この世の果てでツインテールの愛を唄う《叫ぶ》少年   作:絆蛙

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また書いてしまった……果たして主人公は何回ツインテールと言ったんでしょうね、今回。



EPISODE3 迷いを振り切り、運命を切り開く力

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただ驚きしかなかった。

俺の目の前にいる少女はいわゆる、原作キャラと呼ばれる存在。

ライブで自ら会いに行ったことはあるが、見たことがあるのは風鳴翼さんとマリア・カデンツァヴナ・イヴさんのみ。

まさか他の装者と会えるとは思わず、俺は呆然と彼女を見上げていた。

 

「君は……」

「その子のこと、お願い。もう少しで救助が来るから。その場から動こうとしないで」

「え、あ、ああ」

 

流石に彼女の持つ攻撃でも殲滅出来なかったのか、ノイズは俺たちを囲んだままだ。

とりあえず俺は吹雪ちゃんから目を離さないようにしつつ、彼女を見た。

短い言葉だけ言い残した彼女は、歌いながらまるで踊るように地面を滑り、ヨーヨーのようなものでノイズを倒している。

しかし決して前に出すぎることはなく、俺たちから一定の距離を保ちながら戦うだけでなく、此方を何度も確認して警戒してるのが俺には分かった。

ノイズが俺たちを狙ってもいつでも助けられるように、殲滅するために強く前に出られないのだろう。

事実、俺たちに飛びかかってきたノイズに対して小さな鋸を飛ばして一瞬で消し去り、すぐに別のノイズを相手していた。

……ひとまず、命は助かった。本当にそうなのか?こごまでの状況を作り出した人間が()()()()()()()()

でもこのままじゃせっかく助けてくれた彼女の思いも無駄になってしまう。

何かをしようとも邪魔になってしまう。

……いいや、今は考えなくていい。それよりも彼女が何も考えずに戦えるように---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『---Balwisyall Nescell gungnir tron(喪失までのカウントダウン)

『---Rei shen shou jing rei zizzl(鏡に映る、光も闇も何もかも)

 

そんなことを考えていたら、上空から歌のようなものがまたしても聞こえ、思わず俺は見上げた。

すると空中に居たはずのノイズが炭素の塊へと還り、二人の装者が降り立つ。

オレンジというよりは金色の鎧にマフラーを靡かせる少女---ガングニールの装者。

そして紫をメインに獣の牙の様に開閉するバイザーが特徴的な鎧を纏う少女---神獣鏡の装者。

彼女たちは、間違いなく立花響と小日向未来だった。

 

「調ちゃんッ! おまたせッ!」

「大丈夫ですか?」

「あ……はい」

 

またしても別の装者、それも予想外な二人に出会ったことに驚いていると、俺は慌てて返事する。

そうか、彼女がもういるってことは絆結ぶ赤き宝石もやっているということ。

やっぱりギャラルホルン編は終わっているのかもしれない。

 

「響さん、未来さん! 助かりました」

「ううん! それよりも、この人たちの為にも、早く終わらせよう!」

「うん、安全なところに避難させなきゃ」

 

ローラーを活かして戻ってきた彼女は合流し、三人は一言交わせば、頷きあってからすぐに俺と少女を守るように分かれ、それぞれノイズに攻撃を始めていた。

もはや原作キャラに出会えるという時点で夢のような光景にしか見えないが、これは現実。

戦いの場に視線を向けてみれば、鉄扇で拡散するビームを放ちながら、帯で決して傍には近寄らせず、かと思えば扇を傘のように展開し閃光状のビームがいつの間にか居た大型を含めて全てのノイズを焼き払う姿が見える。

 

閃光

 

装者としての戦いをこうして間近で見るのが初めてな俺は、ただその凄さに驚くしか他ない。

ノイズとの遭遇は非日常の一部だが、戦いそのものはそれを遥かに超えるほどに知らない世界だった。CGでもなんでもなく、実際に起きていること。

そしてまた別の場所では、徒手空拳による洗練された連続の攻撃で次々とノイズを蹴散らしていたかと思えば、腕をドリルのような槍に変換させた一撃で一気に貫き、まさしく何物をも貫き通す、無双の一振の如くの鬼神っぷりを見せていた。

 

さらに仲間が居るおかげで全体を見る必要がなくなったからか、地上をスケートの要領で高速かつ自在に移動しながらヨーヨーを巧みに扱い、脚部・頭部と思わしき箇所から体の周囲に円形のブレードを縦向きに展開し、回転しながら突撃して一気に殲滅していた。

 

非常Σ式 禁月輪

 

そうして数が多いだけで仲間がいる上に多くの激戦を乗り越えた彼女たちが今更ただのノイズとアルカノイズ如きに負けるはずもなく、瞬く間にノイズたちが殲滅されていく。

その光景を、吹雪ちゃんを守るように抱きしめながら見てることしか、俺には出来なかった。

ただ感じられるのは、自分の無力さと彼女たちが遠い場所にいるような、そんな錯覚。

これが、強敵たちとの戦闘を戦い抜いたシンフォギア装者たちの力……か。

どうやら俺は、ノイズたちに殺されなかったらしい。

果たしてそれは最後に願ったからか、それともツインテールの神様が本当に答えてくれたのか。

それは分からないが、ノイズが殲滅されたのを見て俺は安堵の息を吐きながら、ただ痛みを我慢していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦いが収束し、見たことのあるような人たちが後始末をしている中、俺は怪我をしている肘の部分を隠すように抑えながら少女をどう母親の元へ帰そうか悩んでいた。

やっぱり位置情報を送ってもらった方がいいだろうか。それかS.O.N.G.の人たちに頼むか…ああ、その方がいいかも。

頭が痛いというか、視界がチカチカする。

喉も乾いたし力も徐々に入らなくなってきた。

背中も痛ければ肘も痛いし、喉の乾きもやばくて、脱水症状になりかけているのだろう。

当たり前だ、何も飲むことなくひたすら全力で走り続けていたのだから、アニメと違って現実は喉も乾くしお腹も空く。

体力も一度止まったらすぐに動き出せるほど一瞬で回復したりなどしない。

ああ、やばい。助かったと思ってたけど俺、死ぬかもしれない。その方がいいのかな。

あーあ、力が抜けるというか、背中が燃えるように痛い。

 

「……ぁ」

 

ただ普段から感じることの無い熱さと風に当たる度にジリジリする背中に違和感を感じて、思わず手で触れる。

ぬちゃり、そういった音が聞こえて、()()()()を感じた。

そして手のひらを開いてみれば大量の血が付着していた。

あの時、瓦礫にぶつかった際に物凄い痛みを感じかと思えば、そういうことだったか。

どうやら俺の背中には何かが()()()()()()()()だったらしい。

瓦礫の破片か、それとも何か別の鋭利なものか。動きまくったお陰でより深く刺さったのだろう。

ノイズから逃げていた時はアドレナリンがどばどばだったから気が付かなかったが、冷静となった今はそのことを理解してまった。

……なんだ、自己分析出来るなんて思ってたより冷静だな。まぁ死ぬのは二回目だし、死にたくは無いけど仕方がないだろう。

そう、死にたくはない。けれども死ぬべきなのではないだろうか。

……どちらにせよ最後に吹雪ちゃんが助かったのと、原作キャラに会えたこと。綺麗なツインテールを見れただけ満足だ。

これくらい、最期くらい関わっても……許せ、世界。

ああ、それとこの子にも伝えないと。

 

「……おかあさん、無事だ……って」

「ほ、ほんと!?」

「……ぉう」

 

所詮は普通の人間である俺は出血量の影響で意識が曖昧になる中、少女に大切なことを伝えると、俺の体はぐらつき、力が入らずにあっさりとその場で倒れてしまった。

 

「ぇ、ぁ……お、おにいちゃん……? どうしたの、おにいちゃん!」

 

だんだんと眠気がやってくる。

目を瞬きさせ、その睡魔に従いたくなってきた。

疲れたと言えば、正直俺は疲れていた。

理想のツインテールなんて何度も語っているが、俺も理想のツインテールとやらが何かは分かってない。

ただ自分の中で勝手に決めて、俺の中で何かがそれを求めようとしていた。

人間の、欲深さと言えるものだろう。

それに世界が俺を殺そうとしてると分かった今、生きるべきなのかが分からなくなってしまった。

まあ最後に原作キャラに会えたのは嬉しかったかな。

月読調。

ギアで纏われていたとはいえ彼女のツインテールを現実で目の当たりに出来たことは、死んだら蒼空に自慢出来る。

……そうだ、綺麗だったな。彼女の戦い方も、姿も、ツインテールも。

あれが見れなくなるのは残念だが、異物はやはり消されるものなのだろう。

仮に生きたとして、次はないのだから---

 

「だ、だれかっ! おにいちゃんが……おにいちゃんが!」

「響!」

「分かってる! どうしたの---っ!?」

「……! 酷い怪我。急いで運ばないと」

 

もう限界だった。

どうなってるかは分からないし誰かが喋ってる程度しか分からないが、決して良い状態とは言えない背中を見た少女がトラウマにならないかどうかだけが懸念だったものの、俺はただツインテールのことを想いながらその意識を手放した---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『レイくん!レイくん、起きて!』

『んん……ツインテールぅ……』

『もう。起きないと二度と触らせないよ?今なら触らせちゃおうかなー……なんて』

『ッ!? 起きた、起きたから触らせてくれっ!』

『相変わらず現金だなあ……はい、ちょっとだけだよ』

『よっしゃー!』

 

気がつけば、いつも、ずっと近くに居た。

ずっと昔、小さい頃から一緒で、彼女は俺に関わりをもってくれた。

どれだけ寝坊しても、どれだけ一人家に居たって、彼女は俺の傍に来てくれた。

俺のツインテール愛は周りに引かれ、虐められ、誰もがバカにしてくる。

けれども誰に何を言われてようとも、虐められても、罵られても、傷つけられても、何があったってその想いだけは決して揺らぐことなく、俺にとってツインテールは命と同列だった。

この体を作る全てで、魂ともいえるのがツインテール。

生まれてきた頃からそれは変わらず。

 

『ふふ、本当に好きだよね。こんなのさせてあげるの、私くらいだよ?』

『ん、感謝してる。やっぱりツインテール、ツインテールこそ至高……ふへへぇ、いい匂い、ふわふわぁ』

『きゃっ!? も、もううっ……おしまい!学校に遅刻するから!』

『そ、そんな……!?ああ、俺のツインテールがっ!』

『レイくんのじゃないよ!?』

『辛い、もうやだ。俺引き篭る……なによりも、ツインテールに、さわりたい』

『五七五作ってもダメ』

 

果たして彼女は、どうして俺なんかに関わりを持ってくれて、ツインテールに触れさせてくれたのだろうか。

俺は正直ツインテール以外はどうだって良かった。だから虐められても迫害されようとも何も思うことはなかった。いや辛くはあったが。

だがその程度で見失うのであるならば、それは本当の愛ではない。

 

『はぁぁぁ………』

『…しょうがないなあ。学校に行くのと、一つ条件聞いてくれたら私のこと好きにさせてあげる』

『ッ!? ツインテール触れられるッ!?分かった、なんでもする!』

『本当に?なんでもする?』

『ツインテールのためなら命すらくれてやるっ!』

『そこまでの要求はしないからね!?……あ、でもある意味それはそれでレイくんのことこれからも独り占めに……』

『なにかいった?』

『う、ううんっ!そ、それより条件は私とデートすること、それならいいよ』

『ああ、荷物持ちか。ツインテールに触れるのが条件ならお易い御用だ』

 

思えば、彼女との日常は……いや、彼女の存在は前世の友人、蒼空と同じくらいに俺にとって大切な日常だったのではないだろうか。

別に今更ノイズに復讐心を抱くわけでもない。憎しみを抱くわけでも怒りを抱く訳でもない。

ただ、運が悪かっただけだ。

 

『そうじゃないんだけどなぁ……はぁ』

『んー?』

『なんでもないよ、レイくんは小さい頃から変わらないなーって』

『ツインテールを愛する心、俺は絶対に変わらないし愛し続ける。それが俺だからな』

『その言葉、絶対?』

『当たり前だろ?』

『……そっか。うん、レイくんがレイくんのままずっと居てくれるなら私は嬉しいな。ね、例え私が居なくなっても、その気持ちだけは変わらないでね』

『あ?どっか行くのか?』

『例えだよ。もしかしたらいずれは離れ離れになっちゃうかもしれない。でもレイくんがその気持ちを忘れてなかったら、もし離れてもまた会えるから。いずれ、必ず……ね?』

『ふぅん、おかしなこと言うなぁ』

『そうかな……ふふ、約束だよ。もし破ったらどうなるか分からないんだからね。私はずっとずっと、何があったってあなたの傍に居るから。貴方を、見守ってるから』

『…んー、よく分かんないけど、分かった。俺はこれからもずっと、自分らしくツインテールを愛し続ける』

『うんっ。それじゃあそろそろ学校に行こっか』

『あーい。終わったらちゃんとツインテール触らせてくれよ』

『はいはい』

 

そうして俺たちはまた今日を生きていた。

何も変わらない、幼馴染と過ごす日々。

そう---ライブ会場の惨劇が起きる前までは、ずっと。

俺の視界で、離れていく。

幼馴染も、俺も、ただ遠くへ。

だが数ヶ月後。

最後に話したのは、彼女がツヴァイウィングのライブへ行けることを喜び、ライブへ向かう姿だった。

俺はそれを見送ることしか出来ず、そうして彼女は---亡くなってしまった。

もし付いて行けば、俺は救えたのだろうか。

もしもの話をしても仕方がない。

少なくとも俺が覚えているのは、彼女が亡くなったことを彼女や彼女の家族と親しかった俺の両親が泣きながら教えられた時のこと。

それを知った時の俺はただ、ただライブへ向かう前に彼女が俺に遺した(渡した)()()を両手に抱えたまま立ち竦んでショックを受けていた。

同時にあのツインテールを見れないということに気づき、生まれて初めて消失感が胸中でざわめいた---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんだかとても懐かしい夢を見たような気がして、幸運なことに生きていたことに気づいた俺は目を開ける。

視界上には見覚えのない天井があって、その天井に向かって(ツインテールを掴むために)手を伸ばしてたからか、包帯で巻かれた右腕が見えた。

恐らく病院だろう。

なんだ、どうやら俺は死に損なったらしい。普通の人間なら死んでた気がするが、初めて転生者らしい頑丈さでも発揮したのだろうか。

いや悪運だけは強いようだ。

たださっきの夢のせいで、ツインテールに余計に触れたくなったが。

 

「! れーくん?」

 

そんなことを考えたら、聞き慣れた声が聞こえた俺はゆっくりと手を降ろしながら、声の聞こえた先---入り口を見つめた。

誰もいない。

訝しげに思って徐々に視線を下げていけば、幼女というべき女性---母親が居た。

 

「あ、母さん」

「う……」

「……う?」

「う、うわあああぁぁぁんっ!れーくんぅうううう!」

「!?」

 

何かを呟いたかと思えば、母さんは俺の元へ走ってきてその小さな体でダイブするように抱きついてきた。

突然のことで驚く俺だが、母さんが軽くなければ悶えてたしそれは危ないってことを言おうとしたところで表情を見て、やめた。

子供のように泣きじゃくりながら存在を確かめるように強く抱きしめてくる母親の姿を見れば、どれだけ心配させたのか分かる。

 

「よがっだぁ……れーぐん、ぶじでよがっだぁあぁぁぁ」

「か、母さん……落ち着いて」

 

想像してたより心配させてしまったようだ。

まあ子がノイズに襲われたって知ればそうか……俺たちは一度幼馴染と友人を喪ってるわけだし、子が死ぬかもって考えれば精神的負担はどれほどなものか。

 

「だ、だって、だってぇ……!」

「俺は無事だから。ここにいるから落ち着こう。流石に病院で騒ぐのはまずいから」

 

あと母親とはいえ、傍から見たら幼女を泣かしてるクズ野郎だから。

流石にそれはまずい、知らない人からしたら事案だしこのままじゃ俺が病室から牢屋へと変わってしまう。

 

「う、うんそうだよね……ごめんね、お母さん取り乱しちゃって……」

「いや俺の方こそごめん。無理しちゃったみたい」

「ううん、無事だったならよかったの」

 

ツインテールのためなら命懸ける覚悟は元からあった。

しかしそれはあくまで俺の主張。

両親からすれば、命を大切にして欲しいだろう。

 

「そういえば、父さんは?」

「あ……えっと竜也さんは明日には来ると思う。私が連絡したら珍しく狼狽してたのよ?仕事も切り上げて向かってるって」

「想像出来ないけど、悪いことしたな……母さんにも」

「確かにれーくんが病院に搬送されたって連絡が私のところに来た時は相当慌てたけど、無事に目覚めて安堵したから……本当に、本当に無事でよかったわ。もう三日も寝てたんだから!」

 

俺の質問に受け答えしてくれた母さんだったが、母さんは安心したような慈愛に満ちた表情を浮かべると、俺の頭を撫でてくれた。

確かな愛情。

それを感じて何も思わないような人間ではなく、いつの間にか三日も寝ていたという衝撃の事実を知ったが、心配させたことに対する申し訳なさの気持ちはより強ま---心配?

 

「そうだ、あの子は!?」

「あの子なら無事だよ」

「母親も無事で無傷だぜ、レイジ」

 

思わず跳ね起き、背中に凄まじい痛みが走った俺は倒れるようにベットにダウンした。

しかし俺の声に反応して、聞き覚えのある声が二つ聞こえた俺は母さんではなく、扉の方に視線を向ける。

 

「お前ら……そうか、お前らも無事だったか」

「君よりかは全然、肉体的にも精神的にも無事さ。それと鏡海さん、突然すみません。お邪魔します」

「お邪魔します!」

 

あの少女やその母親だけでなく光聖と識、ふたりも無事だったことに安心した影響か力が入らなくなってうつ伏せに倒れたままだが、一息付けた。

その間に二人は母さん---鏡海(かがみ)という名前なのだが、礼儀正しく会釈していた。

 

「あ、いつもれーくんがお世話になってます。来てくれてありがとうね。

じゃあ、れーくん。友達とも積もる話もあるだろうし、ちょっと席外すからゆっくり休んでてっ」

「……うい」

 

すると気を遣ってくれたのか、母さんはとてとてとすぐに走って出ていき、最後に軽く頭を下げて扉を閉めていった。

そしてそうなると三人の空間になるわけで、俺はバツが悪そうにするしかなかった。

しばらく、無言の空間が続く。

普段最初に口開く光聖も無言で、ついには俺が耐えきれずに口を開いた。

 

「……えっと、怪我なさそうだな」

「ああ」

「平気だぞ」

「……そっか」

 

やばい、会話が終わってしまった。

元々前世が陰キャな俺は話すのはそこまで得意な訳では無い。

ツインテールに関連すれば関係なくなるが、普段はそこまでなのだ。普通である。

そう思っていると、識が拳を強く握りながら俯いているのに気づいた。

 

「しき---」

「……心配したんだぞ」

「っ……?」

 

名前を呼ぶのと同時に、識は顔を上げた。

しかしその様子は何処か怒っているように、心配しているように、それでいて不安そうであった。

 

「ごめん」

「君が無理したら、元も子もないじゃないか。双月が重傷を負って病院に搬送されたって聞いた時、僕が……僕たちがどんな気持ちで居たと思う?」

「……ごめん」

 

普段は冷静で、知らない人からしたら表情の乏しさから冷徹に感じられるかもしれない。

だが今、ここにいる識からは明確な『怒り』と『安堵』が存在していた。

俺には、謝ることしか出来ない。

 

「僕は君に感謝してる。君が居なければ、きっと今もひとりで誰にも気づかれることも無く、ただ何も変わらなくて、つまらなく感じる日々を---1人孤独に本を読んで生きてた。

君が居てくれたから、僕は楽しいと思えるような日々を過ごせることになった。

光との関係が拗れたり、距離が開くことも避けられた」

「………それは俺がいなく---」

「君が居たからッ!君が居たから、僕は僕で居られたんだ。友達になれたんだ!

またこうして、()()とも話したり遊ぶことが出来るようになったんだ!」

 

いなくとも変わらなかったはず、そう言おうと思っていたのに、普段の冷静が嘘のように早口で感情を強く表に出しながら、識は拳を強く握りしめ、何処か泣きそうな目をしていた。

 

「そんな君が、そんな君が死ぬかもしれないって思ったら、僕は不安で押し潰されそうだった……。

双月はよく光聖のことばかり言う。だけど双月、君は自分自身が気づいてないだけで誰かを救おうとしてる、多くの人を救ってるんだ。

だから……お願いだから、人助けするなとは言わない。

ただ、ただ命を粗末にしないでくれ。無茶しないでくれ。もっと……もっと自分を大切にしてくれよ!僕はやっと出来た、やっと出来た初めての友達を失いたくない……!!」

「識……。俺も同じだぜ。

レイジ、俺はお前が居ないと楽しくないんだ。お前が俺たちのそばにいるから、俺たちは楽しくて、笑顔で過ごせる!

お前は凄いやつだ。あの子、吹雪ちゃんも感謝してた。あの子が必死にみんなに言ってたらしいぞ。ノイズから自分を助けてくれた『あのおにいちゃんをたすけて』ってさ。

でも、俺が言えたきりじゃないけどさ……自分の命も守ってこそ、()()()だろ?」

「…………」

 

限界だったのか涙を流す識と、何処か優しげに見つめてくる光聖の姿が、俺の目には映っていた。

俺の中で、ただ罪悪感が浮かび上がる。

 

---自分は存在すべきではないと今回の件で感じた。

生まれた頃、ツインテールに凄まじい情熱と愛を持っていたが、特別おかしいとは思わなかった。

けれど前世の記憶を取り戻し、この世界の物語として存在していた内容全てを知って、はっきりと理解した。

自分は他の人とは悪い意味で違うんだと。本来はいない、イレギュラーな存在なのだと。

特別な力があったわけでもない。主人公たちのように困難に立ち向かう勇気があったわけでもない。

誰かを守るために、誰かのために行動するような善行の想いがあった訳でもない。

ただそれでも、前世も今世もなんの力も持たぬ一般人が転生したって時点で、世界にとってイレギュラーなのは確定していた。

特にライブに行くことに関しては影響はなかっただろう。この世界の住人であるならば、アイドルに興味を持っても不思議ではない。

それが偶然、相手が装者であっても。

しかし集束現象、70億の絶唱に関わってしまった。

XVのライブが危険だと知って、他のライブは絶対行ってた人間が知っているかのように自らの意思で行く道を避けた。

シェム・ハの全人類のハッキングの際にも、原作に触れてしまった。他にも、関わったことがあった。

だけど何も変わらなくて、無事に原作が終わりを迎えて、自分はこの世界に生きていて良いんだと日常を楽しんで、その結果が、あれだった。

原作が終わってしまえば、物語は果たして何処へ行くのか誰にも知らない。

俺にも知らなくて、例えゲームに続いたとしても、安全に居られるはずもなかったのだ。

今回のノイズの件で原作キャラに助けられて、ここで目覚めたとき、最初に思ったのが()()()()()()()()()()()()()ということだった。

今回のノイズの件で、自分の存在を改めて考えさせられたのだ。

すぐにでも、死ぬべきなのではと思った。

本来俺は、居てはならぬ存在。

害がなくたって、存在するだけで危険。世界が、周囲が危うくなってしまう。余計な敵を、引き付けてしまう。

それならば、死ぬべきだったのだ。

あの場で、あの場所で、吹雪ちゃんだけを助けて消されるべきだった。

しかし---それを知らないにしたって、俺の目の前にいる友人は俺のために悲しんで、怒ってくれる。

ああ、死にたくはない。世界のためとは言うが、そんな大義名分は必要ない。

俺は普通の人間だ。

だから、ただツインテールを愛でて、理想を見つけて、幻想でも夢幻(ゆめまぼろし)でもない本物の、理想だと思えるツインテールを見つけたかった。

昔からの夢を、前世の友人と今世の幼馴染との約束を果たしたかった。

そんな思いだけがある俺だが、こいつらは俺のために怒って心配してくれた。泣いてくれる。悲しんでくれる。

だからこそ、死ぬべきと思った自分を恥じた。罪悪感が浮かび上がった。

 

「……なあ、もし、もしさ。世界のために、みんなの安全のために犠牲になるしかなくって、でも死にたくなくて、約束を守り続けたくて、夢を追いたくて、でも自分のためにみんなを犠牲にしたくない---そんな矛盾した答えがあったら、どうしたらいいんだろうな。それでみんなが生きられるなら、俺はやっぱり---」

 

故に、俺は思っていたことを話してしまう。

ツインテールに対する情熱も愛も廃れてはいない。だから夢を追いたい。

だけど世界に否定される自分の存在は認められていいのかと。犠牲になるべきなんじゃないかと。

 

「…っ。ふざけるなよ。何の例え話をしてるのか、何を思ってそんなことを言ってるのかは知らないが、僕は世界のためだろうが誰かのためだろうが、僕にとっての大切な友達に犠牲なれだなんて言わない!

第一、君だって同じ人間だ、同じ存在だろ!人柱になる必要なんてどこにあるんだ?生きたいなら生きたらいいだろ、その権利は君にもあるんだっ!」

「そうだ、俺にはさっぱりだけど、俺もお前も、識も、みんな死ぬべき存在なんていないだろ。犠牲になるべき人なんていないだろ?

それでもどうしたって道がないなら探せばいい!

人助けして、守ればいいんだ。俺だってみんなを助けたいと思っても助けられるわけじゃないけど---自分がそうしたいからやってる。レイジもレイジがやりたいように生きていけばいいんだよ、その方が楽しいだろ?シシッ!」

 

---その答えは、犠牲になるべきだと思っていた思いは、友人たちが否定してくれた。

その言葉に嬉しく心が温まりながらも、本当に、こいつらもなかなかにお節介なやつらだと思った。

それに全く弱ってしまったものだと思う。

過去の五回遭遇。原作を終えたのもあってそうそう出現することのなさそうな今回のノイズとの遭遇、幼馴染との思い出を思い出して、ツインテールに触れられてない日々が気づかない内に俺の精神が苛んでいたのかもしれない。

 

そのことに行き着いた頃には、識は涙を拭いて何処か優しげに目を細めて俺を見つめ、光聖は表情を和らげつつもいつもの似合う笑顔を浮かべていた。

 

「……双月はいつも通り、ツインテールバカで居てくれて、僕たちを引っ張ってくれたらいいんだよ」

「その方が今のレイジよりもよっぽどレイジらしいよな!」

「ああ、そう思う。むしろそうじゃなければ僕は困るけどね」

「………そっか、そうか」

 

本当に友人に恵まれたとそう思う。

ツインテールに恵まれないのは残念であるが、モブであるなら十分すぎるほどにいい関係だろう。

 

「……ありがとうな、ちょっとだけ一人にしてくれないか?」

「……わかった、待ってるから」

「元気になったら、今度こそボウリングだからな!」

「おう」

 

いつもと変わらない態度で接してくれて、自然とした笑みが浮かんだ俺は二人が出ていく後ろ姿をただ見て、窓を見つめる。

確かに俺という存在は異物で、世界を思うなら死ぬべきなのかもしれない。

でも、でもさ俺の友人たちは悲しんでくれた。両親は心配してくれた。

何よりも---俺の中で、()()()()()燃え上がるものがある。

決めたよ、世界が俺を否定するってなら、抗ってやる。

俺の思いを届かせるために、響かせるために。ツインテールの力を、ツインテールの魅力を、ツインテールの可能性を知らしめてやるためにな。

 

「……おにいちゃん?」

「……んっ?君は……吹雪ちゃん?」

 

俺が密かに決意を抱いていると、気がつけばドアが半開きになっていて一人の純粋無垢さがまだまだ残っているツインテールを持つ白髪の少女---あの時俺が助けた、吹雪ちゃんがドアの外から覗いていた---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そっか、特に怪我はないんだな」

「うん!おにいちゃんのおかげ!」

 

一応入院という身である俺は無言で病院から出られないため、もしかしたら外出するかもしれないということから念の為医師や看護師に外出の許可だけは貰った。

そうして俺は着替えるために一旦出て行って貰うと制服に身を通し、吹雪ちゃんと病室を出て、病院内にある敷地の中庭のベンチに座っていた。

今吹雪ちゃんは俺の左腕を抱いていて、純粋な瞳で俺のお陰だと言ってくる。

しかし助けたのはあくまで俺がツインテールを守りたいと思ったからだ。

じゃなきゃあそこまで命は懸けない……いやどうかな、多分ツインテールじゃなくても変わらんかったなあれ。

結局あれこれ言って彼女を助けてただろう。

俺は一度死んだ身であるから、同じ目にはあってほしくないと思う人間なのだ。

流石に届かない範囲は守れないし守れない範囲になってしまえば、自分優先と知り合い優先になってしまうが。

そういう手の届かないところまで守ろうとするのは、正義感の強い主人公くらいだ。

俺には届かないし、やろうとも思えない。

 

「おにいちゃんはまだいたむ?」

「多少は痛む程度かな。あいにく、さっき目覚めたばかりでね」

「そっかあ……じゃあ、いたいのいたいのとんでけーっ」

 

子供らしく俺の体に触れながらそう言う少女には、確かな笑顔がある。

俺にツインテールの趣味はあれどロリコンの趣味は多分ないと思うが、この笑顔を見れただけ良かったと言える。

 

「ああ、治った。ありがとうな。そういえば吹雪ちゃんのお母さんは来てないのか?」

「えへへ、うん、おしごとだって。でもおにいちゃんといられるからさみしくないよ!」

 

なにやら随分と懐かれたらしい。

俺もツインテールが見られて良かったと思った。色々悩んでたのが吹っ切れた。

もう俺は迷うことは無いだろう。

やっぱり俺は俺らしくいるべきなのだ、つまりI Love TwinTail!

残るは理想のツインテールを探すだけだな。

そういえばS.O.N.G.の装者たちはあの後どうしたんだろうか。俺が最後に見たのは三人が固まって何やら報告を聞いてた姿だったが。

ノイズの件、聞けるなら聞いておきたかった。もしバビロニアの宝物庫がソロモンの杖以外のなんらかの手段で開かれたなら最悪だ。

なによりもギアなしの調ちゃんのツインテールが見たかった。

…何故意識を失ったんだ俺は。くそっ、惜しいことしてんじゃねーよ。

 

「おにいちゃん?いたむ?」

「ああいや、なんでもない」

 

悔しさが表情に出てしまっていたらしく心配させてしまうが、俺は直ぐに取り繕う。

 

「……ちょっと外、散歩するか?」

「うん!」

 

このまま話続けることの出来る自身がなかった俺は吹雪ちゃんに提案すると、彼女は元気よく頷く。

それほど外出したかったのだろうか? まあ流石に連続でノイズと遭遇することなんてないだろうし、まだ目覚めて数時間しか経ってないが、少しくらいなら問題ない。

 

「じゃあ行こうか、ついでに好きなもん買ってあげるから」

「いいのっ?」

「おう、これでもお兄ちゃんの財布は軽くないからな。それに少女一人にすら奢れないって思われるのは流石につらい」

 

正確にはツインテールに全てを捧げてるので、お金なんて遊ぶ時にくらいにしか使わないのだ。

お金足りない時は日雇いバイトやってるし。

 

「やった、ありがとう!」

「ん、いいって」

「えへへっ」

 

ぎゅーっと笑顔で腕に抱きついてくる少女を見て軽く頭を撫でると、妹がいたらこんな感じなのだろうかと思いながら俺は一応もう一度外出することだけ伝え、夜になる前には帰ってくるように言われたのを頷いてから病院を出ていく。

伝えておかないと居ないってことになって大騒ぎになったら大変だからな。

しかし最初に見た少女の表情に比べて今彼女の笑顔を見られたって思うと俺の行動にも意味があったと思える。

子供は笑顔でいるべきなのだ---そしてツインテールはもっと増えるべき。

脳内ツインテールは出来るが、妄想よりもやはり現実が一番いいのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございましたー」

 

そんなこんなで、俺はコンビニで買い物を終えた。

XV終了後って考えて貰えれば分かると思うがまだ夏でもないので肌寒い日は多く、俺は(三日寝てたと考えたら当然だが)腹が減ってたのもあるのでアツアツの肉まんと缶コーヒーを購入。

吹雪ちゃんにはあの顔交換したら元気いっぱいになる餡が詰まっている生命体のチョコレート、棒ついてるやつのを買った。

やっぱりこの世界にもあるんだなーアンパ〇マン。

それだけじゃなく、屋台にあったクレープも買ったぜ。結構金削れた。

少女のはストロベリー、俺のはキャラメルクリームチョコレート黒蜜シロップきな粉つぶあん味。

うーん名前だけで吐き気するほどにすごい甘そう。

けれど一度気になったら挑戦したくなるのが人間だ、なによりツインテールの人だったから一番高いのを買った。

無論、八割は後者だ。

 

「美味しいか?」

「うん、フワフワだよ。甘くておいしい」

「よかったな」

 

子供らしく小さな口を大きく開いてクレープを食べている吹雪ちゃんは笑顔で、満足してるようだ。

それに俺は買った肉まんが美味くて体力が回復する。どこの伝説の龍だよ。

だが今日もまた頑張れそうだ、ツインテールをもっと見なければ…!

 

「おにいちゃん」

「ん?」

 

怪しまれない程度に軽く見渡しながら何処に行こうか悩んでいると、裾を引っ張られた。

どうかしたのかと反応して首を動かして吹雪ちゃんを見れば、目の前に突き出されるのはクレープ。

え、それで殴るの?

 

「あーんっ」

「ああ、じゃあもらおう」

 

なんでこんな小さな子が知ってるのかと思ったが……小学生なら知っていても不思議ではないかと善意で差し出してくれた吹雪ちゃんのクレープを一口貰う。

生地はどちらかと言えばふわりと柔らかく、クリームの方は自作なのか市販では感じられない甘さとスライスされたイチゴに合わせられているのか独特な風味があって美味い。

 

「うん、美味いな」

「えへへ」

 

はにかんだように吹雪ちゃんは笑みを浮かべ、俺は彼女の口元についているクリームを取ってあげると、残っていた肉まんをだべ---いやまっずっ!

クレープ食べた後に食べたら美味くないんだが!?

味が混ざってなんかなんか変な味だ。

なにいってんだ、こいつ。

 

「おにいちゃん、おにいちゃんっ」

「んぇー?」

「ううん、なんでもないよっ」

 

食べる順番にちょっと後悔していると、吹雪ちゃんは俺の事を呼ぶだけ呼んで首を横に振り、ただ腕に強く抱きついてくるだけ。

なんだか呼ぶ時がやけに嬉しそうというか楽しそうなんだが、本当に懐かれすぎでは?

俺はただノイズから助けて母親の元へ帰すように努力しただけなんだけど。

それにさっきから彼女が首を振るとその度にツインテールが当たることが多くて、はっきり言うと最高だった。

やはりょぅι゛ょ相手でもツインテールの魔力には抗えない…!

絶対手は出せないけど。

仮にしたら一瞬で両手が拘束されて車に入れられるわ。

というか俺が暴走したら止められるのなんて前世の友人か今世の幼馴染くらいじゃないかな…いや後者は止めるって言うよりかは好きにさせてくれただけだけどね。

 

「おにいちゃん、うれしそう?」

 

顔に出ていたらしい。

彼女のツインテールは思い返すだけで最高で、一番理想に近かった。

結局辛くなるから考えないのだが、それよりも今はょぅι゛ょのとはいえツインテールに触れられてる時点で俺の中に眠るツインテール属性に反応してしまうのだ。

今は耐えてるだけで本当なら無意識で触るレベルだからな。もっと触りたいなぁ。

この子の頭撫でるふりして触ってもいいかなぁ……。

犯罪だからやめよう。それで捕まったらおれが死ぬ。あんなツインテールもいないスキンヘッドのむさ苦しい集団(偏見)の空間に入れられたら俺が死んでしまう。

俺はツインテールを一日一回は見なければ死んでしまうのだ。

 

「わぁー……!」

「ん?」

 

ツインテールのことをただ考えていると、感動したように目を輝かせる吹雪ちゃんの視線を追い、俺もそこを見れば、眩しいけれども夕陽が沈んでいく様子が見て取れる。

って、いつの間にか知らんとこまで来てるんだが。気がつけば夜になりかけだし、そろそろ帰らないとやばい。

特に吹雪ちゃんの母親にまた心配させてしまう。

帰りを考えたら夜になることは確定だな…怒られることを視野に入れておこう。

多分母さんにも怒られる、頑張れ未来(みらい)の俺。

 

「綺麗だったな。けど、そろそろ帰ろうか。母親も心配するぞ」

「あっ、そうだった!かえらなくちゃ!」

「ああ、じゃなきゃ人混みを考えたら---」

 

とそう考えたところで、俺は妙な胸騒ぎと周囲を見渡した。

おかしい、いくらこの時間帯としても、少しも騒がしくないのはどうなのか。さっきまではある程度騒がしかった。

人が少ないなら分かる。減ったなら分かる。

けれど車の音くらいなら聞こえたって不思議ではないのに、()()()()()()()()

 

「……吹雪ちゃん、手離さないで」

「え?」

 

人一人の気配すら感じられず、何の音も感じられない。

ただ静けさだけが場を支配する中、俺はただ何かを探すように見渡し---()()()()を見た。

 

「やっぱりかっ!」

 

それを見つけると俺は即座にその場から走り出した。

その瞬間、俺たちがさっきまで居た位置から何かが落ちてきた衝撃が走った。

死んだ人には申し訳ないが、その人のお陰で助かった。

相変わらず俺は悪運だけは強いらしい。

 

「けれど、いくらなんだってこんな連続でノイズは理不尽---ってあぶなっ!?」

 

やっぱり世界が排除しようとしてるのかと思いながらも振り返って見ると、飛んできたノイズを俺は避けた。

残念だな、ツインテールの力を補給出来た俺は簡単には死なないんだよ!

力が湧いてくるぜ…!

 

「お、おにいちゃん……!」

「大丈夫!絶対守ってみせるっ!」

 

もはや彼女とは他人とは言いきれなくなってしまった。

故に、俺は彼女を連れて曲がり角などを利用して直線的に逃げないようにする。

そうすればノイズは突撃するようなことは出来ず、俺たちを追うしかない。

しかしそうは言ったものの、なんの策略もないのは事実。

親しくなった吹雪ちゃんを見捨てるなど、他人でなくなった今は絶対有り得ず、ツインテールがなくてもそれは変わらない。

いくら俺の迷いが振り切られたとしても、俺が俺らしく居てもノイズに無力なことには変わりない!

もう装者は来ない---あんな奇跡、二度も起こるはずがない。

あの時はノイズが出現して、俺が見つかったのがある程度時間が経っていたから間に合っただけ。

今回は恐らくそんなに経ってないはずだ。

信じるな、他人の力を頼りにするな、奇跡を宛にするな!

でもどうする、どうすればいい!?

唯一の救いはイベント型ノイズ以外がいないこと…ここでオートマシンとかいられたらやばかった。

それにしたって毎回思うが、当たれば即死だというのに複数相手は卑怯だろ!

タイマン、タイマンさせろよ!

 

「あぁ、しつこい!」

 

殴りたい!うざすぎて殴りたい! 特に俺だけじゃなく、おまけ程度でツインテールを殺そうとするのが許せねぇ!

いや殴るのは死ぬからやらないけど、俺はともかく---俺も体力戻ってないんだけど、吹雪ちゃんがまずい。

寝起きの俺とまだ小学校の吹雪ちゃんなら男で高校生の俺の方が体力も速度もあるのだ。

このままじゃ追いつかれる……仮に俺が犠牲になって目の前で死んだら修正力が働いてもトラウマの一種として何かが残るかもしれない。

つまるところ、俺も生きて吹雪ちゃんも生きねばならない。

これ以上ツインテールを失うものかと決めたのだ。

 

「はっ、はぁはぁ…お、おにいちゃん、わたし……!」

「掴まって!」

「ご、ごめんなさい……」

「今は生きることだけを考えて、大丈夫だ。俺は約束は果たす男だからな!こっちとらボウリングが待ってるんだ、ノイズ如きにやられるわけにはいかないんだよ」

 

曲がったところで吹雪ちゃんをおんぶし、駆ける。

とりあえず真っ直ぐいっては危険だと、工場地帯にまで来てしまった俺は走りながら周りを見渡し、目的の場所を見つけると即座に登り始める。

少女一人抱えてこれは陰キャの俺にはきついが、識じゃなくてよかった……あいつなら不味かったかもしれない。

正直このままじゃただ力尽きて死ぬことは確定だが、俺にはこうすることしか出来ない。

抗って抗って、世界に認識させてやる。

例えどんなものが来ようとも、敵が襲いかかってきても、俺は殺らせないと。死なないと。

 

「---っ。はぁ、はあっ」

「うう……」

 

吹雪ちゃんを背負っている背中から感じるのは、温もりと命の重み。

そして彼女の恐怖心とツインテールだった。

まだやれる、いけるな。ツインテールがある。

でも重い、重すぎる。命を背負うってこんなことなのかよ。装者たちはこの重みひとつじゃなく、70億の命を背負ってたってか……凄いな。

俺なんて命一つで重さを感じているのに……主人公たちには勝てない。

けど、諦めきれない。

ツインテールがあるなら、絶望なんてないに等しいだろ!

 

なんとか梯子を登り切った俺は、倒れそうになる足に鞭を打って、ふらふらな足取りで前へ一歩ずつ歩みを進める。

足は決して止まることなく、もはや呼吸出来ているのかどうかすら怪しくて、意識も朦朧としてくる。

 

「………はぁ、はぁ……」

 

ああ、くそっ。アニメだったら体力はほぼ無尽蔵じゃねぇか。

全力で走った後でも普通に会話したり戦えるのが彼らだ。

それでも現実となると法則は当てはまらないようで、体力は所詮人間の限界値に振り当てられている。

OTONAがほぼ無限ならば、光聖や装者たちは半分。

俺はそれより三分の一くらい少ない。

識は多分八割少ない。

子供並じゃないかな、あいつ。

 

「お、おにいちゃんだけでも……」

「…っ。はぁ、はあはあ……しない!絶対に離すものかと俺が決めたんだ」

 

ダメだ、余計なことばかり考えてしまう。

その思考を描き消し、俺はただ一歩ずつ足を進め続けて、止まった。

屋上へ行ってしまったのが仇となったのか、行き止まり。

ジャンプすれば別の屋上へ渡れるが、助走もなしでは落ちて心中死。

慌てて後ろを見てみれば、ノイズは壁も伝うことが出来るからか、普通に居た。

やっぱり……この世界で生きようものなら、力が必要なのか。

特に転生者ってのは誰であっても特別な存在だ。

俺みたいに力がなくたって、何かを引き寄せる危険が残っている。

歴史に存在しないものが関われば、歴史が変わるから。

 

「……ぐっ---ちく……しょうっ」

 

吹雪ちゃんをそっと降ろして持たれかけさせると、悔しさが口から漏れていた。

唇を噛み締め、ただ拳を強く握る。

そうしている間にもノイズは迫ってきていて、ジリジリと寄ってきているのは嬲り殺せるためか。恐怖心を煽るためか。

 

「も、もう……おしまい、なのかな…。わたしたち、しんじゃう……?」

 

---そうだ。

お前が彼女を巻き込んだ。

そうだ、分かっていたはずだろう。お前は世界にとって危険因子、イレギュラー。

全てを狂わせる元凶。

ここで死ねばいい、死ぬべきだ。そうすれば全てが変わる。救われる。何もかもが救われる。奪われた命はお前の罪だ。

世界のために、人類のために死ね。

少女を守れず、また全てを失って、希望を失って絶望しろ。

お前の希望など、世界にとって必要ない。存在すら不必要だ。

 

「……ちがう」

「お、おにいちゃん……?で、でも…むりだよ…わたし、歩けない……迷惑ばかりかけて、ごめん---」

「違うっ!」

 

何かが語りかけてくる。自分の弱さか、もうひとつの自分か。

---ああ、そうなのかもしれない。

いや、そうなのだろう。

俺が死ねば解決する話。

けれど、みんな救われる? ふざけるな、ふざけんなよ。

みんな救われる?何が救われるって?俺が犠牲になったら、みんな救われるだと?俺が救われないだろうが!みんなってのは俺も含まれるだろうがっ!何がみんなだ!両親だってそうだろ、例え記憶が無くなったとしても子を失う時点で救われるはずがない!

矛盾だらけの言葉に屈するか!

命を大切にしろと言われた、自分の命も守ってこそ人助けと言われた!

悲しんでくれる母親と心配してくれる父親がいた!

気まぐれで助けたこんな俺を慕ってくれた少女が居た!

なにより、俺の居場所となってくれた幼馴染が居た…蒼空が居た!

今の俺にとっての居場所---そう、俺ではなく他者の評価を借りるならば太陽と陽だまりのような友人、その彼らは俺を受け入れてくれた。

だったら---月は?

月は太陽があれば強く輝ける。太陽は陽だまりがあるからこそ照らせる。

陽だまりは太陽があるからこそ、より強く温もりを維持できる。

俺に脳裏に浮かぶのは、物静かだが確かな情熱を持ち、可愛らしくも美しく、ダンスのように舞いながら歌い戦う一人の黒髪のツインテールを持つ少女。

---会いたい、そう思った。

身分も違う、原作キャラに会うなんてこと、烏滸がましいと分かっている。そんな資格もないと。

けれども俺の記憶に残るほど、俺は彼女に見惚れた。

あの時、助けられた際。

俺は周りを見渡していたが、間違いなく彼女を目で追っていたのだ。

惚れたわけじゃない。

ただあのツインテールの美しさを、もう一度見たいのだ。

俺は月の名を持っていても、所詮は欠けたようなもの。

だから輝けない。

でも、でも彼女に会いたいという思い---俺のツインテールに対する全ての思い。俺を受け入れてくれた人たちのために、死ぬ訳にはいかないんだよ!

 

「吹雪ちゃん、まだ終わってない。終わらせない。君を絶対、無事に帰す!何があったって、どんなやつが居たって、来たって!相手がノイズだろうと、指一本触れさせない!命を奪わせない!ツインテールを壊させない!」

「おにいちゃん……」

 

そうだ、ツインテール。

生まれて物心着いた時、ツインテールに対して熱が収まりきらなかった。

ただ心の中で、永遠と燃え上がる情熱。

心臓がバクバクとなって苦しくて、俺はあの時、間違いなく()した。

幼馴染のは何故か無理だったが、ツインテールがあれば、他人の感情すら読めた。

ツインテールに触れていれば、満足が出来た。

ツインテールに触れたら、心がドキドキした。

ツインテールが近くあったら、自分の中で何か抑えきれない…そう、あれは高揚感…()()が芽生えた。

ツインテールを抱きしめた時、全てに包まれて、安心感があった。希望を感じられた。

生きる気力が湧いた。

ツインテールがあれば、気分が落ち込んでも明るくなれた。元気になれた。

俺にとってツインテールは、希望の太陽だった。

ツインテールがあれば、なんでもできるような気がした。

---チラつく。

彼女の、幼馴染のような長いツインテールに、美しくも儚く輝くような真っ赤に燃える情熱の双髪。

 

「もう奪わせない。二度と消させてたまるか!俺の希望のために!俺の守りたい物のために!俺が俺らしく生きるために、うじうじ悩むのはもうやめたんだ!今、俺に出来ることをやってやる!どんなことがあったって、俺は何も変わらねぇっ!

だから---」

「あ……おにいちゃん…っ!」

 

ノイズが迫る。

ものの数秒で俺は炭素の塊と変換され、彼女も殺されてしまうのだろう。

それでも逃げない。

俺は決めてたんだ。約束したんだ。

ツインテールを愛し続けると。死んだら愛せない!もう触れられない!

そんなの嫌だ!自分の好きを貫き通したい、まだまだ触り足りない!

色んなツインテールを見て、触れて、愛でて、包まれて、一緒に寝たり繋いだり、繋がったり、やりたいことを全く出来てないだろっ!

俺のツインテールへの思いが、この世界そのものよりちっぽけだと誰が決めたっ!?

俺のツインテールへの思いは、宇宙だけじゃなく次元をも貫く愛だ!

ツインテールは俺の全てなんだ!

どんな理不尽にも抗ってやる、どんな修正力にも反逆してやる!

運命を超えてやる!どんな脅威すらも払い除けてやる!

ツインテールを傷つけるって言うなら、俺の全てを賭けて防いでやる!

だから、俺は負けない!

ツインテールのために、ツインテールを守るために!ツインテールを失わせないために!ツインテールを傷つけさせないために!ツインテールを壊させないために!

ツインテールを愛し続けるために!ツインテールに触れるために!

幼馴染との約束を果たすために、俺がやりたいこと---全てのツインテールのためにっ!

だから、だから---

 

()()()()()()()()()ッ!!」

 

その言葉が出たのは、無意識だった。先走った一体のノイズが迫り、直撃する直前。

ただ死にきれなくて、ツインテールを諦めなくて、例え無理だとしても()()()()()()()()()()と強く思いながら抗うためにやった行動だった。

俺は()()()()()()()()()()()を振り抜いていた---そうしてノイズごと眩い光に包まれ、視界がシャットダウンする---。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ノイズとは異なる未知の高エネルギー反応を検知!」

「この波形は一体……? アウフヴァッヘン波形にも似ていますが、これまでの観測データにはないものです!」

「映像、モニターに出ます!」

「これは……アンノウンだとッ!? 未知の力だとでも言うのか!?」

「あの鎧。まさか、装者……?」

「いえ詳しくはまだ分かりませんが、シンフォギアとは別物…錬金術でもなく、なのはさんたちのような魔法でもありません」

「それよりも今はあの子たちが危ないよ!師匠ッ!」

「嗚呼ッ!放ってはおけまい…!お前たち、頼めるか?だが警戒は怠るな、いくら()()()()()とはいえ、まだ味方だとは決まったわけではないからなッ!」

「無論承知済みですッ!すぐにでも!」

「ああ、ノイズを片付けてやる!」

「これ以上被害は出させないわ!行きましょう!」

「はい!行こう、未来ッ!」

「調も行くデスよ!」

「あ……うん。行こう」

「ご、ごめん。ちょっと考え事してた。今行くね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---動いてから後悔した。

ああ、俺は死んだのか。

しまった、ノイズに()()()()()()()()()

物理攻撃なんてもってのほか、あのチートな司令官ですら触れたら死ぬというのに何故俺は手を伸ばしてしまったのか。

くそっ、あんなにツインテールのことを考えても結局何も出来ずに死---死?

待てよ、死んでるのになんで地面に立っていると感じられる?風を感じられる?五感も、体の感覚も、何かを欠けてるような感覚も---そもそも何故思考が出来るんだ?

一度死んだから分かる。ああ、助からないな…とは思ったが、その後は何も感じれず、何も思考出来なかった。

体も動かなくて、五感全てが消えていた。

でも今は残っている。

つまり俺は---

 

「お、おにい……おねえちゃん?」

 

吹雪ちゃんの声が耳を通り、脳へと伝わる頃には、生きているってことなのだろうかと思いながらも俺は閉じていた目を開けた。

視界が広がると一瞬目が暗くなるが、俺の目の前には大量のノイズ。

そしてなにより、迫っていたノイズが居なかったように消えていた。

呆然と立ち佇む俺は、頭が真っ白になっていて状況が理解出来なかった。

えー……俺のツインテール愛がノイズを吹っ飛ばすほどに強かった?

 

「っ!?」

 

ってやばい!

そんなこと考えていたらなんか一気に来たんですけど!?

俺は慌てて反転し、ノイズにやられるよりかはワンチャン生き延びれる可能性のある方向を選ぶ。

すると()()()吹雪ちゃんの傍まで来た俺は何とか反応して彼女を抱きしめるように抱えることで屋上から飛び降り---()()()()()()()()()()()()

 

「……え?」

「ぇ……」

 

なんということでしょう、空を見上げれば地上や屋上よりも近くに見える星々、そして下からは輝くような光が溢れる綺麗な街並みが見え、それはもうきれ---

 

「お、おちるぅうううううううぅぅ!?」

「ふぇぇぇぇぇぇぇっ!?」

 

しがみつくように強く抱きついてくる吹雪ちゃんを抱え---というかなんか大きくなってないかこの子!?

そう思いつつも俺は彼女を庇うために両足の爪先が地面から離れてしまい、踵だけが地面について滑るように着地する。

すると足首からストッパーのようなものが降りたかと思えば、火花を撒き散らしながらアスファルトを削り、助かったことに安堵する前に、俺は速度が落ち切ってないタイミングで石に躓いてしまう。

そうなると体が空中に浮いてしまうわけで、物凄い速さで回転しながら吹雪ちゃんを庇うために俺は自らの体を犠牲にして何らかの工場のような建物の壁に背中をぶつけた。

建物が崩壊し、それでも何故か()()()()()()俺は咳き込みながら邪魔な土煙をどこかに行かせるように手で扇ぐ。

 

「げほっ、げほっ。な、なんなんだよこれ!?」

「えほっ、えほっ!」

 

想像を超える跳躍力。

それに疾走力だった。

思わず反応して彼女を抱きしめたが、身近だと見学で行ったジムのランニングマシンを最高速にしたときのような、猛スピードの車にしがみついてるような感覚だった。

前者が経験済みで助かったぞ、ほんと。

見た感じ吹雪ちゃんも無事なようで、庇ってよかった。

離してしまったから心配だったが、ちょっと汚れただけで怪我もないようだ。

こんなのミンチになっても不思議じゃなかったぞ……。

 

「お、おに……ぃおねえちゃん?け、けどさっきまでおにいちゃん……。

で、でもでもおねえちゃん?えと、おにいちゃん……だよね?でもやっぱり、おねえちゃん……え?え?」

「………ん?」

 

吹雪ちゃんの方を見れば、ぺたんと両膝と両手のひらを地面について目を見開いて驚いてるような様子。

しかし俺はそんな女の子らしい座り方よりも、彼女の言葉に違和感を覚え、自分の()にも違和感を感じた。

いや違う、漠然とした疑問は既に感じていた。

最初はなんか不思議なことが起きて吹雪ちゃんが成長でもしたのかと思ったが、彼女の身長は伸びていない。

何よりも、俺は座っているわけでも倒れてるわけでもなく、足で地面に立っているというのに()()()()()()()

それだけではなく、なんだか声も()()()()()()()()()に変わっていて、思い返してみれば吹雪ちゃんを抱きしめた時、俺の手がいつもより小さく見えたような気がした。

 

「………」

 

首筋を冷や汗が伝い、なんだか無性に今までの人生、死ぬことよりも別の意味で嫌な予感を感じ、全身が粟立つ。

 

「も、もしかして……」

 

別人の声かと思っていた声は今、確かに俺の口から発せられたもので、俺は建物を壊してしまった際にガラス片が落ちてきたことに気づいていたので、錆びた歯車のようにギギギ………ッと音を立てながら首を下に向ける。

偶然とはいえまるで俺のために仕立ててくれたのではと思えるくらい巨大なガラス板が落ちており、強化ガラスだからか割れることなくヒビが入っている程度。

しかしそのガラスに映っていたのは、いつもの164cm程度のフツメンな男子高生---ではなく、映っていた姿に俺は絶句せざる得なかった。

そう、映っていたのは()なんかではなく---随分と幼い、それこそ8歳くらいに見える可愛らしい()()()()()()()()()だった。

 

「---お」

 

ギャグ空間、漫画だったならついんて〜ると今にもポップな効果音が聞こえてきそうな、膝下まで伸びた美麗見事な情熱を体現したかのような赤い髪のツインテール。

揺れるような滑らかさで、息遣いに合わせて上下に稼働するリボン型のパーツ。

くりっとした目が驚きで見開かれ、ファッションにしてはコスプレにしか見えないほど物々しく、甲冑と呼ぶにはそれはそれで些か頼りない---赤と白を基調とした、まったく重さを感じさせない不思議な防護服。

素肌に密着するボディスーツの上に着込まれた、所々角張ったメカニカルな武装が、神秘的な輝きを発生させていた。

 

「お……」

「お……?」

 

そして、大仰な腰当てが左右についているがスーツの股間部は水着のようになっており、胸は平坦だが太腿が半分も露出している。

しかも、何よりも前世でも今世でも、死んでも決して変わることなく共に歩んできた大切な相棒が股に感じられず、綺麗さっぱり消えたような感じがして違和感が凄かった。

 

「お、お……」

 

無茶苦茶すぎて分からなかったのに、色々と状況が理解したくなくとも目の当たりにすれば頭が勝手に納得し、理解し、整理をして現実を伝えてきた。

さっきから狼狽して発せられる声はあまりにも不自然なくらいに甲高い声。

ガラスに映る、随分と幼く可愛らしい少女。

俺が呟いた言葉と同じタイミングが開かれる小さな口。

そう、このガラスに映っているのは---

 

「お、おおおれ、女になっちまってるぅうううううう!?」

 

そう、吹雪ちゃん以外人が一人も居ない空間に轟かせる幼い叫び声を挙げたのは、ガラスに映るツインテールを持つ少女の正体は、明らかに俺だった。

それを意識した瞬間、俺は---『随分と可愛らしいツインテールだなー』と現実逃避するしか、そうするしかなかった。

そうするしか、出来なかった---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





第三回、キャラ紹介。
友人B=小宮(こみや)(しき)
髪型はトランクスヘアーで髪色は緑色。
身長152cmで体重は52kg。属性はメガネ。
その本体(メガネ)は黒のスクエア型。
幼馴染は光聖で、(ひかる)と呼ぶ。零士のことは双月。
光聖のことを光と呼ぶのはあだ名みたいなもので、その理由は幼い頃から()()のような存在だったから。
識は見た目通り真面目で感情が乏しく、ほとんど表に出さない。
そのため周り不気味に思われ、幼馴染という特別な関係の光はともかく、友達が出来たことがなかった。
しかし振り回してくる双月と光の前では感情が大きく出てしまい、周りからはあんな顔するんだ…と思われている(本人は知らないだけで周囲には嫌われてはいないしその真面目さと普段と友達と関わる時のギャップで今は人気が高い)
実は光聖とは中学時代に眩い場所を歩く光と影の道を歩む自分では住む世界が違いすぎたせいで距離が出来てしまい、高校に入るまではそこまで話すことは無かった。
光とは違って特にやりたいこともなかった識は何かをするでもなく、本に没頭することでつまらなく感じる日々を忘れようと、一人でも寂しくはないと逃げるように本に現実逃避していた。
しかしツインテールバカがやらかした上に一人教室で本を読んでいた識を引っ張り、双月が無自覚に二人の仲を取り持ったことで再び光との仲が戻った。
最初は変なやつ、関わって欲しくないとしか思ってなかったが徐々に双月と関わっていく中で識すらも知らぬ間に惹き付けられ、気がつけば光聖と過ごす日常を、なによりも双月と過ごす日常が好きへとなっていた。
ある意味、死人当然だった自分を救ってくれただけでなく幼馴染との仲も戻してくれた英雄(ヒーロー)のような存在で、それ故に識は双月を大切だと想っている。
そのため、光と口では否定してるが人助けの行動を間違いなくしている双月のことはいつも気が気では無い。
ちなみに学力は学校で一位。
しかし彼も彼で裏では評価は高いが、彼女が欲しいとも思っておらず、彼にとっては双月>光=家族>知り合い=女性>自分>越えられない壁>他人。
双月や光聖とは違い、身体能力は餓鬼に負けるのではと思われるくらいにはクソ雑魚だし体力もないが、知力は高い。
ぶっちゃけ聖遺物に関して勉強すればフィーネのようなものは無理でも解析とか出来そうなくらいには天才。

作者も知らず手が動いて出来上がったこの作品

  • 続けて
  • ツインテールはいいぞ
  • 戦闘シーン多くして欲しい
  • 続けて欲しいしXDのイベストやって♡‪
  • LOST SONG等もやるんだよ
  • 期待してる
  • 作者が無理しない程度にして欲しい
  • 無理せずに毎秒投稿しろ
  • 困った人用
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