この世の果てでツインテールの愛を唄う《叫ぶ》少年   作:絆蛙

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あけまして、おめでとうございます!
何故かまた続いてます、なんでだろうね。
まぁしばらくは続く言ってたしね、まだ始まりだし。そろそろプロローグが終わりますけど。
それで続くならどうしようと、アルティメギルのこと考えたんですけど、多分出さないと思います。
出てきても不思議ではないやつらですが、理由としては収集つかなくなるしシンフォギア食いそう。
あいつらキャラ濃いからな…。
ちなみに本当の予定はこの回ともうひとつやってからクリスマスにクリスマス回でした、無理だったわちくしょう。
でもまあ、日常メインでやるんじゃないかな…戦闘もやると思いますが、わからん。






EPISODE6 力の源

 

 

 

 

 

 

 

 

「---♪」

 

心地の良い、静かで優しく、月のような光に包まれてるような歌が聞こえる。

こうして寝ておきたいという欲を持っていても、脳が覚醒を促す。

けれども不思議とこの歌を聴いていたくて、だけど起きろと指示が来る。

嫌だ、と理性が否定する。

それでも起きろ、と本能が訴えかけてきて---ふと()()()()()()()()()を感じた。

真っ暗な視界の中、赤い、赤い二つの綺麗な髪が見えたような、何処か知ってるようで知らない、女の子が俺に向かって微笑んでるような、そんな気がした---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゆっくりと視界が開かれる。

知らない天井、知らない匂い。

何もかも知らなくて、ただ視界と思考が完全にクリアになるまで少しの時間を要した。

 

「---♪」

 

目を瞬きさせ、歌が聞こえてくることに俺は気づいた。

その歌は隣から聞こえてきていて、別のツインテールの気配を感じる俺は首を動かしてその方向を見た。

椅子に座っていたのは黒い髪に、紅色の瞳を持つリンゴの皮を剥いでいる女の子。

頭部に結ばれている左右の髪はゆっくりと揺れ、その美しさに、その良さに視線が固定される。

 

「……あ。目が覚めた?」

 

声をかけられ、ハッと意識を取り戻した。

どうやら俺は、起きてそうそうツインテールに見とれてしまったらしい。

むう、こんなふうに見る機会なんてそうそうないからな。気配で感じ取れたが。

 

「ここは……」

 

状況を理解したい俺は声を出すが、自分の声に違和感を覚える。

恐らく意識を失ったんだろうが、意識を失う前はもっと高い声だったんじゃないだろうか。

そういえば視界もやけに高くなってるような……。

 

「ここはS.O.N.G.の医務室。交代交代で私たち装者があなたのことを見るようにしてた」

「……俺のこと?」

「そう。何かあったら、対処出来るように」

「そういえば……」

 

腕を動かす。

視界に映った腕は意識を失う前は強そうに見えない、とても細く弱そうな女の子の腕だった。

それも、八歳くらいの。

だが、今は見慣れた腕に戻っている。

それ以外にもこの発する声から考えるに、俺はあの姿…テイルレッドの姿から戻っている…?

なるほど、よく分からんが、つまり彼女が居たのは暴走の危険性もあるから、か。

 

「悪く言えば、監視。ごめんなさい、まだあなたのことは何も分かってないから」

「いや、そんな……感謝はあれど、謝られる筋合いはないよ。あの時、俺が死にそうになったとき君は助けてくれた。だから俺は今も生きてる」

「あの時、間に合ったのはあなたが頑張ったから。けど、あの女の子の正体が貴方だったのは驚いた」

 

…だろうね、俺も色々普通に驚いたわ。

それに色々と頭が動き出してきた。

つまるところ、俺はまたしても彼女に…この場合は彼女たちS.O.N.G.に助けられたってことだろう。

気がつけば女の子になって、S.O.N.G.へ連れてこられて、何故かパーティして、目的を話して、気がつけば男に戻っていた---なんもわかってなくね?

つーか分かるか?

何度も言うが、俺は難しいことは苦手なんだよ!そもそも女の子になるってなんなんだ。

 

「ひとまず貴方はもう少し休んでいて。お腹空いてるならリンゴ、食べていいから。

貴方には色々と話を聞くことになると思う」

 

そう言って、彼女---月読調は椅子から立ち上がっていた。

あの司令にでも伝えに行くのか、はたまた他の人に知らせるのか。

どっちかは分からないが、それは困る。

まだ聞きたいことがあった。

 

「ま、待ってくれ!」

「……?」

 

彼女が出ていく前に慌てて声を出すと、思ったより大きな声が出た。

彼女は小首を傾げながら、半分だけ体をこちらに向けていた。

 

「吹雪ちゃんは……吹雪ちゃんは無事なのか!?」

 

自分のことは分からないことばかりで、正直今も何もかも分からない。

でもこれだけは聞かねばならなかった。

俺がどうなったなんてどうだっていい。ただテイルレッドになって、守ったはずの少女が生きてるのか、母親と合流出来たのかだけが心配だった。

そして目の前の彼女は表情の変化があまり見られないから分からないが、目を少し見開いて驚いたような反応をしたかと思えば、少し笑ったように口角が上がっていて、口を開いた。

 

「貴方が二度助けた子はもう大丈夫だよ。あなたに感謝してた。それと、貴方の『あの姿』に憧れを持ったって」

「……そうか、ああよかった」

 

それだけ聞けて、安堵の息を吐く。

この世界でも、ツインテールはそこまで浸透している訳では無い。

だから少しでもツインテールが増えて欲しい、未来あるツインテールは消えて欲しくないし、吹雪ちゃんとは結構関わることになってしまったからな。

無事なのは本当に良かった。

 

「それじゃあ…もう少しだけ待ってて」

「…それはいいけど、その前に監視なんだよな? 俺を一人にしていいのか?」

「問題ない。さっきの反応で、貴方が『いい人』なのは分かった。私は誰かに手を伸ばそうとする人を知ってる。貴方からは、その人と同じ感じがするから」

 

それは…間違いなく『立花響』のことだろう。

彼女は過去の出来事もあって、人に手を伸ばす。

傷つけるより分かり合うことを選ぶヒロイン(主人公)

当然戦場では甘い考えだが、彼女の行動で救われた人物がいるのも真実。

まぁ…俺は何もしなかった人間だから、彼女のその考えは否定しないし肯定も出来ないし権利もない。

ただ俺はどちらかというと、平和的に解決出来るならそれがいい。そしてツインテールが増えてくれたらめっちゃいい。

…話が逸れた。

 

「それとも、貴方は何かする気なの?」

「…う、その考えはなかった」

 

そんなこと、考えるはずがない。

けどちょっと過激評価過ぎないだろうか。俺は自己利益で動くだけで、立花響のような誰かのために動けるような人間ではないと思う。

 

「とにかく休むこと。怪我はまだ治ってないらしいから」

「あ、ああ……」

 

それだけ言い終えると、彼女は部屋から出ていく。

そうなると一人になるわけで、やけに静かになったというか、部屋が大きく感じた。

何もしないのは暇だ。

ツインテールのことを考えるのはいつもと変わらないし、リンゴでも食べるか……それに光聖や識からメッセージ来てるし、返信しよう。

特に母さんからは量がやばい。

親父は……うん、なんか知らんけど脱走扱いにならないように手回ししてくれたらしい。

病院の方々を納得させるって親父何者だよ。昔はヤのつくような職種についてそうな見た目をしていたくらいしか分からん。

 

「………」

 

ダメだ、思ったより暇すぎる。

そもそも俺はいつも何してたっけ。別に考えることはないんだよな。

流れてくる雲がツインテールに見えるな、とかその辺りだ。

あれ、そう考えると俺は何を考えて生きてきたんだ?

ん?もしかして俺って……暇を潰すのが苦手なのでは?

ゲーム、やってない。読書、難しいから分からん。勉強、やりたくない。

睡眠、寝すぎて無理。

ふむ……なるほどなるほど、よしツインテールのこと考えておこう。

俺は素直にあきらめ、目を完全に覚ますためにもツインテールのことを考え始めた---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何処か罪人が罰せられるような、裁判所で判決を言い渡されるような、そんな犯人のような気持ちで司令室の中に俺は居た。

俺は俯いたまま顔を上げることが出来ず、今更になって気づいた。

---これ、女装趣味のある変態と思われるのでは、と。

ツインテール好きの変態なら良い。でも嫌だ、女装趣味のある変態と思われるのは嫌だ!

そもそも俺は無実なんだ、あの姿になった理由も不明だし、なんなら何も知らない!

嘘です、原作は知ってます…いやそうじゃなくて。

裁かれる前の罪人の気持ちってこんな感じなのだろうかなどと考えてしまう。

 

「さて---」

 

弦十郎さんが全体を見渡し、全員いることを確認したのだろう。

口を開く。

僅かに肩を震わせ、俺は視線を上げずに俯いたまま何を言われるのか身構えていた。

このまま変態のレッテルを貼られたらツインテールに泣きつく自信がある。

いや泣きつくツインテールねぇわ…あはは。はぁ……。

 

「これだけはハッキリさせておいた方がよさそうだな。俺たちは姿が変われど、君に何かをするわけでも危害をするわけでもない。君の人となりは分かっているからな。

ただ……」

 

俺の状態に気づいてたのか弦十郎さんが優しく告げてくれた。

その言葉に安心し、多少気は楽になりつつも区切られた言葉に緊張が走る。

やっぱり女装趣味があると思われたのだろうか。

 

「君は一体、どちらが本当の姿で、君は一体誰なのか。それを俺たちは聞きたいのだ」

「……へ?」

 

聞かれた言葉を認識した瞬間、俺は止まった。

俺が思ってたより全然違うことだったのだ。そりゃ止まる。

でもこれは普通に言った方がいいよな。

 

「え……と。俺の本来の姿はこっちで、その…あの姿は俺もよく分かりません…」

「16歳って言ってたのも本来の姿がこっちだったからってことね…」

「確かにあの姿じゃ無理があるもんなぁ……」

 

友里さんと藤尭さんが納得といったような、だろうなと言った反応で頷いていた。

一応、確認のために聞いたのだろう。

 

「ふむ……君…いや、すまん。先に名前を聞くべきだったか」

「あ、いえ。改めてまして、テイルレッドはあの姿の名前で…俺自身の名前は()()零士って言います。双子の双に、月の月。ゼロの方の零に、武士の士」

 

そういえば俺は名乗ってなかったかと自己紹介をすると、弦十郎さんの眉がピクリと動いたような、そんな気がした。

 

「…そうか、ならば零士くん。君はどういった経緯であの姿、テイルレッドになれたのか。それを教えて貰えないだろうか? 調べるにしても情報が足りんのだ」

「それは構いませんけど……俺も分かる範囲でしか」

「それで構わない。何も無いよりかはな。何を媒体としているのか、どうやって変身しているのか、安全なのか、それを知れた方が安全だろう?」

 

確かに俺は何も知らない。

シンフォギアのようにペンダントって訳でもないから、どうやって変身したのだろうな。

力を使った感じ安全性はバッチリだけど…疲労面が凄いのかな。あのとき、倒れた理由が背中に負った傷が原因なのか疲労なのか分からない。

 

「まずですけど---」

 

そして俺は、この場の全員に伝わるように思い出すように伝えていく。

吹雪ちゃんを守るために、死にたくなくて死に物狂いで足掻いたら姿が変化していたこと。

身体能力が上がっていて、気がつけば女の子になってたこと。

説明書のようなものが脳内に流れてきて、技の使い方とかがわかったこと。

変身したのはいいが、そもそも気がつけば変身してたせいで倒れるまでずっと解除方法が分からなかったこと。

正体をすぐバラさなかったのは自分でも説明出来ないし、女の子になったと言っても信じて貰えないと思ったこと。

覚えている範囲で俺は全て伝える。

 

「なるほど……零士くんにも分からない、か…」

「すみません、役に立てずに」

「いや、責めているわけでもなければ仕方の無いことだ。となると……エルフナインくんに調べてもらう方が妥当かもしれんな」

「そのことですが、ボクから一つ聞きたいことがありまして…」

「何かわかったのか?」

 

そもそも難しいことは分からないと何度も言っているだろう。

それより元がキャロルの体なのもあって、ツインテール似合うだろうなぁ…彼女の綺麗ならツインテール、絶対良いと思うんだよな……。金髪のツインテール、良いと思うんだ。

 

「いえ…ただあの時、テイルレッドさんが現れた時にも、今の…零士さんの姿に戻った時も彼の体から反応が見られました。ですから恐らく零士さんの何処かにトリガーとなるようなものがあるのかと推測されます」

「彼の体から……?」

 

ツインテール、お願いしたらして貰えないだろうか。

さすがに髪が短いと難しいだろうが、エルフナインの髪くらいなら出来たって不思議ではなさそうなんだよね。

結んでるから解いたらどれだけ長いのか知らないが、大人キャロルちゃんの髪の毛は長かったしあれほどじゃなくともロングヘアーくらいはあるのではないだろうか? ああでも、キャロルちゃんとちがってエルフナインは短いもんなぁ。出来るかな、出来なかったら俺が念じて何とかならないかな。

特に金髪のツインテールとなると明るい色なのもあって、より映そうではある。故に!

見てみたい…!

この目で見たらどんなものか……うーんみたい、見たいぞ!

俺の学校はツインテール比率が少ないからな……!!

 

「あの……何か覚えはありませんか?」

「……はえ?なんの?」

 

やばい、話を聞いてなかった。

ツインテールのことを考えてしまうと優先順位が一番になっちゃうからな、仕方がない。

けど流石に自分のことだから反省しないとダメ---いや出来るわけないだろう。

ツインテール第一に決まっている。俺の身よりもツインテールだ。

 

「自分の中でもしかしたらこれかもしれない、とか何らかの物を持ってたりとか、そういうのです。

聖遺物の欠片のようなものを持っている線も考えられますから」

 

話を聞いてなかった俺に対して特に怒るわけでもなく、説明してくれる。優しい、やっぱりお願いしようかな。

……じゃなくて、別にそういう特別なものがあるわけがない。

俺が持ってるのはスマホと財布くらいで、荷物は病院にあるのだ。

 

「いや…特に持ってるものは。身につけてるのだって一つしか---ん?」

 

そう言って、俺は気がついた。

そう、俺は何も持ってない。特に聖遺物の欠片なんて持ってたらいつ、どこで、歌によって起動するか分からない。

フォニックゲインで起動するのだから原作が始まってた時から持ってたなら俺はもっと早くにあの姿になっているはず。

だってノイズに襲われてるし、たまに歌聴こえてたし。

でもひとつ、ひとつだけ覚えがある。

というか、可能性としてはこれしかない。いつもあって、それが当然の様に思ってたから違和感もなかった。

俺にとってそれが『普通』になってたから。

けど間違いなく怪しいのは『コレ』しかない。それじゃなきゃなんかあれだろ、脳とか心臓とかその辺に刺さってんじゃないかな。

 

「何か覚えがあるのか?」

「一つだけ。もしかしたら、これかもしれません」

 

今更ながら思い出した俺は、寒いのを我慢して右袖を捲ると右腕を見せるように突き出す。

別に体に自信があるからそうしてる訳じゃないが、全員の視線が突き出された俺の腕に集まった。

 

「腕?」

「何も見当たりませんが---」

 

やっぱり見えないらしい。

今までもそうだったのだ。家で着替える時、学校の授業で着替える時、銭湯に行った時、水着を着た時、夏服を着た時、腕が見える、というあらゆる場面であっても誰も気づくこともなかった。

何故かは分からないが、認識でもさせないとダメなのだろう。それも冗談と思われず、こういった特異を扱う人達くらいにしか信じられないと思う。

だから腕を見せた本来の理由を開示すべきか。

 

「その反応ってことは()()()()()()()()()()ってことでしょうけど、実は俺の右腕には、()()()()があるんです。『何かがある』と思えば見れるかと…信じて貰う必要があると思いますが」

 

改めて腕に視線が突き刺さる。

我ながら難しいことを言ってるなと苦笑しながら思うが、振り返って考えればこれが正しいだろう。

テイルレッドになる前に無意識に殴るように突き出したのは右腕で、あの時は気づかなかったが異常な熱を感じられた。

なら---彼女らで言うシンフォギアのペンダントが纏うための力の源なら、俺はこの腕輪なのでは、と思った。

ひょっとして俺って、実は天才だな?

 

「……! これは……腕輪、だと?」

「ええっ!?」

「あ…テイルレッドちゃんも身につけてた、腕輪?」

「…同じ?」

「どうやらそのようだな」

「まさか本当に見えるようになるなんて、驚いたわ……」

「突然現れたかのように見えるようになりやがった。どうなってんだ?」

「マジックか魔法かなにかデスか!?」

 

やっぱり『そこに腕輪がある』と認識させたら見えるようになったらしく、こればかりは話に下手に入らないようにしてた装者たちも驚いていた。

 

「認識したらボクたちでも見えるようになった…ということは認識阻害?ですが、どうしてそれを…?」

「正確には認識攪乱装置(イマジンチャフ)…らしい」

「認識撹乱ですか…なるほど」

 

脳内に流れてきた情報をそのまま伝えると、どうやら納得した様子。

すまん、言った俺が分からないんだけど、どゆこと?

結局はなんかこう、認識されないって事かね。

 

「こうなると……詳しくは調べて見なければ分からないと思います」

「ふむ……それもそうか」

 

結局行き着く先はそれらしい。

一段落話が終わった、と見るべきか。

どうやら変態扱されなさそうで助かったぜ…。

 

「司令。先程の結果が出ました」

「そうか、モニターに写してくれ」

 

そんなことを思っていたらいつの間にか現れたNINJAに俺が驚くと、話が勝手に進んでいく。

モニターに映し出されたのは誰かのレントゲン。

 

「……あれ、これ俺じゃね?」

 

明らかに女性の体をしていない。

しかもわざわざ俺以外の者のレントゲンなんて写す意味もなく、弦十郎さんが頷いた。

いえーい、正解!

 

「審査の結果てすが、特に異常はありませんでした。怪我も残るは自然治癒で何とかなる、とのことです」

「無事なのは何よりだ。それにしても何もなし、か……」

「やはり鍵は…あの腕輪ということでしょうか」

「???」

 

何かよく分からないが、背中の傷は自然治癒で治るらしい。

確かにまだ痛みは残っているが、レントゲンを取る必要はあるか?

しかも見た感じ、上半身だけのようだし、もしかして立花響のように思われたのか?

 

「そうだな…だがそれが場合によっては問題になる。誰もがノイズと戦えるようになり、シンフォギアと同等の力を持つ物を持てばどうなるか……」

 

その言葉で、全員に僅かに緊張が宿ったように空気が変わる。

しかし俺は不思議と、『それは絶対にない』と断言出来た。

ツインテールを愛する俺だからこそ、分かる。

この力は---ツインテールなのだと。

言葉がおかしいか、より正確に言うならこの力は俺の『ツインテール愛』があるからこそ起動出来たのだと確信して言える。

何故かは分からないが、それだけは絶対だ。

 

「だからこそ聞きたい。零士くんは何処でそれを拾った?」

「………それは」

 

聞かれるだろうなと思っていたが、俺はすぐに答えることが出来ず、翼さんに視線を一度やり、次に響さんと未来さんを見てしまう。

そう、()()()()()()()の関係者だ。

 

「……? 私たちのことなら気にしなくていい」

「いや、でも、なぁ…話しづらいというか…未来さんもですけど、特に翼さんや響さんには深く関わるというか……」

「え?私にも?」

 

きょとんと小首を傾げる響さんはなんのことか全く分かってなさそう。

しかし翼さんと未来さんは思案するように考えているようで、このままだといずれ行き着くだろう。

 

「ただ()()は拾ったわけじゃないです。これは…託された物ですから」

「託された、だと。まさか……」

「もしかして、貴方は……」

「え?え?」

 

何かに行き着いたのか、驚いたように目を見開く。

わざわざ言うつもりはなかったが、言うしかないか。正直過ぎたことだし思い出させるように言いたくはないんだけどなぁ。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

『ッ!?』

 

その言葉が伝播すると、全員が気づいたような様子だった。

有名な事件だし、翼さんのことを知るものなら知っているだろう。

ほんと、マジで、前世の俺からすると彼女たちがまだ心に傷を残してるかもしれないから言いたくなかったんだけど、言わなきゃコレが不明になる。

 

「この腕輪は、そのとき亡くなった幼馴染から貰いました」

「あ………」

「……っ」

「………!」

 

特に関わりがある二人が強く反応を示した。

俺は責めるつもりはない。

というか、あの場は仕方がないだろう。そもそもノイズのせいではあるけどフィーネのせいだし。大勢の人々による将棋倒しだし。

でも今思えば、あの時の彼女は少しおかしかった気がするような?

まるで()()()()()()()()()()()()()()ように。

 

「う…あー……」

 

でもって、言ったのは俺なんだ。

俺なんだけど、なにこの空気!?

なんか重い!やけに重いよ!?なんと言えばいいんだよ!?

 

「…すまない、零士くん。キミに嫌なことを思い出させてしまった」

「え、あの。いや……えぇ…?」

 

凄い、めっちゃ申し訳なさそうにするOTONAや翼さんを見て俺はどうすればいいか分からなかった。

どうしよう、もう割り切ってんだけど。その下りは四年前の心に穴が空いたような消失感事件で終わったんだけどなあ。

ちなみにその穴はツインテールが入った。だからなんだろうね、ツインテール愛があの時からさらに深まったよ!

なんだ、ツインテールは万能薬じゃないか。バカにつける薬はツインテールでいいんだなって!

は?誰がバカだよ、何一人漫才してんだ俺は。

 

「えーまぁ、そのぉ、大丈夫っす。今は気にしてないので!

それにほら、結果だけで見れば、俺が助かったのもこのおかげなので!

えっと、ですから、そのー気にしないで大丈夫ですよ?」

「……そうか、強いのだな」

「え?」

「私はそう立ち直ることが出来ず、後悔の念に駆られていた。今こうして居られるようになったのは、立花のお陰だからな」

「翼さん……私だってお父さんの件で色々とありました。でも私は()()()()()。今はお母さんやお父さんも居て、陽だまりもいる。けど……」

 

え、待って。これなんか、あれ…無理して励まそうとしてるように解釈されてない?

ちょ、あの。俺の話誰も聞いてないのでは?

ああ、くそっ!誰だよ、こんなこと話したやつはよ…俺だわ、俺じゃんか。

 

「あー、あー! そ、そういえばエルフナインちゃんさん!」

「え、は、はい!?」

 

こうなれば仕方がない。

巻き込むことは申し訳ないが、俺はエルフナインちゃんの両肩を優しく掴んだ。

顔赤くして怒ってるけど、今はそんな時間すら惜しい。

この姿だと説得力に欠けるんだな、たぶん!

俺の本来の姿なのに!

ちゃんと『力がある』と認識させたらいい説を唱えるぜ!

 

「テイルレッド!どうやって、なれると思う!?」

「えっ!?いや、その…まだ調べてないので全然分かってなくて……お、恐らく何らかの意思が働いたのかと思いますが---」

 

悲報、最終手段が一瞬で消えた。

ええい、ままよ!

何言ってるのか全然分からないがあの時の気持ちを考えろ!

えー変身したいって思ってた気がする!

変身したい変身したい変身したい変身したい変身したい変身したい変身したい変身したい変身したい変身したい変身したい---あっ、そういえばテイルレッドになった時ツインテール、綺麗で良かったなあ……あのツインテール自分のだけど見れないかなぁ……

 

「ッ!? こ、これは……」

 

目の前の彼女が何か驚いたように俺を見ている。

しかし俺はツインテールのことで頭一杯に染まっていて、どうでも良くなった。

なんか包まれたような気はするが、きっと気のせいだろう。

視界もやけに小さくなった気がするが、それも気のせいだろう。

 

「とにかく、オレはもう何とも思ってねぇから。だから気にしないでく……れ?」

 

暗い空気に耐えれず、俺は口を開いたところで、遅れて声の違和感に気がついた。

思わず両腕を見れば細くなっており、体にはまたメカメカしい装甲が所々にある。

 

『………』

「…うん、気にしないでくれ!」

 

暗い雰囲気から唖然とした空気になったが、俺は気にせずに言い切った。

 

「いや、続けんのかよ……」

「流石に無理がある…」

「今の合間はなんデスか…?」

「……ちょっと、時間空けましょうか。構わないでしょう、司令」

「ああ…そうだな、マリアくんの言う通り、少し休憩を挟もう。

今は話せる様子ではなさそうだ」

「……もしかしてオレ、なんかやっちゃいました?」

 

明らかに場がカオスになった気がした俺は、それだけしか言えなかった。

---余計な混乱を生んじまったらしい、てへ。

これもツインテールが良すぎるから仕方がないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

色々と落ち着いて数分。

ここでひとつ、問題が浮上した。

---これ、どうやって戻るんですか???

 

「今更としか言いようがないが…すまない」

「ごめんね、辛かったよね……」

「いや、いいって。過ぎたことを掘り返しても仕方が無いし、響も辛いことが起きてただろ。色々とあったし」

 

なんか敬語を使うのが面倒になった俺はやめた。

この姿だとなんかこう、敬語よりもこっちの方がしっくり来るのだ。

というかもう正体バレたせいで隠す必要はないし、素の自分で居た方がやりやすい。

 

「とにかく、俺は気にしてない!」

「そこまで言うならば…」

「うん、辛かったら今度からは助けになるから!」

「私は当事者ってわけではないし、喪うことの辛さは分かるとは言えないけど…困ったことがあったら言ってね」

「おう!」

 

よし、何か知らん間に知らぬ間に終わったな?

俺、変身した意味あった?

いや、あれか…この見た目だからこそ、彼女たちもマシになれた…のか?そうだと信じたい!

 

「それにしたって、やっぱり可愛いなぁ…!」

「ちょっ……!?」

 

そんなことを思ってぼうっとしていたからか、響が抱き寄せてきた。

俺の話聞いてねぇなぁ!?

 

「だ、だからオレはおt」

「確かにテイルレッドちゃんって凄く可愛いよね、私も失礼しようかな」

「はっ!?」

 

俺の心の叫びは虚しく、予想外の形で未来…さんもくっついてきた。

あっ、ちげーわ。これ響も抱きしめてるわ。

 

「嗚呼、見た目からは想像出来ないほどに力もあるようだしな……私も少しいいだろうか」

「え、あの…ひゃっ!?」

 

急に手を触られ、驚く。

正直翼まで参加してくるとは思わなかった。

というか助けて!誰も話聞いてない!

 

「なんだか楽しそうデス!」

「やっぱり、綺麗」

「なんだ何だ、またやらかしたのか?」

「……なんというか、刺激されるわね。こう、庇護欲というか……」

 

そしてまたしても増えた!

あーもう……いいや。ツインテールさえ傷つかなければいいよ、うん…もう好きにして。なんかむり…助けてクリス先輩。

……目を逸らされた。

同情の瞳は向けられたが、彼女もなんだか素直になってないだけで気になってるのかチラチラ見てくるし、マリアなんて頭撫でてくるし調はツインテールをじーっと見てきたかと思えば撫でるように触ってくる---ので羨ましいし切歌は突っ込んできたしもうどうすりゃいいんだよッ!

誰も俺を男として認識してねえじゃんかあああああッッッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

「よっ……と。ふぅ……」

 

()()()()()()()のギアを解除し、地面に降り立った私は辺りを見渡し、今回もまたちゃんと渡れたということを理解する。

今日は久しぶりの休暇をもらって、()()()()の別世界に来ることが出来た。

私の世界に、マリア姉さんはもう居ないけれど、この世界のマリア姉さんもまた、私にとっては大切な姉で、会うのが楽しみだった。

もちろん月詠さんや暁さんたちにも会いたかったのもあるけど。

 

「……おっ?」

「ん……?」

 

そう思って歩き始めると、また()()()()()()()のゲートが開き、誰かの気配を感じた私は振り返ると、お互いに気がついた。

 

「天羽さん!」

「よっ、そっちも来たんだな」

 

天羽奏さん。

私と同じく、並行世界からやってきた人で、私と同じく自分の世界で大切な人を喪った人。

天羽さんには何度も助けられたし、導かれた。

特にドヴァリンさんの時は本当に居てくれてよかったと思うくらいに感謝もしてる。だって、あの人を救えたのはわたし一人の力じゃない。

小日向さんと天羽さんが居てくれたから。

私が私の答えを見つけられたのも、同じ。

一人だったら見つけられなかった。

 

「もしかして、天羽さんも休暇ですか?」

「ああ、落ち着いたらしくってさ。休める時に休めって言われたんだ」

「なるほど…私も似たような感じです」

 

ギアを解除した天羽さんと一緒に歩いていく。

どうやら理由は似たようなものらしく、目的地も恐らく一緒。

お互い世界は違うけれど、こうやって会って話すのは楽しい。

特に天羽さんは性格というか気質というか…姉御肌なところがあって頼りになる、もう一人の姉のような人だ。

共通するところもあったり一緒になることも多かったりするし、親しくなれたと思う。

 

「皆さんは司令室でしょうか」

「多分な。違ってもダンナや友里さんとかに聞きゃ教えてくれるだろうけど」

「ですね、もう少しで会えるって思うと嬉しくなります」

「だね、どうからかおうかなって思うよ」

「あ、あはは」

 

冗談っぽく笑いながら言う天羽さんに私は苦笑いする。

けれど、それがお二人らしさ、なのだと思うとそれはそれでいいのかな?

 

何はともあれ、お互いの世界の状況や情報を交換したり、あれこれ話していると気がつけば司令室の前まで来ていた。

すると、中が妙に騒がしいことに気づいた私と天羽さんは互いに顔を見合せ、怪訝そうに扉を見つめる。

 

「何かあったのでしょうか?」

「の割には、緊迫した空気でもないね。となると流石にアタシも分からないかな。見てみる方が早い」

「そうなりますよね…でも不思議と嫌な予感はしません」

 

不思議な感覚だとは思う。

自分でも理由が分からないけれど、この先に待つのは悪いものじゃないような、そんな気がする。

皆さんと会うだけなのに、こんな予感は不思議だった。

 

「そうだな……どちらかと言うと良い出会いが待ってるような、そんな感じだ」

「はい、それじゃあ行きましょう!」

「ああ!」

 

どうやら天羽さんも同じ予感をしたらしく、私たちは別に相談をした訳でも無く、同時に一歩踏み出して司令室の中へと入っていく。

その先に映った景色は---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だ、誰か助けてくれぇ〜……」

 

太陽を思わせるような、綺麗な赤い双髪。

幼い外見ながらも明らかに普通ではない装甲を身につけ、思わず見惚れてしまうくらいに整った顔をしている美少女、と言うべき女の子。

その子がマリア姉さんや月読さん、暁さんや他の方々に揉みくちゃにされて弱々しい声で助けを求める姿だった---

 

 

 

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