖
が巻き付いていた。
その様子を彼女は見ていることしかできない。
この場面で下手な手出しをすればどうなるか分からないからだ。念能力はその人個人が決める力、簡単に命を奪うことすら可能。
もしも彼を縛る鎖が生命と繋がっていた場合、破壊することで彼の命も失われる危険性を孕んでいるがために手を出せない。
だが分析を彼女は怠らない。
手出し出来ないならばとクラピカの能力をおおよそでも能力の把握をしようと見続けていた。
「(前に見た時よりも鎖が大幅に伸びている点から具現化系なのは確定……兄貴が気づかなかったのは【隠】だろう)」
そして事態は動く、ウボォーギンに巻きついた鎖がクラピカの元へと戻ろうと彼ごと連れ去っていった。
「(兄貴!? 間違いない、あの鎖にはかなりのパワーを込められているね……兄貴を捕まえたあの鎖は“旅団専用”などの制約を使用しているな)」
ウボォーギンが連れ去られたのを見たルメーネも冷静にクラピカ達の後を追う。旅団もマフィアが乗ってきた車で追いかけるが彼女は空から直線で追いかける。
その途中、旅団がいる方へと向かっている六人の男達の姿を見かけたルメーネはそれが現在生き残っている陰獣のメンバーであると推測。
陰獣と戦闘するのは旅団メンバーへと任せて、彼女は空からじわじわとノストラードファミリーの逃亡先を追い詰めていく。
彼らが逃げた先のビルはノストラードファミリーが持つ幽霊会社。その地下にある部屋は普段から拷問やらで使用されているのかウボォーギンの巨体すらも寝かせれるベッドに彼を寝かせて鋼鉄のワイヤーなどで拘束。
それに加えて筋弛緩ガスを通常の数倍の量を与えることで彼の身動きを完全に封じた。
「よし、これでコイツは何もできない。コミュニティに連絡する前に少しでも情報を得るためにも……おい、起きろ!!」
ダルツォルネの怒声に男はゆっくりと目を開く。自分が今どんな状態を把握しようとしているのだろう。
「聞きたいことがある、お前らが盗んだ競売品はどこへやった? 隠しているのか?」
「…………今何時だ。どのくらい寝ていた?」
捕まって拷問されているはずの男はそのようなことを気にするそぶりもなく、あっけらかんと逆に質問をしてたことにダルツォルネは怒る。
「どうやら立場を分かっていない様だ……質問は俺がしている! 質問で返すな!!」
拷問に用意した刀で一突きし苦しめようと振り下ろすもウボォーギンが少しオーラを出し防御したことにより持っていた刀はあっさりと折れてしまった。
その事実に残りの組員は当然としてリーダーであるダルツォルネや捕まえたクラピカまでもが動揺を隠せない。
「なっ!?」
「(何という精神力だ……普通であれば拷問を受けている人間はこうも安定したオーラを纏えない。動揺や焦りは一切ない……それだけこのような場面に慣れているということか?)」
動揺している中、ウボォーギンは自身の現状況を予測を立てながら組員を睨みつけて、話しかける。
「取引をしねぇか、今ならお前らの命くらい助けてやる。だからこれを外せ」
「ふざけるんじゃねぇ! 競売の客を消して品を盗んでいった連中の言うことなんて聞けるかよ!」
「残念だったな。俺らも競売品の在処を探している……だから興味のないお前らを殺す必要もないから提案しているんだ」
「ちょっと待って、探しているって……
「俺らが暴れた後の金庫は空だった。持ち去ったのは“陰獣”のメンバーって話だ。まぁお前らのような末端組織には伝わってないみたいだがな」
「…………嘘は言ってないわ」
ミュージックハンターと言われるセンリツは相手の心音から嘘をついているかどうか分かる。そして今回のウボォーギンの発言、その心音は間違いなく本気でそう言ってると彼女は仲間に伝えた。
これが幻影旅団なのかと組員達は恐れた。
「まぁ勘違いは誰にでもある。俺たちはまだ何も盗っちゃいねぇからよ、ここは一つ穏便にいこうじゃねぇかそうすればお前達くらいは助けてやる」
「……会場にいた客はどうした。そこには我々の仲間もいたのだが、答えろ」
「そうか、そいつは悪かったな。全員殺した、そういう予定だったんでな」
進むだけで被害を起こす災害のような男の身勝手な発言にクラピカは怒りを我慢できず、拳を握り締めそして顔面を殴りつけた。
「貴様らの勝手な行為でどれだけの命を奪った!?」
だが男は激昂するクラピカをニヤリと微笑みながら見つめるだけ。もう一発叩き込もうと拳を握ったところを他の組員に止められる。
取引は不成立、ウボォーギンをコミュニティへと引き渡すことになりクラピカ達組員はビル内にて待機することになった。
それからダルツォルネは幻影旅団のメンバーを一人捕まえたとコミュニティに連絡、その際に電話の男から“陰獣”は全滅したと伝えられると彼も顔を青くする。
間近で四人の陰獣がやられただけでなく残りの陰獣の全滅。旅団の実力の高さと恐ろしさを思い知らせるのに時間はかからなかった。
「……これからコミュニティの連中があの男を受け取りに来る。お前達はしばらく上の方で待機しておけ」
「リーダー、少し出てもいいだろうか」
「それは今でないといけないのか?」
「当然だ」
「…………分かった。その代わり早く戻ってこい、いつ他の奴らがここを嗅ぎつけるか解らないからな」
「了解した」
クラピカは捕まえた旅団の別メンバーであるヒソカと繋がっている。全ては最大の目的である旅団を潰すために。
何故旅団であるヒソカは仲間を売ろうとするのか、それは分からない。だが現役旅団員からの情報提供は限りなく有利に進めることが出来るためにクラピカはヒソカのいる場所へと向かった。
一方ダルツォルネはコミュニティのメンバーがやって来るまでの間、ウボォーギンのいる部屋にて監視をしようと戻るのだが。
何故か嫌な予感がしていた。
「(なんだ……誰もいないはずだ。なのに何故ここまで寒気がする? あの男が自由に動けるはずはない、はずなのだが)」
「どうした、随分と恐怖しているように見えるぜ」
「黙れ……!」
「は! 余裕がないな。だがその予感ってやつはちゃんと当たっているぜ、ついてなかったな」
「何!?」
ダルツォルネが【練】でオーラを増やした瞬間、彼は今いる位置と真逆の方の壁へと叩きつけられる。
「グハッ!!」
「やっぱりお前もあの場所に来ていたか、スナイパーを殺った時に見えていたぜ。本当にお前は可愛い“俺の妹”だ」
ダルツォルネがなんとか身体を起こし、男の見ている方を見るとそこにいたのは黒いローブを身に纏い、顔をマスクで隠した人間が立っていた。
「何者だ……貴様も幻影旅団か!」
「かはは…………蜘蛛ではないなぁ。私は“ヘルメス”、依頼をくれればなんでもこなす仕事人と言えば分かるかな?」
「なっ!? ヘルメスだと、貴様があのヘルメス……活動して数年で千を超える依頼をこなし、その失敗は七回だけと云われる!!」
「はっ、だから言ったろ。運がないってな」
「悪いけど兄貴に手を出したからには私も手加減はできない。安心しなさいな、知り合いの上司ということだから優しく殺してあげる」
「ふざけるな、これはコミュニティに対する反乱……裏切りだ!。貴様をどれだけ利用してきたと思っている……お前の家族も知り合いも皆殺しになるぞ!」
精一杯の脅しも彼女には響かない。
殺しを生業としている彼女からすれば、いずれ報いを受けるのは当然だと受け入れているから。
「ま、先に逝って頂戴な」
「ッッ!!?」
彼女が取り出したのは一際大きいリボルバー。それを彼女は心臓めがけて放つ。
拳銃で十発程なら平気で耐えるダルツォルネは狙いである心臓部に【硬】をして防ごうとするが、その防御を最も簡単に撃ち砕いた。
「カッ……」
「おぉすげぇ威力だな」
「兄貴も撃たれるかい?」
「はっ、面白ぇ。だがまずは俺の毒をなんとかしてくれねぇか、動きたくても動けねぇんだ」
「あいよー、ならちょっと兄貴の血を頂戴な。どんな毒を使われているか把握しておくからさ」
そうしてルメーネはウボォーギンの体に流れている神経毒を分析し、ペットボトルに入れた水を薬へと変化させて彼の体の毒の効果を弱めるのであった。
そして部屋にあるインターフォンが反応、そこにはマフィアと思わしき男達が映っていた。
今回は以上になります!
本当に筆の進みが遅くて申し訳ありません。
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作者の文章作成へのやる気向上になります。
次回は遂にあの戦いに行けるかなぁって感じです。