モンキー・D家の最年長   作:子葉

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掲示板式ではない小話になります。


幕間

 

ハコロ島・禁足地

異世界ポータル起動、数分前

 

 

 

「Fatalis、か」

 

 一見すると幾何学的な模様にしか見えない文字を指でなぞる。前世の義務教育で英語には触れていても、筆記体のアルファベットはからっしきだ。達筆すぎて読み解くことすらできないその文字を男は睥睨した。

 

「まさか今になってミラボレアスの名を目にするとは思わなかったな」

 

 ミラボレアス。忘れることの無い、邪悪なる古き竜の名。竜の拠り地、その最深部で戦った記憶は脳裏に深く刻まれている。液晶画面越し、プレイヤーとしてキャラクターを操作して戦うのとは違う。己が前に存在し、悍ましくも美しい邪眼を殺気で燃え上がらせて襲いかかってきた黒龍に男は運命を感じていた。

 

「グルル」

「ガウ」

「大丈夫だ。真珠(ラギアクルス亜種)アビュル(ガルク)。あれはもうこの島にいない」

「クルル」

「グォル」

天華(イヴェルカーナ)朝露(鏖魔)まで……心配性だな。お前達は」

 

 ミラボレアスという名に反応したオトモン達が声を上げる。彼らの言葉をライダーである男は理解出来ない。だが、お互い意思疎通はできる。顔を近付けてきたオトモン達の頬を手の甲で宥めるように撫で、男は再度台座に目を向けた。

 

「さて、と」

 

 音も無くうっそりと笑った男は腰に下げたポーチに手を入れる。迷い無くポーチから取り出されたソレに、オトモン達は一斉に唸り声を上げた。

 

「大丈夫だ。呑まれたりしない」

 

 男の一言で唸り声は治まったが、彼らの凍り付くような鋭利な視線はソレに向けられたままだ。仕方ないことだ、と肩を竦める男は手元に目線を下ろす。無機質な青いネオンの光で照らし出された、水晶で形作られている邪な瞳は昏い死の匂いと狂気を纏っていた。

 くり抜かれても尚まるでまだ生きているかのように、己を無残な姿にした男とその友を呪い殺そうと凄絶な眼光が獰猛に輝く。

 

「もう一度、俺の運命を殺せというのなら」

 

 黒龍の邪な宝石がカチリと窪みに嵌まった瞬間、三角にくり抜かれた巨大な空間に青白い光の壁が現れる。

 

「――喜んで俺は禍々しくも輝かしい伝説を撃ち落として見せよう」

 

 バチリと歪な音を立てる異次元への扉に男は口角を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Beware that, when fighting monsters, you yourself do not become a monster… for when you gaze long into the abyss. The abyss gazes also into you.

怪物と戦う者は、その過程で自分自身も怪物になることのないように気をつけなくてはならない。深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いているのだ

フリードリヒ・ニーチェの著作『善悪の彼岸』より

 

 

 




ざっくり設定説明

イッチライダー
MHST2の世界に転生したレドの孫であり主人公。本名はルーフィウス。竜の拠り地踏破済み=ミラボレアス討伐済みライダーを意味する。実はミラボレアスとの邂逅でSAN値チェックが入ったが、それすらも受け入れ打ち破り、ミラボレアス=俺が倒すべき運命と直感しているヤベェ主人公。ミラボレアス装備を所有しても正気を保てるぐらいには精神力があるのだが、ミラボレアスのことになるとやや暴走気味
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