その瞳の先に   作:天星

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「と、いう訳です。はい」

「お、大成功じゃないか。やったな」

「いやまぁ、確かに成功と言えば成功なんだけどさ……」

 

 前回までのあらすじ!

 響野さんに新しい曲作りの約束を取り付ける事自体は成功したけど、私が作詞をする事になった。

 ……うん、どうしてこうなったんだろう? いや、話してたのは私なんだけどさ。

 とりあえずありのままに起こった事を生徒会室の皆に報告して、そして今に至る。

 

「私に作詞なんてできるのかな……や、やっぱり今からでも誰かに代わってもらった方が……」

「ハッ、お前以外の誰に代わってもらうと言うんだ」

「ほ、ほら……皐月先輩とか?」

「この学校に思い入れがある人がやるべきなんでしょう? だったら卒業生である私がやるべきじゃないわ」

「それはそうですけど……じゃあキミは?」

「オレに任せると言うならオレが最も信頼している人物に外注するぞ?」

「……具体的に、誰に?」

 

 そう問いかけた私に対して無言で肩に優しく手を置かれた。

 わー、最も信頼してる人物かー。嬉しいなー。はぁ……

 

「少なくともオレはお前さん以上の適任が思いつかないな」

「光栄だよ。分かった。とりあえず頑張ってみる!」

「おお。あ、その間の生徒会長としての仕事とかは何とかしておくからそっちに専念しててくれ」

「りょーかい。ありがとね」

 

 お礼を言った後に『私抜きで回る見通しが立っている現状で私が在籍している意味があるのだろうか?』という疑問がふと浮かんだが胸にしまっておいた。

 きっとアレだ。短期間だけならちょっと無茶して回せるという事だろう。そういう事にしておく。

 それじゃあ作詞を頑張ろう。私が抜けたせいで生徒会が回らなくなる前に。

 ……猶予時間、かなり長そうだけど気にしない。気にしないったら気にしない。

 

「作詞、作詞……作詞ってどうやるんだろう?」

「学校に対する感想文でも書けばそれっぽくなるだろ」

「え? そんな感じで良いの?」

「ああ。難しく考える必要なんて無い。むしろ素人っぽい感じで十分だろ。

 難しく考えた結果が響野の曲のボツなんだから」

「それは……確かに」

 

 難しい事を考えるのは響野さんに任せて良いだろう。私は作詞を頑張るだけだ。

 

 

 

 

 

 という訳で一週間後。精一杯頑張って作った詞を響野さんに見せた。

 ノートに書かれたそれを上から下までじっくり眺めて……

 そして笑顔で大きく頷いてからこう告げた。

 

「うん、ボツ」

「……うん、笑顔だった時点で何となく分かってた。響野さんにボツを告げた彼や皐月先輩と全く同じ顔だったもん」

「そっか。あの二人もこんな気持ちだったんだ。

 予想以上によくできてる。けど、欠けているものがある事が分かるから伸び代がある事が分かる」

「そこまで分かるなら突然言われる方の心もちゃんと分かって欲しかったよ」

「……ごめん、反省」

 

 そんな文句は置いておいて作詞の方に戻ろう。何がいけなかったのだろうか?

 

「さっきも言ったように予想以上によくできてる。でも、何かボンヤリしてる感じがする。

 何か……意図的に省いたものは無い?」

「そこまで分かる物なの? 実はそうなんだ」

 

 私の学校に対する感想文をそれっぽく仕上げたものだけど、『彼』の事に関しては意図的に除いてある。

 だって……印象が強すぎて『学校の歌』じゃなくて『彼の歌』になっちゃいそうだったんだもの。

 

「なるほど。確かにアレは印象が少し強すぎるかもしれない」

「だよね?」

「でも、それでもいい。いっその事『彼の歌』になってもいいってくらいの気持ちでもう一度作詞してみてほしい」

「……分かった。響野さんがそれが必要だって言うならやってみる。

 そんなに時間はかからないと思うから。それじゃあまた」

「うん。期待してる」

 

 

 

 

 家に帰った後、何も考えずに言われたとおりに作詞してみた。

 ボツになった歌詞作りのおかげで多少はコツが掴めたのだろうか? 思っていたよりもサクサクと書けた。

 書けた。書けたけど……深呼吸を一つしてから落ち着いて読み返してみる。

 これは……アウトだ。少なくとも『学校の賛歌』になっていない事だけは間違いない。

 

「書き直そう。そうしよう」

 

 ノートのページを捲って新しい歌詞を書く。

 …………さっきと比べて全然進まない! おっかしいなぁ……

 ……ちょっと眠くなってきた。まだ時間に余裕はあるんだし明日でも……いやいや、これ以上生徒会の皆に負担をかける訳にはいかない。

 

 彼が割と余裕そうに生徒会を回しているという事実からは目を逸らしつつ、何とか作業を完了させたのは夜明け頃の事だった。

 

 

 

 

 

「……微妙」

 

 翌日の響野さんの第一声がそれである。

 やっぱり徹夜で無理矢理頑張ったのが良くなかったのだろうか?

 

「歌詞自体は何となく賛歌っぽいし、この学校っぽさも出てる気がする。

 けど、気持ちが乗ってない。これだったら私がイチから書き上げた方がマシ」

「うぅっ、ゴメンナサイ」

「こういう言い方もどうかと思うけど、音楽の専門の勉強もしてない素人だから仕方が……あら? こっちは?」

「え、あ、それはっ!」

 

 響野さんが見つけたのは前のページにあるボツ歌詞だ。

 わざわざ消しゴムで消すような事はしてなかったけど、見つかるとか全く考えてなかった。

 

「……ラブレター?」

「あ、いや、違っ、違わないけど!

 彼の事を考えて歌詞つくってたらそうなっちゃっただけで!」

「…………」

「あの、響野さん?」

「……これだったら、いける気がする」

「えええええっ!?」

「うん。さっきの歌詞と比べて凄く気持ちが伝わってくる。

 コレを基に作曲する。それじゃ」

「え、ちょ、響野さん待って!?」

 

 呼び止める間もなく響野さんは走り去ってしまった。

 え? あれが賛歌になるの? 響野さんにラブレターだと間違われたあれが?

 いやいや、きっと響野さんも作曲の最中に正気に戻ってくれるはず。

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