「…………一人か、感心だな。どこで死にたい? 死に場所くらい選ばせてやる」
「人に迷惑をかけない荒野がいい。お前の断末魔は五月蝿そうだ」
「上等だ」
男達はホテルを飛び出しヨークシンシティ郊外にある宝石をちりばめたような星空が見える岩場の多い荒野に移る。
「おっ、出た出た!! こりゃ本当に真っ白だな、これ全部ヒルの卵ってか!?」
ウボォーギンの小便から出てくるのは尿だけでなく陰獣から仕込まれたヒルも一緒に飛び出ている。
先日の夜中から酒を飲み続け排泄することでヒルの卵が孵化する条件のアンモニア濃度を満たしていないため卵のまま排出されたのであった。
「待たせたな。……一つ聞きてぇ、お前は何者なんだ? お前からは何か特別な意志みたいなものを感じる。並みじゃねぇ」
クラピカは戦闘に備え、動きを良くするため上着の一部を脱ぎ捨てる。
「その質問に答えるならばこちらも聞きたいことがある。殺した者達のことを覚えているか」
「印象に残る連中ならな。やっぱり
「アイツ……?」
「クルタ族だ」
ウボォーギンは記憶の中を探るもクルタ族という言葉に思い出すものはない。一族の名前だけではピンとこなかったのだ。
「緋の眼を持つ少数民族だ。5年ほど前に貴様ら幻影旅団に襲われ壊滅した」
「5年前なら俺もいたはずだ……だが記憶にねぇな」
罪の意識がまるでない、反省する素振りもない
「関わりのない人間を平気で殺す時…………お前は一体何を考えているんだ?」
「別に何も」
「クズめ、死で償え」
クラピカの殺意が限界を迎えたと同時にウボォーギンもオーラを爆発させる。お互い戦闘体制に入ったのだ。
「そんじゃいくぜ!!」
先手を打ったのはウボォーギン。
オーラを込めた右腕を地面を削るが如く大きく振り上げる。するとオーラによって土煙となった地面がクラピカの方へと襲いかかった。
「(目眩しか……【
怯むことなくウボォーギンが居たであろう位置に鎖を放つも手応えはない。それだけではなく先程までいたはずのオーラが一切感じられなくなったのだ。
「(……【隠】!?)」
見失ったウボォーギンは既にクラピカの背後へと回っていた。クラピカも突然感じた強力なオーラを感じ取り咄嗟にガードをするが……
「がっ!?」
ウボォーギンの放つ【
「悪いが最初っから全力だ。お前は遊んではいけないとアイツの勘が言ってる、油断はしねぇ」
「(この前の戦闘から油断をしやすい相手だと考えていたが、こちらの考えが甘かったか! それよりも奴に入れ知恵した者がいるのは厄介だ……周りにはいないな)」
クラピカは土煙が舞う中で【
その様子をウボォーギンは【凝】で観察。
そしてそれは岩場で気配を消している彼女も同じ。
全力の【
私でさえ耐えることができない攻撃をこうも簡単に修復できるクラピカの能力に一種の恐怖すら覚える。
わずか数秒で彼の腕は元通りだ。
でもこれで確信できたよ……クラピカ。
貴方……“特質系”だったんだね。
戦闘が始まった瞬間、黒のアイコンタクトの裏の眼の色が変わった。
それからクラピカから溢れるオーラの量や質が濃く深みが増し量が大幅に増えていたからまず間違い無いだろう。
特質系能力と制約と誓約を組み合わせることで兄貴の攻撃を耐えて簡単に追い詰めることができるクラピカの才が恐ろしい。
でも兄貴は負けないよ。
「はっ、やるじゃねぇか。俺の一撃を耐えるだけじゃなく回復するとはな……次は決めるぜ」
「これが貴様の全力か? ならば問題ないな」
「…………言うじゃねぇか」
煽りに集中を僅かに切らしたウボォーギンの攻撃のラッシュをクラピカは次々と回避する。
しかし油断していないためか防御で精一杯。
クラピカの体力はじわじわと削られていた。
「そら、もう一発いくぞ!!!!」
ウボォーギンは先ほどと同じように土煙を巻き上げて【隠】を使い気配を断つ。
先ほどと同じ目に合わないようにとクラピカは土煙から抜け出すために真上へと跳躍。
「はっ……確かに俺の姿を見つけるならそれは正解だが、空中ならお前も逃げれねぇだろ!!」
鎖で捕まる前に決めればいいとウボォーギンは土煙を突っ切るかの如くクラピカめがけて跳ぶ。
「トドメ…………っ!?」
ウボォーギンの目に映ったのは螺旋状に彼を包み込むように展開された【束縛する中指の鎖】に囲まれていた。
「何……!?」
「私自身を囮にすれば直線的な貴様は罠にかかると思っていた……これで捕獲完了だ」
私は焦っている。
兄貴は油断してはいなかった。
確実に仕留めようと攻撃を仕掛けたのにそれをクラピカが逆に利用することで兄貴が逃げられないようにされてしまった!
兄貴はもうこのままだと助からない。
クラピカに逃す理由はない、生かす理由がない。
私は必死に考える。
兄貴を助けるにはクラピカの鎖を砕くしかない。だが制約と誓約で強化した鎖を砕くことは可能なのか……分からない。
だから私はこんな手しか思いつかない。
兄貴のためなら…………私は。
命も惜しくはない。
「くそっ……千切れねぇ!!」
「無駄だ、この鎖はお前達の為だけに使用すると決めた能力。捕まえた相手を強制的に【絶】の状態するこの鎖に抵抗は不可能」
「(ルメーネが警告していたのにこのザマか)」
「「──ッ!?」」
その時、クラピカとウボォーギンは天から何かが迫ってきているのを感じ取る。
先程までのやり取りよりもはるかに強力で恐ろしさを持つオーラを膨らみを。
クラピカは要注意する。
得体の知れないナニカがこちらに来ている、もしかしたら幻影旅団のメンバーかと身を構えた。
ウボォーギンは察した。
この状況で来る味方は一人しかいない。
仲間の誰よりも情が強く、強がりな面を見せるが実は寂しがりやな性格を持ついつまでも可愛い妹分。
ルメーネ=マーキュリーがここに来ていると。
「兄貴ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!」
叫んでいた。
兄貴を助けようと私は必死になる。
確実にあの鎖を砕くためには私の持つオーラのほぼ全てを注ぎ込むしかない。
私の手刀の切れ味は名刀を遥かに上回る……それを数十倍のオーラを込めた一撃だ。
【
私の一太刀は兄貴を束縛する鎖を断ち切った。
はぁ……はぁ……なんとか切れた。
これで兄貴は逃げるも戦うも自由だ……ぁ、クラピカがこっちに来ている。
当然か、敵の追加は排除しないといけない。
ただ私が旅団のメンバーが分かっていないからか念を込めた蹴りで済ませるつもりなのね。
それは受け入れよう。
復讐の邪魔をした私の報いにしては軽いが。
それでも兄貴には一言だけでも伝えなきゃ……私は兄貴に逃げてほしい。そして全員でクラピカを倒すように向かってほしい。
いくらクラピカでも大人数相手ならそう簡単に勝つことはないはずだ。
だから伝えないと。
「兄貴…………絶対に勝って──」
あれ? 何で私……逃げて、って?
あれ……アレ…………ナンデ?
そこで私の意識は途切れた。
妹の願いは兄の勝利。
遅くなり、短く申し訳ないです。
次の話でクラピカ対ウボォーギンは終わる予定です。