「おはよ〜」
「おはよう」
初ライブから1週間。この日もいつもと同じ様に朝早くから仕込みをしている若葉と早起きして朝練の準備をする穂乃果。
「そう言えば昨日夏希からメールが来て、今週は前の学校に戻るんだってさ」
「え、そうなの!?」
若葉の突然の知らせに危うくコップを落としそうになる穂乃果。
「来週には戻って来るってさ」
「じゃあ今週は4人だね」
食器を片してからいつもの練習着に着替え、穂乃果は制服で家を出る。目指すのはいつもの神田明神である。
「おはよう」
若葉と穂乃果が着くと既に海未とことりはストレッチを始めていた。
「おはよ〜」
「おはようございます」
2人も若葉に挨拶を返す。因みに穂乃果は着替えに行っていてここには居ない。
「じゃあ始めるよ。まずはいつも通り階段ダッシュ5往復!よーい、スタート!」
穂乃果が戻って来てから軽く体操をし、若葉の合図で3人は一斉に駆け出す。3人のタイムは練習を始めた頃より良くなっている。
「今日も練習頑張ってるんやね」
「あ、希先輩。おはようございます」
若葉がタイムを測っていると巫女姿の希がやって来た。
「あの事まだ夏希君には聞いてないん?」
「ええ、まだ。その内聞いてみますよ」
若葉は少し笑いながら答える。
「そっか。信用してるんやね」
「信用とは少し違うと思いますけど、音ノ木坂では数少ない男子ですから」
話しながらもキチンとタイムをノートに記す若葉とそれを面白そうに見る希。
「だぁー!疲れたぁー」
「お疲れ様」
暫くして階段ダッシュが終わり、クールダウンを始める。朝なのでそこまで凝った練習はしないのである。
「さっき若葉は副会長と何を話していたんですか?」
「アハハハ。いつも練習お疲れ様って感じかな」
海未は若葉と希が何かを話していた所を見てたらしく若葉に聞くも、若葉は笑ってはぐらかした。
「さ、早く着替えて学校に行こ」
若葉は話を逸らすようにそう言った。
☆☆☆
昼休み。1年生の教室では凛と花陽、それに愛生人が一緒に弁当を食べていた。
「そう言えば2人とも部活決めた?あれって今週中じゃなかったっけ?」
「凛は陸上部かな~」
「私は……」
花陽は愛生人の質問に少し考える。
「スクールアイドルに入ってみたいと思ったり?」
そんな花陽の台詞を続けるかの様に凛が言う。
「え!そんな事は…ない…よ」
花陽は指をもじもじさせながら答える。
「やっぱりそうなんだね~」
「かよちゃんは昔から嘘言う時に指をもじもじさせる癖は直ってないんだね」
「うっ…」
凛と愛生人の指摘が当たっているらしく、少し下を向く花陽。
「一緒に行ってあげるから先輩達の所に行こ~」
凛は席を立ち花陽の腕をひっぱり穂乃果達の下へと連れて行こうとする。
「まぁまぁ凛ちゃん落ち着いて。まだ昼休みだよ?」
そんな凛を止めたのは愛生人だった。確かに愛生人の言う通り机の上を見ると食べ掛けの弁当があった。
「若葉先輩から放課後に屋上で練習してるって聞いてるし、連れて行くならその時でいいんじゃないかな?」
「あ、あの…そうじゃ、なくて」
「やっぱり今から行くの?」
「違くて!あ、あのね。我が儘言ってもいい?」
「しょうがないな~なに?」
花陽の言葉に腕を離す凛。
「もし私がアイドルやるって言ったら、一緒にやってくれる?」
花陽の言葉に少し考える凛。
「それいいんじゃないかな。凛ちゃんも一緒に」
「無~理無理無理無理。凛アイドルなんて似合わないよ。ほら女の子っぽくないし、髪だってこ~んなに短いし」
愛生人の台詞を途中で遮り、否定する凛。
「それにホラ、昔も」
と凛は小学生時代にスカートを履いて登校した時、クラスメイト数人にからかわれた事を話す。
「あーそれであいつら少し得意気だったんだ」
話しを聞き終った愛生人が納得の行った表情で頷く。
「アキ君どうゆう事?」
「いやね?多分同じ日にクラスの誰かが「今日星空の珍しい恰好見たぜ!」って自慢気に言ってたから」
「あーあの教室がざわついてた時の?」
「そうそう。俺も見てみたかったな~て」
「もう!アキ君もそうやって凛の事からかって!」
2人の会話にずっと黙ったままの凛がいきなり立ち上がり教室から走って出て行く。
「なになに?痴話喧嘩?」
凛のいきなりの行動に動けないでいた2人に近くにいたクラスメイトが聞く。
「いやいや痴話喧嘩って恋人とか夫婦間で行われるものでしょ」
と愛生人は笑顔で否定する。花陽はその愛生人の笑顔が無理して作っている事が分かった。
それから昼休みが終わるまで凛は教室に戻って来なかった。
☆☆☆
放課後。若葉はチラシの補充の為ポスターを貼った場所に来ていた。穂乃果達にはあらかじめ言ってあり、3人は今頃屋上で練習をしているハズである。
「取り敢えず10枚程刷ったけど足りない、なんて事はない……よね?」
少しの不安を抱きつつ角を曲がる。
「あれ?西木野さん?」
若葉が角を曲がるのと同じタイミングで、真姫がポスターの前から若葉の居ない方へと歩き出す。
「今、ポスターを取って……行った?」
「わ…若葉先輩…」
首を傾げながらチラシの場所に向かうと正面、つまり真姫の去って行った方から花陽がやって来た。
「や、花陽ちゃん先週ぶりかな?」
「そう…ですね。あれ?」
花陽はチラシの置いてある机の下に落ちている物を拾う。
「これ…」
「生徒手帳…だね」
花陽が手帳を捲ると持ち主欄には『西木野真姫』と書かれていた。
「あ、ここなら分かる」
若葉は住所欄を見て呟く。
「そ、それじゃあ」
「じゃ、一緒に届けに行こうか」
「……え?」
花陽としては若葉に任せるつもりだったので一瞬頭が追い付かなかった。
「だって拾ったのは花陽ちゃんじゃない?なら花陽ちゃんも、ね?」
「は、はい…」
若葉は穂乃果に先に帰るとメールをして、花陽と2人で昇降口に向かう。
☆☆☆
「そういえば花陽ちゃんはスクールアイドルやらないの?」
「私…ですか?」
真姫の家に向かっている途中若葉がいきなり花陽に聞いた。
「だってライブの時に観に来てくれてたし、声も綺麗だし」
「私より、西木野さんがいいと思います」
「西木野さんも誘ってはいるんだけどねー」
あははーと笑いながら答える。
「あ、あの…ごめんなさい…」
「いやいや花陽ちゃんが悪い訳じゃないから大丈夫だよ」
「はい…」
「ほらほら元気出して行こう!おー!」
「お、おー」
2人は拳を空に突き出し元気に歩き出す。
そして案の定少し迷った後で無事に西木野邸に到着した。
若「さて今回は絶賛凛ちゃんと仲違い中の愛生人君でーす」
愛「どうも片丘愛生人です。どうしたんですか?変な顔して」
若「いや、愛生人君の名字片丘だったなーて思って」
愛「酷い!この人何気に酷いよ!」
若「それは良いとして」
愛「良くないです!」
若「凛ちゃんと喧嘩、したの?」
愛「喧嘩と言うかなんと言うか…」
若「ま、ちゃんと仲直りしなね?3人とも」
愛「3人とも?」
若「3人とも……そう、3人とも大事な後輩なんだし!」
愛「今危ない発言しかけませんでした?」
若「な、何の事かな?」
愛「ハァでは次回予告いきますよ」
若「溜息吐かれた!?」
愛「若葉先輩家でも偶に溜息吐かれません?」
若「さ、予告いこう!」
愛「吐かれてるんですね…」
若「次回『花陽ちゃん意外と大胆だな〜』それじゃあねー」
愛「ちょ、そのタイトル何ですか!?」