何気に読み直したら私ミスってますね、XV後だと三年前じゃねえ四年前だわ。一応修正したけど残ってるかもしれないです。
それとそろそろ並行世界入りますけど、もし今回の話で(いないと思うけど)アッチ方面のことをちょっとでも考えた人は挙手しましょう。特に何もありません。
てか、割と評価されてるよねこの小説。
そんなツインテールが好きなのか、みんな!!
「はぁ、はぁっ……ん…っ!」
口から漏れる吐息は熱く、火照った体は熱を逃がさない。
心臓は激しく脈打ち、零れる汗が地面に落ちていく。
自分が自分じゃなくなったようで、ただ目の前から目が離せなかった。
オレという存在がこの世界に生まれて、時々平穏じゃないだけで普通に生きてきたつもりだった。
そりゃノイズに襲われたり、強制的に70億の絶唱に巻き込まれたり、世界を解剖するエネルギーに巻き込まれかけたり三段階式反応爆弾が降ってきた光景を遠目で見たり神のハッキングが周りで起きてたりなどあった。
でも女の子同士でこんなことをするなんて、オレの人生であっただろうか。
いやない。というかオレは女じゃない。女だけど男だ。ん?男だけど女?あれ、ややこしいな。
どっちだ…とにかくオレは男だ。女になるという時点で有り得なかったはず。
「っ……はげし…ッ!」
もうどれだけ経ったのか分からない。
それが数分なのか数秒なのか。
分かるのは自分の意識領域が拡張され、必死にやるべきことをやる。
そうしないと、彼女がどんなことをしてくるか分からない。
これ以上激しくされたら、オレは意識を手放してしまうかもしれない。
知識はあった。
けど知識があったところで、その通りに動くわけじゃない。
そもそも今のオレは体力を大きく消耗している。何戦もすれば、男であるオレでも精力が尽きる。
あと一回。やれるのは一回だ。
「く……ぅっ!」
タイミングを測る。
遅くてもダメ。速くてもダメ。
一定の速度で往復運動をし、スピードを決して緩めず早めない。
我慢は辛い。でも我慢をしなければ限界を迎える。
少しでも先走った途端、そこで終わってしまう。
もっともっと動かなきゃ、もっと力強く粘り強く、体力が尽きようとも。
「はっ……はぁっ……ひぃ…!?」
目元から涙に似た液が溢れ、喉が渇く。
乾ききった喉に唾を落とし、視界がランプのように点滅する。
口に酸素を取り込む余裕もなく、肺が酸素を求めようとも許してくれない。
テイルレッドになっても、オレの体は意思とは裏腹に正直らしい。
もう少し、もう少しで訪れる。
「ゃっ……んくっ……!」
酸素を強引に取り込んで、唇を閉じて、全身の筋肉を力む。赤みが帯びた肌が、僅かに視界に移る。
もういける。まだダメだ。ああ、でもいいかな……。
頭の中に天使と悪魔が存在するかのように、甘い誘惑と辛い誘惑がせめぎ合う。
「っぁ……!」
ああ、やばい。
余計なことを考えてしまった。
もう、無理だ。これ以上続けると、オレは動けない。
視界が閉ざされてしまった。
数秒先の未来では、オレはもう全身の力が抜け、完全に動けなくなっているだろう。
それでもオレは---
「ぎゃーっ!?」
やっぱり、無理だった。
「これが、新人いびり……」
「な、なんだ……その、やり、すぎた…」
ボロボロな鎧。
埃まみれのツインテール。
ペタン座りでボロボロなオレ。
体中の痛みがオレを襲い、もう泣きたかった。
むしろ泣いた、ぶっちゃけチビるかと思った。いや嘘。
……ちょっとチビったかも。
帰りたい。ツインテールが欲しい。
「あれだけの雪音の弾幕を防ぎきったのだ。上出来な方だろう」
「まぁ、連戦であれはなぁ……」
「クリス先輩、大人げないデス……」
「ただただかわいそう」
「流石にフォロー出来ないわ…」
「あれは私でも嫌だなあ…」
「そこら中弾幕の嵐だったもんね」
「あ、あはは……確かに見てるだけでも怖かったですね…あれ」
「だぁーっ!うるせえーっ!あたしのせいにすんな!お前らも容赦なかったろ!!あたしとやる前からこいつボロボロだったじゃねぇか!!」
『…………』
全員が目を逸らしていた。
そう、あの後何するのかと思ったらいきなり実戦。
しかも初手が防人代表の翼。
案の定剣技で敗北。
その次が響。
あっさり徒手空拳の戦いになって敗北。
次にマリア。
普通に蛇腹剣にやられた。ショック受けた。
次に調。
ツインテールに攻撃するくらいならやられる方がマシだった。何よりツインテールを武器にされて手も足も出なかった。そもそも機動力が高すぎる。
次に切歌。
攻撃しづらそうな鎌なのに武器取られて敗北。
次に奏。
ブリーシンガメン使用されることなく槍の利点すら生かされてない状態に負けた。
次にセレナ。
普通に姉とは違う戦い方に翻弄されてやられた。
次に未来。
攻撃が未来予知レベルで普通にビビって近づけずにやられた。
最後にクリス。
あ の 弾 幕 は む り だ ろ !!
そもそも相手がおかしくないか!?
なんで最大限に消耗した後にあの弾幕相手にしなきゃいけないんだよ無理だろ!
どこ見ても弾幕!油断したら飛んでくるミサイル!逸らすので精一杯の銃弾!正確すぎるクロスボウ!死ぬ!むり!こわい!漏らす!!
普通に漏らす!漏らすしかない!むしろちょっと漏れた!
「レッドちゃん、立てる?」
「ひえっ……」
手を伸ばされた響の手を見て、拳が鳩尾に突き刺さった記憶が蘇る。
衝撃を緩和するフォトンアブソーバーがなければ死んでた……。息出来なかったもん。
「でも動きは良くなってるのよね」
「ああ。ではもう一戦---」
ブラック!ブラックだ!
インターバルもなしに九戦させられたのに!無理だ!無理!絶対無理!!戦ったことなんてないのに!武道とか習ったこともないのに!運動も全然しないのに!!
むりぃー!!
「う……うわぁぁん……!」
「えっ、わっ!?」
近くにいたセレナに情けなく抱きつくオレ。
急なことで驚いたにも関わらず、彼女はあやすように頭を撫でてくれる。
「あ、あの…せめて休憩、挟みませんか?こんな感じになってますし……」
「そうだよね、体力もギリギリって感じだし、もし訓練中でも変身が解けたら……」
「……その方が良さそうだな」
割とガチめに無理、というように震えながらセレナにくっつき虫になっていたオレは、ようやく休憩出来そうなことに涙を貯めながら安堵の息を吐いた。
……ちなみに休憩後もあるという恐怖でしばらく離れられなかった。
「……ふう」
テイルレッドから元に戻り、何だか数日ぶりに戻ったような錯覚に陥るが、俺は一息つく。
別に訓練してくれることが嫌なわけじゃないし、戦うのが嫌なわけじゃない。
強くなるためには必要だが、さすがに無理。
俺の身が危険な可能性もあって力をつけさせようとしてくれてるのは分かるんだけど……とにかく今は喉乾いた…。
「デェース!」
「うぇっ!?」
特徴的な声が聞こえたかと思えば、頬に冷たいものを当てられ、驚きのあまり普通に椅子から落ちる。
痛い。
「…大丈夫?」
「そ、そこまで驚くとは思わなくて……申し訳ないデス」
「…あ、調…と切歌か。なんとか…休めば問題ないと思う。あと大丈夫、ありがとう」
純粋に心配してくれた調と申し訳なさそうな表情を浮かべながら水を差し出してくる切歌。
俺は水を受け取りつつ、平気というに立ち上がった。
「ほ、本当デスか?怪我とか……」
「……さっきの戦いに比べたら、うん全部マシ」
遠い場所を見るかのように目を逸らす。
正直めっちゃ簡単に言っただけで、かなりボコボコにされた。
何だか自信がなくなりそうだ。泣きついた時点で男としてのプライドは既に粉々に砕けた気がする。
「でも動きは良かった。何かしてたの?」
「いや、特にはしてないかな……」
残念ながら前世でも今世でも何かをしていたわけじゃない。
昔となると記憶が曖昧ではあるが、武道をしていたなら体は覚えてるはず。
ああ、授業ではやったっけ。全く出来なかったけど。
でもあのスポーツ万能の光聖は強かったなぁ…。あいつ運動系だとなんでも出来るな?
「それにしても…調も切歌も凄いな。俺と年齢は同じなのに、俺より全然強い」
原作というもので知識を得ている。
けれど、俺という人間は遥かに弱いのだ。実力自体は、ノイズを倒せるくらいはある。でも肉体的な強さは俺の本来の強さじゃないし精神面は弱い。
幼馴染とツインテールを喪った。それだけで、俺は絶望した。
原作を終えたいま、自分という異物がどんな影響を齎したのか考えて、死ぬべきだと判断した。殺されるべきだと思ってしまった。
確かに彼女たちは原作でも辛い目に会っていた。でも俺と違って、向かい合って、乗り越えたんだ。空想の存在として見ていたから、『物語』なのだからそうなるといつも思っていた。
---でも、現実で目の当たりにすると全然違った。彼女たちの凄さが、より鮮明になる。
俺はただ逃げて、力がないからと救える命を見捨てて、だけど多くの人に助けられた。
命も、精神も、生きる気力すら。全部全部、助けられた。
誰かを助けれるほど、俺は強くなかった。友人たちの言葉がなければ、俺は諦めてた。
まだ無力。
まだ助けられない。誰も、誰かを助けたことなんてない。そんな強くない。
「……そんなことないよ。私もまだまだ弱いから」
「デス……それでも立ち止まりたくないのデスよ。あの人たちに追いつくためにも……」
「だから、もっと強くなりたい」
そう言って見つめてくる彼女たちは、とても真剣で。
でもきっと彼女たちだけじゃないはずだ。みんなそう思って、だからこうやって強くなるための訓練はしているのだろう。
だとしても---
「俺は…出会ってそんな経ってないけど強いと思うよ。誰がなんと言おうとも、誰がどう言ったとしても調の強さ、切歌の強さ、俺は肯定する。二人にとってはまだまだかもしれない。でも弱さを認められる時点で、十分強いんだ。弱さを認められるから、もっと強くなれる。受け入れられない人間が成長出来るはずがない。そこは自分の中で少しでも認めてあげていいんじゃないかな」
俺だけは、彼女たちは強いと言ってあげたい。
調や切歌だけじゃない。奏さんもセレナも、未来さんも。響さんや翼さん、クリス先輩やマリアさんもみんな強い。
でも、無敵じゃないし完璧じゃない。
心があるから悩むし、傷つくし、抱える。不完全だから答えを探す。答えを求めて、彷徨う。
それは激戦を乗り越えた彼女たちも同じはずなんだ。
どんなことを乗り越えても、どんな修羅場を潜っても、どんな相手と戦おうと答えを見つけようとも、揺らぐ。
それが人間なのだろう。彼女たちも、普通の女の子なんだから。
じゃあきっと---
「だから俺も、まずは二人を守れるように強くなる。二人を傷つけさせないために」
「---」
俺という異物がやって来たのは少しでも彼女たちの負担を減らすため…なのかもしれない。
自意識過剰かもしれない。世界から狙われたことを考えたら、そうじゃないかもしれない。
俺なんかが役に立つか分からないけど、俺のツインテールへの想いは本物だから。
どれだけ弱くても、俺のツインテールを信じる心は何よりも『強い』から。
「…あれ」
そんなことを思っていたら、調も切歌も黙り込んでしまった。
な、何か気に触るようなことを言ってしまっただろうか。二人が強いのは割と事実だと思うんだけど……。
「な…なんでもないデス」
「…男の子なんだって思った」
「え、やっぱり俺って男として認識されてないのか!?」
ここに来て真実が発覚。
確かに割とテイルレッドとして認識されてそうだけど、距離感が近いのもそれが原因かっ!?
…いや響さんに関しては平常運転だろうなあ。別に男として認識されてなくても良いけどさ…あの距離感だけは俺じゃなかったら大変なことになりそうなんだけど。
「零士さん」
はぁ、と溜息を吐いていると、名前を呼ばれた方へ顔を向ける。
そこには橙色がかかった茶髪の少女---セレナが居た。
「もう大丈夫…ですか?」
大丈夫、というのはさっきのことだろう。
---自覚したら顔が熱くなってきた。
俺、この子に泣きついたんだよなぁ…テイルレッドの姿とはいえ、あまりにも精神的に追い詰められてつい。
「だ、大丈夫…っす」
「…?その割には顔が赤いですけど……」
「な、なんでもない、何でもない!」
純粋に心配といった様子で顔を覗き込んでくるセレナから身を逸らして目を逸らす。
ちょっと現実逃避中だ。普通に恥ずかしいというか、情けないというか……不甲斐ない。
本来は年上とはいえ、コールドスリープ期間を考えたら彼女は年下だ。
年下に泣きつく高校生(前世含めれば精神年齢はもっと上)ってどうなんだよ、流石に恥ずかしすぎる。
「ならいいですけど…本当ですか?」
「あ、ああ…あの時は、ごめん」
「いえ、よかった」
女の子の姿だったとはいえ抱きついてしまったことになんとか俺は謝罪するが、彼女は気にしてないというように。むしろ安心したように微笑んでくれる。
改めて、自分を卑下してしまいそうになりそうだ。
「零士、だっけ?」
内心そう思ってると、今度はまた誰かがやってきた。
この声から察するに---
「奏さん」
朱い色の髪をした、何処か頼れる雰囲気がある女性。
ツヴァイウィングの天羽奏さん。
原作知識はもちろんのこと、俺の幼馴染から何度か話は聞いていた。
「悪いね、翼を止められなくてさ。真面目なだけで、翼も零士のことを思っての行動なんだ」
「いえ…分かってます。みんなが俺のために時間を割いてくれてるってことくらいは。セレナも奏さんもせっかくこの世界に来てくれたのに、わざわざ俺のために……」
並行世界の彼女たちは何時までも居られるわけじゃない。
何時でも来れるわけじゃない。
もう会えない人に会える、大切な時間を俺のために使ってくれている。
「俺も、喪った人がいる。だから、会えない人に会える気持ちは分かってるつもりなんです。それなのに二人に時間を取らせてしまうなんて---」
「いいよ。確かに翼と会える時間やマリアたちと話す時間も大切だけど、もうアタシらは仲間なんだから」
「私も同じ意見です。それとも、零士さんは嫌ですか?」
「そんなことはっ…」
「だったらいいじゃないですか。私たちにとっても力になれることは嬉しいんです。この経験もいつか私たちの力になりますから。私も、まだまだ半人前ではありますけどね」
「セレナの言う通りだよ。頼りたい時に頼ればいい。抱えてしまう気持ちは、分かるけどさ」
申し訳ない気持ちを抱いている俺に対して、セレナと奏さんは気にした様子はなく。
逆に優しく告げてくる。
その姿を見てると彼女たちもたくさん悩んで苦しんで、それでもなお、多くの力を借りて乗り越えてきたのだろう。
なら---
「…だったら、すみません。もう少しだけ、胸を借ります」
「もちろん」
「はい、私で良ければ」
うじうじ考えるのは、俺らしくない。
これから先、何度も何度もこうやって悩んで、立ち止まって、暗い気持ちを抱えると思うけど。
一人じゃないのは、分かってるから。
「……もう少しだけ、頑張らないとな」
いつも身に着けていたテイルブレスに触れる。
俺に力をくれる、ツインテールの力。
今度こそ、彼女たちを守るんだ。力があるなら、守れるものは守りたいから。
装者が胸の歌を信じるなら---俺は胸のツインテールを信じる。
俺がツインテールを信じる限り、きっと力を貸してくれると思う。
---テイルブレスが、僅かに光ったような気がした。
「私たちも」
「協力するデスよ!」
「ああ、お願いする。……流石にあの連戦は勘弁して欲しいけど」
「いやあ……無理じゃないかな」
「…えっと、頑張りましょう、ね?」
……無慈悲な答えが返ってきた。
俺、もしかしたら死ぬんじゃないだろうか。
「あの様子だと、問題なさそうだな」
「だそうよ、翼。心配はいらなかったみたいね。そんなソワソワしなくても……」
「し、してなどいないっ。少し、やりすぎたかと思っただけで……」
「零士くーん!」
「ブッ…!?」
「もう、響。危ないよ---」
「あっ」
「ちょ、な…色々まずっ、助け…ええいテイル・オンっ!」
「……しかし、なんというか、彼からは不思議な感じがするな」
「そうね、自覚がないのか、人を惹きつける何かがある。この出会いもまた、運命ってやつかもしれないわね」
「んなことより、あれいいのか?」
「……私たちも向かうか」
「ギリギリ……デスかね?」
「普通に危ない……」
「だから言ったのに……」
「タオル用意しないとなぁ…」
「…ですね」
響さんが躓いたのが見えた俺は咄嗟にテイルレッドになったのは良かったのだが、力が入ってなかったせいで押し倒された。
そして起き上がらせたタイミングで体力切れで元に戻った俺は地面に落としてしまっていた水で顔面から濡れた。
冷たかった(小並感)
で、結局。
体力が少し回復して変身出来るようになったから、手合わせした。四連戦くらいした。
全部ボコボコにされた。というか最後はテイルレッドから戻ったせいで吹き飛んでガチで死にかけた。
知ってた。知ってたよ。そんなチート主人公じゃないんだから心持ちが変わった程度で勝てるはずがない。
でもそれでいい。
俺は一歩一歩、強くなっていくしかないんだ。
……痛くて泣きそう。肩から血流れたからなぁ。
「二人とも、ありがとうございました」
今はギャラルホルンの前で、俺はギアを纏うセレナと奏さんに頭を下げた。
時刻はもう夜。
結局四連戦後は怪我したのもあるし、俺の体力が切れて今日は変身出来なくなってしまい、手合わせが済んだ後は会話していたのだが、知識では得られなかった彼女たちを知れたのは嬉しかった。
彼女たちの口から過去も聞けたし、曖昧だった原作知識も補完される。
「また来ますね、その時はもっとお話しましょう」
「もしかしたらすぐ会えるかもしんないけどね。けど、アタシらも負けてられないって気持ちになれたよ」
「……はい」
今日はお別れ。
でもこのお別れは、最後ではない。
俺にはギャラルホルンを渡る力はないと思うけど、いずれ彼女たちの力にもなりたい、とは思う。
現実でも、変わらない。
この人たちは優しくて、弱さもあるけど強くて、一人の人間なんだ、と実感した。
「マムによろしくね、セレナ。体調には気をつけるのよ?何かあったからすぐ駆けつけるから」
「あはは……うん、分かったよ。マリア姉さんも気をつけてね。月読さんや暁さんも」
「うん、また話そうね」
「次はたっくさん遊ぶデス!」
それを最後に、セレナは皆に頭を下げると、迷いなくギャラルホルンのゲートへ入っていく。
他の誰もいない、一人だけど独りでは無い世界へと。
でも確かに、遠く離れても感じられるものがあった。
「…奏」
「心配しなくたって、アタシは問題ないよ。また来れるだろうし、それより翼の方が心配だな。零士をいじめないようにな?」
「だ、大丈夫だから。もう、奏はいつもそうだ」
「あはは」
「奏さんっ!また待ってますね!」
「ご元気で」
「ああ、そっちもな」
「む…無茶はしねぇようにな」
「ん、珍しいね。けど今のところは大丈夫だ」
装者たちと会話をしながら、奏さんは最後にまた、とだけ告げ、手を軽く振ってからギャラルホルンのゲートに入っていった。
各々の世界に帰ったのだろう。
奏さんの世界は何だかんだ、錬金術師がいる。
もしもの時は協力するだろうし、きっと大丈夫だろう。
戦えるものは、一人じゃないんだ。
それでも何かあれば、助けに行きたいとは思う。
でも…不思議だな。何かを
遠く、世界が離れてるのに。これが縁が出来たってやつかもしれない。
この世界がこれから先、どうなるか分からない。
それでもきっと、乗り越えられるはずだ。
こうやって世界を超えて、繋がりを持つ仲間たちがいるのだから---
次の日。
学生である身である限り、いつまでも学校に行かないわけにはいかない。
家に帰る時間はないからどうしようと思っていた俺なのだが……。
「…なんで用意されてるんだろうなぁ」
新品の制服に身を通すことなるとは思わなかった。
いや確かに俺の制服ってもう使えなくなってるけどさ。背中思いっきり目立つくらいに穴空いてるけど…どうやって俺の学校を調べたのだろうか。
色々と方法はあるだろうけど…病院にあったはずの荷物すら帰ってきてるのはちょっと怖い。
とにかく俺は(訓練で怪我を負ったしエルフナインちゃんさんに怒られたけど)行かなくちゃ行けないので学校へと向かう。これ以上授業遅れたら死ぬ。なお既に赤点間違いなし。
---俺の学校。
私立創月学園高等学校。
初等部から大学部まで一貫進学が可能な学校。マンモス校である。
別にどうでもよかったから親の望む学校を選んだのだが、割と偏差値は高い。
そして何より今まで考えないように脳裏から弾き出していたが、ここに入学する前に親から廃校された学校が近いとは聞いていた。
それが新生された私立リディアン音楽院が近くにあるとは誰が思うのか。そもそもこればかりは原作知識があっても回避仕様がない。だってあの辺、確か詳しく情報出てなかったし。
ちなみに俺の学校は『創る』という漢字が入ってるくせして芸術科の学校ではない。
名前詐欺かな?でも一応あるからイラストは取った。
だって面倒な勉強なさそうだったし……。
ただ校風は『自由』をモットーとしているらしい。
その割には俺のツインテール部は認められませんでしたけど???
とにかく、当時は女子校だから関係ないし入れないし、原作知識を得てからは関わらない方がいいか…と思ってたのだが。
「……はぁ」
視線がクソ集まる。
いっそのことここでテイルレッドになろうかと思うレベルで視線が集まる。
辛い、辛すぎる。
原作が終わっているので二年。
調も切歌も二年年というか回生だが、まあいいや。
響さんと未来さんは三年。クリス先輩は卒業して、推薦で大学へ。
まだXV終了後、つまるところシェム・ハとの戦いからそれほど経ってないのだ。
恐らく歴史は早まってないだろう。
で、辛いのはそれだからじゃない。
いくらリディアンに行かないとはいえ、俺の周りには四人もリディアンの生徒がおり、これでもマンモス校なのもあって有名校の俺。
浮いている、あまりにも浮いている!
しかも一人だけ男で制服も違う。
仕方がない、今回ばかりは向かうタイミングが同じだから仕方がないのだ。
「通学路は一緒なんだね」
「学校が近くとは思わなかったデス!」
「偶然だよねっ。凄いなあ」
「……はい」
「確か零士くんの学校ってかなり大きいところだよね」
「……はい」
話しかけられても、やはり気分は下がる。
いや、これは仕方がないだろう。
一応言っておくと、俺って割と陰キャに分類されるからな?
好奇な視線は辛い。
「大丈夫?」
「……ダイジョウブデス。なれてます」
俺の様子に気づいたのか響さんが聞いてきたが、カタコトになりつつ返す。
だって同じく登校するリディアンの生徒たちから割とヒソヒソとした声が聞こえるし、悪口でも言われてるのかもしれない。彼女たちに変な噂が流れなければいいのだが。
ぶっちゃけ、この人たちみんな美少女だからね。俺みたいなイケメンでもなんでもないやつがいたら不釣り合いだろう。
と言っても、流石にどんなことかまでは聞こえないけど……まあ悪口というかバカにされるのは慣れてるからな。
むしろバカにされるどころかツインテールを語ったら引かれた。なんでだよ、たったの一時間語っただけじゃん。
「あっ、私たちはここまでだね」
校門前に着くと、未来さんたちは立ち止まる。
俺はもう少し歩かねばならない。
「はい、それじゃあまた…」
「零士くんも気をつけてね!」
「うう、勉強が待ってるデース…」
「切ちゃん、頑張ろう」
「…それは、うん頑張れ」
「そういえば零士くんはべんき---」
「失礼しますっ!!」
俺は応援だけすると、未来さんの言葉を遮って走っていく。
あまり長話もいけない!
うん、そうだ!校門前だし!目立つし!邪魔になるからね!!
「急いでたんデスかね?」
「遅刻するかもしれないもんね!」
「いや、あれは……逃げたと思うなあ」
「私もそう思います」
「へ?逃げた?」
「どうしてデス???」
後ろからそんなに会話が聞こえた気がしたが、逃げてない。
断じて逃げてない。
ただちょっと、あれ。そう、ツインテールが俺を待ってるのだ。仕方がないと思う。
リディアンから離れ、学校に向かって歩いていく。
ここまで来ると、流石にヒソヒソ話はされないし、一人だから注目もされない。
うちの学校は男子校でも女子校でもなく男女共学だからな。
「おーい、レイジー!」
「グヘェッ!?」
突如として勢いよく背中を叩かれ、割とダメージを受けた俺は睨みつけるように犯人を見た。
七三分けのオレンジ髪。
見た目からも明るさを感じさせる、俺の友人のひとりである陽煌光聖だ。
もう名前からしても明るいもんな。
「またやったな、お前ぇ!」
「うわっ、ははは!や、やめろってぇ!わ、悪かったから!」
しかしやられてばかりもいられまい。
自身の鞄を落とした俺は、光聖を正面から擽る。
大体の人間はこれでKO出来るものであり、スポーツ万能型の高スペックな光聖であろうと効果は覿面だ。
なんか面白くなったのでまだやっておこう。
「いひひひ、ちょ、ほ、ほんとっやば…あははははっ!」
「はぁ、はぁ……まっ…はっ……はや、すぎ……」
「おっ、識か。大丈夫か?」
力尽きるように座り込む息絶え絶えな識に手を差し出す。
きっと光聖の速度に置いていかれないように頑張って走ったのだろう。
でも無理だったとみた。
俺のもう一人の友人、トランクスヘアーで緑色。黒のスクエア型?のメガネを着用して感情が乏しい(そうは思わないけど周りはそう見えるらしい)。
頭脳明晰だが光聖とは真反対で運動神経はゴミ(無慈悲)なのもあって、体力も低い。
「な、なんとか……それで、どういう状況なの、これ」
掴まれた手を軽く引っ張り、起こしてあげると識は光聖に視線を送る。
俺も視線を追うと、蹲って目元に涙を貯めてる姿があった。
ふっ、俺の勝利だな。
「面白くてつい」
「つい、じゃない。明らかにやりすぎだよ」
「悪い悪い。光聖も大丈夫か?」
「お、おう…流石だな、レイジ!」
識にやったように手を貸すと、光聖は回復していた。
いや回復速度早すぎるだろ。すまん、俺の負けだわ。
まだ背中痛い。
「まったく……それと双月。どうして返事をくれなかったんだ?何の連絡もなしに学校を休むと心配するだろ」
「ん?いや、返事はした……ああ」
校舎へ入りながらそう言われ、俺は思い出した。
テイルレッドになって倒れて、目が覚めた後に返信はしたが、そういえばそれ以降連絡一切返してなかったな。
「えーと……」
そう思ってスマホを取り出した俺は、画面を数回叩く。
が、電源ボタンを長押ししても点かない。
赤いバーのようなものが点滅するだけで、画面は開かなかった。
「……悪い、充電なかったわ。モバイルバッテリーない?」
「……はぁ、心配して損した」
「俺のでいいなら貸すぞ!」
「さんきゅー」
ため息を吐かれたが、光聖から借りたモバイルバッテリーをスマホに突き刺しとく。
しかしこれも仕方がないと思う。
話せる内容ではないから言えないんだけど、正直テイルレッドになって、シンフォギア装者と話して、OTONAと話したり自身がやらかしたことを知ったり腕輪のことを知ったり特訓したり……とにかく色々あった。
俺も考えること多かったし、スマホを使う暇がなかったからな。
充電ないのも今気づいたレベルだぞ。
「一応言っておくと双月が居ない間、割と大変だったんだからな」
「まじ?」
「病院では双月が病院から姿を消したから少し騒ぎになって危うく事件になりかけたし、学校では入院という扱いになったキミのことで何があったのか聞かれたときに光が全部話そうとするから防ぐのに苦労したし、普段話さないクラスメイトから質問責めにあって大変だったんだぞ。先生方からも根掘り葉掘り聞かれそうになって状況を説明するのも言い訳するのも全部僕だ。咄嗟にツインテルエンザという奇病で誤魔化したけど、この学校の生徒や先生方に僕がどれだけあの事件を隠すのに苦労したのかキミには分かるのか?特に委員長からは双月のことを色々と聞かれて怖かったし……!」
「……大変だったんだなぁ」
早口な上に長文過ぎて途中から聞くのが面倒になった俺は思わず他人事のように呟いてしまうと識が鋭く睨んできた。
俺はすぐ目を逸らしたが、俺も大変だったんだぞ、と伝えたい。
だけど広まってないのは助かったな……。この世界は戦姫絶唱シンフォギアの世界だ。
当然ながらシンフォギア以外でのノイズの対抗手段は未だに見つかっていない。
いくら現れるのがアルカノイズとはいえ、攻撃は通じても触れられたら炭化するからだ。
ファウストローブとかなら別だし、まだ謎だらけとはいえアルカノイズの攻撃を受けても分解されなかったテイルギアなら別だろう。
これでもマシにはなってきてるが、仮に生徒が襲われたという事実が拡大してたらどうなってたかなんて想像したくない。
「あの時の識はすごかったな!」
「光も光だっ!少しは隠そうとしてくれ!巻き込まれたことが明らかになってないのにどうして自ら言おうとする!?そんなことしたら大変なことになるなんて目に見えてるだろ!」
「嘘は良くないだろ?」
「あはは……」
「時と場合に寄るだろ……それに!双月もだからなっ!
この状態で返信が来なければ心配になる!お陰で一睡も出来なかった!!」
「わ、悪い……通じるかと思った」
「理解出来るやつなんてこの世界にいるわけないだろ…ッ!!」
一度思いを爆発させたからか激おこプンプン丸状態が保たれている識にターゲットにされ、スマホを突き出される。
そこのメッセージには俺を心配する内容があるのだが、一日前の俺は『ついーん』と返してる。
これは『(なんかよく分からんけど)大丈夫だ、問題ない』という意味で返した。
しかしその下からは何件か状況を求める内容だったりどこにいるかといった内容だったり完全に過保護な親みたいな文が多く綴られている。
しかし---
「……おかしいな、ちゃんと大丈夫と返してるだろ」
「どこがだ!?」
「!?」
「なぜ驚く!?」
まさか通じてなかったとは盲点だった。
聡い識のことだ。
一文でも送れば察してくれると思ったのだが……だが確かに、これだけ送ってくれてるのに充電切れに気づかずに何も返さなかったのは俺が悪い。
「分かった、放課後何か奢るから許してくれ。色々と迷惑かけたみたいだしさ」
「……はぁ。そんなことはいいよ、もう過ぎたことだし、疲れた……」
「大丈夫か?」
「光のせいでもあるからね?」
「……うん、やっぱ奢るわ。ほんとすまん識」
本当に眠たいのかメガネを外して目頭を押さえる識の姿にいたたまれなくなった俺はそう決断した。
目元に隈が出来てるし本当に一睡もしてないのだろう。
第七回、キャラ紹介。
〇風鳴翼
年齢:19歳 /誕生日:5月25日 / 血液型B型 / 身長167cm / 3サイズ:B81・W57・H83(Wikipediaより抜粋)
容姿としてはサラリとした青いロングヘアに、櫛のような髪飾りをさしている(主人公からしたら)美少女。
性格:根は真面目そのもので、任務に対して真剣に向き合う。年長者として後進達を導くが、融通が利かず他人に厳しく当たることもある。しかし、その本質は寂しがり屋で心優しい少女。
幼少より歌や戦闘訓練に明け暮れていた反動から生活能力は低く、所謂『部屋を片づけられない人』。
絵心もまるでなく、戦場やステージで常にトップで在り続けるにもかかわらず意外と弱点は多い。
じゃんけんのチョキは、本人いわく「カッコいいチョキ」であるとして、親指と人差指の田舎チョキを用いている。
来歴:日本よりイギリスへ進出したトップアーティストであり防人。
かつては父・八紘から否定され、彼に認められたいがために家を出てその身を剣と研鑽し続けてきた経緯を持ち、その最中に聖遺物の欠片たる天羽々斬を起動させたがためにノイズとの戦いに身を投じることを宿命付けられた。
当初は自身の境遇を悲観的に捉え、またその性格も暗く自信を持てないでいた。
だが天羽奏と出会い、彼女の成長と共に自身の使命に気付き自らも成長。奏に励まされながらも共にツインヴォーカルユニット「ツヴァイウィング」を結成した。
しかし、ツヴァイウィングのライブ中に出現したノイズと戦うが、その際に相棒である奏を喪う(この際に大きな人員的被害が出てしまい、オリ主にも関係するライブ会場の惨劇という事件となった)
本編一期。
奏の死後は「自分が弱かったから奏は死んだ」という後悔の念からその使命感を歪とも言える形で強め、学生として通いながら、歌手活動もノイズとの戦いもソロで続けていた。そんな中、その胸に奏のギアが宿っている立花響の存在を知り、複雑な思いを抱く。
防人として戦う理由の多くを奏に依存していたため、当初は戦う覚悟がなかった響が奏のギアを受け継いだことに否定的だった。
が、響が戦士として生きる覚悟を決めて努力するようになってからは、徐々に彼女を認めるようになっていった。
G以降:雪音クリスやF.I.S.に所属していた装者達といった仲間が加わりチームとなってからは、任務では現場指揮官的な役割を担うようになる。
自身の使命や歌に対する気持ちと向き合い、『ノイズが駆逐されたら世界を舞台に歌う』という夢を抱き、リディアン卒業後はイギリスに渡り歌姫として活躍。
だが魔法少女事変(GX)にて再び戦場に舞い戻り、その剣を振るった。
この戦いの最中、これまでの行動原理の根幹にあった、父親との確執を解消しており、決意を新たにその翼を羽ばたかせている。
しかしパヴァリア光明結社の残党である『ノーブルレッド』が暗躍を開始(XV)。
マリアと共に行った日本での凱旋ライブにてノーブルレッドに一人、ミラアルクの襲撃によってアルカノイズによる観客達の大虐殺が展開される。
更にはライブに来ていた幼い少女が、嬉々としたミラアルクによって惨殺されてしまうのを目の当たりにしてしまった結果、かつて奏を失った時のトラウマ以上の心の傷を負ってしまうことになった。
ライブ会場での大虐殺後、祖父(血縁上は父)である訃堂から『防人』としての使命を果たせなかった不甲斐なさを叱責されただけでなく、『歌で世界は守れない』と自らの『歌手』としての情熱すらも完全否定されてしまった。
そんなこともあって既にこの世にいない奏に助けを求めるなど精神的な不安定さを見せ、訃堂によって二度目の精神制御を受けた際には仲間であるマリアと刃を交えることになってしまう。
彼女のおかげで精神制御からは解放されたが、自らの戦う意義を見失い涙を流し、言葉遣いも気弱だった頃の少女らしいものに戻っていた。
その直後、訃堂に用済みと判断され銃殺されかけるが、父である八紘が身を盾に翼を庇う。
涙を流す彼女だが、彼の最期の言葉により吹っ切れ、戦う意思を取り戻した。
ちなみに自身に刻印を埋めつけ、かつてのトラウマを引き起こしたミラアルクとの決着では、月面でのマリアとの対話や八紘の遺言を思い出して立ち上がり、マリアとの絆のユニゾンでリベンジを果たすことに成功した。
使用ギア:
シンフォギアシステム第1号。メインカラーは青で、アームドギアは刀と足に装着されたブレード、小刀等、刀剣類。
そのため、使用技は刀を必要に応じて変化させる近接技がメイン。
脚部には展開式のブレードを備えたスラスターが備えられており、ホバリングの要領での高速移動を可能とし、短期間の噴射であれば空中での姿勢制御も可能となっている。
モチーフは日本神話のスサノオがヤマタノオロチ退治にも使用した大剣。
同神話に何度か登場する十束剣の一種であり、名は「大蛇を切り裂いた剣」という意味。
おまけのIF:もし零士と原作開始前に関わりを持てば、ライブ会場の出来事によって変化する。
奏生存バージョン→翼と関わりを持てば零士はライブ会場に向かうのでテイルレッドに覚醒する。奏は助かるが、零士のメンタルボッコボコ状態で原作が始まる(幼馴染は救えない)。
原作ルート→ライブ会場に行かないので奏は救えない。その上幼馴染を失うので零士は不定の狂気(無能)。翼は唯一残った零士を歳上である自分が護らねば(使命感)。
零士二期で前世思い出す→彼女の近くに居たなら守れたはずなのに、という事実でSAN値直葬(クソ無能)→どのタイミングでもいいからツインテールの想いを取り戻せば進化、共に戦う上に翼の心情に変化が訪れるので五期の精神制御を跳ね除ける(有能)
取り戻せず進み続ける(依存)→ほんへ終了後(ツインテールの想いが死んでるのでとっくに廃人。なお僅かには残るので死んでない。取り戻せば進化した状態で復活する有能)