「兄貴…………絶対に勝って──」
そう言って妹は遠くの岩壁まで吹き飛ばされていった。念で防御をしないで何故……!
間違いなく動くどころか意識自体失っているだろう。無茶しやがる……
だがお前に救われたこの時間、無駄にしねぇ!!
「第二ラウンドだ……!」
「何故だ、何故に仲間を気にしない。貴様を命懸けで助けた仲間に対してその態度をとれる?」
「決まってるだろうが、アイツは俺に勝てと言った。蹴りなんかガードもできただろうに俺に伝えるのを優先したアイツの覚悟に俺も応えるだけのこと!!」
鎖野郎は俺の答えを無視し、俺を拘束していた鎖を此方に向けてくるがもうやられねぇ。
ウボォーギンは【束縛する中指の鎖】に絡まれる前に念の鎖を引っ張り、クラピカを自分の元へと引き寄せた。
「なっ!?」
次の瞬間、クラピカの腹部に【超破壊拳】が炸裂。念によるガードを突き破る破壊の一撃がクラピカを遠くの岩盤まで吹き飛ばす。
クラピカの動きが鈍る中、ウボォーギンは岩の礫を彼のいるであろう箇所に岩の豪速球を投げつけた。
「拘束される前にぶっ飛ばせば意味ねぇな!」
全身を怪我したクラピカは【癒す親指の鎖】で治癒に専念するもウボォーギンから放たれる高速の岩で身動きを取れずにいた。
土煙が舞い、敵の気配を察知できない彼は冷静にあたりを見渡す。しかし、何も感じない。
「どこだ……どこから来る」
すると突然、背後の岩壁の方から何か音がする。
まるで何かが砕けているような音だ。
「まさか……!」
嫌な予感がしたクラピカは後ろに跳ぶと壁からウボォーギンが現れる。咄嗟に念のガードを行い、彼の拳を防いだ、はずだった。
威力を殺せてもその衝撃までは逃せない。
クラピカは拳の衝撃だけで別の岩場へと飛ばされていた。
「(【隠】で気配を消しながら岩を掘り進んだ上でこの威力……かなりの念能力者だ。これが旅団随一の戦闘員の実力!)」
「…………?」
先程のように石が飛んでくると予測していたクラピカは警戒していたが何も起きない。不思議に思った彼は辺りを見渡すと先程、ウボォーギンを庇った仮面の人間が倒れていた。
「チッ……飛ばす方を間違えた」
「(奴にとっての弱み……盾にするか動揺を誘うか。さてどうする、これが旅団のメンバーかは不明のため【束縛する中指の鎖】を使用はできない)」
選んだ選択は、投げつけるであった。
「っ!!」
妹を全力で投げ飛ばされたのを見たウボォーギンは人質が消えた鎖野郎を始末せず、妹の方へと動いてしまう。
妹が命懸けで兄を救おうとしたように、
彼もまた妹の死を見たくないから。
「何故だ」
その様子を見たクラピカは激怒する。
“緋の眼”がコンタクトで隠すことができない程に。
「その眼は……そうか思い出せたぜ。キレると眼を赤くする奴等か、あいつらは強かった。お前はそれの生き残りってわけだな」
「そんな事はもういい……! 貴様は他人を殺すことに対し何も感じないと言った。だが、その割には随分と仲間意識が強いみたいだな!!」
幻影旅団は目的以外にも快楽的に殺人を行う非情的集団とクラピカは考えていた。それはあの問答でも確信する程に。
そうであったが仮面の人間を助けに動いた事で考えがぶれた。コイツらにもまた仲間への想いがあると感じてしまったがために。
ならば何故、お前らはその気持ちを他者へ向けれない⁉︎
怪我を完全に治癒したクラピカは怒りに身を任せウボォーギンへ肉弾戦を仕掛けた。
「はっ、いい眼だな!!!」
肉弾戦を得意とするウボォーギンもそれに合わせて攻撃をするも何故か手応えがない。
殴っても蹴っても相手が怯む様子がないのだ。
対してクラピカの拳はウボォーギンの脇腹などにめり込み、表面だけでなく内側までダメージが溜まる一方。
着実に敵を追い込んでいた。
「もう貴様との戯れは終わりだ!!」
クラピカは空中へと跳び、一度はウボォーギンを捉えた【束縛する中指の鎖】を螺旋状に展開する。
二度と破られないように自身の持つオーラの多くを注ぎ込むことで敵を逃さない。
「なるほどな、これを破れなければ俺の負けか! だったら…………俺も全てを注いでやる!!!」
そう言い終えた瞬間、ウボォーギンは消えた。
「ッ!?」
気づいた時には目の前に奴がいる。
「(まさかオーラを脚に溜めて距離を詰めたのか! だが先程までのパンチであれば……)」
クラピカは油断していたわけではない。
最大限の警戒をした上で準備を終えている。
それでも、そうであっても予測を超えていた。
「感謝するぜ、アイツの警告がなきゃ俺はすぐに終わってた。こいつを試すことなく、な!!」
クラピカに見えるのは跳ぶ時に集めたであろう脚へのオーラ、そしてそれ以外のオーラは必殺の拳を打つ時と同じ右腕に集中していた。
違いは、それが【硬】であるか否かである。
「【
ウボォーギンが放つ、全身全霊を込めた一撃はその余波だけで辺りの岩場に亀裂を走らせる程である。
男の前には一人の青年が倒れ伏していた。
「そうか────
ウボォーギンの身体には鎖が巻きついていた。
幻影旅団を逃がさないというクラピカの恨み・執念が込められた鎖は彼の力の源を奪いとる。
「少しでも……回復が遅れていたら……ガハッ」
対するクラピカも満身創痍。
鎖で繋ぎながらも身体は起き上がる様子がない。
彼がウボォーギンの攻撃を耐えることができたのは【癒す親指の鎖】を服の内側、全身に巻き付け回復をしながら攻撃を受けることで死亡までいかなかったからであった。
そうであっても瀕死まで追い込まれたウボォーギンの一撃は恐ろしいものである。
「素晴らしい一撃……だった。だが完治した」
「くそが…………!」
「やはり最初に戦うのが貴様でよかった。私の【束縛する中指の鎖】が旅団全員に通用するか分からなかったからな……その肉体の力で破れないところをみると心配は無用のようだが」
クラピカは拘束されたウボォーギンの真正面に立ち、オーラを込めた左拳を脇腹へと叩き込む。
オーラで防げないウボォーギンは骨を砕かれ、内臓も損傷し血反吐を吐いた。
「ここからは私の質問に答えてもらおう」
「殺せ」
クラピカは左腕を砕く。
「他にいる能力者の能力は?」
「殺せ」
クラピカの拳は止まらない。
「…………ゲホッ」
「あぁ、不快だ。手に残る感触、耳障りな音、血の匂い……全てが不愉快だ。何故貴様らは何も考えず! 何も感じずにこんな真似が出来る!!」
「こ…………殺せ」
終わらぬ問答にクラピカは切り札を切った。
これは鎖を刺した相手にルールを定め、それを破ると心臓部に埋め込まれた鎖が相手の心臓を破壊する生か死を強制する能力である。
「さぁこれが最後だ…………これを守ればそこにいる仲間共に生かしておいていい。他の仲間はどこにいる?」
「…………………………」
すまねぇ、ルメーネ。
お前は俺に昔からお前を巻き込んで馬鹿なことをやっていたが……最後まで俺はお前に色々な傷を与えちまった。
もう二度と会うことも話すこともできねぇ。
だがお前は俺みたいにすぐ死ぬな。
お前はまだ俺達とは違うはずだ。
だから──
「──生きろ」
「どうした、早く答えろ!!」
「はっ……くたばれ、馬鹿が」
幻影旅団随一の巨漢、そして頼れる兄貴分であった男。ウボォーギンの命はここで潰えた。
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今回は以上になります。
2週間かかってしまい申し訳ありません。
これからも時間がかかるかもしれませんが、作り上げるのは諦めないので長い目でよろしくお願いいたします。
ここは流星街にあるゴミの山の一箇所。
そこにはアフロで大柄の男と幼い紺青色をした長髪で眼の隠れた少女が対立し睨み合っていた。
「あぁ? なんだクソガキ、ここは俺様の領土だ! さっさと出ていきやがれ……それともぶちのめされたいか!!」
「うるさい」
男は自分の脅しに屈せず立ち塞がる幼い少女に我慢をせずに怒りを込め、その拳を振るう。
だが当たる寸前で少女は意識してやったのか不明であるが拳を受けると同時に拳の方向へと顔を背けて衝撃を和らげる技術“スリッピングアウェイ”で威力を殺していた。
「あ?」
「次はこっちの!」
少女の拳はぺちりと男の顎を捉えるがその威力はまるでない。だが男は目の前にいる少女に殴られたことに腹を立て攻撃をするが効果なし。
最終的にはお互いに疲れ果て、二人は夜まで仰向けで倒れていた。
「……クソガキ」
「クソガキじゃない……」
「俺からすりゃ名も知らんお前はクソガキだ」
「…………ルメーネ」
「覚えねぇぞ」
「歳上のくせに拳を当てれない男」
「なんだその言い方……ウボォーギンだ」
「ウボォー」
それからは毎日、喧嘩三昧であった。
少しずつお互いの動きを理解したのかその喧嘩は長引きギャラリーが誕生するほどである。
「…………なんで俺のところにいつもくる」
ウボォーギンは疑問であった。
自分に挑む人間はなかなかいない、すぐに怪我をするからだ。それなのに目の前にいる少女は毎日やってくる。
「だってウボォーと遊ぶの楽しい」
「けっ、喧嘩が遊びとは変わったガキだ」
それからもウボォーギンとルメーネの二人が出会うたびに喧嘩が起こるのであった。
そしてとある日。
「よう、今日もやるか」
「うん」
この日も二人は疲労で動けなくなるほどの時間を喧嘩で過ごす。もちろん、お互いに怪我はない。
「相変わらず……よく避けやがる」
「見えるんだもん……ふぅ」
「まぁいいか、それよりもう日が暮れる。さっさと自分の家とかに帰るんだな」
「ない」
流星街はあらゆるものが廃棄される街である。生まれつき彼女には家族と呼べる人がいなければ、住む場所もない。
雨風凌げる家のようなものはなくゴミ山で隠れ家を作るのがやっとなほどだ。
幼き少女にはまだどうにかする力はなかった。
「…………だったら泊まるか?」
「え?」
常に一人で徘徊して生きていた生活とは違う、誰かと共に朝まで過ごす。
それは彼女にとって素晴らしい提案だった。
「つっても廃材を組み立てたボロ小屋だけどな、ないよりマシ程度だから──」
「お願い…………一人にしないで」
「わーったよ、だったら行くぞ」
それから彼女はウボォーギンの小屋に無理矢理暮らすようになり、彼もまたそれを受け入れる。
それが彼女にとって初めての家族だった。
「──────あ、にき?」
そしてその兄は、友によって討たれた。
原作キャラの念能力を強化したのを出してみました。
今後もあるかもしれません。