「ねぇ、レオリオ。歩いて今どんくらい経った?」
「あ〜? 知らねぇよ、歩いて2時間って言ってたけどよ……2時間なんて2時間前に過ぎちまったよ」
「それは、そうだろうな」
実際のところは2時間36分。四人は道をひたすら歩き続けて山中を進んでいた。
一本道を抜けてからはひたすら続いている道を進むだけだったためにルメーネは暇そうに、クラピカとゴンは平気そうに、レオリオは疲れと刺激がない退屈といった様子である。
「しかしまた魔獣注意の看板だぜ、この調子で会場に着けんのかなぁ」
「安心しなよ、見えてきたよ」
彼らの目の前には街からでも見えていた大きな一本杉。そしてその下にある一軒家、クイズの婆さんが言っていた夫婦はそこに住んでいるのだろうとルメーネは推測していた。
「んぁ?」
「や〜〜っと着いたぜ」
「静かだな。我々以外の受験生は来ていないのか?」
三人は呑気にしているが彼女だけは異変を感じ取っていた。家からは光が一切漏れていない事、窓が割れているのか僅かに血と獣の臭い。そして小さく聞こえてくる「キルキルキル」という鳴き声を。
(しかもこの臭いは……なるほどね、コレも試練か)
ルメーネは意図を察し、ノックをせずにドアを開ける。
「おい、勝手に開けるのは……っ!?」
「なっ⁉︎」
「うわっ!」
そこにいたのは二人の人間と一匹の魔獣。人間の方は
魔獣は女を掴みながら四人の方に向かって突っ込んでくる、彼女以外は構えるが間に合わず。ルメーネはわざと避けて魔獣にウインクをする。
乗ってあげる、と。
「助けなきゃ!」
「レオリオ、怪我人を頼む!」
「任せとけ!」
三人はそれぞれ魔獣を追う方へ、旦那の怪我を見るために別れる。彼女も追う側へ行く前に魔獣同様に旦那へもウインクをした。何がしたいのか分かっているよ、と伝える。
さすがに受験生がこちらに
(はは、ギョッとしてるよ)
「二人とも、魔獣の位置分かるかい?」
「それが、この深い森と夜のせいでよく分からないんだ」
「見つけた! あっちだ!」
ゴンが指挿した先には確かに魔獣の後ろ姿が見えた。ルメーネはゴンの視力に感心し、微笑む。
「ナイス、ゴン」
「へへっ」
(二人ともこの暗闇の中見えたのか⁉︎)
ゴンが先行して二人が少し後ろから様子を伺う。その中でルメーネだけが気づく、少し後ろの方に別の気配がある事を。
仕掛けてくるのではないのでルメーネは無視する。
「その人を離せ!」
「ケッ、力づくで取り返してみな‼︎」
魔獣の返事にゴンは驚く。そしてルメーネはその声からやはり試されていることを理解する。
(かはは、悪意のない声で話してくるからには意図があるってものさね)
ゴンとクラピカは少しだけ話す。言葉を交わせる獣を魔獣と呼ぶ事、そして目の前の魔獣は
(へぇ、クラピカは物知りだね)
人語が通じる事を理解したゴンは、さっそく仕掛けた。
「やいコラ、ヘッポコキリコーー!!」
分かりやすい罵倒に、機嫌を損ねた凶狸狐はゴンの方を向く。それに合わせゴンは思いっきり跳躍して凶狸狐の目の前まで迫る。
凶狸狐が驚き固まった瞬間、ゴンは手に持っていた釣り竿を頭に叩きつけた。
その一撃で凶狸狐は掴んでいた女性を手放してしまう。しかし、それを見ていたクラピカが女性を助けた。
凶狸狐は頭を押さえて逃げ出す。ゴンも追いかける中、ルメーネは。
「クラピカ!」
クラピカの方を向き、彼が理解してくれると信じて自分の右手首を指す。ゴンを早く追いかけるために咄嗟に考えたヒントである。数秒指した後、彼女は女性にウインクをしてゴンを追いかけた。
(手首……? この女性の手首を見ろという事か……っ!?)
クラピカは彼女のヒントを理解した。
数分かけてゴンを追いかける中、ルメーネは気づく。
(いつのまにか気配が入れ替わってる)
正面から来る凶狸狐、それは先程ゴンに頭をやられた方だ。ルメーネは立ち止まり、彼を待つ事にする。
数秒もしない内に、凶狸狐は姿を現した。
「ガキなら始末したぜ」
「嘘はいけないな。
「な⁉︎」
何を言っていると言いたげな顔でルメーネを睨みつける凶狸狐。しかし彼女はその睨みをかわして話を続ける。
「どうやらクラピカにもやられたご様子で、しかしお見事。後方から迫っていた方と入れ替わるだけでなく、気配を気づかれずに前方に回られるとは」
「……いつから気づいていた?」
「最初からです、窓から漏れている臭いとか色々と感じ取っていましたので」
「はぁ、参った参った! 全て見破られていたのなら仕方ない」
「かはは、どうも」
少しすると遠くから別の凶狸狐の声がする。呼ばれているようなのでルメーネも彼と共にそちらへ向かう。
そこにいたのは凶狸狐とゴン。
(なるほど、
合流し、二匹と二人は一軒家の方に戻る。
全員が集合した。
「何年振りかねぇ、私たち夫婦を見分けた人間は…」
「嬉しいねぇ」
「凄いね、父さん母さん」
「お見事です」
(はぇ、息子と娘だったのか)
「分かるか、クラピカ……?」
「嫌、全然……」
どうやら夫婦だと思っていたのは、凶狸狐の息子と娘だったようでルメーネは驚いている。そして夫婦を見分けれずクラピカとレオリオはさらに困惑していた。
「さてお察しの通り、我々夫婦が
「ここではハンターになれる人材か見させてもらったよ」
娘からはクラピカは娘の腕に彫っていた刺青は独身の誓いのものであると古代史の知識をもって本物の夫婦ではないと看破した点を評価される。
息子からはレオリオは気づきこそしなかったが応急処置が優れており、妻の身を案じるフリをしている彼に励ましの言葉をかけ続けた点を評価。
夫婦からはゴンの人間離れした身体能力と観察力を評価され、
「最後にルメーネ殿。あなたは最初から異変を感じ、常に警戒をしながら試練に臨んでいた」
「私たち夫婦が入れ替わりをする前から気づいておられた」
「私の入れ墨の事も気づいておられた」
「私が怪我を負った演技をしている事も看破されていた」
以上の点を持ってルメーネも合格をもらう。
「やったー‼︎」
「よっしゃ!」
「よし!」
四人は合格を貰い安堵する。
しかし、ゆっくりしている暇はなかった。
「さて、会場まで君たち四人を案内しよう。一人ずつ私達の脚に掴まってくれ」
腕を翼に変えた凶狸狐達に掴まり、四人は空中遊泳を楽しむ。しかしまだ彼らはスタートラインにすら立ってはいない。
第6話終了です!
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