「いや~良い湯だったね~」
「そうですね~」
皆より早く風呂から上がった若葉と愛生人はリビングの家具を退かし、布団を運んでいた。布団の場所は前もって真姫から聞いていたので、2人で協力して人数分の布団を持って来ているのだ。
「あ、お兄ちゃん達もう上がってたんだ」
「2人とも早いにゃ~」
2人が布団をリビングに運んでいると、穂乃果と凛に廊下で会った。
「あれ?他の皆は?」
「そろそろ来ると思うよ?……あ、海未ちゃーん」
愛生人と凛がリビングに入り若葉と穂乃果が廊下で話していると、ちょうど海未が角を曲がって見えた。穂乃果に名前を呼ばれて2人に気付いた海未は、タオルを肩に掛けて2人の元へやって来る。海未の後ろにはことりと花陽もいた。
「待たせちゃった?」
「いや、そんなに待ってないよ」
ことりと話しながらリビングに入ると、愛生人と凛が布団を並べていた。若葉は海未達と一緒に布団が置いてあった場所に戻り、毛布と人数分の枕を手に、リビングに戻る。
リビングに戻った4人が戻ると穂乃果と凛、にこ、夏希の四人が敷かれた布団12枚の上をゴロゴロと転がっていた。
「4人とも何してるの?」
「1回でいいからやってみたかったんだよ!」
「ロマンだろ!」
若葉がジト目で聞くと、穂乃果と夏希が勢いよく上体を起こし言う。
「4人とも敷くの邪魔だから退いて下さい」
海未に注意され、4人は渋々布団の上から退く。
「にしてもこうやって寝るとなると合宿みたいで楽しいな」
「合宿だからね?」
夏希は壁際にいる絵里と希の傍に立ち言うと、横の絵里に突っ込まれる。そして布団を敷き終わると次に始まったのは寝る場所決め。様々なやり取りが行われた結果
にこ ことり
凛 穂乃果
花陽 海未
希 絵里
真姫 夏希
若葉 愛生人
となった。
各々が決まった布団に入る。
「明日早いんだから大人しく寝るんだよー」
若葉の言葉に皆が返事をして電気を消して寝る。しかし
「ねぇ。ねぇことりちゃん」
「?どうしたの、穂乃果ちゃん」
静かな暗闇の中、中々寝付けない穂乃果は隣で寝ていることりに話しかける。
「そうやって話してたらもっと寝れないわよ。海未と若葉を見てみなさい。もう寝てるわ」
そんな穂乃果に絵里が注意する。そして絵里が名前を呼んだ2人を見ると既に寝息を立てていた。
「見事に寝てるな」
「夏希さんと穂乃果さんも割とよく寝れる方じゃないですか?」
さっきも寝ていたし、と愛生人が穂乃果と夏希に聞く。
「うん。でもなんか勿体無いって言うか」
「変にテンション上がって寝れないって感じかな」
「何度も言うけど、遊びに来てる訳じゃ無いのよ?明日はしっかり練習するんだから、早く寝なさい」
絵里に注意され、2人は大人しく毛布を掛けなおす。そんな絵里の近くでは希が真姫に話しかけていた。
そして再び訪れる沈黙……の筈が
突然バリッバリッ、と何かを齧るような音がリビングに響く。
「ちょ、何の音?」
「私じゃないよ」
「凛でもないよ」
「僕でもないですよ」
絵里の質問にことり、凛、愛生人が答える。そしてにこが電気を点けると穂乃果が毛布を頭から被り、煎餅を齧っていた。
「何やってるの?穂乃果ちゃん」
「いや~何か食べたら寝られるかな~って」
ゲホッゲホッと咳き込む穂乃果にことりが聞く。ことりの質問に穂乃果は苦笑いしながら答える。
「んもーいい加減にしてよね」
2人のやり取りに今まで横になっていたにこが体を起こし、文句を言う。しかしにこの文句は皆に届かなかった。なぜなら
「……にこっち。それ、何?」
「何って、美容法に決まってるじゃない」
夏希が言い辛そうににこに聞く。にこの顔は緑のパックと輪切りの胡瓜が張り付けられていた。そんな夏希ににこは何を当たり前な、と言い返す。
「ハラショー……」
「こ、怖い」
「うん」
絵里が顔を引き攣らせながら言い。花陽と凛が涙目で抱き合う。
「誰が怖いのよ!いいから寝るわよ"っ!」
そんな2人ににこが言い返しながら電気を消そうとすると、どこからか枕が飛んできてにこに直撃する。
「真姫ちゃん何するのー?」
「えっ?何言ってるの?」
希が枕を投げたのは真姫だと言うと、真姫は布団に寝た状態で眉をひそめて希を見る。
「あんたねー」
希の言葉を聞いてにこは真姫を睨む様に見る。そんなにこを無視して希は真姫の枕を手に取る。
「いくら煩いからって、そんな事しちゃダメよ!」
希は枕を凛に投げながら言う。その枕を両腕で受け止めると、希の意図を把握してなのかその枕を穂乃果に向かって投げる。その枕に防御出来ずに、顔で受け止める穂乃果。穂乃果はその枕を今度は真希に投げる。穂乃果が投げた枕を片手で防ぐ真姫。
「投げ返さないの」
そんな真姫の隣で希がニヤリと笑いながら言う。真姫が希に文句を言おうとすると、真姫のやや前から別の枕が飛んで来て台詞が中断される。真姫がそちらを見ると、絵里が口に手を当て笑っていた。それを見た真姫は絵里の枕を手にすると
「んもー!良いわよ。やってやろうじゃない!」
と枕投げの参戦を決め、枕をにこに投げる。それはにこの顔に直撃しにこが仰け反る。そして凛がことりに枕を投げる。ことりはその枕を自身の枕で凛の方へ軌道をずらす。突然の軌道変更に凛は対応出来ずに当たる。一方、愛生人は希と連携して夏希の両側から枕を一斉に投げるも、夏希はそれをしゃがんで躱す。それからが大変な事になった。
各々が近くの枕を持っては投げ、防いではそれを別の人へと投げる。そんなバトルロイヤルが行われていたのだが、夏希と穂乃果が投げた枕が海未と若葉に当たる。
『あ……』
部屋中に流れるやっちまった感。皆が静かに2人を見つめる。皆に見られている中、2人は当たった枕を力強く握る。
「わ、若葉?」
「あ、あの~……大丈夫?」
若葉と海未の近くにいる夏希と穂乃果が恐る恐る話し掛ける。話し掛けられた2人はゆらぁりと立ち上がる。その表情は前髪で隠れて見えない。
「これは…一体…」
「え、えっと~」
普段とは違い、低い声で起きてたメンバーに聞く若葉にことりが苦笑いで誤魔化そうとする。
「どういう事ですか?」
「ち、違っ、狙って当てたわけじゃ」
「そうだよ。そんなつもりは全然」
続く海未の質問に真姫と穂乃果が言い訳をし始める。しかし
「明日、早朝から練習するって言いましたよね?」
「大人しく寝るんだよって、言ったよね?」
海未と若葉の一言に黙ってしまう。その代わりにことりが頷いて返事する。
「それをこんな夜中に」
「覚悟は出来てるよね?」
絵里と愛生人の静止の声も聞こえてないのか止まる気配のない2人。
「海未ちゃんって寝てる時起こされると物凄く機嫌が」
「そう言えばお兄ちゃんも」
とことりと穂乃果が2人の機嫌の悪さを説明しようとすると、穂乃果と花陽の間を何かが飛ぶ。
「ぐあっ!」
「にこちゃん。ダメにゃ、もう手遅れにゃ」
2人が振り返ると、凛がにこを抱きかかえていた。その傍にはにこを沈めたであろうと思われる枕が一つ。
「超音速枕……」
「ハラショー…」
花陽と絵里が恐ろしいモノを見る目で海未を見る。
「がはっ」
しかし海未に何かをする前に、別の方向からまた声が上がった。
「夏希さん!?」
愛生人が声のした方を見ると若葉の投げた枕により、夏希が沈んでいた。
「枕の軌道が見えんかった……」
希の言葉で皆は理解した。若葉も海未同様枕を超音速で投げて夏希を沈めた、と。
「穂乃果ちゃん。どうしよう」
ことりはその状況を見て穂乃果に相談する。すると穂乃果は枕を持ち、2人を見て構える。
「やられるまえにやるしかぬぁ!」
枕を構えた事を感じたのか、若葉が穂乃果に枕を投げ、沈める。そして穂乃果の仇と言わんばかりにことりが若葉に枕を投げようとすると、それよりも先に若葉の枕がことりを襲う。
「ごめんうみ"っ!」
ことりがやられると同時に、絵里も海未に枕を投げようとするも、振りかぶった所で逆に枕を投げられて沈んでしまう。次に2人が花陽と凛に狙いを付け、そちらを向く。狙われた2人は互いに抱き合い、涙目になる。
そして若葉と海未が2人に向かって枕を投げようとしたその時
「ぬぅ」
「ぐぅ」
海未に一つ、若葉に二つの枕が後ろから飛んで2人に当たり、2人が床に倒れる。花陽と凛が倒れた2人の向こうに見たのは、枕を投げた体勢で動きを止めた希、真姫、愛生人だった。
それから5人は特に騒ぐ事もなく、静かに空いている布団に入り寝た。
☆☆☆
それから数時間後、最初に目を覚ました若葉が見たのは辺りに散らばる枕と、雑魚寝状態になっていたリビングだった。
若「成る程。あの状況はこうやって出来てたんだ」
愛「加害者が何か言ってますよ(ボソッ)」
若「愛生人何か言った?」
愛「いえ!何も言ってません!」
若「そう?言いたい事あったらちゃんと言うんだよ?」
愛「はい!」
夏「言葉だけ見てると若が脅してるみたいだよな」
若「?」
夏「いや、何でもない」
愛「それにしても若葉さんが最初に起きるなんて、凄いですね」
夏「だよなー。なんやかんやで起きてたのにな」
若「別に起きてなかったと思うけど」
愛夏「「あれ無意識だったの!?」」
若「だって覚えてないし?」
夏「まぁ、あれだな。今回の合宿で分かった事は、寝てる若葉と海未はそっとしとくのが一番。だな」
愛「ですね。じゃないと色々と大変ですから」
若「そうかな?」
夏「自覚が無いのが恐ろしい」
愛「さて、では今回の話の振り返りでもしてみましょうか」
若「それってもう殆ど終わってない?」
夏「ぶっちゃけ話としては、枕投げだけで今話の半分を占めてる事くらいだし」
愛「そんなに書いてたんですね」
若「作者曰く、「気付いたらこんな事に……」だってさ」
夏「それは字数の事なのか、若の暴走なのか」
愛「世の中には知らない方が幸せな事があるんです」
若「でも、聞くは一時の恥、知らぬは一生の恥って言うよ?」
夏「一生の恥でいた方が良い事もあるさ。きっと」
愛「それって、作者がいつかあとがきを限界字数まで書く事を夢見てる。とかですか?」
若「え?そんな事夢見てるの?」
夏「あれ、あとがきの限界字数って何文字だっけ?」
愛「えーっと確か……20.000字ですね」
若「その場合ってやっぱり話すの俺らなのかな?」
夏「つか、20.000字って……本編でも最高四千字弱なのにその5倍の量とか無理だろ。絶対話すネタが無くなるって」
愛「まぁ読者の皆さんも読むの疲れるでしょうし、流石にやる事は無いと思いますが……」
若「読者の希望があればやりかねないよね」
夏「その場合はμ'sの皆も呼ぶか。後は関係者とか」
愛「関係者?それって南理事長とかですか?」
夏「若葉を刺した犯人とか」
若「マジで!?」
愛「流石にそれは無いんじゃ」
夏「やるかもしれないのが作者なんだよ」
若「他には未だに発表されてない夏希の彼女とか?」
夏「あ、それなら次かその次の話で明らかになるらしいぞ?」
愛「おぉ!それは必見ですね!」
若「じゃあその次かその次の話がいつになるか分からないけど、今回はここで終わりにしようか」
夏「だな」
愛「あ。あとがき20.000字は希望があればやりますよ?」
若「じゃあまた次回とか!」
愛夏「「次回とか!」」